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 Side=カロナス=ナイハ∥Beginning∥『Reload』



 古びた小屋の中。

 多分ですが『中立国』からそう離れていない場所。


 悪魔から逃げた後、そこを見つけて一時的な休憩を取っている。


「あぁ~クソッ!!簡単にダウンしちまうなんて!!!」

 フォーリが叫ぶ。


 胸を突かれていた筈なのですが、何故かピンピンしてますね。

 あり得ない回復力です。


 一応治療魔法は掛けましたが、まさかここまで早く。


「サヤとかリノとかジンは大丈夫か?」

 フォーリが心配そうに目をキョロキョロしている。


「多分大丈夫だと思いますが。マドの事は心配ではないのですが?」


「仲間じゃねぇー奴の事まで心配してられるかっての!・・・それに、そう簡単に死なねぇーだろ」

 最後の方は小さ過ぎて聞き取りづらかったのだが、確実に聞こえた。


「そうですか。信用しているのですね」

 一応茶化してみた。


「なっ!?そんなんじゃねぇーよッッ!!!!!!」

 顔を赤くしながら立ち上がるフォーリ。


 ホント、面白い程のリアクションですね。


 すると、フォーリは表情を堅くして椅子に座り直す。

「・・・今回の俺は足手まといだったな」


「・・・慰めるつもりは無いのでハッキリ言います。足手まといでした」

 私も笑みを消し、フォーリを見据えながらハッキリと言う。


「少し手を抜いていたのは事実だ。悪魔を舐めていた」


「そうですね。貴方が本気でしたらサヤと別れる事もなかったでしょうね」

 此所で慰める意味もオブラートに包む意味も無い。


「不甲斐ねぇーな」

 そう呟き、乱暴に頭を掻く。


「ですが、今は一応生きています。それに、サヤも死んでないでしょうしね」

 微笑む。


「そうだな。サヤが簡単に死ぬ様な男じゃねぇーよな」


「それで、私達はサヤを捜索するのでは無く、リノ達を捜しながら『グラパス』に向かいたいと思います」


 フォーリは頷く。


「サヤを捜したりしますと、サヤに「何でリノ達を捜さなかった!?」とか怒鳴られそうなのでね。それに、サヤも『グラパス』に向かうでしょうし、合流地点は『グラパス』です」


「そうだな。それに、サヤを捜している余裕はねぇーよな。リノ達の方が最優先だ」

 フォーリは指を鳴らしながらニヤリと笑みを浮かべる。


 こう言う時に彼が引きずるタイプの人間じゃなくて良かったと思いますね。

 まぁ、彼は考えるよりも行動する人間ですし。


「私達は少し過信し過ぎていたかもしれません。その為、私達はこれから本気で行きます」

 笑みを消し、フォーリを見る。


 悪魔云々ではない。

 このままだと、思わぬ所で足下を掬われる。


 それは避けなければいけない。

 まだ、終わる訳にはいけない。


 過ぎてしまった事は後悔にしかならない。

 けれども、それは全力でやってこそ言える事だ。


 私達は色々な所でサヤの力に頼り過ぎていたのかもしれない。

 神々の力。サヤ自身の力。


 それら全てが自分達を遙かに凌いでいた。

 けれども、サヤは私達から悪魔を引き離し生存率を上げる方法を取った。


 血だらけの彼が、自分の身よりも私達を取った。

 その事の意味している事。


 どんな時でも彼は本気を出していた。そんな彼を見て、私達は何を思っていた?


