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Side=第三者∥Beginning∥『Reload』
城と言われても可笑しくない建物。
その中で深紅の髪を靡かせる悪魔、ベリアルが椅子に腰を掛け眉間に皺を寄せていた。
その向かいにはオールバックの悪魔マルバス。
その隣にはオリアスがテーブルに足を投げ出し座っていた。
「で、内の部下共は私に許可を取らずに抹殺に向かったと言う事かい?」
オリアスは不機嫌を隠す事もせずに、露骨に苛ついた表情をする。
「お前が自室から出て来ないからだろ?何度もノックはしたぞ?」
マルバスが目を瞑りながら言う。
「チッ!」
オリアスは舌打ちをしてそのまま喋らなくなる。
そこに、杖を突く音が響く。
「ホホホ・・・年寄りに階段はキツイわぃ・・・」
杖を突く老人が腰を曲げ、覚束無い足取りで歩いて来る。
「パイモン爺・・・階段は有りませんよ?」
マルバスが目を瞑ったままツッコム。
「ホホホ・・・先程林檎を食べたのじゃが、入れ歯を無くしてのぉ~何処にあったと思う?」
マルバスのツッコミを完全にスルーして問題を出す。
オリアス・ベリアルの2人は完全に無視している為、マルバスだけが答える。
「さぁ~何処にあったんですか?」
「晩ご飯はまだかのぉ~」
もう次の話に変わっている。
「2時間後ぐらいでは?」
「何と入れ歯は林檎に食い込んでいたんじゃよ!丸ごと齧るのは駄目だのぉ~」
話が戻っている。
マルバスは大きく溜息を吐く。
「爺ちゃん!こんな所で何してるの!!」
扉が開き、そこから少年が駆けて来る。
「おぉ~プルソンかのぉ~?」
「そうだよ爺ちゃん。林檎に入れ歯が刺さってたよ?あれはどう言う儀式?」
プルソンは林檎をパイモンの目の前に出す。
綺麗に前歯が林檎に突き刺さっている。
「ホホホ・・・芸術じゃよ」
「何が芸術だよ!もう行くよ?晩ご飯早めに食べちゃおう!最近爺ちゃん食べないで寝て夜中起きてお腹すいた言うんだもん!」
プルソンはパイモンの腕を掴みながら引っ張る。
「ホホホ・・お腹すいたわぃ~・・・それよりも」
そこでパイモンは止まる。
声の雰囲気が少しだけ変わる。
その瞬間、マルバス・オリアス・ベリアルの表情が変わる。
パイモンは振り返らずに、杖を突きながら言う。
「お主等・・・ちょいと同胞を殺し過ぎじゃのぉ~。儂等は干渉せんが、これ以上は無いぞ?」
それを聞いて、オリアスが立ち上がろうとした瞬間、プルソンがパイモンの目の前から消え、オリアスの肩を掴み座らせる。
「ふざけた事はしない方が良いよ?君じゃ勝てない。いや、君達では勝てない」
プルソンは静かに殺気を放つ。
それには、オリアスも黙るしかない。
「ホホホ・・・プルソぉ~ン!お腹すいたわぃ」
そう言って歩き出すパイモン。
プルソンはまた一瞬でパイモンの横に移動し、肩を抱きながら部屋から出て行く。
その様子を見ながら、ベリアルが大きく息を吐く。
「温厚派のパイソン・・・・あれは強大過ぎる」
「呆けたフリしやがって・・・」
オリアスが頬杖をつきながら吐き捨てる。
「呆けは老人の専売特許だと言っていたな」
マルバスが目を瞑りながら言う。
「老いで死にやがれ・・・」
オリアスも静かに目を瞑る。
Side=第三者∥Out
Side=マド=ホーク∥Beginning∥『Reload』
温かい。
何だろうか?
それよりも、私は今・・・何処に居る?
目を瞑っているのか?
暗い・・・暗闇が広がる。
私、どうなったの?
確か、悪魔と戦って・・・・。
そこで記憶がフラッシュバックする。
そこには、泣き叫ぶリノの姿があった。
「リノ!!!!!!!!」
私は勢い良く起き上がる。
肩で息をしながら、汗を拭う。
「お!起きたみたいだな。頭!!1人起きましたよ!!!」
私の横に立つ金髪に蒼いバンダナを巻いた青年が叫ぶ。
誰・・・?
