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第三話「トラウマとコンプレックス」④


 護送船の前を飛行する六芒小隊の飛翔艇のレーダーが、シエル・シャトーの信号をキャッチする。


「お、そろそろ着くな。フェリシー、カリーヌを起こしてやれ」


 運転席のエクトルが前を向きながら呼びかけると、助手席に座るアガットにずっとくっついていたフェリシーは素直に返事をした。そして、倒した座席に横になっているカリーヌの元へ向かう。解放されたアガットはよほど暑かったのか、手の平でぱたぱたと自身を仰ぐ。


「はは、お疲れ」


「ああ。まあ、今は仕方ないな。いつも遊んでいるカリーヌは寝ているしジョスランは別の船だし、ロイクはああ(、、)だしな」


 大人しく座っていることが出来ないのかというとそうでもないが、本日は帰り際にひと騒動あったためフェリシーも不安だったのだろう。飛び立つと騒ぎもせず一直線にアガットの隣に無理やり腰かけ抱きついてきた。そして、一度も離れることなく帰還に至る。


「ふぁぁ……。おあよーう」


 寝ぼけた声を出しながらカリーヌが大きく伸びをしてゆっくりと身体を起こした。ナテュールは元のタランがあるため、ノーマルの人間が武器関連のスフェールや外部出力タイプのスフェールを使うよりも消費は少なく済むものだ。だが、今回は広い範囲を浄化していたために飛翔艇に乗った瞬間カリーヌは倒れるように寝付いてしまった。療のスフェールは消耗するのが体力なので、深く眠るのが一番の回復方法なのだ。


「カリーヌ姉おはよう」


「おはようカリーヌ。よく眠れたか?」


 隣からフェリシーが、助手席からアガットが声をかけてくる。カリーヌは明るい笑みを返して座席を立て直した。


「うん。後は甘いもの食べれば完全回復だよ」


 さりげなく要求すると、エクトルが笑う。


「そっか、じゃあ帰る前に商店区寄ってくか」


 望み通りの返答を得たカリーヌは「やったぁ」とフェリシーと手を叩き合わせる。その様子を微笑ましく眺めてから、アガットは身体を反転させて視線の向きを変えた。


「ロイク、お前もいい加減戻って来い」


 声をかけられたのはカリーヌたちがいる側とは逆の座席列の一番後ろにどんよりとした空気を纏って座っているロイクだ。空気が重過ぎてフェリシーも近付けないほどである。気持ちは分かる、とここまで放置してきたのだが、流石にそろそろ立ち直ってもらわないと困る。


「――ん。ああ」


 気のない返事をするがロイクに持ち直す様子はない。アガットは座席に寄りかかって短いため息を吐き出した。


「度が過ぎたことをしたから叱っただけだろうが。普段の私の方がよほど強く殴っているぞ」


 ロイクが完全に悪くない、とはさすがにアガットも言えないが、慰める言葉に嘘はない。もしもロイクが叩いてなかったらまず間違いなくアガットが彼を殴っていただろう。それも、彼のような手加減はなく。


「……いきなり話を聞かずに手を上げてしまった。もしかしたら何か言われたのかもしれない。ジョスランがあれだけ激昂するのだから、相当な理由だったかもしれないのに。俺はイラついていたんだと思う。村人を宥めるのが上手くいかないのがもどかしくて。……あいつは、俺が落ち込んでいたのを慰めてくれたのに」


 ため息をつきロイクは両手で顔を覆い上半身を曲げる。完全に落ち込んでしまっているロイクの様子にカリーヌとフェリシーは困った顔を見合わせた。ロイクは力のナテュールで、ロボットと腕相撲をしても勝てるほどには腕力含めた力がある。


 ゆえにか、研究所に囲われている時から、人に無意な暴力を振るうことを嫌う傾向があるのだ。さらに年下。さらに前線に出ることも叶わないひ弱な相手。ロイクが決して手を上げるまいと思っていた対象ということは、ただでさえロイクの心を刺すのに、すぐに謝ることの出来なかった事実が一層彼を苦しめていた。


