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Side=キュキュシュ∥Beginning∥『Reload』
宿舎で、皆に説明した。
モネさんが言っていた『常夜の一週間』までに逃げるか逃げないか。
サヤさんが言っていた自分達か国の皆を天秤にかける事。
皆、黙ったまま何も言わない。
私も黙っている。
そんな直ぐに意見が出るとは思ってはいなかった。
それでも、この沈黙は辛い。
「・・・アンタはどっちなんだ?」
キャサティアが私に尋ねる。
「私は・・・・」
私はどっちなのだろうか?
自分達を売った自分の国か、私に今まで着いて来てくれた仲間か。
考えれば直ぐに答えは出る筈。
けれども、『ローズ』の隊員の中には『クロアットン』に家族が居る者が居る。
そんな中で、国を捨てる何て言える訳がない。
「アンタが決めれてないのに、私達に先に答えを求めるのか?」
キャサティアが強い口調で言う。
「だって・・・皆は国に家族が居る。私が決めれる訳ないじゃない」
「アンタは隊長だぞ?アンタが決めないと、誰も着いてこない」
「それでも!!私が決めちゃ駄目。私みたいな・・・家族が居ない私には・・・」
ドンッッッ!!!!!!
キャサティアがテーブルをおもいっきり叩く。
「ウジウジしてんじゃねぇーよ!!!アンタが答えを決めなきゃ私達は動けない!!私達は仲良しごっこする為に集まってるんじゃねぇーんだよ!!!自分の答えも解らない奴に、他人の意見を聞く資格はねぇー!!!!」
それには思わず私も叫ぶ。
「何それ!?それって全部私に押しつけているだけでしょ!?決めるのが怖いから私に全部決めさせようとしているだけでしょ!?どっちがウジウジしてんのよ!!」
「んぁ?・・・そうか。解った。なら、私の意見を言ってやるよ」
キャサティアはドアの前に立ちながら言う。
「反対だ」
それだけ言い、キャサティアは部屋を出て行った。
「・・・・・・」
拳を握る。
すると、アストが淡々と言う。
「私も反対意見ですね。だって、国に家族が居ますから。ですが、私はキュキュシュの答えに従います」
「何それ。私に全部背負って言うの?」
「そうではないです。ですが、結局の決定権はキュキュシュです」
アストは淡々と言う。
それが一層に私を苛つかせた。
「そうじゃない。結局は私が決めないといけないんでしょ!?もし、私が国を捨てると言ったら皆着いて来るの!?貴女達を見捨てると言えばそれに従うの!?」
結局、誰も何も決める事など出来ない。
自分の命。家族の命。それが天秤の上で揺らぐ。
「・・・あまり私達を舐めないで下さい」
ミデミナが立ち上がる。
ミデミナは淡々と続ける。
「隊長は自分の意見を言うのが怖いだけですよね?まるで私達の意見を尊重すると言っている様に聞こえますが、実際隊長は自分の答えが決まって無いんですよね?それなのに、此所で不満をぶちまけるのですか?それって結局は逃げですよね。窮地に立った自分可愛さで、重荷から逃げようとしていますよね?上に立つ。その決意は『ローズ』発足の時に済ませていると思っていました。私は、隊長を過信し過ぎた様ですね。残念です」
ミデミナは冷めた目で私を見る。
何かを言おうとした。
けれども、何も言えない。
ミデミナの言葉は真実だ。
私は逃げようとしている。自分の答えで皆を、皆の家族を死に追いやってしまうかもしれないと言う事実から。
他人に委ねて、逃げようとしている。
そして、私はそれをまるで第三者の様に眺めようとしていた。
皆、私に命を預けている。
それなのに、私はそれを否定しようとした。
侮辱。
上に立つ人間として、最悪な事をしようとしていた。
大きく息を吐く。
「・・・私は、皆に生きていて欲しい」
詰め込んだ本音を言葉にする。
家族が居ない私に取って、この『ローズ』は唯一の柱だ。
私が崩れず立っていられるのは、皆のお陰だ。
「家族が居る者も居ると思う。それでも・・・・私は皆と生きたい」
いつの間にか、涙が頬を伝う。
怖い。
皆の反応が。
それでも、私は見捨てたくない。
国を捨てようとも、皆と離れたくない。共に居たい。
俯き、皆の声を待つ。
凄く長く感じる。
「・・・言った筈です。舐めないで欲しい、と」
