編集中
Side=カロナス=ナイハ∥Beginning∥『Reload』
『常闇の一週間』まで―――後6日。
暗闇。
何も無い。
死んだ?・・・困るのですけどね。
私が死んだと言う事は・・・フォーリを助ける事は出来なかったみたいですね。
最悪です。友1人・・・助けられない。
私は、一体何を背負っていたのでしょうか。
何も無い。
何も残らない。
どうすれば・・・・。
「生きているか?」
声?
「生きているか?」
死んでますけどね。
「凄い出血だ。おい、治療出来る奴居るか?」
・・・死んでないのでしょうか?
「あぁ!!コイツ『探求する殺戮者』ですよ!!これで特別手当は手に入れたも同然!!」
・・・聞き覚えがある声ですね。誰でしたっけ?
「えっ!・・・じゃ、こ、この人・・・が?」
これは聞き覚えが無いですね。
と、言うか起きた方が良いのでは?
でも、中々瞼が開かない・・・。
「どうします隊長?此所で首落として持って行きますか?生かして捕らえろとは言われて無いんですよね?」
ヤバイですね。
「あぁ、そんな命令は受けてないが・・・この惨事は一体どう言う事だ?」
惨事?・・・あぁ、血だらけですからね。
自滅覚悟だったんですけど、フォーリは再生能力持っているの忘れてましたよ。
「ミーが治療するよ。サヤって言う奴の居場所を聞き出す為にね」
狙いはサヤですか。と、言う事はどっかの国の人間。
そろそろ起きないと、色々と危ないですね。
「うぅ・・・」
瞼が開きませんね。どうしましょう。
「お、意識が戻ったか?グロア、もう良いぞ」
「完治しなくても良いんですか?」
「あぁ。下手に完治させて攻撃されたら堪ったもんじゃなからな」
完治させてくれれば良いものを。
これでは逃げる事も出来ないですね。
「う・・・・・・」
少しずつ瞼が開く。
一番最初に見えたのは、髪の毛。
もう何が何だか・・・。
「・・・・誰ですか?」
結構ハッキリ喋れますね。
そこで気付く。
白い槍・・・『始星団』!?
「痛ッ!・・・・」
起き上がろうとしたが、体に激痛が走り動けない。
「『探求する殺戮者』カロナス=ナイハで間違えはないか?」
がっちりとした体型の男が尋ねてくる。
「嘘を言っても無駄なんでしょうね」
「それを言ったらダメだろ?」
面倒な事になってしまいましたね。
辺りを見渡す。
血が至る所に飛び散っており、惨状と言うのは相応しかった。
フォーリの姿は無い。
何処に?いや、そんなの決まっていますね。
あの様子だと、記憶を取り戻した様ですしね。
復讐・・・ですか。
「で、単刀直入に尋ねる。サヤって男は何処に居る?」
「本当に単刀直入ですね。ですが、此所で私が倒れていたんですから、知る訳ないじゃないですか」
最終的な目的地は『グラパス』だが、今サヤが何処に居るかまでは解らない。
「そうか。さて、どうしたもんか・・・・」
そう言い、頭を乱暴に掻くがっちりとした体型の男。
「・・・『始星団』は過激派だと聞いていましたけどね。即殺ではないのですか?」
「そこまで野蛮じゃない。まぁ、他の者はどうか知らないけどね」
少し調子が狂いますね。
ですが、此方としては助かったと言う所でしょうか。
「『世界教』は人間を尊重しないのでは?」
「まぁな。だが、残念ながら此所に居る奴等は信仰深くないんだよ。残念な事にな。現に隊長である俺が信仰深くない」
「そんな事私に言っても良いのですか?」
背信は確か『世界教』では重罪。
それを私みたいな敵に言っても大丈夫なのでしょうか?
「いや、駄目だな。けれどもお前は教徒じゃないしな」
「その様なものでしょうか?」
「では、次はお前の番だな」
私の番?
