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007:仕切り直し

007:仕切り直し

 為臣殿下が、今日に至るまで武士道にハマったのには理由があった。

 5歳の時、メイドの目を盗んで部屋から抜け出す。

 目的もなく皇居の中をフラフラ歩いていると、たまたま王の間にやって来た。

 その時の王の間には、遠征を終えた春蘭帝威大将軍が陛下に謁見していたのである。

 膝を着き深々と頭を下げている春蘭帝威大将軍。

 その姿に頭を撃ち抜かれたような感覚になった。

 まさしくその時の春蘭帝威大将軍の姿は、主君に対して忠誠を尽くしている武士道そのものだ。


 深い眠りについていた殿下の目は、パチッと開いた。

 3日間も少ない休憩を挟み、移動していたので疲れが蓄積していたのだろう。

 宿屋に入ってから食事を摂るのを忘れて眠った。

 そして夜が明け、目を覚ましたのは翌日の朝だ。



「もう朝か……ん?」



 スッと目を擦りながら上半身を起こした殿下。

 周りをキョロキョロして状況を確認しようとするが、この部屋に戸谷郡長の姿が無い事に気がつく。

 春雷中将に裏切られている手前、もしかしたら戸谷郡長も裏切ったのでは無いかと邪の考えが浮かぶ。

 まぁ10歳の少年なのだから仕方ない事だ。

 するとガチャッと部屋の扉が開いたので、ベッドの上で立ち上がって警戒する姿勢を取った。



「これは殿下っ! お目覚めでしたか!」


「なんだ、戸谷か……どこに行ってたんだ?」


「はっ! 少しこれからの予定を変更しようと思いまして、その準備を行なっておりました!」



 部屋に入って来た戸谷郡長は、殿下が目を覚ましているのに気がついて膝を着いて頭を下げる。

 敵じゃなくて安心した殿下は楽にするように言った。

 そしてどこに行っていたのかと聞く。

 すると戸谷郡長は、これからの予定について変更する為の準備を行なっていたと言うのだ。

 予定を変更。

 当初の予定とは異なる道を行くという事は、何かしらの問題が起こったからだろう。

 その疑問を殿下は戸谷郡長にぶつける。



「予定を変えるというのは、どういう事なんだ? 最初に立てた予定じゃダメだったのか?」


「はい! 着実に向かうというのならば、確かに最初に立てた作戦の方が良いと思います……しかし! 春雷の襲撃や緊急事態が起きた時に着実に行っていましたら、時間がかかり過ぎるのです!」