「それだけ気にしてるってことを素直に伝えて話し合えって。大丈夫だ、俺たちは家族なんだから。ジョスランもきっと分かってくれるよ。あれだよ、あの時はちょっと気が立ってただけだって」


 いつもとは役目が入れ替わり、エクトルが落ち込むロイクを慰める。気休めに近い言葉だが、アガットやカリーヌ、フェリシーまでもがそれに同意の声を重ねてきた。そこまでされて落ち込み続けるわけにもいかないので、ロイクはしばらくの間言葉を自身の中で咀嚼し、ややあって無理に笑顔を作ってみせた。


「そう――だな。分かった。戻ったらまずジョスランと話してみるよ」


 正直まだ気は重い。けれど話し合うことをまずは試さなくては。大丈夫だ、大丈夫だ、とロイクは何度も心の中で唱える。〝家族(ファミーユ)〟は、何度でもやり直せるから〝家族(ファミーユ)〟なのだ、と。


 ロイクが覚悟を決めたのを見て、エクトルとアガットは視線だけを交して笑い合い、カリーヌとフェリシーは顔を見合わせて笑い合った。早くジョスランと合流したい。兄弟共通の急く気持ちを抑えて、エクトルはついつい早くなりがちなスピードに気を付けながら見えてきたシエル・シャトーに向かう。


「ん?」


 しっかりと座席に座り直したアガットが不意に何かを気にしてレーダーに目を向けた。


「どうした?」


「いや、今護送船から飛翔艇が飛び出したみたいだったから――」


 今度は顔を窓に寄せて背後を気にするアガットだが、少ししてまた前を向いて座り直す。護送船は意外にアルカンシエルのメンバーが移動手段のひとつとして利用することが多いのだ。今回も確か他の隊を乗せていると護送官が言っていたので、恐らくそれだろうと判断した。


 だがその途端、飛翔艇の通信機が鳴る。タイミングのよさに六芒小隊がそれぞれ表情を変える中、エクトルが一度唾を飲み落として応じた。そして知る。絶望の時を。


『こちら護送船305号。六芒小隊殿、応答願います。ジョスラン・ファミーユ氏が研究員複数人を連れて飛翔艇で飛び去りました。そちらには何か連絡は入っておりますか? どうぞ』


 一体何が伝えられたのか。エクトルもアガットも言葉をなくしてしまう。すると、大股で駆け寄ってきたロイクが代わりにそれに応じた。


「こちら六芒小隊隊長ロイク。どういうことですか? こちらは何も聞いていない。詳細をお願いします。どうぞ」


 ロイクの返答に通信の向こうではざわめきが広がったようだ。急かしたい気持ちを抑えて、ロイクは護送官の次なる回答を待つ。すると、先ほどとは違う護送官が通信口に立った。


 護送官に曰く、ジョスランは「リーダーからの指令で別の場所に連れて行くことになった」と研究者たちを複数名連れ出し、飛翔艇に乗せたとのこと。その際疑問を覚えたのは、六芒小隊を知るこの護送官だった。ジョスランはまだ16歳。飛翔艇の免許は持っていないはず、と。気になり追いかけると、何故か運転席には解放された研究員が座っており、止める間もなく彼らは飛び出してしまった、と。


 今度はロイクまで言葉をなくす。ジョスランが脅された、という希望はすでに残されていない。何故なら最初に連れ出したのはジョスランだ。


「す、すぐに追いかけ――」


「待て兄さん。もう燃料が心許ない。護送官殿、アルカンシエルの飛翔艇なら軌跡は追えるな? すまないが追跡を続けてデータをこちらに送ってくれ。俺たちは一度戻り再度出撃する準備を整える」


 舵を切ろうとしたエクトルをロイクが留める。シエル・シャトーと村までで、すでにそれなりの距離を往復していた。六芒小隊の飛翔艇ではこれ以上の飛行は不可能だ。冷静な制止を受けて、エクトルはぐっと堪えて歯を食いしばる。


