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Side=サヤ∥Beginning∥『Reload』
『常闇の一週間』まで―――後5日。
どうやら俺は『ローズ』が帰って来るまでこの部屋から出られないらしい。
軟禁?ってヤツか。
てか、モネが怖い。
何時襲われるかビクビクしている。ホント、情けない。
「貴方って凄いわよね」
「何が?下の方は遠慮してくれよ?」
「違うわよ。貴方、此所に送られて来た時死んでも可笑しくない出血量だったのよ?でも生きていて怪我も完治している。摩訶不思議ね」
あぁ~・・・。
「まぁ、な。心臓止まっても生きてるぐらいだ。簡単には死ねないわな」
「心臓が止まったのにどうやって?」
「心臓に直接雷で軽く電気流してと言いますか、まぁ危なかったけどね」
これはマルコシアスとの戦争時にやったな。
俺一応魔法使えるからね。
それでも危なかったわ。あれは。
「無茶苦茶しているのね」
「まぁ、な」
「私も若い頃は無茶苦茶してたのけれどね」
モネが溜息を吐きながら言う。
「若い頃って、今も十分若いだろ?」
「あら、本当?嬉しいわ」
・・・あれ?何かリアクション違くね?
何だろう。
「・・・失礼ですが、モネさんは何歳ですか?」
「私?38よ」
・・・38歳?おいおい・・・マジかよ。
「それは嘘だろ?」
「本当よ?」
マジで?
「嘘だァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!」
思わす叫ぶ。
だが、モネはどう見たって20代の女性だ。いや、10代後半言っても良いぐらい。
どれだけ若作りしてんだよ!!
てか、俺と倍年離れてるの?四捨五入したら40じゃん!!
マジかよ・・・マジかよ・・・。
40手前であのがっつきよう?可笑しいよね。可笑しいよね。
「何頭抱えてるのよ?」
嘘だと言ってくれ。俺は40手前の人にファーストを奪われたのか?
マジか・・・マジか・・・マジかァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!
「大丈夫?」
「・・・無理。暫く寝る」
精神的にヤバイな。
だって・・・だって・・・もう良いや。寝よう。
Side=サヤ∥Out
Side=キュキュシュ∥Beginning∥『Reload』
現在、やっと『アスリトン』に着き、報告を済ませた。
突然乱入して来た『無道』と名乗るサヤって人の事をオブラートに包みながら。
それでも、王は勝利した事が嬉しいのか終始笑顔だった。
私は王の長い話よりも彼の事が気になっていた。
そして、話が終わって退室して直ぐにモネの部屋に向かった。
怪我は大丈夫なのだろうか?
そして、彼はどう言った人間なのだろうか?
それがもの凄く気になる。
解らない事だらけだけど、敵ではない様な気もする。
どれも確証の無い事なのだけれど。
モネの部屋の前で止まり、息を大きく吸ってドアをノックしようとした時、微かに声が聞こえた。本当に微かに。
「良い―――別――減る―ん――ないし」
・・・・・・・・・・。
「無理だ――やめ―――マジ――無――だって」
何を・・・話しているのですかね?
ドアに耳を当てる。
「良いでしょ?別に。私これでも経験はある方よ」
「そう言う問題じゃねぇーだろ!?襲おうとするか普通!?40手前ならもっとお淑やかにしてろよ!!!」
急いでドアをノックし、ドアを開ける。
「何をやっているの!?」
部屋の中に入って、一番最初に見たのはモネが彼を押し倒しているシーンだった。
モネは私を見ながら軽く舌打ちする。
「その舌打ち何!?」
「帰って来るの早過ぎじゃない?まだ最後まで出来てないのだけれど?」
「最後までって何を?一体彼に何をしようと!?」
顔が赤くなっているだろうが、今は関係無い!
兎に角彼から淫魔であるモネを引き離さないと!!