嫌な予感しかしません。
「ギブ・アンド・テイクだ。俺が言った。なら次はお前だ」
そう言いながら私を指さす。
「そう言われましても・・・何が知りたいんですか?それと、先程も言いました様にサヤの居場所は知りませんよ?」
「まず、そのサヤって奴は何者だ?それと、『無道』とは何だ?」
「それでは二つですよ?ギブ・アンド・テイクなら私は一つしか答えません」
「そうだな・・・命を助けてやったから三つぐらいは答えてもらう」
「横暴ですね・・・ですが、その二つは別に簡単に答えれますよ?」
『無道』自体がまだそれ程有名ではない。
少し名が知れてきただけで、脅威と言われる程ではない。
その為、名を言う事は大差問題ではない。サヤの事もだ。適当に話せば良いだけですし。
「それでは答えてくれ」
「まず、サヤですが彼は『無道』の実質リーダーです。『無道』の発足も彼が提案しましたしね。力も十分過ぎる程有ります。貴方『始星団』の隊長ならあの森でサヤと戦ったのでしょ?それなら実力は知っていますよね?」
「あぁ。初めて勝てないと思った相手だ。では、その『無道』とはどう言った組織だ?」
「『無道』の目的は簡単です。各々の目的を貫く為の組織です。同じ思想などを持った組織でではありません。まぁ、戦争に嫌気が差しているのは同じですけどね」
サヤも私も。そしてフォーリも皆バラバラの目的を持っている。
普通ならば交わる筈が無かった道が、今一瞬だけ交わっている。それは奇跡とも偶然とも言える。
「人数は何人居る?」
「正式に、と言いますか『無道』を名乗っているのは3人です」
ジンは見習い。リノは・・・本人に聞いてみないと分からないですね。マドは私達と一緒に行動していましたが、メンバーかと言われれば違うでしょう。
「そんな数人であの森で戦い、『ローデン』の兵を破ったのか?」
「まぁ、サヤ一人でも十分戦えますけどね」
召喚神は凶悪ですから。全て召喚すれば間違いなく勝てるでしょうね。
ですが、サヤ本人はあまり神々に頼りたく無いみたいですけど、気持ちは解りますけどね。
「そうか・・・で、何で今はバラバラなんだ?」
「悪魔の攻撃に遭いましてね。その際に」
「悪魔?ではお前が倒れていたのも悪魔にやられてか?」
・・・どう答えましょう。
仲間にやられたとは言えませんし。それにフォーリは幻想実験の被験者ですしね。
あまり明るみにしたら色々と厄介。
「・・・・えぇ。結構強い悪魔でしてね」
「では、赤い光を纏った奴はお前の知り合いか?」
!?何故・・・・。
表情が表に出ていたのか、『始星団』の隊長はニヤリと笑う。
「知り合いらしいな。まぁ、お前も見つける前に空を飛んでいたソイツを見つけてな。『アスリトン』方面へ向かっていた」
『アスリトン』。どうやら本当に復讐をするつもりらしいですね。
30年前の幻想実験に参加していた学者など、一握りしか居ないと思うのですが・・・・。
30年前?・・・もしかして、あの実験は何か重要なピースが足りなかったのでは?
あれだけの実験では、十分に成果は上げられない筈。
ただ精神崩壊を起こすだけ。
では、何が足りなかった?
・・・『常夜の一週間』?
確かあれは30年前・・・つまりは幻想実験が解体された時もその年だった筈。
では、足りないピースは『常夜の一週間』?
早合点し過ぎか?いや、それ以外に考えが思いつかない。
あんな実験をする連中だ、『常夜の一週間』に起きる不可思議な現象に縋ったのでしょうが、それでも危ないですね。
「何考えている?」
隊長さんが尋ねてくる。
「いえ・・・何でもありません。それで、私はこれからどうすれば?此所で即殺ですか?それとも連行ですか?」
怪我が完治していない以上、フォーリを追っても無駄でしょうし。
それよりも『グラパス』に向かいたいです。
「まぁ、上からは即殺と言う命令だが連行する」
「それは何故ですか?命令に背く意味が解りませんね?私に何か利用価値でも在るのですか?」
「・・・まぁ、そうだな。簡単に言えば上の人間が可笑しいと言った所だ」
隊長さんは頭を掻きながら目を逸らす。
「上が可笑しい?・・・・あぁ、成る程。『ローデン』を破った『無道』の人間を即殺と言うのがまず可笑しいですね。普通なら連行して盛大に死刑や、洗脳魔法で操るって言った事も出来る筈ですしね。それを全て無視して即殺。それはあまりにも考えが薄い。いや、此所では即殺が一番の目的?もしくは私達が邪魔?」
「やっぱり頭の回転は良いな。その通りだ。最近『ガスティン』怪しい奴等が入国してきてな。そいつ等がどうも臭いんだ」
成る程。
『常夜の一週間』は何が起こるか解らないとも言われていますし、その一週間間近に怪しい入国者。
怪しまずにはいられませんね。
「それで、私を連行して何をさせたいので?」
本題は此所。
「そうだな。まず、お前変身魔法使えるか?」
「変身魔法ですか?まぁ、並程度には。ですが、どうするつもりですか?」
嫌な予感がします。
「お前に変装魔法で変装して入国してもらう。そして、探ってくれ」
嫌ですね。
「・・・それは私にメリットが有るのですか?」
「無いな」
そうですか・・・いや、有りましたね。
『ガスティン』が扱う『世界の恵』と言われるモノの正体。これは知りたいですね。
『謎喰い』の時も気にはしていましたが、『ガスティン』は入国が難しく調べる事が出来ませんでしたし、それに魔法以外の力と呼ばれるモノがどんなモノかも見てみたい。
「・・・まぁ、良いでしょう」
「今何考えてた?」
「はて?何の事ですか?」
微笑む。
「・・・まぁ、良いだろう。それでは、着いて来てもらうぞ」
そう言い、歩き出す。
「・・・私歩ける程回復してないのですけど?」
・・・・無視ですね。
酷い扱いですねぇ~。
Side=カロナス=ナイハ∥Out
Side=マド=ホーク∥Beginning∥『Reload』
リノもジンも起きないわね。
ジンは結構な傷だったから目覚めるのが遅いとは思っていたけど、リノは一体?