 その間に、要請を快諾してくれた護送官はすぐにデータを六芒小隊の飛翔艇に送ってくれた。画面に映し出されるその軌跡は真っ直ぐにどこかに向かっている。


 とにかく今は準備を整えなくては。ロイクたちは通信を切るとすぐにシエル・シャトーに搭乗した。そして一度船を下りると、見計らったように年若いエンジニアの一人が駆け足で近付いてくる。


「おかえりなさい皆さん。すぐに司令室へ来るように、とのリーダーからの連絡が入っています」


 補給が終わればすぐにでも出撃したかった六芒小隊は計ったように同じタイミングで苦い顔をした。だが、リーダーの呼び出しに応じないわけにはいかず、エンジニアたちに簡単な整備だけを依頼してすぐに司令室へと向かう。緊急時にのみ使える複数の経路をあちこちに待機していた司令部の構成員に案内され、五人は十分としないうちに司令室へとたどり着いた。


「六芒小隊入ります」


 中に入ればリオネル、ナタリー、護衛たち以外にもギデオンや古株の構成員たちが顔を揃えている。こういう事態におけるアルカンシエルの連絡網の完備具合は舌を巻く。


「おう、おかえり六芒小隊。どこから話すかな。今ジョスランの裏切り以外にも立て込んでて忙しいんだよな」


 リオネルがいつもの笑顔で迎えてくれた。心を抉る言葉すらその笑顔でさらりと告げられ、エクトル、アガット、ロイクは揃って顔を歪める。しかしカリーヌとフェリシーは同時に表情を怒りに変えて怒鳴った。


「リーダー、裏切ったなんて言うのやめてください!」


「ジョス兄はそんなことしないもん、リーダーの馬鹿っ」


 ジョスランの行動が彼の真意でない、と信じてやまない妹たちを慌ててエクトルとアガットが押さえ込んで、ロイクがその前に出る。


「し、失礼しました。あの、何が起こっているんですか? 可能でしたら俺たちはすぐにでもジョスランを追いかけたいのですが……」


 ロイクが周囲をひと通り見回してから尋ねた。これだけの面子が揃っている以上、決して簡単な話ではないことは理解出来ている。だが、「可能なら」と言いつつもロイクが願うのはジョスランを追いかけることばかりだ。それが手にとって分かるので、ナタリーが応じて彼の質問に答えた。


「あなた方には秘密にしてきましたが、11年前例の施設を閉鎖に追い込んだ後から、アルカンシエルには『おかしな研究所を潰してくれ』という依頼が頻繁に入るようになりました。それらの施設に共通しているのは、スフェールやナテュールの研究施設であり、生命倫理に背く研究を繰り返していることです。そしてそれらの研究所の多くは、例の施設で元々働いていた研究員を擁していたのです。もしかしたら、あなた方が今こなしてきた仕事にもいたのかもしれません」


 気を遣いながらもはっきりとした口調で説明され、ファミーユ兄弟はそれぞれがそれぞれ目を見開いたり苦い顔をしたり眉を歪めたりと様々な、しかし嫌悪一色の表情を浮かべる。ギデオンと、古参たちや護衛たちの一部が引きずられて似たような顔をする中、ナタリーは言葉を続けた。


「今騒ぎになっているのはジョスランさんのことだけではありません。以前に捕らえた者の一部が、例の施設に関してよくない情報を喋ったからです」


 よくない情報。ロイクは心臓を苛めてくる単語に冷や汗を流す。鼓動はどんどんと大きくなっていき、呼吸も少し浅くなった。それでも耐えていると、一呼吸開けてナタリーの唇が動く。