「もう。キュキュシュはウブね」
「てか、下りて・・・頼む。もう・・・色々と限界」
彼が顔を手で覆いながらお願いしている。
「あら?私ではご不満?」
「そう言う問題じゃないだろ?・・・マジ、俺まだ貞操を失いたくない」
少し彼をモネの部屋に送った事を後悔した。いや、少しではないな。かなりだ。
モネの性格を忘れていた・・・イケメン好きだった事を。
「もうキスした仲でしょ?何を嫌がる事をあるの?」
「キス!?」
き、キスって・・・。
「お前がいきなりしたんだろうが!!何勝手に俺が了承してみたいな感じで話持ってこうとしているの!?俺被害者!お前加害者!!」
そうか、彼はいきなりキスされたのか。
良かった・・・・。
胸を撫で下ろす。
すると、モネが私を見ながらニヤニヤしていた。
「な、何?」
「いえぇ~別にぃ~」
モネはニヤニヤしたまま彼の上から退き、椅子に座る。
「マジ危なかった・・・・で、アンタは確か・・・あの戦場に居たな?」
彼が体を起こしながら私に尋ねる。
「あ、はい。私はキュキュシュと申します」
「キュキュシュか。で、アンタが助けてくれたのか?」
「あ、見つけて此所に送ったのは私です。ですが、応急処置をしてくれたのは『ローズ』の隊員です」
「『ローズ』か。アンタも『ローズ』の・・・・・いや、これは愚問だったな。隊長さん」
彼は腕を伸ばしながら言う。
「知っていましたか」
「いや、魔力で解った」
魔力で!?
今私は魔力を封じている。
それなのに解った?
「吃驚してるな?アンタだろ?俺に魔力流したの。治療魔法じゃない魔力。今まで感じた事の無い魔力をアンタから感じた。俺の中に微かに流れる魔力と同じな」
彼は壁に背もたれながら言う。
凄い。
魔力の感知レベルが高すぎる。
普通なら感知出来ない筈の魔力を感知している。
「はい。あの時は急だったので、私の魔力を流して治療しようとしました。拒絶反応が起こるのですが、貴方は起きなかった」
「拒絶反応?て、事は普通の魔力じゃないんだな。アンタ一体何の属性を使う?」
「・・・・天空です」
「マジか。使える人居たんだな」
彼は余り驚いていないようだった。
モネが彼に尋ねる。
「ねぇ、天空ってもの凄い珍しいのよ?何でそんなにリアクション薄いの?」
「え?いや、別に俺には関係無いだろ?天空でも何でも助けてくれたって事には。それに俺あまり属性とか興味無いんだよ。知れただけで十分。モヤモヤしてたんだよね。流れている魔力が何なのか知りたくて」
そう言いながら彼は笑う。
そして、ベッドから立ち上がり、私の前に立つ。
「助けてくれてありがとう」
彼は頭を下げた。
少し驚き、困惑。
「えっ!?あっ!!頭上げて下さい!!お礼をして欲しくて此所に来た訳ではないので」
「そうか?んでも、有難う。助かった」
彼は頭を上げながら微笑む。
その笑顔を見て、思わず顔が赤くなる。
落ち着け私・・・。
モネさんは先程からニヤニヤと笑っている。
「あ、あの・・・どうしてあんな所で倒れていたんですか?」
「あんな所?俺は何処で倒れていたんだ?」
彼が首を傾げながら尋ねててくる。
「えっ?・・・どう言う事ですか?」
「いや、俺も記憶があやふやでよ。しかも気を失う前視界閉じてて何も見えなかったし」
視界?一体・・・。
「誰かと戦っていのですか?」
「まぁ、悪魔とちょっとな。傷は全部悪魔にやられた。結構危なかったんだけど、記憶があやふやなんだよ。俺何処で倒れてた?」
彼がもう一度尋ねてくる。
「『アスリトン』の国境付近で。血だらけで危ない状況でした」
「何か場所が違う様な気もするが・・・あまり気にしなくて良いな。まぁ、本当に有難うな。アンタ等『ローズ』のお陰だ」
彼はまた丁寧に頭を下げる。
印象が違う。
もっと我が強い人だと思ったのだけれど、全然違う。
彼が『無道』のサヤ。
すると、モネさんが口を開く。
「もうそろそろ良いかしら?」
「ん?あぁ、あの事ね」
彼は頷きながらベッドに腰を掛ける。
あの事?
「あの事って何ですか?」
「うん。簡単に言っちゃうと『アスリトン』から逃げて欲しいの」
モネさんが微笑みながら言う。
「はい?」
何を言っているのでしょうか?
