014:大臣任命
東京府・皇居内の玉座の間。
そこには多くの春雷の臣下が集まっている。
大勢が集まっているのに、玉座の間には呼吸する音しかなっていない。
それだけここには近況感が走っているのだ。
すると廊下の方からカツカツッという廊下を歩く音が玉座の間まで響いていた。
臣下たちは早いが頭を深々と下げる。
ゴクリッと固唾を飲んで、冷や汗をかき震えながら頭を下げ続けるのである。
そしてその足音が玉座の間に入って来た。
足音が近づくにつれ、臣下たちの心臓の音が大きくなり汗が地面に垂れる。
足音は玉座でピタッと止まる。
スーッと息を吸う音から春雷は「面をあげよ」と言って顔を上げさせた。
臣下たちは春雷の姿を見て「あぁ……」と声を漏らす。
「驚いか? この日を迎えられた事に、俺……余は嬉しく思っている。今日を持って余が、大和帝国の2代目皇帝として即位する!」
『ははぁあああ!!!!』
春雷は皇帝のみが着用を許されている黄櫨染御袍を、身に纏っていたのである。
まさしく自分は新しい皇帝だと言っているのと同じだ。
だから臣下たちは驚く。
後に出版される〈大和帝国列伝〉によると、西暦2118年7月27日に《三ツ矢 春雷》が大和帝国の2代目皇帝に即位したと周辺地域に発表された。
「僭越ながら、私《桂 聖》が御前会議の進行をさせて頂きます。まずは周辺地域の情勢についてのご報告です」
春雷の側近・右腕として大いに活躍している桂という男が、この御前会議の進行を執り行う。
まずは関東地方や、その周辺地域の情勢について。
臣下の1人が一歩前に出て状況の説明する。
「関東地方全域のほぼ全ての地域を平定されました。しかし新潟県並びに名古屋県・金沢県が挙兵いたしました」
「新潟県と名古屋県・金沢県が挙兵? という事は……あの3つの家が動いたというわけだな?」
「は! その通りでございます。新潟県は貴族で力を蓄えていた上杉家の《上杉 輝真》が陣頭指揮を取っております。名古屋県と金沢県は、かつての大武将である織田家の《織田 信隆》と、謀反人である明智家の《明智 光彦》が共同で挙兵いたしました」
新潟県と名古屋県・金沢県が兵を挙げ独立した。
新潟県で兵を挙げたのは越後の龍と言われていた上杉謙信の末裔である上杉家現当主《上杉 輝真》。
名古屋県・金沢県は共同で兵を挙げたのは、本能寺の変の中心人物たちで織田家の現当主《織田 信隆》と明智家の現当主《明智 光彦》の両名である。
それを聞いた春雷は顎を触って考える仕草をする。
「その2つは敵対しているのか? 名古屋県と金沢県を領地にしている織田家と明智家は、挙兵した皇弟親王殿下と新潟県の上杉家に挟み撃ちにされるだろ」
「それが……その3つの国は、同盟関係になりました」
「つまり余に対抗する為の共同戦線と言ったところか。そこまでしないと、我らには勝てないという事だ」
「しかし陛下、このままでは不利なのには変わりありませんぞ。親王殿下が治める関西の地も、新潟県や名古屋県もバカにはできません」
「そんな事は分かっている。その為にまずは、兵を挙げ長野県を奪い取る」
名古屋と新潟が挙兵しただけではなく、皇弟親王殿下と同盟関係になったのだ。
つまり反春雷同盟と言って相違ない。
この同盟に対抗する為、春雷は長野県の奪取をする事を臣下の全員に指示を出す。
指示を受けた臣下たちは「おぉ!」と声を上げる。
「続きまして陛下が、お決めになられました大臣について発表させて頂きます。こちらは陛下の方から直々に発表して頂きますので、返事をよろしくお願いします」
これから臣下の中から大臣を発表する。
春雷の口から直々に、誰がどの大臣の席に就くのか発表する事になった。
「まずは内務大臣だが、日本時代に総理大臣や内務大臣を歴任した〈桂 太郎〉の子孫である《桂 聖》」
「はっ! 若輩者ではありますが、陛下からの信頼の証だと判断し、今以上の活躍をいていきたいと考えています」
