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 Side=キュキュシュ∥Beginning∥『Reload』



 『モーレス』との戦いは一応は『アスリトン』の勝ちで終わったのだが、それは自分達の力ではないのは一目瞭然だ。


 乱入した『無道』のサヤと名乗る人によって、『モーレス』の兵大半を撃破。

 そして、『アスリトン』の兵も潰された。


 彼は本当に敵味方無く攻撃した。

 『無道』・・・・一体どう言う組織なのだろうか?

 サヤ・・・・一体どう言う人なのだろうか?


 悪人?善人?

 解らない。けれども、助けられたのは事実。

 そして、強大な力を持っていたのも解る。


「・・・キュキュシュ。アンタ今誰の事考えてるの?」

 並んで歩くキャサティアが尋ねてくる。


「えっ!?べ、別にあのサヤって人の事は考えてないよ!!」


「それは考えてますって言っているもんだよ?」

 苦笑する。


「あっ・・・今の忘れて!!もう一回!もう一回!!!」

 顔が赤くなる。恥ずかしい!!!


「えぇー。キュキュシュにもついに春が?それで、サヤって乱入したあの人ですよね?私最初女の子だと思いましたよ」

 アストが後ろで手を組みながら言う。


「でも格好良かったわねぇ。彼は何者なのかしらねぇ」

 グラが微笑む。


「フンッ!賊には変わり無いだろ?」

 キャサティアは眉を細める。

 どうやら彼の事を嫌いな様だ。


「あ・・・思い出した!!ど忘れしてました!」

 金髪ポニーテイルのミルネがポンッ!と手を叩く。


「思い出したって何が?」

 アストが尋ねる。


 ミルネは此方を見渡す。

「『無道』って『中立国』に侵攻していた『ローデン』の軍勢を数名で破った組織の名ですよ!!!」


 『ローデン』の軍勢を・・・。

 それにはかなり驚いた。


「一体・・・アイツは何者だ?」

 キャサティアは腕を組み呟く。


 それは皆同じ事を思っていた。

 『無道』と言う組織は今まで聞いた事が無かった。


 それが、『ローデン』の軍勢を撃破し、『モーレス』の軍勢を1人で再起不能まで追い込んだ。


 そんな凄い人物が、今まで何処の国にも属さずに身を潜めていた?

 一体・・・何者なんだ?


「ミルネは何処でそんな情報を?」

 アストがミルネを見ながら尋ねる。


 ミネルは顎に人差し指を当てながら答える。

「盗み聞きをしました!!」


 何故か威張るミルネ。


「噂やそう言った話好きねぇ」

 グラが呆れた様に溜息を吐く。


「でも、直に知らされますよ。彼等はどうやら大々的に自分達を宣伝している様ですしね」


 確かに、サヤと名乗った彼も自分の事を叫んでいた。

 何かコレにも理由があるのだろうか?


 ふと、森の方に目をやる。

「ん?」


 森の中で何かが輝いている。

 けれども、それは凄く小さく目を細めて見ないと見えない程に。


「キャサティア・・・あれ何かな?」

 私は光を見ながら尋ねる。


「ん?・・・ん~・・・光だな。誰か居るのか?」

 キャサティアも目を細めながら見る。


「行ってみますか?」

 アストもその光を見ながら小声で尋ねる。


「視えないのか?」

 キャサティアがアストに尋ねる。


「光が邪魔してハッキリ解らないんですよ。・・・でも、人なのは解ります」

 アストは光を見つめる。


「取りあえず行ってみる?」


「そうだな。けれど、私達以外の部隊の人間にバレない様に行くぞ?色々五月蠅いからな」

 小声で言い、キャサティアと私が森の方に歩いて行く。


「おい!!何処に行くんだ!?」

 兵士の1人が私達に気付く叫ぶ。


 キャサティアは手を振りながら、

「お手洗いでぇ~す」

 と、適当に答える。


「早く戻って来いよ!!」


「了解でぇ~す」

 私とキャサティアは森の中に入って行く。


 光は歩けど歩けど近くはならない。

 それはまるで光が小さくなっている様に。


「・・・血の臭い」

 キャサティアが呟く。


「誰かかが死んでいるとか、そう言ったオチじゃないよね?」

 私はキャサティアの後ろに隠れながら尋ねる。


「死体が発光するとか聞いた事ないから大丈夫だと思うが・・・尋常じゃない程血の臭いが充満している・・・動物の死骸かもしれないな」

 キャサティアが怖い事を言う。


『汝に願う―――彼を頼むと』


「えっ!?」

 声が、響く。


「どうした?」

 キャサティアには聴こえてないらしい。


『汝に願う―――彼を頼むと』


 再度お願いされる。

 けれども、彼とは一体誰?


