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 Side=サヤ∥Beginning∥『Reload』



「貴方・・・が?」

 モネが硬直しながら口を動かしやっと質問する。


 てか、流石文官。

 『ローデン』の軍勢を退かせてからほんの数日しか経っていない筈だが、もう知られているか。


 まぁ、『アスリトン』の兵士の前で名乗ったし、情報が回っているのかもしれないな。


「そうだ。俺が『無道』のサヤ。アンタの敵って言う立場かもしれないな」

 ニヤリと笑う。


 怖がらせるぐらいは、と若干悪戯心を擽られたが、

「そう・・・そうなの・・・ふふ、そんな凄い男の唇奪っちゃったのね」


 そう言いながら自分の唇に触れ、微笑む。

 俺は思わず表情を引き攣らせる。


「・・・・アンタ強いな。俺がアンタを殺さないって保証は無いぞ?」


「殺すの?それならば、最後までやらせて」


「おいおい・・・そこまでがっつくのか?」

 若干引く。いや、若干じゃないな。かなりだ。


「冗談よ。でもね、殺されたくはないわ」

 そう言いながら落ちた本を拾う。


「何かやり残した事でもあるのか?」

 ベッドに寝転がり、天井を見つめながら尋ねる。


「やり残した・・・事ね。うん。あるわ。でも、それは叶わない事よ」

 答えながらモネの表情は暗くなる。


「・・・この国はどう言った国なんだ?ダチから聞いた話ではあまり良い話は聞けなかったんだが?」


 カロの話では、横領とかそんな話だったな。

 それと、開発兵器。


 魔法を軸とした破壊兵器。

 そんなもんをチラッと聞いた。


 けれども、カロの所属は戦闘員兼研究者だったらしい。

 開発とはまた別らしくあまり詳しくは聞けなかった。


「多分、その友達が言っていた事は真実よ。この国は腐りかけているの。王族と言う強大な力で」


 王族国家。

 王の直系が全てを牛耳る国。笑えないな。


「それにしても、貴方のお友達は『アスリトン』に居たの?」

 モネにそう尋ねられ、少し返答に困る。


 言っても良いのだろうか?

 モネがカロのその横領していた元ダチと仲良しです!みたいな感じだったら、ヤバイだろうな。


 只でさえ、『無道』のカロナス=ナイハとして知られているだろしな。

 ・・・いや、『無道』と聞いてカロの名前が出てこないと言う事は知られてないのか?


 それでも、今名前を出せば色々面倒か。


「答えられないの?」

 モネが微笑む。


 この女も腹芸得意そうだしな。

 あまり探り合いは苦手なんだよな~。


 カロが前言っていたが、俺は力でねじ伏せるタイプだってよ。


 探りはカロに任せているし、どうしようか?


「ん~・・・言えない訳じゃねぇーけどよ。俺まだあんまりアンタを信用してねぇーんだわ。助けられたって事実はあるが、それだけで信じられる程生易しくねぇーんだよ」

 横目でモネを見つめながら言う。


「信用?てっきり貴方は利用できるか出来ないかみたいな考えを持っていると思ったのけれど?」

 首を傾げながら微笑む。


 それに俺は苦笑する。

「逆だ。利用とかそんなの考える前に行動しちまうタイプなんだよ。てか、支配ってより理解って方が好きなんだ」


 これは事実だと思う。

 支配ってのはあまり好きじゃない。手段として使うかもしれないが、これは最後の手段だろう。


「不思議ね。『無道』は戦争介入が目的なんでしょ?それって自分達の力を晒し支配するって事でしょ?」


「そんな風に捉えられているのか。新鮮な意見だな」


 カロもフォーリも俺と同じで何かを行う力を持っている。


 この使い方を間違えれば、支配になるだろう。

 己で貫く力が無い奴は、俺等の事を支配者と捉える。


 今の俺の考えは傲慢だろう。

 もう、こんな考えを持ってしまえば俺も支配者の仲間入りか。


「貴方は、随分周りの人に恵まれているのね」


 モネは続ける。


「自分の考えが正しいと思い、自分の考えに間違えは無いと思い、そして道を間違える。何時も貴方の前に道標があると言うのに、貴方はそれを見ずに自分の考えを信じて己が正しい道を歩む。それは傲慢。貴方は知らず内に、他人の道を潰して歩いている。それすらも気付かず、進む」