内務大臣に選ばれたのは《桂 聖》だ。
この桂は日本時代に総理大臣や内務大臣など、多くの役職を兼任した〈桂 太郎〉の子孫である。
桂はクールさと色気を併せ持つ正統派イケメンだ。
「次は外務大臣だが、鎌倉幕府の利権を長くに渡って握っていた北条家の子孫である《北条 弥彦》!」
「は! 陛下に外務大臣を任じられた事に応えられるよう身命を賭して、この国に忠誠を誓います!」
外務大臣に選ばれたのは、鎌倉幕府を支えた北条家の末裔である《北条 弥彦》。
弥彦は色気と柔らかさを併せ持つミステリアスな男。
巷ではミステリアスでありながら、優しいと民からは人気のある人物である。
「次は大蔵大臣っ! 大蔵大臣には250年という長きに渡って内戦が無き世の中にした徳川家の末裔である《徳川 家末》!」
「はい! 徳川の末裔として恥じない働きをしていきたいと思っております!」
大蔵大臣に選ばれたのは、江戸幕府を開き250年も内戦を国から無くした徳川家の末裔である《徳川 家末》。
家末はふくよかで丸みのある体型をしており、メガネも相まって愛嬌のある見た目をしている。
「次は陸軍大臣だが、陸軍大臣には戦国時代に関東を巡って北条家とやり合い鬼とまで称された佐竹義重の末裔である《佐竹 寿重》!」
「おう! 陸軍大臣としてドンドン戦場に出て、選んでくれた陛下に恩返ししようと思っている!」
陸軍大臣に選ばれたのは、戦国時代に鬼とまで称された佐竹家の末裔である《佐竹 寿重》。
寿重は2メートルもある巨体に、濃い顔をしておりワイルドというのが似合う見た目をしている。
「次は海軍大臣だ! 海軍大臣にはロシアのバルチック艦隊を撃破し日本という国を勝利に導いた英雄〈東郷 平八郎〉の子孫である《東郷 喜代八》!」
「はっ! この東郷、祖先の名を汚さぬよう全力で努めさせて頂きます!」
海軍大臣に選ばれたのは、東洋のネルソンとして恐れられた東郷家の子孫である《東郷 喜代八》。
喜代八は190センチの高身長に、目が大きく威厳を感じさせるヒゲをしている。
「次は司法大臣だ! 司法大臣には甲斐の虎と恐れられ天下統一まで、あと一歩まで行った〈武田 信玄〉の末裔である《武田 宝入》!」
「ありがとうございます! 陛下に選んで貰った事は誉であり名誉な事です。しかしそれにあぐらをかかず、身命を賭して努めさせて頂きます!」
司法大臣に選ばれたのは、甲斐の虎として知られている武田家の末裔である《武田 宝入》。
宝入は武田信玄のイメージとは違う細身でありながら、大人の色気と端正さを持ち合わせた男だ。
「次に文部大臣だが、天下人である豊臣秀吉の右腕として活躍した黒田官兵衛の末裔である《黒田 葉仙》!」
「はい……頑張ります」
文部大臣に選ばれたのは、天才軍師として豊臣秀吉の右腕として活躍した黒田家の末裔である《黒田 葉仙》。
葉仙は細身でありながら華奢というわけじゃない体格で、眠たそうな垂れ目をしている男。
「最後は農商大臣と逓信大臣の2人だ。農商大臣には令和末期に頭角を表した曲道家の子孫《曲道 直夫》。逓信大臣には同じく令和時代に頭角を表し通信企業を立ち上げた望月家の子孫《望月 法都》!」
「誠心誠意、努めさせて頂きます」
「陛下のご期待に応えるべく役目を務めさせて頂きます」
農商大臣の《曲道 直夫》と逓信大臣の《望月 法都》の両名は昔からの家系ではなく成り上がり系の家系だ。
直夫は繊細さと知性を感じさせる静かな存在感を漂わせている男だ。
法都は大臣の中で唯一の20代で、透明感とナチュラルさを持っている柔らかい雰囲気の男だ。
全員の任命が終わったところで、春雷は玉座を立ち上がると手をパンッと叩く。
視線は一気に春雷に集まった。
「ここからだ、ここから国を獲りに行く……さぁ天下統一の時間だ」
『おぉおおおお!!!!!』
天下統一を目指し、春雷と臣下たちは反春雷同盟との戦争を始めるのである。