 すると、キャサティアがいきなり止まる。


 私は頭の中で響く声に気を取られてキャサティアの背中にぶつかる。

「きゃっ!・・・うぅ~一体どうしたの?」


 鼻を擦りながら尋ねる。


 すると、キャサティアが銃を抜く。

「誰か居るぞ」


 その一言で私は一気に緊張を高める。


「此所で待ってろ。見てくる」

 そう言って進むキャサティア。


 茂みをかきわけ、先に進む。


 暫くして、キャサティアの声が響く。

「なっ!!!!!!」


「キャサティア!?」

 私は後を追い駆け出す。


 すると、差ほど離れてない所で、キャサティアが棒立ちしていた。

 私は安堵し、キャサティアに近づこうとすると、


ビチャッ――――・・・・。


 足下が濡れている。

 けれどもここら辺は最近雨など降ってはいない。

 では・・・・。


 私は静かに地面を見る。

 赤い。赤い液体・・・。


「ひっ!!!」

 吃驚しキャサティアにしがみつく。


 すると、キャサティアの目の前に居るモノを目にする。

「・・・この人は・・・」


 そこには、血塗れで横たわる・・・・先程まで話をしていた彼が居た。

 私は急いで駆け寄り、首筋に手を当てる。

「・・・・生きてる。でも、この血の量は・・・」


 キャサティアの方を振り返り、声を張り上げる。

「急いでグラとミデミナに連絡して!!!早くしないと死んでしまう!!!」


 それを聞いてキャサティアはポケットから魔法石を取り出し、耳に当てて連絡する。

「私だ!急いでグラとミデミナは此方に来てくれ!えっ!?兵士が見てくる?そんなもんお手洗いとか適当に理由付けろ!!付いて来たら変態とでも叫んで殴れ!!」


 私はどうしたら良いか解らなくなる。

「駄目・・・もう危ない状況・・・どうしよう・・どうしたら良いの!?」


「落ち着け!!グラとミデミナが直ぐに来る!!」


「でも・・・でも・・・」

 私は知らない内に目に涙を溜めていた。


「魔力も感じられないし・・・一体・・・」

 そこで、私は彼の表情を見る。


 穏やかで、死と隣り合わせの人間の表情じゃない。

 拳を握り、彼の額に自分の額を当てる。


「なっ!キュキュシュ!!!」

 キャサティアは私のしようとしている事が解ったのか、止めようとするが、私はそれを手で止める。


「止めろ!!お前の魔力は他人に流して良いもんじゃない!!拒絶反応が起きるぞ!?」


「それでも・・・そうしないと彼が死んじゃう!!!!!」

 私は目を瞑り、魔力を流し込む。


 青い光が私を包み、それが彼も包むように流れ込む。


 すると、彼の表情が険しくなる。


 やっぱり・・・駄目なの?

 涙が溢れ出る。


「止めろキュキュシュ!!コイツを殺す気か!?」

 キャサティアが私の肩を掴み止めようとする。


 だが、そこで私もキャサティアも動きを止める。


「・・・魔力が・・・」

 私は彼を見つめる。


 表情は険しいままだったが、拒絶反応が無い。


「嘘だろ・・・コイツも天空の魔力を持っているのか?」

 キャサティアは我が目を疑う様に呟く。


 私も驚いていたが、今はそれどころじゃない。

 救わなければ。


 どうしてそう思ったかは解らないけれど、彼には此所で死んで欲しくない。

 彼のこんな姿を見たくないと・・・あの時の笑顔が・・・もう一度見たい。


「キュキュシュ!!キャサティア!!!」

 グラとミデミナが此方に走ってくる。


「一体どうした―――」

 グラは息を切らしながら此方を見た瞬間、顔を青くする。


「これは・・・彼ですか!?」

 ミデミナが彼の側にしゃがみながら尋ねる。


「そうなの・・・お願い・・・助けて・・・」

 私は彼の事は知らないのに、何故か大切な人の様に頭を下げる。


「状況は良く解らないけどぉ、彼を治せば良いのよねぇ?」

 グラは私の横にしゃがみ、彼の手を握る。


「・・・危ない状況だけどぉ、助かるわぁ」

 そう言い、魔力を流し始める。


「・・・もしかして隊長天空の魔力を?」

 ミデミナが彼の額に手を当てながら尋ねてくる。


 私は頷く。


「彼全然拒絶反応を見せていない・・・彼も天空系の魔力保持者なの?」


「解らない・・・」

 首を横に振る。


 彼の事など知っている訳がない。

 それでも・・・・、

「助けて・・・・」


 涙が頬を伝うのが解った。


 何故、私は泣いているのか?何故、こんなに必死になっているのか?

 彼は敵かもしれないのに。一度助けてもらったから?