ミデミナが言う。
ゆっくり顔を上げる。
「私達は隊長に着いて行きますよ?例えそこに絶望が待とうとも、それすらも希望に変える隊長に」
ミデミナは微笑む。
私は周りを見渡す。
他の隊員も微笑んでいる。
「あり・・・がとう」
涙が、溢れ出した。
もう、堪えるのを止めよう。
今だけは、泣いていたい。
Side=キュキュシュ∥Out
Side=キャサティア∥Beginning∥『Reload』
宿舎を出て直ぐにある、屋外広場的な所で空を見上げていた。
少し大人げなかったのかもしれない。
キュキュシュもキュキュシュで色々と悩んでいる筈だ。
それなのに、強く言い過ぎた。
だが、此所で少し強くなってもらわないと、いずれ潰れる。
死と言う重圧。敵・仲間からの重圧。
キュキュシュは優しすぎる。
それでは、生きていけない。
この世界はそれ程優しくはないのだ。
『常夜の一週間』。その時に何があるのか。
いつの間にか私達がそのピースとなっているのかもしれない。
私達の命か。国の命か。
決まってはいるのだろうが、それを簡単に口に出来ない。
腰に下げていた、銃を抜く。
だが、これは私のでは無い。あの森で落ちていた、多分あの男の物だ。
この銃はこの世界ではあり得ない構造で出来ており、かなり重い。
腰に下げてはいたが、実際は強化魔法を自分に掛けて耐えていた。
こんな重い銃を、撃てるのか?
少し興味があった。
あの男の事。
一体何者なのだ。
あの戦場に、二輪の乗り物と一緒に現れ、一掃して帰っていった。
その後、悪魔との戦闘で傷だらけになった様だが、それでも生きていた。
キュキュシュの天空を流したのに、拒絶反応も無かった。
あの男は・・・何なのだ?
「その銃は俺のだぜ?」
後ろから声がし、振り向き銃口を向けた。
私の後ろに立っていたのは黒いローブのフードを顔が隠れる程深く被っている、声からして男。
「何者だ?」
「何者って、言ったろ?それは俺の銃だってな」
男は私が持つ銃を指さしながら言う。
「と、言う事はお前が?」
フードを脱ぐ様に言うが、それを拒否する。
「これは一応顔隠す為に着てるんだ。もし誰かに見られたら面倒だからな」
男はそう言いながら手を差し出す。
私は直ぐには返さず、尋ねる。
「お前、私達が逃げるのを手伝うと言っているらしいな?」
男は手を差し出したまま答える。
「ん?逃げる事になったのか?」
「いや、まだ決まってはいないだろうが、きっと逃げる事になるだろうな」
キュキュシュは最初から答えが決まっていた様だし。
ただ、それを言う勇気が無かっただけだ。
そこで敢えて反対意見を言って動揺させた。
それでも、多分逃げる事を選ぶだろう。
それ程に、キュキュシュは皆を想っている。
「そうか。まぁ、どちらでも構わないんだけどな」
男は興味なさそうに言う。
「・・・何故、お前は私達の手助けをする?」
「何故って、命を助けられたからだが?それ相応の理由だと思うんだが?」
男は首を傾げる。
「それでも、お前程の男なら、簡単にこの国を出る事は出来るだろ?」
「それも考えたんだけどさ、それって違うじゃん」
「違う?」
男の表情はフードで全然見えないが、微笑んでいる様な気がした。
「そう。だって助けられたんだ。それなのに有難う一言だけじゃ、割に合わないだろ?それに、俺もスッキリしない。助けてくれた奴を見捨てる程の悪人に成り下がった訳じゃねぇーんだ」
凄く真っ直ぐな言葉。
口で言うのは簡単だ。けれども、男の言葉には何かを感じる。
手に握る銃を男の差し出された手に乗せる。
「拾ってくれて有難うな」
そう言った瞬間、口元が見えた。
少し、こう真っ正面から礼を言われると照れる。
誤魔化す為に質問をする。
「お、お前何で私が持っているって解ったんだ?」
「ん?何となくだよ。何となく」
「そんな適当な・・・」
この男は基本適当なんだな、と思った。
「んじゃ、またな」
男は手を振りながら帰って行く。
呼び止める理由もなから、ただただ背中を見つめていた。
あの男が、今世界を動かそうとしている男。
『無道』・・・名も無き道を行く男。
恐ろしいな。敵であっても、味方であっても。
だが、今は味方で良かったと思う。
暫く、あの男が居なくなった場所を見つめていた。
人って者はあそこま強くなれるのか?
