ボーナスタイム
掲載日:2026/02/04
その日は突然訪れた。
「いつも通りだったのにね」
君の言葉に僕は頷く。
突然のことなのに君はすぐに仕事を休んでくれた。
幸いなことに君の会社は理解のある会社だった。
「上司の方が泣いてたよ」
「そうなの?」
「うん。なんかよくわからないけど、自分のときはそんなにしっかり受け止められなかったんだって」
「あー、なるほど」
「まぁ、普段通りにしか見えないしね」
「うん、本当に」
そう言いながら僕は自分の頭上に浮かんだ数字を見る。
「残り3時間を切ったね」
「うん」
「どう? 実感ある?」
「いや、それがさっぱり」
気恥ずかしくなるくらいだ。
だって、事故の原因だってほとんど僕の不注意だし。
「だよね。私もそう。だけど……」
君はそう言って走り書きのメモを見せてくれた。
事故の第一報を受けて書いていた走り書き。
そこに書かれていた僕の死と。
『ボーナスタイム 開始』
の文字。
ある日から始まった神様の細やかなサービス。
突然死した人が他の皆に会うことのできる優しい時間。
「ボーナスタイムだって」
君は笑った。
まだ受け止めることができないまま。
「他の言い方、ないのかね」
僕はいつも通りの返事をした。
少しずつ減っていく貴重な時間の中で。