無意識にポケットから小瓶を取り出す。
すると、
「おぉ~起きたか!死んだかと思ったけど、良かったわぁ~」
そこで私は驚愕する。
「なっ!?ナイズ=ミレット!!と、言う事は、アンタ達は『蒼』!?」
私は立ち上がり、後ろに下がりながら小瓶を取り出す。
「ん?ワテの名前知っとる言う事は・・・『ローデン』の人間か?せやけど、何故あないな所で倒れておったんや?」
ナイズ=ミレットが腕を組み、首を傾げながら尋ねてくる。
「倒れていた?・・・・!?リノとジンは!?」
辺りを見ながら叫ぶ。
「ん?捜しているのは女の子と男の子か?アンタの後ろで寝ているわ」
そう言って指を差す。
私は振り返り、2人を見る。
リノは外傷もなく、寝ているがジンは体中に包帯が巻かれている。
「ワテ等が着いた時にはもう倒れておったわ」
ナイズ=ミレットは頭を掻く。
「・・・悪魔は?」
「ん?悪魔?アンタ等悪魔と戦っておったのか?せやけど、その場に悪魔の姿は無かったで?ん?と、言う事はあの時上がった火柱は悪魔の仕業やったちゅう事か?」
ナイズ=ミレットが可笑しな事を言う。
「火柱?あの悪魔の能力は・・・・」
まさか!!
リノを見る。
外傷は無い。
もしかして・・・フェニックスの力!?
リノはフェニックスの娘だ。それならば、アイツの能力が使えても可笑しくはない。
けれども、使いこなす事は出来ない筈。ならば・・・暴走か?
「おいおい、勝手に納得しとるらしいけど、ワテ等一応アンタ等の命の恩人やで?感謝の一つや二つしても損はないやろ?」
・・・・、
「有難う」
素直に頭を下げた。
「うん!素直が一番や!!」
そう言いながら、ナイズ=ミレットは笑う。
私はチラリと見る。
この男が、『二首の狼』。
イメージと違う。聞いた話ではもっと好戦的な男だと思ったが・・・。
「そんじゃ、説明はしてくれるんか?」
「説明?」
ナイズ=ミレットは腕を組みながら微笑む。
「そや、まずはアンタの事や。名前を名乗ってもらいたいところやな」
そこで私は考える。
この男は元『ローデン』の人間だ。
私の名前を出したら、バレないか?
もしバレたら色々と面倒だ。
「ん?名前言えないんか?それはちょっと困るなぁ~」
微笑みながら言ってはいるが、目は笑っていない。
殺気は篭められてないが、偽名を使っても見抜かれる。そんな感じがする。
これが、『二首の狼』の『蒼い傷』。侮れない。
「マド・・・マド=ホーク」
そう私が名乗った瞬間、ナイズ=ミレットが驚くが直ぐに微笑みに戻す。
「そうか!なら、アンタはどっかの組織の人間か?」
何故何も言わない?
気を遣っているのか?
掴めない・・・。
「私は別に組織に入ってはいない。けれども・・・・」
私は後ろで寝ている2人を見る。
「ん?その2人は何処かの組織に属しておんのか?」
言って良いのだろうか?
『無道』はもう大々的に名知れ始めているだろう。
賞金が賭けられているかもしれない。
安易に言っても良いのか?
