表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/89

編集中




 Side=第三者∥Beginning∥『Reload』



 先に動いたのはバティフォーリ=ケスティマだった。


 だが、動きは見えずカロナス=ナイハは拳を腹に食らう。


「ぐはッッッッ!!!!」

 カロナスは後ろに跳ばされながら、掌をバティフォーリに向け、名も無き魔弾を放つ。


 バティフォーリはそれを簡単に避け、カロナスと距離を一瞬で詰める。

 そして、無表情で手刀をカロナスの喉元狙い突く。


「くッッッッッ!!!!!!!!」

 カロナスはそれを辛うじて躱すが、首筋に赤い線が走る。


 バティフォーリは止まらずに体を捻り蹴りを繰り出す。

 一回・・・二回・・三回・・・四回・・・。


 一回二回は躱すが、

「ぐはッッッ!!ごほッッッッ!!!!!」

 横っ腹と左腕に強烈な蹴りが入る。


 カロナスは蹌踉けて、後ろに下がる。

 だが、止まらない。


 バティフォーリは裏拳でカロナスの顎を殴る。

 カロナスは立ってられなく、膝を付く。


 口から流れる血を拭いながら顔を歪める。

「・・・体術だけでこれ程ですか・・・殆ど見えなかったですね」


 バティフォーリは体を揺らしながらカロナスに近づく。


 表情は無く、まるで何かに突き動かされている様に、何かを目指す様に。


 一瞬、バティフォーリの前足が前へ進む。

 その瞬間カロナスの目の前から姿を消す。


「なっ!―――――!!!!!!!」


 後ろから蹴りがカロナスの顔に入る。


「げふッッッッ!!!!!!」

 地面を転げながらカロナスは地面に手を付ける。


「『砂漠を満たせ―――湖水』」


 地面から水が湧き出し、満たされていく。


 だが、バティフォーリは気にせずに動き出そうとする。


「『動きを止めろ―――水縛』」

 透かさず詠唱する。


 バティフォーリの足下から水で出来た紐が足に絡み出す。


 だが、水の紐は一瞬で赤い光によって形を崩す。


 カロナスはそれを見ながら思考を巡らせていた。


 あの赤い光は魔法無効化の力が在るのか?

 だが、それを決めつけるのには早すぎる。


 カロナスはバティフォーリを見据えながら唱える。


「『動きを見るのは源の水―――命は全てを包み―――『水界・羽』』」


 水の上に水で造られた羽根が浮く。


 そして、カロナスは右手を水に沈める。


「『射貫け―――水砲』」


ドゴォォォォォォォォォォォォォォン!!!!!!!!!!


 満ちた水が上へ噴き出す。

 それによってカロナスとバティフォーリの間に水の壁が出来る。


 カロナスは直ぐには動かず、水の上に浮く羽根を見る。

 羽根は波が立っているのに動かず揺れず。


 だが、その羽根が水の中に沈む。

 それを見て、カロナスは動く。


 右に駆け出し、水の壁に向かって手を突き出す。


 そして掴む。


 水の壁が静かに落ちていく。

 カロナスは静かに見据える。


 カロナスの手が掴むはバティフォーリの首。

 だが、バティフォーリは表情を変えない。


「貴方にその表情は似合いませんよ?」

 微笑みはするが、その内心焦っていた。


ポタッ―――ポタッ―――・・・。


 カロナスの腹にバティフォーリの手が刺さっている。


 カロナスは微笑んだまんま、口から血を流す。

「・・・残念です。無傷で助ける事は・・・出来ない様ですね。ですが・・・殺して救済などと・・・言う・・・自分の無力を掲げる様な事はしません。今・・・貴方を止めないと・・・貴方は間違えを起こす。・・・・間違いに気付いた時にはそれは過ちに変わっているのですよ・・・私は・・・背負うモノはもう背負っているので・・・貴方のは背負いたくないのですよ・・・ですから・・・・止めますよ?フォーリ」


 カロナスは血を吐き出す。

 その血が水に落ちた瞬間、水が揺れる。


 血は水と混じり合い、そしてその血がカロナスとバティフォーリを囲む様に噴き出す。


 噴き出した血は2人の頭の上で結び合い、鳥籠の様な形になる。

 血の鳥籠は揺れる。


「・・・あまり好きな手段じゃないのですが、仕方無いと割り切ろうと思います。では・・・・目が覚めた時に、貴方が戻っている事を願いますよ・・・・何か奢って下さないね?」

 カロナスは微笑む。


「『全てを閉じ込め撃つは源の水―――命は全てを包む―――『水界・血』』」


 カロナスは唱える。


 血の鳥籠が揺れ、血が球体となりその球体が宙を浮きながら振動する。


 バティフォーリはそれを見つめながらカロナスの腹から手を抜こうとした瞬間、血の球体が凄まじい早さで動く。


ブシュブシュブシュッッッッッッ!!!!!!!!!!!!


ブシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!!!


 血の球体はカロナスとバティフォーリを貫く。



 Side=第三者∥Out


















 Side=???∥Beginning∥『Reload』



 今朝早く、伝令が回った。

 作戦内容は『アスリトン王国への奇襲』。


 ふざけた作戦だ。

 『黒い討伐隊』は討伐隊だぞ?戦争に出るんじゃないって言うのに・・・。


『アスリトン王国は危険な兵器の開発をしており、放って置けば人が死ぬ』・・・か。

 戦争でも人が死ぬ事を忘れているのか?


 それとも、全ては「我が国の為に」か。

 戦争で死んだ者の亡骸は何処へ行くのだ?花すらも添えられない・・・そんな糞みたいな死に方を望む。


 隊長に何言っても、「同じ殺しだ」とだけ言うだろうな。

 ・・・それはそうだ。


 討伐隊も糞みたいな殺しをしているだけ。

 逃げる者を追い、殺す。亡骸は無残に捨てたままだ。


 糞だらけだ・・・・、彼はどうだろうか?

 莫大な力を持った彼なら、俺と同じ考えを持ってくれるのか?


 いや、他人に自分の考えを望むのは駄目だ。

 だが、彼ならきっと自分の思った事をするのだろう。


 それに比べ、俺は惨めだな。

 上の命令を忠実に遂行する飼い犬。


 ・・・この考えも隊長に言わせれば「不毛な考え」とかで吐き捨てるだろうな。

 人間同士の戦いは何時終わるんだろうな・・・。


 何処までこんな輪廻が続くのか・・・。


 そんな中でも、俺等は剣を取るんだろうな。

 不毛に・・・殺し合うんだ。


 さてと、今回は俺が死ぬのか俺が殺すのか・・・。


 賭でもしようじゃないか・・・戦争さん。



 Side=???∥Out



















 Side=サヤ∥Beginning∥『Reload』



「うぅ~・・・・うぅ~・・・・」


 体が重い。

 何だ?それよりも、俺は今寝ているのか?


 こんな思考が回るって事は、少なくとも死んではねぇーだろうさ。

 さてと、この重いのはリアルかドリームか。


 瞼を開いて見ます・・・か。

「うぅ・・・・・・・・・・・・・んぁ?」


 目を開けた瞬間、俺の目の前に女性が。

 てか、何この状況。


 俺は首だけ捻り、辺りを見る。

 どっかの部屋の様だ。


 で、俺はベッドに横になっている。


 そして・・・、

「赤毛がキュートな貴女は誰ですか?」


 あれぇ~?何故馬乗り?

 俺何されそうになったの?もしかして・・・いや、そんなテンプレな状況・・・あり得ないでしょ?

 じゃぁ~何これ?


「あら、起きちゃったの?残念ね」

 赤毛の女性は可愛らしく首を傾げる。


「何が・・・残念で?」

 可愛らしいのに・・・何故だろう。色々な危機を感じる。


「あら、貴方が目覚めないから色々お世話して上げたのよ?お礼は?」


「あ、有難う・・・ごさいました」

 あれ、何か違うよね?


 そこで気付く。

 俺スーツ着てたよね?この服・・・・えっ?


「それは私が着替えさせたの。大丈夫よ?何もしていないから」

 そう言いながら微笑む。


 もしかして・・・俺の頭の中の警報が鳴り響いてるのって・・・貞操の危機?


 すると、赤毛の女性が悪戯に微笑む。

「結構立派なのをお持ちなのね♪」


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

「・・・・見たんですか?」


「見たわよ?ガン見した」

 ニコリと微笑む。


 俺は顔を引き攣らせる。


「・・・もうお嫁に行けない」

 俺は両手で顔を隠す。


 恥ずかしい。

 この歳で・・・無防備な時に・・・ガン見って・・・。


「てか、どいてはくれないのですかね?」


「嫌。だって私頑張ったもの。少しはご褒美が欲しいわ」

 そう言って微笑む。


 ご褒美?何それ。


 すると、赤毛の女性の顔が俺の顔と近づく。

 えっ!?まさかの!?まさかの!?


 そして、


「うぅ!!!うぅ~・・・・うっ!!!うっ!うっ!!!!!」

 舌!舌!舌!!!!


