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 Side=オルト=ゴウ∥Beginning∥『Reload』



 辺りを警戒しながら森を抜け、『アスリトン』国境付近の荒れ地で少し休む事に。

 焚き火をしながら先程森で狩った動物を焼いていた。


 それにしても、彼は見た目と違ってちゃんと鍛えているみたいだな。

 背負っているだけで解る。決して触った訳ではありません。


 さてと、まずは色々お話をするべきかな。この女性と。

 チラッと目の前で彼の事を心配そうに見つめる女性を見る。


 淡い水色の様な髪。碧色の瞳。

 そこで今まで暗闇で見えなかったが、彼女の来ている鎧の胸に書かれたアレは。


 考えても無駄だな。聞けば良いんだ。

「そう言えば、まだ私の名前言ってませんでしたね。私の名前はオルト=ゴウと言います」


 俺はそう言い、座りながら軽く頭を下げる。


「あっ、私は・・・・・」

 女性が自分の名前を言おうとして、詰まる。


 どうやら俺の考えはドンピシャな様だ。

「大丈夫ですよ?貴女が誰かはその胸に書かれた薔薇を見て解りましたから」

 焚き火に木の枝を投げながら言う。


「そう、ですか。・・・私の名前はキュキュシュと言います」

 そう言い、キュキュシュさんが頭を下げる。


 だが、表情が警戒しています。と言った様な感じだ。

 そりゃぁ、そうだ。薔薇を見て直ぐさま彼女が誰だか解ったと言う事は、少なくとも他国の人間しかもどっかの部隊や軍に所属している人間に限られる。


「警戒をするなって、それは少し無理があるかもしれませんね。ですから、私も自分の所属している部隊の名前を教えます」

 まずは立場を対等にしなければ、彼の事など聞けない。

「私は『シャクリード』の『黒い討伐隊』の隊員です」


「!!?」

 彼女は俺の顔を凝視する。


 軽く苦笑する。

「そんなに吃驚しますか?キュキュシュさんだって『ローズ』の『勝利を約束する女神』ですよ?私的には其方の方が驚きです」


「・・・では、先程兵士達は?」


「そうです。彼等も『シャクリード』の兵士ですよ」

 キュキュシュさんは現在『アスリトン』の人間だが、この状況を考えても『アスリトン』と現段階でも繋がっている様な気がしない。


 それに、彼自身がどっかの国に所属している人間ではない筈だ。

 そんな彼と一緒に居ると言う事は、逃げてきたのか?