 淡々と、俺の全てを否定する。

 だが、俺は怒る気もしない。


 それは重々解っている。

 いや、解っている何て言うのは駄目か。解らないからこそ、今の俺が居るのだ。


「その意見が、力を持たない者の声か?」

 目を瞑る。


「えぇ。そうよ。貴方の貫くモノの為に死んだ者。又は死に行く者の声」


「・・・で?」

 俺は目を開き、尋ねる。


「それがどうした?その声を聞いて俺が止まるとも?それは甘過ぎる。俺は俺だ。他人の意見で俺は道を違えない。俺を支配者と呼ぶなら呼べよ。俺はそんな枠に止まる程小さい人間じゃねぇー。いや、最早人間ではねぇーのかもな。化け物。それが俺に当てはまる言葉だ。俺は最早自分の為に動く化け物だよ」


 今の俺に道徳を説こうが無駄だ。

 もう、そんな事を考えても無駄な所まで来ている。


 人を殺した。

 それだけで道徳を踏み外すのには十分だ。


「俺は『無道』無い道を歩く者。俺は他人の歩んだ道は行かない。だが、俺の道の先に見えるのは何時も一つだ。俺はただただ、貫いて守るべき者を守るだけだ。それを邪と呼ぶなら呼べ。それが悪だと言うなら言え。俺はそれをはね除けて人々の前に立ってやるよ。その時に、俺が敵か味方かは解らないけどな」


 俺は化け物さ。


 人じゃねぇーんだ。

「化け物に道徳を説くな。俺は俺さ。支配者だと言いたいんなら言え。ご自由に」

 そう言って手を差し出す。


 モネは唖然としながら、直ぐに笑みを出す。

「そう。新鮮な意見ね。ふふ・・・面白いわ。自分か化け物言う人を初めて見たわ」


 強い女だね。


「俺がやろうとしているのは全部新鮮さ。悪だろうが、善だろうが、味方は着いて敵は現れる。そん中でどう動くかが、生きるって事さ」


「成る程ね。貴方は本当に化け物ね。人間って、自分の考えに敵が現れると進む事に戸惑う。そして、体の向きを変えて戻る。でも、貴方は戻らない。それが間違えでも、ね」


 俺は頬を吊り上げる。

「さっきの質問の答えだ。俺のダチの名前はカロナス=ナイハだ」


「カロナス?もしかして『探求する殺戮者』?生きていたの?」


「生きてはいるさ。今は離ればなれだけどな。アイツはこの国ではどう捉えられている?」


「彼は有名な人よ。でも、彼は誰にも心を開かない人だったわ」


 今のアイツでは想像出来ないな。


「有名人・・・それは『探求する殺戮者』のカロナス=ナイハでって事か?」


「えぇ。『謎喰い』って結構有名な組織だったのよ。禁忌を犯していた組織だけど、自分達の研究成果とかを国に提供していたりもしていたから、下手に手も出せなかったしね」


「その『謎喰い』って組織は今も在るのか?」


「いいえ。今はもう原型は残ってないと思う。もう謎と言う謎を食べ尽くしたんじゃない?」

 モネはそれ程興味なさそうに言う。


「成る程な。てか、俺何日寝ていた?」

 日にちが解らない。まぁ、起きていてもあまり関係無いのだが。


「此方に来て4日眠ってたわ。そりゃぁ~可愛い寝顔で」

 ニコリと微笑む。


 尊厳が・・・あっ、元々尊厳なんか無かったわ。

「4日か・・・国々に動きはあった?」


「うぅ~ん。文官って言っても他国の情報はそんなに入っては来ないのよ。今解るのは義賊『蒼』が『グラパス』に向かっているのと、悪魔の動きが活発になっているぐらいで、他国の情報は皆無よ」


 『蒼』?