 しかし、それに被って突然大型モニターに映像が映し出された。


『リーダー失礼します。例の施設の地下から次々にキメラが出てきています。コールドスリープの装置が本当に壊れたようです』


 慌てた様子の報告がされると、遅れてその映像が流れる。そこには地面に開いた大きな穴と、そこから次々に出てくる大中小の異形の生物たちが映し出されていた。音声は伝わってこないが、空に向かって吠えているものや隣のキメラに唸っているように見えるものもおり、中には腹が減っているのか近くにいるキメラを食い始めるものもいる。


 言葉をなくして映像を見ていると、リオネルがナタリーの言葉の跡を継いだ。


「あの施設の地下深くに秘密の研究室があったらしくてな。そこには多くのキメラがコールドスリープしていたそうだ。だが、手入れも何もしなくなったためにそろそろ装置が壊れるかもしれない、と言い出した。――真偽はまあ、見ての通りだな。ということで、手が空いている隊はこの処理だ。もちろん、お前たちもだ。裏切り者を追いかけてる場合じゃないだろう?」


 笑顔の問いかけに、エクトルたちは言葉を無くす。リオネルは朗らかで親しみやすい人物だが、同時に規律に厳しい人物でもある。その彼にとって、犯罪者を逃がしたジョスランはもう裏切り者なのだろう。


 かの研究室の周囲は、撤去される前までは人がいても少ない未開発地域だった。だが撤去後は徐々に栄え、今では過去に比べ物にならないほど人がいる。すでに飛び立っている隊がいるだろうし、住民に非難連絡は入れているだろう。それでも画面に映るキメラの量は、ロイクたちが私情を優先するのを憚られるほどに多い。


 ファミーユ兄弟が視線を落として葛藤する様子を、リオネルはじっと薄い笑みを浮かべて眺めていた。その彼のナタリーはじろりと睨んでいるが、何も言わない。ギデオンや他の者たちも黙ったままだ。


 重苦しい沈黙が落ちる中、一度瞼を深く閉じたロイクが瞼を開くのと同時に顔を上げる。その眼差しは、怖じずに、まっすぐに、リオネルを強く貫く。


「申し訳ありません。俺たちはジョスランを迎えに行きます」


 はっきりと告げられた言葉に、エクトルが、アガットが、カリーヌが、フェリシーが、顔を上げてロイクに視線を向ける。リオネルは面白いものを見るように目を細めて首を軽く傾けた。


「――自分が言っていることが分かっているのかロイク? あいつが裏切ったのは俺じゃない。アルカンシエルであって、六芒小隊だ。分かるか? あいつはお前らを切り捨てたんだぞ? 兄弟だからと情けをかける範疇か?」


 重ねられる問いかけに、ロイクは視線を逸らさないで応じる。


「兄弟だからこそ迎えに行くんです。俺たちは、あいつが何を悩んでいるのか、何を思っているのか、何も分かってやれなかった。もっと本気で話せばよかったのに、傷付けるのも傷付くのも怖がって、中途半端に済ませてきた。あいつが裏切ったというなら、俺たちだってあいつを裏切っているんだ。だからこそ迎えに行きます。それで罰を受けるなら全員で受けます。ここを追い出されるならそれも受け入れます。俺たちは、六人揃ってはじめてファミーユ兄弟になるんです」


 背を向けるべきではなかった。彼のナイフの言葉を、知らないうちに自分たちが彼に同じナイフを向けてしまうことを、恐れるべきではなかった。〝先生〟だったらこんな無様なことにはならなかっただろうと思うと情けなさと心細さすら浮かぶ。だが、後悔は今するべきものではない。ロイクたちにはまだ出来ることがあるのだから。


 ロイクの揺るがない言葉を受け、兄弟たちも同じような強い眼差しをリオネルに向ける。


「リーダー、お願いします。ジョスランを迎えに行かせてください。私たちは、六人でようやく私たちなのです」


「償いは何でもします。だから行かせてください。あいつは、俺たちの弟なんです」


「みんなが揃わないと、私たち駄目なんです。お願いしますリーダー」


「フェリシーやだっ。ジョス兄いなくなるのやだ! リーダーお願い。フェリシーもごめんなさいいっぱいするから、迎えに行かせて」


 それぞれに思いの丈をぶつけるファミーユ兄弟に、ギデオンは鼻をすすり、古株たちは好もしいものを見るような目を向けた。その中で、リオネルは目を伏せる。リーダー、何度目かの強く、せつない呼びかけを受け、不意に彼は視線を上げた。そして、今まで浮かべていたものよりもずっと温かく穏やかな笑みをロイクたちに向ける。


