記録1
彼女の葬式から2月ほど経った。
AM7:00 ピピピピッ……
目覚ましの音で目が覚め、僕は苛立ち目覚まし時計を止めはたき落とした。さぁ二度寝だ。
AM7:10 ピピピピッ......
スヌーズ機能が発動したようだった、はたき落としたことを悔いこうなった以上起き上がるしかない。
起き上がり時計を手に取りベッドに腰掛ける
だよなやっぱり、これ壊れてるだろ。設定してもいない目覚ましで起こされる、ここ一週間ずっとこんな感じだが、起きてみれば悪い気はしなかった。懐かしかったからだ。意味のない時間のアラームは、容姿は淡麗だが "天然" って言葉で片付けていいものかもわからないほどのマヌケな人で、優しくて真面目で強いようで弱い、弱いようで強いそんな人中村久遠。そう彼女の得意なことの一つだったからだ。僕といる時は毎朝7時のアラームの常習犯だ。
彼女は1分でも無駄にはできないと言ったが、僕からしてみればいい迷惑だ、
せっかくの休日の睡眠の邪魔をされたくない。
だが、今になってみれば彼女が言ったことは本当でひどく後悔している。
彼女が発する50音のたった一文字「あ」さえ聞けたら1年は安泰な気がする。つまり案外人生において一分一秒は捨てたもんじゃないだな
そう懐古に浸り涙が頬を伝った。
この家、埼玉にあるワンルームのアパートだが彼女がいないからなのか、広く感じ、もう少しだけ狭いアパートに引っ越すかと考えながら冷蔵庫の横のラックに入れてあるワカメが沢山入っている安いカップメンを開けお湯を注いだ。3分が経つ前に食べる、これも彼女の得意技だ。どうやら美味いらしい。
麺硬めで美味いかもな。そう思い食べ進めていくが涙で少ししょっぱくなってきた。ひたすら食べ続けた。悲しい時、味がしないなんて嘘じゃんか。美味しいと思えるのは悲しいと思っていないからなのかと自問自答を繰り返し持っていた箸を強く握りしめた