交流
デデーンと音がするぐらいの仁王立ちで俺はいま、朝靄の中、城の前にひとり立っている。
ちょっと二日酔いのような気もするが、とにかく寝ていられない。
というのも、今日は大陸殿下会の最終日で午前中に城下に視察に行って我が国の最新技術をお見せし、そのあとは希望者のみ、その近くの景勝地に寄って見学、昼食後は解散となる。
もちろん、視察はせずに帰路を急がれる殿下もおられるので、早朝からこのように送り出すのだ。
城の前にはズラリと殿下方の馬車が所狭しと並ぶ。
城にありがちなのだが、我が国の城も御多分に漏れることなく山の上に築城されているので城の敷地に平地が少なく、僅かな平地が取り合いとなる。
そして、馬車の展示会のように様々な馬車が並ぶ訳だが、これが面白い。
皇太子殿下の馬車と言えば…
想像してみてください。
いま、素晴らしい彫物を飾ったピカピカ豪華絢爛な馬車を想像しましたね。黄金色とか想像しました?(さすがにかぼちゃの馬車を想像した方はいないと思いますが)
多くの方は皇太子殿下の馬車ともなれば、そのようなピカピカの馬車を想像されますが…
でも実際は違う。
陛下が使用するのではなく、「皇太子殿下」で国のナンバー2が使用すること、豪華絢爛な馬車は良くも悪くも目立つため襲われやすいこと、そして豪華絢爛であっても移動するだけの用途の馬車に税金を注ぎ込めないことなどから、とにかく「展示会」というよりは「博覧会」みたいに古く懐かしい型の馬車が並ぶのだ。
一昔前に大陸全土で流行った馬車や、まだ動いているのかと驚くような歴史的価値のある古いもの、独自の改良を加えた改造車等、そんな訳で豪華絢爛な新車に乗ってくる皇太子殿下は皆無だ。
それに馬も見ものである。
各国それぞれの気候や風土で独自の進化を遂げた馬達が見られる。
大きくて筋肉ムキムキの馬、俺の同期のクリフ殿下の国ように寒さの厳しい所からは、足が短いどっしりとした馬等、馬専門の動物園に来たようだ。
ここはさすが我が国の生物学者集団。
この絶好の機会を逃すまいと、昨日の皇太子殿下ご到着後から、馬のスケッチをする者、御者に馬のお世話の仕方や特徴を聞く者、学者達は研究のために目を爛々とさせている。
しかし、馬車の修理等を扱っている我が城の馬車管理室も黙ってはいない。
こちらも馬車をスケッチしたり、修理や点検を嬉々としてお手伝いして、技術や腕を披露し合ったりと、こちらも交流していてとにかく皆が楽しそうなのだ。
こんなところでも交流が広がっているなんて、すごくないか?
この光景を目にした時、今回しみじみ、大陸殿下会の開催が当番国に当たって良かったと思ったのは、ここだけの話だ。