「時間がかかり過ぎる? なら新しく立てた道筋なら時間はかからないという事か?」


「は! 時間としては、かなり短縮できると思います!」



 着実に進むという点においては、最初に立てた方が良いのかもしれない。

 しかし何らかの理由で春雷中将が襲撃して来たり、緊急を要する事態に陥った時、当初の予定では釧路県に到着する前にやられてしまう。

 それを聞いた殿下は納得する。



「分かった、全ては戸谷に任せる。それで新しいスケジュールは、どんなのだ?」


「は! 説明させて頂きます!」



 納得し作戦に関しては、全て戸谷郡長に任せる。

 その上で新たな予定とは、どんな内容なのかと殿下は戸谷郡長に聞く。

 説明するように言われたので嬉しそうに話し始める。



「本来の予定でしたら、このまま北上して釜石村の港から釧路県に向かう予定でした。しかしこの港からでも船は出ているので、今日の夜にはここを出発します!」


「そうか、海に出るのを早めたって事か。ここから船で、釧路県までどれくらいかかるんだ?」


「ここからですと、だいたい……3日から4日ですかね」


「やはりそれくらいはかかるんだな。だが北上する事も考えれば、ここからの方が早く着くってわけか」



 確かに新しいスケジュールを聞いた殿下は、先を急いでいる自分たちなら、多少のリスクを取ったとしても早く釧路県に着いた方が良いと思った。

 殿下も納得してくれたので、戸谷郡長は「これで行きましょう!」と確定した。



「そういえば大丈夫なのか? 港の人間に、俺たちの事がバレたら捕まる可能性があるんじゃ無いか?」


「私も1番のリスクは、そこにあると思っていました。そこで、ここを改めて選んだんです!」


「じゃあ何か決め手があったんだな、聞かせてくれ!」



 殿下の言うように港の人間が、殿下たちの存在に気がついたら捕まるのでは無いかと不安がある。

 しかしそこの点を最もリスクだと感じた戸谷郡長は、リスクが限りなく0に近い日立村を選んだという。

 その決め手となった理由は、この港と繋がっている。

 だからこの村を選んだのだ。

 これに殿下は「繋がっているって?」と聞く。



「はい、日立村の港を仕切っているのは海賊なんです」


「海賊? どうして海賊が、港を仕切ってるんだ?」


「海賊と言っても裏ではって話です。つまり表向きは漁港の管理者で、裏では公的に海賊行為をしている組織です」



 この村の港を仕切っているのは、表向きは普通の組織だが裏では海賊をやっている人間だと説明した。

 もちろん海賊なので略奪などの海賊行為はしている。

 それを戸谷郡長たちは雇って囲んでいるのだ。

 略奪行為を認める代わりに、殺人や強姦といった行為は禁止させた。

 そして公的に認められた海賊たちは、戸谷郡長たちのいう事を聞くという流れができている。

 今回はその海賊たちを使うと言うのだ。



「それじゃあ殿下、今から港に向かいましょう」


「あぁ急いだ方が良いのは、お前から嫌ってほど聞かされたからな。急いで安息の地に向かおう」


「それでは宿を出ましょう!」



 急いで港に向かう為、殿下たちは宿を後にする。

 グッスリと眠った後なので、外の空気が気持ちよくて深呼吸をした。

 その姿を見た戸谷郡長は、早くゆっくりして欲しいと心の底から思った。

 深呼吸が終わってから戸谷郡長は「さぁ」と言う。

 殿下も「あぁ」と返して歩き出す。


 すると少し歩いたところで、ある光景が目に入る。

 それは複数の少年が、1人の少年を袋叩きにしているところだった。

 少年たちの年齢を推測するに。

 だいたい殿下よりも2つか、3つ年上くらいか。

 その光景を殿下はジッと見つめており、戸谷郡長は「さぁ先を急ぎましょう」と言う。

 しかし殿下は「あぁ……」と返すだけだった。

 戸谷郡長は察した。

 武士道を重んじている殿下が、あのような蛮行を許すわけがないと。

 少しの笑みを溢し荷物を地面に置く。



「殿下、ここは私にお任せ下さい!」



 ゆっくりと少年たちに近づいた戸谷郡長は「お前たち、そこまでにしておけ」と声をかけた。

 いきなり知らない男の人に声をかけられた少年たちは、少し警戒しながら「な なんだよ!」と返す。



「だから、1人に対して複数人で暴力を振るうのは大和男児がする事じゃないだろ?」


「オッサンには関係ないだろ!」


「そうだそうだ! それにやられるのは、コイツが生意気な目をしたから悪いんだ!」


「それでもやるんだったら、1対1にしろよ! じゃないと自分が弱いやつだと言ってるのと同じだぞ!」



 注意をしたが反抗的な態度を取るので、どうしたものかと戸谷郡長は困っていた。

 さすがに子供を殴るわけにはいかない。

 だからほんの少し脅そうと、懐に隠していた刀をチラッと子供たちに見せた。

 するといじめっ子たちも「やばい!?」となって、いじめてた子を置いて逃げていく。

 少年たちが走っていくのを見てから戸谷郡長は、いじめられていた少年に声をかける。



「こ この子は!? 殿下……」


「どうしたんだ?」


「この子は……合いの子(ハイブリッド)》です」


「ハイブリッド?」



 虐められていたのは、ハイブリッドと呼ばれている外国人と日本人のハーフの子だった。

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