「『黒い討伐隊』の隊員の一人が、何故?討伐目標がこの近くに居るのですか?・・・いや、先程の兵士達は黒い鎧を着ていませんでしたね。と、言う事は今から戦場に?」

 疑う様な目で尋ねてくる。


 やっぱり警戒は解けないか。解っていた事だけど、少し残念だ。

「えぇ。その通りです。私達『黒い討伐隊』は戦争をしに向かっていました。・・・『アスリトン』へ」

 そう俺が言うと、空気が変わる。


「『アスリトン』へ?何故こんな時に?」

 今のキュキュシュさんのリアクションで解った。やはり彼女は逃げてきたらしい。


 普通、もっと驚く筈だ。

 それが、あまりにもリアクションが薄い。


「理由は解りません。上からの命令でしてね。私達の様な減兵士はそれに従うだけでして」

 『黒い討伐隊』と大層な名で呼ばれようとも、結局は一端の兵士だ。


 階級も無ければ地位も発言力も無い。

 隊長の様に実績と実力を認められれば多少の待遇は良くなるだろうが。


 それでも上が「戦争をする」と言ったらそれに従う。

 それがおきまりなのだ。


「まぁ、私は元々戦争反対派でしてね。まぁ、討伐と言うのも人殺しですけど」

 言っていてその矛盾に気付く。いや、気付いている。


 違いは大勢殺すか数人殺すかの違いだ。

 無関係な人間。これを引き合いに出すのは詭弁だろう。


 結局は、人殺しなのだ。


「・・・何でサヤさん・・・彼を?貴方の様子からして、正体に気付いていると思うのですが?」


「まぁ~何て言いましょうか。言葉では説明は難しいのですけど、何となく彼にはまだ生きて欲しいだけでして」

 明確な理由が無い事に自分が吃驚している。


 だが、矢張りどうして助けたとかどうして彼を見つけて嬉しく思ってしまったとか、説明出来ない。

 何かがある。それ以外に無い様な気もするし、実は理由が合ってそれに気付いて無いだけなのかもしれない。


「生きていて欲しい・・・ですか」

 キュキュシュさんは彼を見つめながら呟く。


 彼女の表情を見て、彼に目線を落とす。

 何かがあったらしい。外面的な事では無く内面的な所で。

 此所で彼ではなく彼女に尋ねるのは野暮だろうか?


 それでも気になってしまう。

 ・・・いや、もうこの際は彼が起きるまで待つ方が良いだろう。


「・・・この後どうなさるので?」


「この後ですか?・・・サヤさんによると思います。私自身果たしたい事と言いますか、会わないといけない人達は居るのですけど、『シャクリード』が『アスリトン』へ向かっているなら今行ったら確実に巻き込まれますし。だからサヤさんが起きたら決めます」


 それじゃぁ、暫くは休みか。

 それも悪く無いな。・・・問題は隊長が怒ってないか、だな。

 まぁ、隊長と会わなければ良いだけなんだが。何となく彼が起きてしまったら隊長に会ってしまう様な気もする。


 どうしようか・・・・。


パチッ――――。


 焚き火の木が軋む様な音を鳴らしながら、灰へと化した。



 Side=オルト=ゴウ∥Out
























 Side=第三者∥Beginning∥『Reload』



 『アスリトン王国』城内。


 サヤが起こした騒ぎでの負傷者で城内は溢れていた。

 救護班が走り回り、傷を負った兵士が悲痛の叫びを上げる。


 そんな中、モネ=アファは廊下の隅でその様子を眺めていた。

 この状況で何もしないのならば、場違いなのだが彼女は文官のしかも権力を持つポストに立っている。そんな彼女に一端の兵士が何かを言える訳がない。


 その為、彼女の存在は在って無い様なモノになっていた。


 モネは無表情で廊下の惨事とも言える状況を見つめている。

 だが、内心焦っていた。


 まず1つはベルワー=ミニッツが自身のモルモットを使った事。

 もう一つは先程独房に入った瀕死のキャサティアの事。


 そして、もう1つ。それはベルワーが地下水路から運んで来た一人の男。

 その時のベルワーの表情をモネは忘れる事が出来なかった。


 狂気に紙一重の笑み。まるでサプライズを受けた子供の様な、純粋な笑みとも言えるあの表情が。


 あの男が誰か。そして、あの男が何をもたらすのか。

 ベルワー達が考えていた計画にはキュキュシュが不可欠だと思っていた。

 だが、あの時のベルワーの表情からは差ほど気にしていない様な気もする。


 そこでモネは仮説を立てる。

 もしかしたら、あの男はキュキュシュの代わりになるのかもしれないと。


「・・・・チッ」

 モネは小さく舌打ちをする。

 外見的には気品が溢れているモネは、誰かに見られている可能性を考えずに顔を歪める。


 モネの計画では、『ローズ』を逃がし反王族派の計画を潰す。それが第一段階だった。

 だが、この状況ではその後者が潰せずにいる可能性が高い。


 だが、もしそうだとしてもどうする?

