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Side=第三者∥Beginning∥『Reload』
先に動いたのはバティフォーリ=ケスティマだった。
だが、動きは見えずカロナス=ナイハは拳を腹に食らう。
「ぐはッッッッ!!!!」
カロナスは後ろに跳ばされながら、掌をバティフォーリに向け、名も無き魔弾を放つ。
バティフォーリはそれを簡単に避け、カロナスと距離を一瞬で詰める。
そして、無表情で手刀をカロナスの喉元狙い突く。
「くッッッッッ!!!!!!!!」
カロナスはそれを辛うじて躱すが、首筋に赤い線が走る。
バティフォーリは止まらずに体を捻り蹴りを繰り出す。
一回・・・二回・・三回・・・四回・・・。
一回二回は躱すが、
「ぐはッッッ!!ごほッッッッ!!!!!」
横っ腹と左腕に強烈な蹴りが入る。
カロナスは蹌踉けて、後ろに下がる。
だが、止まらない。
バティフォーリは裏拳でカロナスの顎を殴る。
カロナスは立ってられなく、膝を付く。
口から流れる血を拭いながら顔を歪める。
「・・・体術だけでこれ程ですか・・・殆ど見えなかったですね」
バティフォーリは体を揺らしながらカロナスに近づく。
表情は無く、まるで何かに突き動かされている様に、何かを目指す様に。
一瞬、バティフォーリの前足が前へ進む。
その瞬間カロナスの目の前から姿を消す。
「なっ!―――――!!!!!!!」
後ろから蹴りがカロナスの顔に入る。
「げふッッッッ!!!!!!」
地面を転げながらカロナスは地面に手を付ける。
「『砂漠を満たせ―――湖水』」
地面から水が湧き出し、満たされていく。
だが、バティフォーリは気にせずに動き出そうとする。
「『動きを止めろ―――水縛』」
透かさず詠唱する。
バティフォーリの足下から水で出来た紐が足に絡み出す。
だが、水の紐は一瞬で赤い光によって形を崩す。
カロナスはそれを見ながら思考を巡らせていた。
あの赤い光は魔法無効化の力が在るのか?
だが、それを決めつけるのには早すぎる。
カロナスはバティフォーリを見据えながら唱える。
「『動きを見るのは源の水―――命は全てを包み―――『水界・羽』』」
水の上に水で造られた羽根が浮く。
そして、カロナスは右手を水に沈める。
「『射貫け―――水砲』」
ドゴォォォォォォォォォォォォォォン!!!!!!!!!!
満ちた水が上へ噴き出す。
それによってカロナスとバティフォーリの間に水の壁が出来る。
カロナスは直ぐには動かず、水の上に浮く羽根を見る。
羽根は波が立っているのに動かず揺れず。
だが、その羽根が水の中に沈む。
それを見て、カロナスは動く。
右に駆け出し、水の壁に向かって手を突き出す。
そして掴む。
水の壁が静かに落ちていく。
カロナスは静かに見据える。
カロナスの手が掴むはバティフォーリの首。
だが、バティフォーリは表情を変えない。
「貴方にその表情は似合いませんよ?」
微笑みはするが、その内心焦っていた。
ポタッ―――ポタッ―――・・・。
カロナスの腹にバティフォーリの手が刺さっている。
カロナスは微笑んだまんま、口から血を流す。
「・・・残念です。無傷で助ける事は・・・出来ない様ですね。ですが・・・殺して救済などと・・・言う・・・自分の無力を掲げる様な事はしません。今・・・貴方を止めないと・・・貴方は間違えを起こす。・・・・間違いに気付いた時にはそれは過ちに変わっているのですよ・・・私は・・・背負うモノはもう背負っているので・・・貴方のは背負いたくないのですよ・・・ですから・・・・止めますよ?フォーリ」
カロナスは血を吐き出す。
その血が水に落ちた瞬間、水が揺れる。
血は水と混じり合い、そしてその血がカロナスとバティフォーリを囲む様に噴き出す。
噴き出した血は2人の頭の上で結び合い、鳥籠の様な形になる。
血の鳥籠は揺れる。
「・・・あまり好きな手段じゃないのですが、仕方無いと割り切ろうと思います。では・・・・目が覚めた時に、貴方が戻っている事を願いますよ・・・・何か奢って下さないね?」
カロナスは微笑む。
「『全てを閉じ込め撃つは源の水―――命は全てを包む―――『水界・血』』」
カロナスは唱える。
血の鳥籠が揺れ、血が球体となりその球体が宙を浮きながら振動する。
バティフォーリはそれを見つめながらカロナスの腹から手を抜こうとした瞬間、血の球体が凄まじい早さで動く。
ブシュブシュブシュッッッッッッ!!!!!!!!!!!!
ブシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!!!
血の球体はカロナスとバティフォーリを貫く。
Side=第三者∥Out
Side=???∥Beginning∥『Reload』
今朝早く、伝令が回った。
作戦内容は『アスリトン王国への奇襲』。
ふざけた作戦だ。
『黒い討伐隊』は討伐隊だぞ?戦争に出るんじゃないって言うのに・・・。
『アスリトン王国は危険な兵器の開発をしており、放って置けば人が死ぬ』・・・か。
戦争でも人が死ぬ事を忘れているのか?
それとも、全ては「我が国の為に」か。
戦争で死んだ者の亡骸は何処へ行くのだ?花すらも添えられない・・・そんな糞みたいな死に方を望む。
隊長に何言っても、「同じ殺しだ」とだけ言うだろうな。
・・・それはそうだ。
討伐隊も糞みたいな殺しをしているだけ。
逃げる者を追い、殺す。亡骸は無残に捨てたままだ。
糞だらけだ・・・・、彼はどうだろうか?
莫大な力を持った彼なら、俺と同じ考えを持ってくれるのか?
いや、他人に自分の考えを望むのは駄目だ。
だが、彼ならきっと自分の思った事をするのだろう。
それに比べ、俺は惨めだな。
上の命令を忠実に遂行する飼い犬。
・・・この考えも隊長に言わせれば「不毛な考え」とかで吐き捨てるだろうな。
人間同士の戦いは何時終わるんだろうな・・・。
何処までこんな輪廻が続くのか・・・。
そんな中でも、俺等は剣を取るんだろうな。
不毛に・・・殺し合うんだ。
さてと、今回は俺が死ぬのか俺が殺すのか・・・。
賭でもしようじゃないか・・・戦争さん。
Side=???∥Out
Side=サヤ∥Beginning∥『Reload』
「うぅ~・・・・うぅ~・・・・」
体が重い。
何だ?それよりも、俺は今寝ているのか?
こんな思考が回るって事は、少なくとも死んではねぇーだろうさ。
さてと、この重いのはリアルかドリームか。
瞼を開いて見ます・・・か。
「うぅ・・・・・・・・・・・・・んぁ?」
目を開けた瞬間、俺の目の前に女性が。
てか、何この状況。
俺は首だけ捻り、辺りを見る。
どっかの部屋の様だ。
で、俺はベッドに横になっている。
そして・・・、
「赤毛がキュートな貴女は誰ですか?」
あれぇ~?何故馬乗り?
俺何されそうになったの?もしかして・・・いや、そんなテンプレな状況・・・あり得ないでしょ?
じゃぁ~何これ?
「あら、起きちゃったの?残念ね」
赤毛の女性は可愛らしく首を傾げる。
「何が・・・残念で?」
可愛らしいのに・・・何故だろう。色々な危機を感じる。
「あら、貴方が目覚めないから色々お世話して上げたのよ?お礼は?」
「あ、有難う・・・ごさいました」
あれ、何か違うよね?
そこで気付く。
俺スーツ着てたよね?この服・・・・えっ?
「それは私が着替えさせたの。大丈夫よ?何もしていないから」
そう言いながら微笑む。
もしかして・・・俺の頭の中の警報が鳴り響いてるのって・・・貞操の危機?
すると、赤毛の女性が悪戯に微笑む。
「結構立派なのをお持ちなのね♪」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「・・・・見たんですか?」
「見たわよ?ガン見した」
ニコリと微笑む。
俺は顔を引き攣らせる。
「・・・もうお嫁に行けない」
俺は両手で顔を隠す。
恥ずかしい。
この歳で・・・無防備な時に・・・ガン見って・・・。
「てか、どいてはくれないのですかね?」
「嫌。だって私頑張ったもの。少しはご褒美が欲しいわ」
そう言って微笑む。
ご褒美?何それ。
すると、赤毛の女性の顔が俺の顔と近づく。
えっ!?まさかの!?まさかの!?
そして、
「うぅ!!!うぅ~・・・・うっ!!!うっ!うっ!!!!!」
舌!舌!舌!!!!