「ぷはぁ~!!!ご満悦」

 恍惚とした表情で微笑む赤毛の女性。


「いきなりディープって!!!俺ファーストだぞ!?」

 思わず叫ぶ。


「良いじゃない。立派なモノを咥えなかっただけでも褒めて欲しいわ」

 そう言って俺の上から退く赤毛の女性。


「咥えようとしたのかよ・・・・」

 もう好きな様にしてくれよ・・・。


「良いじゃない。醜女じゃないんだから。私自分で言うにはどうかと思うけど、美人でしょ?」

 そう言いながら微笑む。


「はぁ~・・・アンタ名前は?」

 溜息を吐き、尋ねる。


「私はモネ。モネ=アファよ」


「んじゃ、此所は何処だ?」

 俺はベッドから起き上がりながら尋ねる。


 モネは椅子に座り、足を組む。


 ・・・・結構きわどいの履いてるねぇ~。スリットあり得ないだろそれ。チャイナ服でももう少し生易しいよ。


「此所?此所は『アスリトン王国』のモネの部屋よ」


 『アスリトン』!?それって、確かカロの元所属していた世界派の国。

 だが、どうして?


「俺は・・・どう言う経緯で此所に居る?」

 自分に捲かれた包帯を見る。


 この怪我は・・・あの天パ悪魔との戦闘で・・・視界は戻っている。

 無事・・・じゃねぇーよな。傷の数があり得ない。


 それに、何だこの体に流れる魔力は?俺のじゃねぇーぞ。


「貴方を此所に転送したのは『ローズ』よ」


「『ローズ』?それって『勝利を約束する女神』が居る部隊か?」


「えぇ。凄い怪我だったらしいわ。感謝した方が良いわよ?」

 そう言いながらモネはティーカップに口を付ける。


「何で『ローズ』が?」


「それは知らないわ。私は貴方を監禁でもしといてと、しか聞かされてないの」


「監禁?」

 物騒な単語だ。


「えぇ。『アスリトン』は自国以外の人間には厳しいのよ。だから見つかったら大変よ?」

 そう言いながら微笑む。


「・・・モネも『ローズ』の隊員か?」


「私?違うわよ。私はただの文官よ」

 そう言い微笑む。


 ・・・良くは解らないが、助けられたって事で良いか。


「それじゃ~次は私が質問して良いかしら?」


「ん?俺は世間知らずなんでね。何にも答えられないぞ?」

 頬杖を突きながら笑う。


 すると、モネは本を手に取る。

 そして、本の文章を声に出して読む。

「『人を助けた。だが、その人は自分を語らない。人を助けた。だが、その人は相手を知ろうとしない』・・・・貴方は誰?」


 単刀直入だな。

 だが、この場での腹芸は意味を成さない。


 時に確信を突くのも重要・・・・てか。

「どんな答えを期待している?」


「質問に質問で返すのは邪道よ?」


「ハハッ!ごめんごめん!・・・んじゃ、話す事を話す前に尋ねる」

 笑みを消す。


「何かしら?」

 モネも笑みを消し、俺と向き合う。


「アンタは貫く事に何を感じる?」


 その質問に、一瞬モネは眉を細めるが直ぐに答える。

「感じる事は無いわ。それは各々の想いなのだから。だから、私は感じない。それは感じるモノじゃないから」


 真っ直ぐモネは俺を見据える。


「クク・・・面白い答えだ。まぁ、こんな質問したの今が初めてだから何とも言えねぇーんだけど、それでも面白いな」

 そう俺が言うと、モネが唖然とする。


 俺は笑うのを止め、モネを見ながら答える。

「俺は『無道』のサヤだ」


 その瞬間、モネの表情が固まり、手に取った本を床に落とした。



 Side=サヤ∥Out



























 Side=第三者∥Beginning∥『Reload』



 血の海の中で、カロナスは倒れていた。

 動かず、ただただ倒れていた。


 死んでいる。

 そう見える程に静かに、血だらけで。


 その目の前で、バティフォーリは膝を付きながら空を仰いでいた。


 目を限界まで開き、血だらけになりながら何かを思う様に。

 その瞬間、バティフォーリが赤い光に包まれる。


 そして、光が傷口に集まり傷口を再生していく。

 ものの数分。その間に完治する。


 バティフォーリの目に生気が戻る。

 静かに、首を動かしカロナスを見る。


 そして、赤い涙を流す。

「すまない・・・カロ・・」


 そう呟き立ち上がる。

 もう一度空を見上げる。


 そして、歩き出す。

 血を踏み、ゆっくりと。


 顔を憎悪に歪め――――・・・・。



 Side=第三者∥Out











評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