 現段階でモネ自身が出来る事は少ない。

 そんな中で下手に行動して失敗したら後の祭りだ。


 ・・・まずはキャサティアか・・・。


 モネは一旦考えるのを止める。

 これ以上の考えは無駄だと思ったのか、顔を上げ歩き出す。

 外れかけた歯車を修正する為に。







Scene→Change







 暗い空間。

 蝋燭が数本灯ってはいるが、まったく効果が無い。


 その暗闇に呑まれた空間で、ベルワー=ミニッツは笑みを浮かべていた。

 得物を見つけた獣・・・否、それは違う。今のベルワーは獣ではない。それ以上に質の悪い。


 獣なら喰って終わりだが、ベルワーは喰わず得物を活用しようとする。


 人間。そう、彼は人間だからこそ質が悪いのだ。

 彼が思考も感情も持たないただの獣ならば、喰って終わりだろう。


 けれども彼は人間だ。自身の得物をどう自分に有益に使えるか。それを考える事の出来る生物。

 ベルワーは玩具を与えられた子供の様に、笑みを浮かべる。


「ククク・・・キュキュシュが逃げ出して一時どうなるかと思ったが、まさかオリジナルに出会えるとはな」

 そう言いながら、ベルワーは机に散乱した紙を1つ掴む。


 その紙に目線を落としながら続ける。

「お前の事は紙の上でしか見た事がなかった。しかも大雑把な特徴しか書かれていない人物像。私も良くそれだけで、お前を一目見ただけで気付いたものだ」


 ベルワーは手に持っていた紙を放り投げる。

「・・・オリジナルにして唯一の完成体。10号。ニック=ベルディア。いや、今は『創造の槍使い』バティフォーリ=ケスティマだったか?」


 ベルワーはニヤリと笑う。


 そして、机の上に散乱する紙。その中の一枚に書かれた言葉。


『漆黒の一日』


 全てが外れる。

 噛み合っていた歯車が―――軋み外れていく。

 まるで、何かの終わりを望んでいる様に――――・・・・。







Scene→Change







 男は馬車に乗りながら空を眺めていた。


「兄ちゃん!兄ちゃんは一体あんな所に何の用で?辺鄙で何も無い所だぜ?」

 手綱を持つ年寄りが尋ねる。


「用はもう終わってるんだよ。これから少し観光でもってな」

 男は目を瞑りながら答える。


「観光?あそこには何も無いぜ?それにあそこは『テルスト王国』の領土だ。ゲートやらの警備とかで入国が厳しいでさぁ。それなのに観光かい?下手したら捕まりますぜ?」

 年寄りが大して心配もしてないのに尋ねる。


 男もそれを解っているから適当に説明する。

「誰も『テルスト王国』を観光するとは言ってないだろ?あそこら辺は自然が豊かだからな。戦争中でもそのゲート管理とかで何処も攻撃せずの不干渉の国だ。少し喧騒から離れて静かに観光したいだけさ」


「物好きな方だなぁ~」

 年寄りは笑みを浮かべる。


 金さえ払ってくれれば、お客様。その様な商売人だ。

 下手に怒らせて金を払ってくれなければ損。それならば下手に追求しない。


「あっ、少し尋ねても良いですかいな?」

 年寄りが空を見上げながら尋ねる。


「ん?答えられる範囲なら答えてやるぞ?」


「いや、ね。兄ちゃんから血の臭いがしてねぇ~兵士かと思って」

 年寄りは頬をポリポリ掻きながら苦笑する。


 それを聞いて、男は黙る。


「いやいや!!答えずらいなら答えなくとも良いですさ!少し気になっただけで」

 年寄りは慌てて叫ぶ。


「いや、良く解ったなと思ってな」


「それでしたら―――」

「だが、不正解だ。俺は兵士じゃないからな」


 年寄りの言葉を遮り、男は言う。


「んじゃ、兄ちゃんは何者で?」

 結構ズカズカと尋ねてくる年寄り。


「・・・旅人だ。血生臭いな」

 男も嘘と本当を織り交ぜながら答える。


 年寄りは黙る。

 そして、今度は男が年寄りに尋ねる。

「それじゃ、アンタは何者だ?血の臭いとかに敏感って事はアンタも兵士とかだったのか?」


「兵士じゃなく傭兵ですがね。剣一本あれば何でも出来ると勘違いしていた大馬鹿野郎でしたさ」

 年寄りは苦笑しながら答える。


「ふぅ~ん。確かに大馬鹿野郎だな」


「へへ。兄ちゃんは素直だなぁ」

 年寄りはそれだけ言って、何も言わなくなった。


 男も何も尋ねず、空を見上げている。

 雲の流れは遅い。


 男は静かに呟く。

「・・・・血生臭い世界だ・・・・」


 男は目を瞑る。

 馬車の乗り心地の悪さに眉を細めながら。



 Side=第三者∥Out








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