 多分違う。

 彼の顔を見る。


 顔色がどんどん良くなっていく。


 そう・・・ただ、死んで欲しくないだけ。純粋にそう思うだけ。


「それで、コイツどうするんだ?」

 キャサティアが言う。


「えっ?・・・どうするって?」

 涙を拭いながら尋ねる。


「担いで連れて行ったら直ぐに引き渡す事になるぞ?コイツは『アスリトン』の兵士も関係無く攻撃したんだしな」

 キャサティアは腕を組みながら森の外を見る。


「あっ・・・どうしよぉ~」

 全然考えてなかった。


 そうだ。他の兵にバレたら彼は直ぐに連れて行かれる。

 そして、最悪死刑とか重い刑が下るかも。


「どうしよぉ~って、考えてなかったんだな。まぁ、解っていたが」

 そう言いながら、ポケットから紙を取り出し、何かを書く。


 書きながらキャサティアは説明する。

「兎に角転送魔法でモネの部屋に送れ。アイツなら部屋から出ないだろうしな、他人を部屋に入れる奴じゃないしな」


 そう言いながら、紙を彼の胸に置く。


「あの馬鹿女の事だからな。他人に言う事はしないだろうさ」

 そう言って苦笑する。


「そ、そうだね!モネなら大丈夫だね。彼女も治療魔法使えるしね」

 私はグラとミデミナを見る。


 どうやら一命を取り留めたらしい。

「後はモネさんに任せますぅ~」

 グラが汗を拭いながら言う。


「それには同感です」

 ミデミナも汗を拭う。


「それじゃぁ、送りますね」

 私は彼の額に手を置き、目を瞑る。


 そして、彼が一瞬で消える。


「それじゃ、私達も戻るぞ?長過ぎたら勘づかれる」

 そう言ってキャサティアは歩き出す。


 それに続いてグラとミデミナも歩き出す。


 私も立ち上がり、後を追う。


 すると、グラが私を見ながら微笑む。

「泣いてたぁ・・・ふふ・・」


 一気に顔が赤くなる。

「わ、忘れて!!忘れて!!!!!」


「隊長は彼が好きなのかい?」

 ミデミナもニヤニヤと笑いながら尋ねてくる。


「そ、そんなんじゃ!!!」


「「違うの?」」


「いやっ!えぇ~と・・・私彼の事知らないし・・・そんな好きとか・・・そんなの・・」

 顔が尋常じゃない程熱い。


「嫌いではないのでしょぉ?」

 グラがニヤニヤしながら尋ねてくる。


「き、嫌いでは・・・・ない」


「ふふふぅ~」

 何か満足そうにグラが微笑む。


「春だね」

 ミデミナも何か満足そうに呟く。


「あまりからかうなよ?それと私は認めない」

 キャサティアは顔を顰めながら言う。


「何でキャサティアがそんな事決められるのよぉ~」


「あんな何処の馬の骨かも解らない奴に・・・」


「お父さんみたいだな」

 ミデミナが笑いながら言う。


「なっ!誰がお父さんだ!!言うならお母さんだろ!?」


「そう言う問題なの?」

 思わず苦笑してしまう。


 私は3人のやり取りを後ろから見ながら、掌を見つめる。

 真っ赤な血が付いた掌。


 それをぎゅっと握る。

 何故か、少し安心する。


 この気持ちは・・・好きとかそう言うモノなのだろうか?

 解らないけど、嫌じゃない。


 不思議な・・・気持ち。



 Side=キュキュシュ∥Out















 Side=第三者∥Beginning∥『Reload』



 『アスリトン王国』城内の部屋の一室。


 赤毛の女性が優雅に紅茶を飲みながら本を読んでいた。

「矢張り、あの子達が居ないから静かで良いですね」


 そう赤毛の女性は呟き紅茶を飲もうとした時、


ドンッッッッッッッ!!!!!!!!


「!!!!!!!!!!!!!」

 後ろのベッドに何かが落ちる。


 赤毛の女性はカップを置き、静かに振り返る。

「・・・誰ですか?」


 ベッドには見知らぬ男が寝ている。

 と、言うよりも倒れている。


 赤毛の女性は静かに近寄り、男の胸に置かれた紙を見つける。

 それを取り、紙に書かれた事を読む。


「何々?「発見した。誰にも言わない様に。後5日でそっちに付く。それまで監禁しておけ。多分害は無い。襲われたら・・・・身を委ねてしまえ。キャサティア」


 ・・・・、

「何ですか、このふざけた説明は。これで理解しろと?」

 文句を言いながら、赤毛の女性は男を見る。


 血で白いシーツが赤く染まっている。

 そっと手首に触れ、脈を確かめてみる。


「生きてはいるのね」

 手首から手を離し、机の上に置いてある白いハンカチを取り顔を拭く。

 白いハンカチは直ぐに赤く染まる。


 赤毛の女性は男を見て、思わず呟く。

「あら、良い男じゃない」



 Side=第三者∥Out






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