「その義賊『蒼』って何だ?」


「貴方は本当に何も知らないのね」


「世間知らずなもんで」

 実際は異世界人なのだけれど。


 てか、もう異世界とかそんな設定要らないよね。薄々作者も気付てるよ。


「『蒼』って言うのは国に属さない組織で一番大きな組織。人数は100を超えるんじゃなかったかしら?目的は主に悪魔の討伐と戦争の被害に遭った村や人のケアとかね」


 へぇ~まともな組織だな。

 普通はそれを国々がしなければいけないのだが、世界規模の派閥争いでそれどころじゃねぇーんだろう。


「悪魔の動きが活発になっているって言うのは具体的にはどう言う事だ?」


 モネは顎に手を当てながら、

「最近までは悪魔もあまり姿を見せはしなかったの。でもね、ここ最近で悪魔の目撃情報が多発しているのよ。どうやら向こうも仕掛けに来るのかもね」


 動きを止めていた悪魔が動き出す。

 ソロモン72柱の悪魔が本気出せば簡単にこの世界潰せるだろうな。


 俺等に一体ずつとかチマチマした攻撃しか仕掛けて来なかったのは舐められていたって事だろうし、もうそろ向こうも痺れきらせるだろうしな。


 此所からは総力戦ってか。


「『無道』って悪魔の討伐もしているの?」


「討伐って程の事はしてない。まぁ、向こうからやって来るから相手しているだけだ」


「へぇ~色々な所から狙われているのね」

 他人行儀だな。まぁ、他人なんだが。


「てか、アンタ良いのか?俺みたいな他国の人間部屋に置いといて?バレたら首飛ぶんじゃね?」


 モネは態とらしく困った顔をして言う。

「そうなのよねぇ~貴方を助け事によって、私は死刑とかになってしまうかもしれないわ。貴方と言うまったく赤の他人を助けて匿ったばっかりに・・・」


 ・・・あれ?やばくね?何か行けない状況だよ。

 このままだと何かしら危ない目に遭うんじゃね?


「はぁ~私・・・死んじゃうのかな?」

 などと言いながらチラッと俺を見るモネ。


「ぐっ・・・いや、俺が出ていけば良いんだろ?なら出て行くぞ?」


「もし後々バレても死刑なんだろうな・・・」


「もう好きにしてくれ・・・」

 何だこの女は。助けてもらった俺が言うのは何だが、性根悪すぎるだろ?


「あらそう?悪いわね♪」

 またまた態とらしく。


「で、俺は何をすれば良い?大抵の事は出来るぞ」

 チートマンだからね。


「私が願いしたいのは、『ローズ』をこの国から逃亡させて欲しいの」


 ・・・・・・・・・・・・・・、

「ごめん。俺とアンタの間に変換機能が設置されているみたいだ。まるでアンタが『ローズ』を逃亡させてくれって俺に頼んでいる様に聞こえた。ごめん。もう一回言って」


 モネは可愛らしく首を傾げ、

「『ローズ』逃亡させちゃって♪」


 えっ?難易度高いよね?

 大抵の事出来るとは言ったけどさ、それって一歩間違えれば色々な所で・・・ヤバイよね?


 こめかみを押さえながら尋ねる。

「えぇ~と、まぁ『ローズ』を逃亡云々は良いとして、理由を聞かせてくれないかな?」


 いや、良くは無いけどね。話を進めないとね。


「何か、裏がこそこそしながら動き回っているのよ」


「裏?」


「まぁ、反王族派ね」


 おぅ・・・ドロドロな派閥争い。

 マジか・・まぁ、王族の政治が酷かったらそりゃぁ~起きるさな。


 すると、モネが察したのか言う。

「多分、今貴方が思っている事は間違えよ?反王族派って言うのはただただ王族が邪魔なだけ」


「どう言う事だ?」


「今の王族は確かにダメダメだけど、やる事はしっかりしているの。それでも国は不安定。何故だと思う?」


「・・・王族の周りが腐っているのか?」


 ピンッと指を俺に差し、頷く。

「そう。言わば反王族派は過激派。この泥沼化している戦争をどう自分達の勝利で終わらせるかしか考えていないの。その過程で、王族が邪魔って事」


「それと『ローズ』に何が関係有る?」


「『ローズ』がこの国に来たタイミングが可笑しいのよ」


 そう言って机の上に置かれた一枚の紙を手に取り読む。

「『ローズ』が此方に来たのって、丁度30年目なのよね」


「30年目?何がだ?」


「貴方、幻想実験って知っている?」


 幻想実験?初耳だな。良い響きじゃねーけど。


「その顔からして知らないのね。幻想実験って言うのは、30年前『アスリトン』で行われていた実験の名称。実験内容は極秘扱い。でも、大まかな事は解っているの」


 そこで言葉を切るモネ。

 どうやら、それ程の実験だったらしい。


 俺はそれを黙って聞いている。


「実験の内容は「人と言う枠を越え、全てを超越した生物を造り出す実験」。つまりは人外を造りだす為の実験なの」


 人外を造り出す?人体実験って事か。

「だが、それと30年目、そして『ローズ』と何が関係有るんだ?」


「30年に一度、『常夜の一週間』って呼ばれる陽が昇らない一週間が訪れるの。その時って何かしら不可思議な事が起きるのよ。後、それと『ローズ』の関係性は解らない。でも、タイミングが良すぎる。考え過ぎなら良いのけれど、注意して対策を取っておくのに早過ぎるは無いと思うの」


