018:同じ目線
釧路城に入城した殿下。
その日は食事をしてから休息を取って貰う。
そして翌日の昼過ぎに殿下たちは、遂にこれからの道筋を決める会議をスタートさせる。
会議には戸谷郡長を合わせた7人の郡長が集まった。
郡長たちは部屋に入って殿下を見つけた瞬間、バッと地面に膝を着いて深々と頭を下げる。
「殿下っ! このようなタイミングで、この言葉は不適切であると分かっております……しかし! あえて言わせて頂きますが、この日を心待ちにしておりました!」
「お前たちが駆けつけてくれた事は、とても心強く思う」
「ありがたきお言葉っ! 我ら7人、殿下の為でしたら身命を賭して忠義を尽くさせて頂きます!」
皇族を神に等しい存在と思っている釧路県の郡長たち。
殿下の口から心強いという言葉を聞いて、また深々と頭を地面に下げた。
ここまでやられると殿下は気まずい。
だから「立って席に座ってくれ」と指示をした。
その指示通りに郡長たちは、立ち上がって椅子のところに歩いていくのである。
殿下が先に腰を下ろすのを確認してから座った。
「それじゃあ御前会議を始めようか。最初に決めなければいけない事は、釧路県内の兵力を洗い出す事だ」
「はい! 昨日のうちに、各郡長たちには自分の領地の兵数を調べさせておきました」
「さすがは戸谷だ、仕事が早いな」
「はは! ありがとうございます」
御前会議が始まった。
会議を迅速に進める為、戸谷郡長は昨日のうちに各郡長に自分の領地の兵数を調べておくように言っていた。
これに殿下は、さすが戸谷郡長だと褒める。
「それで兵数はどれくらいだ?」
「この国から最大で出せて……2000人くらいですね」
「2000か……」
この国で戦争時に出せる兵数は、総人口2万人の中で10割である2000人だ。
それだけ聞いたら明らかに、春雷軍との戦いに踏み込める数では無い。
どうしたものかと殿下は頭を抱える。
やはり危険ではあるが、強力な武力を持っているカムイリアンに協力を得るしか無い。
そう結論付いた。
「やはりカムイリアンの力を借りる必要があるな」
「殿下、戸谷から聞きましたぞ。やはりカムイリアンの力を借りる他、無いのでしょうか?」
「それしか無いだろうな。危険かもしれないが、逆に言えば仲間になった場合の利益の方が大きい」
危険なのは百も承知だが、リスクを背負ってでも利益を取りたいと殿下は宣言した。
もちろん他の策も出したいところだ。
しかしここから状況を前に進める為には、カムイリアンの力を借りる他ないのである。
鶴見知事たちも意見に賛同するしかない。
「カムイリアンっていうのは、どこに住んでるんだ?」
「はい、カムイリアンは網走郡の網走湖周辺をナワバリとしています。そこは北見県に面しておりますが、その凶暴さ故に攻め込んで来ません」
「ほぉさすがはカムイリアンだな」
カムイリアンの村があるのは、網走郡にある網走湖周辺であると戸谷郡長は伝えた。
そのカムイリアンの凶暴さ故に、県が面している北見県は攻め込んで来ない。
強さを殿下は再確認する。
やはり頼る他、殿下たちには選択肢は無いだろう。
「それで殿下、カムイリアンを仲間に引き入れる事についてですが」
「どうした? もうそれで良いんだろ?」
「はい、それは構いません。しかし話し合いをする為に、何か手を打たなければいけません」
嫌われているカムイリアンを仲間にする為には、何か策を考えていかなければいけない。
殿下は何か良い考えは無いかと郡長たちに意見を聞く。
何か良い意見を出さなきゃいけないと、郡長たちは腕を組んで真剣に考える。
すると戸谷郡長が、ピッと手を挙げた。
殿下は「おぉ聞かせてくれ!」と言う。
椅子から立ち上がった戸谷郡長は、ゴホンッと咳払いをしてから自分の考えを説明する。
「カムイリアンを独立国として認めた上で、新しく殿下が作る国との間に同盟を結ぶんです! そうすれば向こうとて無益な戦いは避けられ、その上で同盟者を獲らるのは大きい利益だと思います」
戸谷郡長の意見に郡長たちは全力で否定する。
神の末裔である殿下が、野蛮な部族を国と認めた上で同盟なんてありえないというわけだ。
そんなに言うのかというくらいに郡長たちは、戸谷郡長の案を全力で反対である。
絶対にダメだと郡長たちは「殿下も反対ですよね!」と同調を貰おうとする。
すると殿下は腕を組んで何かを考えている。
何も言い返さないので郡長たちは「殿下?」と聞く。
「いや、戸谷の言う通りだ。嫌われている俺が、カムイリアンと話し合いの席に座る為には、それ以外に選択肢は無いだろうな」
「し しかし神の末裔であられる殿下が、あんな野蛮人と同盟だなんて……」
「その認識を改めよ! 我らが頼る事ができるのは、その野蛮人たち以外いないのだ。それに俺はカムイリアンを野蛮人だとは思っていない。彼らも歴とした大和帝国の国民である事には違いない!」
話し合いをしたいと頼みに向かうのは自分たちなのだから、そんな無礼な態度ではダメだと殿下は叱責する。
そして何よりもカムイリアンの創生秘話を聞いた殿下はカムイリアンを野蛮人だとは思わないと擁護した。
これには郡長たちは「え!?」と言葉を漏らす。
家族を守る為に、自分自身を守る為に武力を求めた人間が野蛮人なら、国を武力で取り返そうとしている自分だって野蛮人だと述べた。
「け 決して殿下は野蛮人では!」
「いや! お前たちがカムイリアンを野蛮人ならば、武力行使をしようとしている俺も同じだ。力を借りる為には、同等な態度を見せるしかない」
「殿下の言う通りです! 殿下や皇族の皆様を神様と思っているのならば、皆さんはその神様に意見しているのと同じ事なんですよ!」
戸谷郡長の指摘に、各郡長たちは「うぅ……」と言ってグゥの音も出ないのである。
もう何も言い返せないと思ったのだろう。
郡長たちは「わかりました」と納得せざるを得ない。
これでカムイリアンとの間で同盟を組むという案が可決される事になった。
「それでは殿下、カムイリアンと同盟を組む上で国を作らなければいけません。そこで国を作るのに大切な事がありまして、ぜひ殿下にお決めになって頂きたいんです」
「国を作るといっても釧路県のままだろ? 何か大切な事があるのか? もしかして役職か!」
「いえ! まぁいえっていうのもおかしいですが……最も大切なのは国名です! これから我らを象徴するものですので、とても大切なんです!」
戸谷郡長は国を作る上で、最も大切である国名の決定を殿下にして欲しいと頼むのだ。
とても重要であると聞いていたので、一体どんな事なのかと殿下は固唾を飲んでいた。
しかし出てきたのが国名というので拍子抜けである。
そんなに大切なのかという顔を殿下はする。
それを察知した戸谷郡長は、国を象徴するものなので大切であると殿下に熱弁する。
「ま まさかそこまで国名が大切だったとは……」
「ぜひとも殿下に決めて頂きたいです!」
「いきなり、そう言われてもなぁ……いきなりドンッと出てくるわけじゃ無いからな」
国名の大切さを諭された殿下は、腕を組んで「うーん」と悩むのである。
国名が決まるのに4時間もかかったという。