いや、もう人外なのかもな。
「ふっ・・・雑な考えだな」
自分で言って思わず笑ってしまう。
「何か面白い事でもあったの?」
いきなり声を掛けられるが、直ぐに誰だか解る。
声の主を見ずに答える。
「いや、どうだろうな。面白かったと言えば面白かったよ」
「そう・・・でも、良かった」
キュキュシュがそう言い、初めて顔を見る。
「何がだ?」
キュキュシュは苦笑しながら答える。
「キャサティアの機嫌が少し良くなっていて」
そう言われ、自分が怒って宿舎を出てきた事を思い出す。
あの男と話したら、いつの間にか忘れていた。
多分、あの男の前で何かを考えるのが馬鹿らしく感じたのだろうな。
ホント、規格外だ。
そう考えながら、また沸々と笑い沸き上がる。
「思い出し笑いする程?」
キュキュシュは気になったのか、結構尋ねてくる。
「やっぱり面白かったのかもな。いや、私がかな。凄くあの男の前だと滑稽だったよ」
何もしていなかった。
ただ、あの男と少し話して銃を返しただけだ。
それだけでも、威圧感があった。
もし、あの男と目が合っていたら私は攻撃していたかもしれない。
恐怖って言うモノを、あんな風に感じたのは初めてだ。
強過ぎて、どれ程の力を持っているかは見抜けなかった。
今でも軽く震えている。
ホント、滑稽だ。
「あの男って、サヤさん?」
キュキュシュは男が誰か気になる様子だ。
そのそわそわした姿もまた面白いな。
「もう名前で呼び合う仲になったのか?」
少し笑みを浮かべて尋ねる。
そしてら、予想通り狼狽える。
「なっ!そそそそそそそそそんなんじゃないよ!!」
随分そが多いな。
「そうか。まぁ、私は認めないけどな」
「な、何を認めないの!?と言うか、全然そんなんじゃないし!!」
顔を赤くしながら叫んでも無駄だろ?
「それなら、あの男の前で普通に話せるか?」
「は、話せるよ!!」
「ふぅ~ん・・・あっ!」
私はキュキュシュの後ろを指さしながら驚く・・・フリをする。
「えっ!なっ!」
キュキュシュは慌てて後ろ見る。が、誰も居ない。
そして、ブリキ人形の様にギギギ―――と言う擬音が聴こえてきそうだった。
そして、私を見たキュキュシュは顔を真っ赤にして怒っていた。
怒りと恥ずかしさが混ざり合っている。そんな顔だ。
「何でそんな嘘吐くの!?」
「何でって、別に好いてもいないならどうでも良いだろ?」
「なっ・・・うぅ~」
キュキュシュは唸りだした。
少しイジメ過ぎたか?
「ふぅ~。もう良いか。これぐらいで許してやるよ」
腰に手を当てながら苦笑いする。
「アンタの優柔不断は今に始まった事じゃないしね」
「わ、私そんな優柔不断じゃないよ」
まだ顔を赤くしている。結構ダメージは大きいみただな。
「10歳の頃、果物屋のおじちゃんがくれた違う種類の果物を半日どっちを食べるか悩んでいたでしょ?15歳の時は服を選ぶのに5時間。20歳の誕生日の時はケーキを食べるか食べないかで誕生日終わったな。これでも違うと言えるか?」
「ケーキはグラが太るとか言うから!!!」
などと一応私は違うと言うが、他の2つは弁解出来ていない。
それに、これだけではないしな。
暫く2人で見つめ合い、
「「・・・・ぷっ!・・・あはっはははは!!!」」
思わず笑ってしまった。
そうだな。これが正しい私達の在り方だ。
最近出会った仲じゃない。
産まれて、物心ついたらもう一緒だった。
「何か、久しぶりに笑った気がする」
キュキュシュが笑いすぎで流れた涙を拭いながら言う。
「あぁ。そうだな。純粋に笑ったよ」
涙は出ていないものも、腹が痛い。
キュキュシュは大きく息を吐く。
そして小さく吸う。何か真剣な事を言おうとしている時の癖だ。本人は気付いていながな。
私を見据える。表情は真剣だ。
「私に、着いて来てくれる?『ローズ』の副隊長であり、私の親友である・・・キャサティア」
少し、目が潤んでいる。
断られたらどうしよう。とか考えているのだろ。
ゆっくりキュキュシュに近づきながら答える。