力を使ったから?
いや、それにしも遅すぎる。
何も解らない。
それに、嫌な感じがする。何だろうか。解らない。それでも、胸の奥で何かが疼く。
彼等は大丈夫なのかしら?
此所に来て心配になってきたわ。
安否なんてどうでも良いけど、リノを一人にするのは許さない。
だから心配。
それにしても、『蒼』ってむさ苦しい男ばっかりだと思っていたけど、女性も多いのね。
辺りを見渡しても、直ぐに女性を見つける事が出来る。
言ってしまえば老若男女だ。
下10代。上は70代手前ぐらいの老人までいる。
一体何の集団だ?と思ってしまう。
「なんやマドちゃん。食べとらんやん。口に合わへんのか?」
ナイズが此方に近づきながら尋ねてくる。
現在一休みと言う事で食事を取っている。
・・・難民みたいだ。
「いえ、大丈夫。少し考え事していただけだから」
それよりもマドちゃんって・・・。
「そか!そか!!食っとかんと保たんで!?」
お調子者。
それは第一印象から変わらない。
それでも、心中何考えているかは読めない。
一番敵にしたくないタイプ。
「大丈夫よ?私一週間ご飯抜きでも耐えられるから」
『ローデン』の牢に入れられていた時はそんな事は良くあった。
無駄な力を与えない為。とかそれっぽい理由ではあったけど、只虐めたいだけ。
そして、此方が下手に出るのを待っている。
姑息な手段。
それでも人間の三大欲求を使った拷問は結構堪える。
まぁ、そのお陰で一週間程度なら断食出来る。
「・・・いつ『ローデン』から出たんや?」
ナイズの表情から少し笑みが消える。
「この前の『中立国』攻撃の二週間前。刺客としてね」
「そうか・・・まだ暗殺だのつまらん事してるんか」
そう言いながら、ナイズは完全に笑みを消す。
「貴方は何で『ローデン』を離反したの?十分過ぎるポストには就いていたでしょ?」
ナイズが『ローデン』に所属していた時は大佐だ。
それに、それ以上を狙う事だって出来た。
それ程に実力があったと聞く。
「理由は簡単や。あそこの空気が割に合わんかっただけや。・・・それだけ」
ナイズはポケットから懐中時計を取り出す。
それを見ながら、懐かしそうな顔をする。
これ以上は尋ねても無駄と思い。
手に持っていたシチューを口に運ぶ。
「・・・美味しい」
「そか!そか!!そりゃぁ~良かったわ!!『グラパス』まで後5日ちょいやな。丁度『常夜の一週間』の前か。あまりええ気分やないけど、悪くもないやろ」
『常夜の一週間』。太陽が昇らない一週間。
何かが起こる一週間。
・・・駄目だ。何故か嫌な事しか考えられない。
一体・・・何が始まるのか?
世界に取って有益なのか。それとも人間に取って有益なのか。
それが解らぬまま、時間は進む。
「今の私じゃ、悪い意味合いが強いわね」
小さく。ナイズにも聞こえない程度の大きさで呟く。
願わくば。リノに何も起こらない事を。
Side=マド=ホーク∥Out