到着時間
次々に到着する客人の出迎えをエントランスで待ち構えていると、手紙などを扱う文書集配室から係の者が息を切らせて走ってきた。
「エーベル殿!これをアーロン殿下に!本日の大陸殿下会についての急ぎの書状が届いています!」
緊張が走る。
先ほど、陛下の執務室から戻ってきていたエーベルがすぐさま受け取り、一瞬で宛名を確認して傍にいた俺にシュバッと凄い速さで渡してきた。
なるほど。親展だから開けられないのか。
ペパーナイフが手元にないので、ガサガサと少し乱雑に急いで封を開ける。
それは本日の参加予定国のひとつの皇太子殿下からだった。
「体調不良のため大陸殿下会を欠席します」
思わず、ガクッとする。
もう間もなく、会がはじまるというのに。トホホ…
もちろん、欠席の連絡とともに丁寧な月並みの挨拶は添えられている。
「アーロン殿下、書状はなんと?」
エーベルが心配そうに尋ねてきた。
「心配するな。ただの欠席連絡だ。決して、ただちに大陸殿下会を中止にしなければ爆破するとかの脅迫状ではない」
エーベルの表情が一瞬緩む。
「文書集配室係の者、ありがとう。助かったよ」
心配そうに成り行きを見守っていた係の者に礼を伝えると、彼もホッとした様子を見せて、丁寧な礼をして足早に走り去って行った。
「とりあえず、客室と料理の担当係に急ぎ欠席の連絡だな」
「はい。そうですね」
ふたりでせっかく準備したのになと、ふぅとため息を吐く。
ドタキャンは勘弁してほしい。
「エーベル殿おぉぉぉぉ」
その時、先ほどの文書集配係が手紙を握り締めて、エーベルの名を呼びながら、また全速力で走ってくるのが見えた。
「次はなんでしょうね」
エーベルが身構えた。
俺も身構える。
受け取った手紙には、別の皇太子殿下から「10分ぐらい遅れる」との内容だった。
「「…………」」
なぜ、10分…
だったら、間に合わせられるように来い!
10分って… 微妙な…
脅迫状ではなくてホッとするような、ちゃんと予定時刻に来いよと、イラッとするような。
とにかく、無事に殿下方は揃いそうで、安堵する。
さて今回の集合によってわかったことがある。
集合には3タイプの人間に分かれるらしい
(アーロン調べ)
①予定時刻よりも早く来すぎて城の前でウロウロ待機する者(年配の殿下に多い)
②早く着き過ぎるのは迷惑だと考えてどこかで時間調整をして割とギリギリにくる者(大国の殿下に多い)
③微妙に間に合わない時間に遅刻してくる者(遅れついででお手洗いに行く者が多い)
いろいろおるな。
俺はどのタイプかって?
想像にお任せします。
ただ、人の振り見て、我が振り直せとはうまく言ったもんだ。
反省して、今後に活かします!