「ぷはぁ~!!!ご満悦」
恍惚とした表情で微笑む赤毛の女性。
「いきなりディープって!!!俺ファーストだぞ!?」
思わず叫ぶ。
「良いじゃない。立派なモノを咥えなかっただけでも褒めて欲しいわ」
そう言って俺の上から退く赤毛の女性。
「咥えようとしたのかよ・・・・」
もう好きな様にしてくれよ・・・。
「良いじゃない。醜女じゃないんだから。私自分で言うにはどうかと思うけど、美人でしょ?」
そう言いながら微笑む。
「はぁ~・・・アンタ名前は?」
溜息を吐き、尋ねる。
「私はモネ。モネ=アファよ」
「んじゃ、此所は何処だ?」
俺はベッドから起き上がりながら尋ねる。
モネは椅子に座り、足を組む。
・・・・結構きわどいの履いてるねぇ~。スリットあり得ないだろそれ。チャイナ服でももう少し生易しいよ。
「此所?此所は『アスリトン王国』のモネの部屋よ」
『アスリトン』!?それって、確かカロの元所属していた世界派の国。
だが、どうして?
「俺は・・・どう言う経緯で此所に居る?」
自分に捲かれた包帯を見る。
この怪我は・・・あの天パ悪魔との戦闘で・・・視界は戻っている。
無事・・・じゃねぇーよな。傷の数があり得ない。
それに、何だこの体に流れる魔力は?俺のじゃねぇーぞ。
「貴方を此所に転送したのは『ローズ』よ」
「『ローズ』?それって『勝利を約束する女神』が居る部隊か?」
「えぇ。凄い怪我だったらしいわ。感謝した方が良いわよ?」
そう言いながらモネはティーカップに口を付ける。
「何で『ローズ』が?」
「それは知らないわ。私は貴方を監禁でもしといてと、しか聞かされてないの」
「監禁?」
物騒な単語だ。
「えぇ。『アスリトン』は自国以外の人間には厳しいのよ。だから見つかったら大変よ?」
そう言いながら微笑む。
「・・・モネも『ローズ』の隊員か?」
「私?違うわよ。私はただの文官よ」
そう言い微笑む。
・・・良くは解らないが、助けられたって事で良いか。
「それじゃ~次は私が質問して良いかしら?」
「ん?俺は世間知らずなんでね。何にも答えられないぞ?」
頬杖を突きながら笑う。
すると、モネは本を手に取る。
そして、本の文章を声に出して読む。
「『人を助けた。だが、その人は自分を語らない。人を助けた。だが、その人は相手を知ろうとしない』・・・・貴方は誰?」
単刀直入だな。
だが、この場での腹芸は意味を成さない。
時に確信を突くのも重要・・・・てか。
「どんな答えを期待している?」
「質問に質問で返すのは邪道よ?」
「ハハッ!ごめんごめん!・・・んじゃ、話す事を話す前に尋ねる」
笑みを消す。
「何かしら?」
モネも笑みを消し、俺と向き合う。
「アンタは貫く事に何を感じる?」
その質問に、一瞬モネは眉を細めるが直ぐに答える。
「感じる事は無いわ。それは各々の想いなのだから。だから、私は感じない。それは感じるモノじゃないから」
真っ直ぐモネは俺を見据える。
「クク・・・面白い答えだ。まぁ、こんな質問したの今が初めてだから何とも言えねぇーんだけど、それでも面白いな」
そう俺が言うと、モネが唖然とする。
俺は笑うのを止め、モネを見ながら答える。
「俺は『無道』のサヤだ」
その瞬間、モネの表情が固まり、手に取った本を床に落とした。
Side=サヤ∥Out
Side=第三者∥Beginning∥『Reload』
血の海の中で、カロナスは倒れていた。
動かず、ただただ倒れていた。
死んでいる。
そう見える程に静かに、血だらけで。
その目の前で、バティフォーリは膝を付きながら空を仰いでいた。
目を限界まで開き、血だらけになりながら何かを思う様に。
その瞬間、バティフォーリが赤い光に包まれる。
そして、光が傷口に集まり傷口を再生していく。
ものの数分。その間に完治する。
バティフォーリの目に生気が戻る。
静かに、首を動かしカロナスを見る。
そして、赤い涙を流す。
「すまない・・・カロ・・」
そう呟き立ち上がる。
もう一度空を見上げる。
そして、歩き出す。
血を踏み、ゆっくりと。
顔を憎悪に歪め――――・・・・。
Side=第三者∥Out