私が言葉を選んでいると、
「ん?それは言えないのか?まぁ~名前聞いただけでも儲けと思った方が良さそうやな」
ナイズ=ミレットはニヤリと笑う。
「アンタ、少し深読みし過ぎたようやな。別に偽名使ってもワテは何もせんかったよ?」
「なっ!?」
私は思わず睨む。
「おぉ~怖ッ!そない睨まんでもええやんか!!」
そう言いながらも笑っている。
苦手なタイプだ・・・・。
「まぁ~今は休んどいた方がええで?傷口まだ痛むやろ?」
そう言いながら、私の胸を指さす。
「変態」
「なっ!!変態ちゃうで!!それとマイク!!お前何笑っとるんや!!」
忙しい男だ。
胸の傷に触れる。
鈍い痛みが体を走る。
「包帯は誰が?・・・まさか、アンタじゃないでしょうね?」
軽く睨む。
すると、慌てて首を横に振る。
「ちゃうで!!ワテやなくてちゃんと女にやってもらったわ!!!」
「まぁ、見られても良いんだけどね」
「「何!?」」
ナイズ=ミレットとマイクと呼ばれた男は同時に声を上げる。
「変態」
「「なっ!!」」
2人はそのまま地面に崩れ落ちる。
「期待させといて・・・これはあんまりや」
「ホントですよ。もう女性怖いですよ。あっ!それとフリーディアさんに言っておきますから。頭は安心して下さい」
「なっ!!安心出来るか!半殺しにされるわ!!」
ナイズ=ミレットは勢い良く立ち上がり、叫ぶ。
「半殺しならまだ良い方ですよ。治るんだし。精神崩壊の方が危険ですよ」
「・・・・言わんとってね」
「さぁ~・・・俺が言わなくともケニーが言うかもしれません」
「あの天然爆弾が!!!」
そう叫び、再度崩れ落ちる。
中々面白いわね。
思わず微笑む。
『蒼』は国に属さない組織の中では一番大きい。
主な行動は悪魔の討伐と戦争に巻き込まれた村などのケア。
危険度は無い為、国々は賞金を賭けたりはしていない。
だが、頭のナイズ=ミレットだけは賞金首だ。
元『ローデン』の大佐。
『二首の狼』と呼ばれた1人。
離反した経緯は知らないが、『ローデン』で彼の名前を聞く頻度は多かった。
中傷した事や、褒め称える事など。様々な話を聞いた。
けれども、誰も離反した理由は知らなかった。
表面上ではふざけてはいるが、内面では何を考えているか解らない。
あまり長居は出来ない。
だが、リノとジンが起きるまでは動けないし。
利用するか。
「所で、アンタ達はこれから何処に向かうの?」
私が尋ねると、俯いてブツブツ呟いていたナイズ=ミレットは顔を上げて答える。
「一応の目的は『無道』と会う事や」
やはり、『無道』・・・。
「あぁ~『ローデン』の兵を負かした組織の事?」
「そや!アンタ何か知っとるか!?」
好都合ね。
「知っているわよ」
「おぉ!!!何処に居るか解るのか!?」
そう言って私の側にもの凄い速さで駆けて来る。
「確か・・・『グラパス』じゃなかったかしら?そんな話を聞いた様な気がするけれど?」
「おぉ!!!有力な情報や!!感謝するで!!!」
喜ぶナイズ=ミレット。
すると、顔を耳の側に寄せ、呟く。
「今は利用されてやるわ・・・せやけど、あまりワテ等の邪魔すんやないで」
背筋が凍った。
この男は・・・一体・・・。
「そんじゃ!今はアンタは休んどき!!明日から『グラパス』目指すで!!」
そう言って私から離れる。
一瞬、地面に崩れ落ちそうになったが、必死に足に力を入れる。
そして、ナイズ=ミレットを見つめる。
この男は・・・くせ者だ。
全て見抜かれている。
これが、『蒼い傷』・・・・。
利用されないように気を付けないと。
Side=マド=ホーク∥Out
Side=第三者∥Beginning∥『Reload』
「攻撃!?」
1人の老人が声を上げる。
巨大なテーブル。
そして、大きな椅子に座る者達が10人。
皆何とも言えぬ雰囲気を纏い、話し合いをしている。
「あぁ。あの国の兵器は些か凶悪過ぎる。今の内に潰すのが得策だろう」
もう1人の老人が腕を組みながら言う。
「だが、『無道』の方は!?」
「私の予想だと、『無道』は戦争に介入するのが目的だと思われる。それならば、此方が攻撃を始めれば、自然と炙り出せる。これなら、『黒い討伐隊』を駆り出す必要も無い」
老人はそう言いながら、金色に輝く椅子に座る老人に目をやる。
「王よ。どうでしょうか?」
王と呼ばれた老人は、目を瞑ったまま喋らない。
暫くの間。
そして、王は静かに目を開く。
「それで行こうではないか」
そう言い立ち上がる。
「我等『シャクリード』は『アスリトン』に攻撃を仕掛ける!!」
王はそのまま続ける。
「『黒い討伐隊』も参加させ、『灰の暗殺隊』は『アスリトン』に潜らせる。そして、『白い空撃隊』で大々的に攻撃しようではないか。そう・・・全てはこの国の為に!!!!」
この場に居る全ての者が立ち上がり、胸に手を当て叫ぶ。
「「「「「「「「「「全てはこの国の為に!!!!!」」」」」」」」」」
動き出す。戦争と言う2文字が、まるで結末を急かす様に動き出す。
それは破滅への道か?それとも栄光への道か?
その中で、知らず内に『無道』は戦争の一部のピースになろうとしている事を、今は誰も知らない。
Side=第三者∥Out