プロローグ
プロローグ
2090年。
日本という島国は未曾有の危機を迎えていた。
未知のウイルスの蔓延、第三次世界大戦、少子高齢化、貧困格差、これらに伴う学力低下や技術レベルの衰退。
まさしく世紀末のような世界となった。
そんな中、日本の政を司る政治家たちは、国民の税金で酒池肉林の如くを尽くしていた。
こんな事が許されるわけがなくデモが起きる。
「こんなふざけた国にしたのは、お前たち政治家だろ!」
「お前らだけが楽をして、俺たちが苦しんでいるのは間違ってるぅ!」
「政治家を皆殺しにしろぉ!」
東京から始まった、このデモは日本各地へと飛火する。
最初はデモ行進や抗議をするだけで収まっていたが、次第に過激になっていく。
そして遂にある地方政治家が、日本国民に殺された。
その政治家は違法な売春や賄賂を受け取っているようなクズであり、許してはおけない人間だ。
しかしここまで暴力による死者は出ていなかった。
ここに来て出てしまったのは、日本にとって最悪なタイミングと言わざるを得ない。
これにより日本各地は暴力による革命が起きた。
鎮圧を目指すも、今の政治家に着いていく人間なんて皆無に等しい。
政治家が率いる正規軍と、日本国民による反乱軍の戦いは15年にも渡り日本各地で行なわれた。
それはそれは泥沼のような目も当てられない惨劇。
その際に他国の介入も見られたが、他国は日本を見限り介入する事を辞めた。
しかしここで1人の英雄が現れる。
それは正規軍の将軍でありながら、独自に軍を率いて各地の都市を回って反乱軍をまとめ上げた。
急いで正規軍は兵を整え、その将軍の討伐に向かう。
だが勢いでは反乱軍すらも手中に収めた将軍の足元にも及ばず、正規軍は大敗を喫する。
そしてそのまま将軍率いる混合軍は首都・東京に乗り込み、最後の戦いを仕掛けた。
これが後に〈大東京事変〉と呼ばれる。
15年にも及ぶ内乱を終わらせた将軍の名は《三ツ矢 春蘭》である。
この春蘭将軍は国民や部下から、空席となった日本国の新たな王になるよう頼まれた。
しかしそれを春蘭将軍は「いや! 自分より相応しいお方がおられる」と辞退する。
一体この方以上に相応しい人が居るのかと疑問を抱く。
その疑問を春蘭は「天皇陛下に実権を戻す!」と宣言したのである。
これには日本国民は「た 確かに……」と納得した。
「陛下っ! どうか、日本国民のトップとなり日本国の再建に尽力しては頂けないでしょうか!」
「春蘭、どうしてお前がそこまで……もう余には力など残っておらんぞ?」
この時の天皇陛下は、既に皇帝としての力を奪われて日が経ち過ぎていた。
いきなり国を回すように言われても難しいのが事実。
それを春蘭は分かっていたはず、それなのにどうして自分を王の座に推挙するのか。
全くもって天皇陛下は理解できなかった。
「陛下っ! この国は陛下、天皇家の物であるはずです! それなのに長くに渡り、腐敗した政治家が実権を握り天皇家を政から遠ざけていた……それは許されない行為だ! この国は陛下がトップでなければならないのです」
「それにしたって、いきなり余に政治は……」
「その心配はございません! 陛下が慣れるまでは、私が信頼する部下の中で最も優秀な人間を補佐として付けさせて頂きます! そしていずれは全権を陛下に戻すべく、私は目指していこうと思っております!」
あまりにも春蘭が必死に説得するので、天皇陛下は何も言えずに「うう……」と黙ってしまう。
というよりも天皇陛下としては、もう断るわけにはいかない状況なのだ。
全国民から絶大の支持を受ける春蘭。
そんな人間の頼みを断ったとなると、地に落ちている天皇家の尊厳が皆無となってしまう。
だから天皇陛下は「相……分かった」と答えた。
「ありがたき幸せ! そこでまずは天皇家の威厳を取り戻すべく、国名の変更を行なって下さい!」
「く 国の名か!? そうじゃなぁ……ならば国の基礎に戻るという意味を込め〈大和帝国〉でどうじゃ!」
「それは素晴らしい! さすがは陛下でございます! この春蘭、平服の極みにございます!」
そして2106年、日本の地に新たな〈大和帝国〉という国が誕生した。
その大和帝国の初代天威大将軍には春蘭が就任する。
物語は12年後に進む。