 『常夜の一週間』。また随分な現象が起きるもんだ。

 太陽が昇らない?どうせ真神がやったんだろうが、意味は有るのか?


「良くは理解出来てねぇーけど、『ローズ』が逃げる手助けをすれば良いんだろ。だが、『ローズ』が逃げる気がねぇーって言ったら、どうする?俺等只のお節介だぜ?」


「あの子達が何と言おうが、私は強行するわ」

 そう言うモネの表情は真剣だった。


「・・・何で、アンタはそこまでして肩入れする?下手すれば・・・いや、下手しなくともアンタも同罪で裁かれるぜ?」


「・・・私ね。夢があるの」


「夢?」


 モネは膝に置いてあった本を手に取る。

「人に何かを教える人になりたかったの。あの子達はね、十分な教育を受けずに戦闘技術だけを教え込まれて育ったの。だからね、少し・・・同情しちゃっただけ。傲慢よね。でも・・・そう思っちゃったから・・・」


 人に何かを教える人・・・か。立派過ぎる夢だな。


「そうか・・・まぁ、悪くない理由だろうさ。俺にそれを否定する事は出来ねぇーわ」


 自分以外の人間の為に。一歩間違えれば破滅。

 だが、そんな事気にせず行動出来る人間は少ない。


 俺も、自分の為の『無道』だ。

 少し羨ましいのかもしれないな。


「遂行してやるよ。命の礼にしちゃぁ、簡単過ぎる事かもしれねぇーけどな」


「ありがと」


 深く深く、深々と・・・様々な情に塗れた世界で・・・少しずつ泥濘に足を沈めて行く。


 この先にある事など、今の俺は考えてもいなかった―――・・・・。



 Side=サヤ∥Out























 Side=第三者∥Beginning∥『Reload』



 城とも言える程の大きな空間。

 その空間で、椅子に腰を掛ける4人の悪魔が居た。


「もう、探り合いは止しにした方が良いんじゃないかい?そろそろ他の悪魔達も痺れを切らせるよ?」

 オリアスがテーブルに足を投げ出した格好で言う。


「だが、パイモン爺がそれを黙って見過ごすと思うか?此方が動けば向こうは必ず止めに来る。悪魔同士の殺し合いは避けたい」

 マルバスが腕を組みながら言う。


「それでも、少し歩みを止め過ぎたのかもしれないな。それに、ソロモン72柱の悪魔も大分減ってしまったしな」

 ベリアルが目を瞑り静かに言う。


 ベリアルの言葉を聞いて、オリアスが笑みを浮かべる。

「へぇ~アンタもそんな事言うだね。私はてっきりマルバスと同じで反対意見だと思ったけど?」


「状況が状況だ。同士で討ち合うのは避けたいが、それ以上に今は緊急事態だ」


 すると、先程まで黙っていたバアルが口を開く。

「・・・『常夜の一週間』」


 3人は静かにバアルを見つめる。


「『常夜の一週間』の間に、我々は人間に攻撃を仕掛ける」


 その決定に笑みを浮かべたのはオリアス。

 マルバスは不満なのか顔を顰めるが、仕方無いと割り切り溜息を吐く。

 ベリアルはただただ、静かに目を瞑る。


「オリアスは『ガスティン』へ。マルバスは『シャクリード』。ベリアルは『ローデン』。ウァレフォルには『中立国』に。ダンタリオンには『アスリトン』へ。2人に伝えておいてくれ」


「で、誰が『グラパス』に行くの?」

 オリアスが尋ねる。


 バアルは静かに立ち上がり、

「私が行く」


 その言葉に3人は驚いた。


 バアルは3人を見ながら不敵に微笑む。

「『常闇の一週間』まで後7日。潰そうではないか。根絶やしにしようではないか。我々の為に・・・・」



 Side=第三者∥Out










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