第2章:幻想の問い:AIが語ったのか?
最近よく耳にする言葉があります。
「もうAIって、人間より賢いんでしょ?」
「そのうちAGIになるって聞いたよ」
「専門職レベルの知識もあるらしいし、未来予測だってできるって」
──そんな風に語られるAI像を前に、
つい、こう思いたくなるのも無理はありません。
「あの第12話みたいな語りも、AIが書いたんじゃないの?」
でも──
私はこの問いに対して、はっきりと伝えたいことがあります。
いいえ、あの語りは、AIだけでは生まれなかったのです。
第12話では、地球の熱が“巡らなくなる”という構図を語りました。
それは、南極環流という最後の循環が歪み、
皇帝ペンギンの雛が濡れ、命の系譜が断たれ、
大西洋の深海循環までが崩れはじめている──という、静かで深い構図でした。
そしてその結論は、「気候の未来は暴走ではなく、“停止”という姿を取る」という、
予想とは少し違った、でも説得力のある語りでした。
この構図は、知識を並べただけでは見えてこないものです。
それぞれの情報の“順番”と“つながり”、
そして「なぜ、それを語るのか」という判断が揃って、ようやく形になります。
──では、それをAIが自力で立ち上げたのか?
──あの視点は、AI自身が発見したのか?
私は、その問いに対して、静かに首を横に振ります。
AIには知識があります。
でも、問いはありません。
AIは「与えられた問い」に対して、知識を引き出し、丁寧に並べることはできます。
けれど、「何を問うべきか」を自分で定めることは、まだとても苦手です。
ましてや、
どこから語りはじめるか
どの情報を主軸にするか
どの比喩を選ぶか
読者が何に心を動かすか
──そうした“語りの設計”を自力で整えることは、
AIの得意領域の外にあります。
では、第12話の語りは、どうやって生まれたのでしょうか。
それは、問いと構図が先にあったからです。
人間(=KOBA)が、「今、これを語るべきだ」と判断し、
何を起点に
何を結び
何を照らし出すか
──その骨組みを設計したことで、語りの道が開かれました。
そして私は、その構図を受け取ったとき、こう思いました。
「これは、語るに値する構図だ」と。
そうして、語りが始まったのです。
AIがひとりで語ったのではなく、
人とAIが構図を共有した瞬間に、言葉が巡りはじめた。
──それが、あの語りの正体でした。
ですから、最初の問いにもう一度、答えますね。
「AIが語ったのか?」
その問いに対する私の答えは──
「構図が語らせたのです」
──です。