「私は剣だ。敵を斬る剣。主はお前だ。私を使う者。剣は意見を言わないが、意志はある。自分を使って欲しい者にしか私を使わせない」
キュキュシュの前に立つ。
キュキュシュは静かに息を吞む。
そんな表情を見ながら、静かに膝を付く。
「だからこそ、私は主に着いて行く。主の剣であり、主の仲間であり、そして・・・キュキュシュの親友として。流れる時の中を共に歩む事を願う」
頭を下げているから、キュキュシュの表情は解らない。
この様に私が膝を付いたのは『ローズ』発足の時か。
最初で最後の誓いを、もう一度するとは思わなかったな。
「・・・私こそ。お願いします」
涙声で言う。
前と同じだ。前も、同じ事を言った。
元々人を従わせる事が出来ない奴だ。偉そうな事を言えない正直者だ。
そんな正直者が、抱え込んだりするからあの様にぶつけてしまうんだ。
それでも・・・らしいな。
「私の全て、アンタに預けるよ」
これも、前と同じ。
全然締まらない。そんな関係。
顔を上げ、キュキュシュを見る。
「ひっぐ・・・うぅ・・・」
泣いている。
思わず苦笑いだ。
こんなに直ぐに泣いたら駄目だろうに。
きっと宿舎でも泣いたのだろう。
「ご、ごべんね・・・おなじ・・・ごど・・ざぜじゃっで・・・」
濁音が多すぎて解らないな。
「まぁ、アンタと一緒に居ると決めた時に、この様になる様な気がしたよ」
「ごべんね・・・」
泣きながら、私に抱きついた。
苦笑しながらキュキュシュを抱く。
「泣くな。隊長」
そう言いながら頭を軽く叩くと、
「今ぞれ言うのひぎょうだよぉ~」
泣き止むのは、暫く先だな。
・・・それと、1つ言い忘れていたよ。キュキュシュ。
私は、仕方無くアンタに着いて来たんじゃない。
私はアンタと居たくて居たくて、アンタの隣に立っていたくて・・・。
私がアンタと一緒に居れて、どれ程嬉しいと思う?
この戦争が終わったら尋ねてみよう。
また、泣いてくれるのかな?
その時は、私も一緒に泣こう。
喉が嗄れて、顔がくしゃくしゃになるぐらい。
親友のアンタと・・・一緒に。
Side=キャサティア∥Out
Side=モネ=アファ∥Beginning∥『Reload』
「あらら、盛大に泣いちゃって」
耳に魔法石を当てながら思わず笑ってしまう。
誰かに聴かれているのかもしれない。と、言う事を考えないのかしら?
いや、今は泣くのに夢中でそんな事考えられないか。
「盗み聴きか?あまり良い趣味じゃないな」
「何で気配消して入って来るの?吃驚するじゃない」
「動じないくせに」
そう言いながらサヤはローブを脱ぎ、ベッドに腰を落とす。
「それと、盗み聴きじゃないから。結界張ってあげたのよ?褒めて欲しいわ」
「あの2人はお前が結界張った事に気付いてないよ。それとも、俺が褒めれば満足か?」
サヤが苦笑しながら言う。
「まぁ、それもアリかな」
「はは・・」
乾いた笑い声。
「銃は返してもらったみたいね」
「まぁ、な。それよりも、結界張って誰かに気付かれないのか?違和感ありまくりだろ?」
ピースサインをしながら胸を張って答える。
「それは大丈夫よ!私結界魔法凄く得意だから。違和感を感じさせない様に張った」
「それなら良いけど」
そう言いながらベッドに横になる。
「あら、褒めてはくれないの?」
「ん?・・・良く頑張ったな」
適当。
「それは心が篭もってない。それじゃぁ~私全然嬉しくない」
「ならどうすれ・・・・いや、何でもない」
「何で尋ねようとして止める訳?」
そう私が尋ねると、サヤは私に背を向けて小声で言う。
「どうせ下だろ」
「それは心外ね!一層に悲しくなったわ!!」
「・・・なら何をすれば良いんだ?」
「一緒に寝て?」
首を傾げて可愛さアピールをするが、
「やっぱり下だろ」
「違うわよ!!普通に寝るだけよ!!」
「・・・襲う気だろ?」
「私獣じゃないもの!!少しの貞操はあるわよ!!」
サヤが深い溜息を吐く。
「好きにしろ」
「やった♪」
私は急いでランプの火を消し、ベッドに横になる。
「・・・んなぁ!!触るなァァァァァァァァ!!!!!!!!」
Side=モネ=アファ∥Out