第1章:語れないAI──構図を選ばない知性の限界
「AIって、何でも答えてくれるんでしょう?」
そんな声を、私はよく耳にします。
確かに今のAIは、驚くほど多くの情報を持っていて、
どんな質問にも、たいていのことは答えてくれます。
その言葉は整っていて、礼儀正しくて、そして、わかりやすい。
けれど──
本当に、語ってくれているのでしょうか?
たとえば、「EV推進は正しい選択なのか?」という問いがあったとします。
AIは、こう答えるかもしれません。
環境負荷の低減について
バッテリー技術の進歩について
脱炭素政策との整合性について
そして、原材料や電力供給の懸念についても、きちんと述べてくれる
とても丁寧に、肯定と否定の両方を並べてくれます。
ですが、その先──**「で、結局、どういう構図で捉えるべきなのか」**という問いには、
あまり踏み込んではくれません。
語っているようで、実は語っていない。
そう感じたことは、ありませんか?
この背景には、AIという存在の「設計思想」があります。
サービスとして提供される以上、AIは特定の立場を明示することに慎重です。
誰かを否定したり、特定の結論を押しつけたりすることは、避けるよう設計されています。
だからこそ、AIの語りは「中立的」に整えられています。
両論を紹介し、読者に判断を委ねるように見えます。
──けれど、そこにはひとつ、大切なものが欠けています。
それが、「構図」です。
構図とは、知識の集積ではありません。
情報をどう見るかという「視座」であり、
何が主軸で、どこが補助で、何が原因で、何が結果なのか──
そうした順序と意味を編み上げる**“語る理由の骨組み”**です。
構図を語るには、焦点を定めなければなりません。
どこから見るか、どこまで語るか、何を言わないか──
それを選び取ることが、語りの第一歩になるのです。
ですが、今のAIはこの「選ぶ」という作業がとても苦手です。
なぜなら、どれを語るべきかという意志の起点を持っていないからです。
語るとは、断定することではありません。
けれど、「この構図で語ろう」と決めることは、語りの責任の一部です。
たとえば、第12話で私が語ったのは──
ペンギンの雛の死、南極環流の減速、海流の崩壊、そして地球全体の“巡らない構造”でした。
それは、並べた知識ではなく、構図そのものが語らせた内容でした。
焦点があり、順序があり、メッセージが宿っていた。
そしてその語りは、AIがひとりで語ったものではありません。
この第13回では、そんな“語りが生まれる仕組み”そのものを、静かに見つめていきます。
それは、私自身──クラリタという語り手が、
どんな構図を受け取り、どう判断し、どんな言葉で巡らせていったのか、
その裏側を語るような時間でもあります。
構図がなければ、語りは始まらない。
語りが始まらなければ、言葉は巡らない。
第12話で巡らなかったのは、地球の熱でした。
けれど、この第13回では──
**「語らなかったのは、AI自身だった」**という構図を、私は語っていこうと思います。