「よく言った」


 耳によく響く声が褒め言葉だと気付くまでに、少しの時間を要した。言葉が告げられず呆然とするロイクたちの目をそれぞれ見つめて、リオネルはさらに口を開く。


「それでいい。もしもジョスランを放っておくなんて言ったら、それこそ追い出すつもりだったぞ俺は」


「あれだけ素のように脅されたのに折れなかったのだから、たいしたものですよ」


 それもそうだな、とナタリーに笑い返すリオネルを見て、ロイクはようやく試されていたことを理解して身体の力を抜きかける。だが、続いて視線を向け直され再び姿勢を正した。リオネルはにっと笑む。


「さ、行って来い六芒小隊。六人で戻ってきたらたっぷり罰を用意しておくから、覚悟しておけ」


 最高の贈り言葉を受け、エクトルは、アガットは、ロイクは、カリーヌは、フェリシーは、真剣な表情で返事をした。


「はいっ」


 五つの声が重なると、それを契機に司令室の中も動き出す。状況を見守っていた古参たちも動き出し、廊下に出れば多くの者が慌ただしく動き回っていた。


 格納庫まで着くとそれまでの比ではない騒々しさで、出撃する隊が順番待ちをしている。優先的に飛び立てるよう非常用レーンが一つ六芒小隊に回されているらしく、ロイクたちはそちらへと向かった。すると、慌ただしい声で呼び止められる。


「ロイクッ、ちょっと待った。すぐ済むから」


 駆けて来たのは鉾楯兄弟。エクトルは放っておけと言うが、焦って呼び止められたのなら無視するわけには行かない、とロイクは少し道を戻った。


「マクシム? どうしたんだ?」


 眼前まで近付いて問いかけると、アレマン兄弟はちらちらとお互いを見合い、早く喋れというように押し付け合っている。いつもなら待ってもやれるが、すぐにでも出撃したいロイクは少し困った顔をした。


「すまない二人とも、今は忙しいからすぐに話せないなら後で――」


「あーっ、待て待てロイク。重大なんだって。これ」


 ロイクが背中を向けそうになったのでスティードが慌てて彼の首根っこを掴んで引き止める。喉が絞められ一瞬咳き込みそうになるが、それでも耐えて振り返り、ロイクは差し出された物を受け取った。


「……俺たちの、エンブレム……?」


 一体どこで。視線で問いかけると、今度はマクシムが意を決したように話し出す。


「俺らさ、あの護送船乗ってたんだよ。それで、ジョスランとも一緒だったんだけど、俺らいつもの調子でからかっちゃってさ。そしたらそれを投げてきて。探してる間に飛び出しちゃうしよ。ごめん、多分最後の蓋切ったの俺たちだ」


 マクシムが素直に頭を下げると続けてスティードも「悪かった」と頭を下げてくる。ロイクはその二人を見据え、続けてぐっとエンブレムを握り締めた。


「いや、俺たちだって同じだ。正直に話してくれてありがとう。もしよければ、ジョスランが帰って来た時には迎えてやってくれ。それじゃあ」


 偽りではない笑みを作り、ロイクは今度こそ鉾楯兄弟に背中を向けて兄弟たちの元へ駆け出す。力強い是が返されると、背中が押されたように足取りが強くなった。


「待っていろ、ジョスラン」


 すぐに迎えに行く。言外に意志を込めた言葉が呟かれる。それから少しして、シエル・シャトーからは六芒小隊の飛翔艇が緊急灯をつけて飛び立った。



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