「だ・か・ら。逃げて欲しいの」
モネさんはもう一度言う。
「な、何でですか!?」
全然理解出来ない。
「説明するとね。裏が最近こそこそ動いているのよ。それに、後5日で『常夜の一週間』でしょ?それと貴女達が来たタイミングが良すぎる様な気がするの。だから逃げて」
「でも、それって憶測の域を出て無いですよね?それなのに逃げたりしたら・・・」
「そうだな。まぁ、俺も手伝ってくれって言われてはいるが、一応はアンタ等の意志を尊重する。アンタ等逃げたくないって言うなら俺は手助けしない。だが、アンタ等が逃げたいと言うなら手助けする」
彼が私を見つめながら言う。
「・・・でも、私達は―――」
モネさんが遮る。
「『クロアットン』の立場を考えているの?」
「・・・はい」
もし、私達が逃げれば絶対『クロアットン』へ矛先が向く。
あの国に生きている者達の命。それは尊い。
「二者択一だ。どちらかが助かる。その現状でアンタは隊員の命又は自分の命を取るか、無関係な国の者達を取るか。数人と数万人を天秤にかけろ」
彼は鋭い目で言う。
「・・・・わ、私は・・・」
答えられない。
モネさんが察してくれたのか、微笑みながら言う。
「今決めなくとも良いわ。けれども、期限は二日。それ以上待てない。良い?」
「はい」
「隊員と話し合え。アンタだけで決めて良い事じゃねぇーだろ?」
「はい。・・・・失礼します」
私は小さく頷き、部屋を出る。
「二者択一・・・どっちか何て・・・決められる訳がないのに」
兎に角。皆に聞かないと。
Side=キュキュシュ∥Out
Side=サヤ∥Beginning∥『Reload』
「意地悪な事言うのね」
キュキュシュが出て行って、モネが微笑みながら俺に言う。
「ん?そんな直ぐに決めて欲しくないからな。アンタも色々調べたりしたんだろ?」
「あら、私の事を気にしてくれたの?」
「まぁ、無駄にはしたくないさな。それに、彼女は決めるだろうさ。どっちかを切り捨てるか、どちらも守るか。前者は賢明で、後者は馬鹿だ」
モネは微笑んだまんま尋ねる。
「貴方ならどうする?その二択の内から違う選択肢を見いだす?」
ベッドに横になり、軽く笑う。
「そんな簡単じゃねぇーだろうさ。俺だって迷う。だが、残念ながらこの世界に俺が守りたい者は両の手の指で足りちゃうんだよ。だから、きっと前者だろうさ」
もし、俺がこの世界の何処かの国の人間なら、後者かもしれない。
枷となる者が居ない事は良い事なのだろうか?
それとも、守るべき者すら居ない哀れな事なのだろうか?
難しい。
「貴方も結構考えているのね」
馬鹿にしている様に聞こえる。
「一応『無道』の頭だからな。他の奴が不利になる事は出来ないんだよ。友愛だろ?」
軽く笑う。
「そうね。・・・その守りたい両の手には、私も入っているのかしら?」
モネがいきなり尋ねてくる。
「そうだな・・・守ってはやるさ。お前が俺の敵にならない限りな」
「そう。なら良かったわ」
モネは少し、今までとは違う笑みを浮かべる。
決断まで後二日。
俺は助けるだけ。
だが、さっきから嫌な予感が頭を過ぎる。
これは何かの暗示か?
それでも、俺のやる事に変わりは無い。
カロやフォーリ、リノ弟子一号やマドは無事だろうか?
俺もいつの間にか周りに居る奴が増えた。
こんな世界で、まさかこんなに守りたいと思う奴が増えるとは思わなかった。
・・・真神の野郎達は一体何を考えているのか?
今ふと頭に過ぎった。
暴とか呼ばれる真神。
あの野郎が俺に『一度罹った病気には二度と罹らない』とか言う能力を付けた理由は?
何故『アース』と『リロード』とか言う二つの世界を創る必要があった?
本当に暇潰しか?
解らないな。
何かがありそうで、何もなさそうな。モヤモヤする気持ち。
だが、今はこの世界で生きる以外に考えなくとも良いだろう。
きっと・・・・何時かその謎の方から俺に寄ってくるだろうし。
Side=サヤ∥Out