 今回は確実に私達の負けだ。

 離ればなれになり、負傷し、後悔している。


 もう、サヤの名を必死に叫ぶ事はしたくない。

 そんな状況は迎えたくない。


 彼の隣に居る為。自分の信念を貫く為。


「次に悪魔との戦闘が在った時は、私達は本気で殺しに行きます。異論は有りますか?」


「ねぇーよ。今回の事は俺が一番堪えてんだ。同じミスはしない」

 フォーリは静かに奥歯を噛む。


 ・・・・訂正しなければいけませんね。

 彼を引きずらないタイプと言った事を。


 彼も必死にもがいているのだから―――・・・。



 Side=カロナス=ナイハ∥Out























 Side=第三者∥Beginning∥『Reload』



 大きなパイプオルガンが置かれた教会の様な空間。

 そこで、椅子に座りながら金髪ツインテールのレイミー=クルティアンは両頬を膨らませながら文句を言う。


「待たせるってどう言う事ですか?待たせた料が欲しいです」


 通路を挟んでレイミーの隣に座る前髪で顔を隠す女性が呟く。

「・・・それって何の料金ですか?」


「えぇ?何て言ったの?」

 レイミーは前髪を隠す女性を見ながら大きな声で尋ねる。


「えっ・・いや・・・えっとぉ~・・・何でも無いです」

 諦めたのか、ふさぎ込む。


「ビディはもっと声を出した方が良いよ?」


「止めとけ。ビディは今のままでも十分魅力的だ」

 後ろから、ニット帽を被り棒付きの飴を咥える青年が歩いて来る。


「ノワズドはこう言うのが趣味なの?」

 レイミーは後ろを振り返る。


「あぁ、そうだ。ビディ以上に魅力的な女性が存在するか?それは否だ」

 真顔でビディをべた褒めするノワズド。


 褒められている本人はどんどん丸くなっていく。


「ビディ照れてるの!?」

 レイミーがビディの横に座り、顔を覗く。


「わっ!・・・私は・・・そ、そんな・・魅力なんて・・・」


「謙虚なビディも魅力の一つだ」

 真顔で褒めるノワズド。


「うぅ~・・・・」

 ビディはもう恥ずかしさで一杯だった。


 すると、教会の様な空間の大きな扉が開く。

 そこから、がっちりとした体型の男とアフロヘアの男が話しながら入って来た。


「だから、12時に鳴る曲をもっとリズミカルな曲に変えてだね」

 アフロヘアの男が何かを必死に?お願いしている。


「お前は馬鹿か?そんな事出来る訳ないだろう。それに、俺にそんな権限は無い」

 がっちりとした体型の男はアフロヘアの意見を却下する。


「えぇ~そこをお願いしているんだよ」

 アフロヘアは手を合わせ、何度も頭を下げている。


 アフロヘアの男が頭を下げる度に、がっちりとした体型の男の顔に髪の毛が当たる。

 その度に顔を顰める。


「頭を下げても無駄だ」

 眉間に皺を寄せながらキッパリ却下する。


「くそぉ~・・・でもミーは諦めないよ!!」

 何故か一段と気合いを入れるアフロヘア。


「隊長さん!私を待たせるなんてどう言う事ですか!?待たせたごめんね料を下さい!」

 そう言いながら、レイミーはがっちりとした体型の男に手を差し出す。


「何だその金の要求の仕方は?そんなもんは却下だ」

 そう言って差し出されたレイミーの手を叩く。


「痛ッ!今叩きましたね・・・慰謝料を請求します!!!」

 そう言ってがっちりとした体型の男の前に立つレイミー。


「・・・レイミー・・・隊長に・・・め、迷惑だよぉ」

 ビディはオロオロしながら言う。


「そうだぞレイミー。可憐なビディの言う通りだ」

 ノワズドは真顔でサラリと可憐と言う。


「うぅ~・・・・」

 ビディは恥ずかしく、また俯く。


 その様子を見ながらがっちりとした体型の男は溜息を吐く。

「・・・命令が下った」


 その一言で、皆静かになる。

 その様子を確認しながらがっちりとした体型の男は続ける。

「『中立国』に侵攻していた『ローデン』の軍勢が敗れた事は知っているだろ?」


「知ってるよぉ~ビディに教えてもらった」

 そう言ってレイミーはビディを見る。


「ビディ。此所で今一度尋ねる。誰が『ローデン』の軍勢を退かせた?」


 ビディはオロオロしながらも答える。

「は、はい!・・・『無道』と名乗る・・・人達で・・す」


「聞いての通り、『ローデン』の軍勢は『無道』と名乗る数名によって敗れた。これの意味する事は、何処の国にも属さない強大な力を持った者が現れた事だ」

 がっちりとした体型の男は腰に手を当てる。


「でも、『中立国』の人間って事は考えられないの?現に『中立国』守った訳だし」

 アフロヘアが言う。


「いや、それは無いだろう」

 がっちりとした体型の男はキッパリと否定する。


 それに、ノワズドが尋ねる。

「それは隊長が負けた青年がその『無道』に居たからですか?」


「そうだ。現にビディが視たしな」


「は、はい・・・た、確かに・・・隊長さんの言った・・・と、通りの容姿の・・・人が・・・居ました」


 がっちりとした体型の男は一度目を瞑り、口を開く。

「今回の我々へ下った命は、その『無道』の排除だ」


 それにレイミーが頬を膨らませて抗議する。

「それって『ローデン』の軍勢を破った化け物と戦えって事ですか!?それはあまりにも無謀ですよ!特別手当とか出るんですか?出ないのなら私は嫌ですよ。それに、多分その『無道』には『創造する槍使い』と『探求する殺戮者』が居ると思いますし」


「だが、我々にこの命が下ったのだ。拒否する事など出来ない。・・・それと、特別手当は出るぞ?」


 その一言で、レイミーは右手を挙げ、叫ぶ。

「レイミー=クルティアン!!!!精一杯頑張ります!!!」


 守銭奴は金が絡むと何事にも本気だった。


 そこで、ノワズドが尋ねる。

「・・・隊長、何処か嬉しそうですね?リベンジ出来る機会が出来たからですか?」


 その問いにがっちりとした体型の男は直ぐには答えず、少し間を開けて答える。

「・・・いや、純粋に嬉しいだけだ」


 その答えに、この場に居た者は皆驚いた。


「さて、もう無駄話は良いだろう。我々はこれから『無道』が向かったと思われる『グラパス』に向かう!!!」


「「「「はッ!!!!」」」」



 Side=第三者∥Out



















 Side=サヤ∥Beginning∥『Spiritual world』



 此所は・・・何処だ?


 何も見えない。


 まだ、あの悪魔の能力が効いているのか?

 ・・・・それよりも、俺はあの悪魔を倒したのか?


 思い出せない。

 俺はどうやって勝った?


 俺はどうやって殺した?

 思い出せない。


『貴殿は踏み出した―――紙一重の道を』


 この声は・・・『仙牙龍刀』か?


『貴殿は動き出した―――狂気に重なる力を手にして』


 何を言っている?どう言う意味だ!?


『貴殿は掴み取った―――真の力を』


 何を・・・言っている?


『思い出せぬか―――だが―――それは良い事なのかもしれん』


 おいおい!!勝手に納得すんなよ!!!お前何言っているんだ!?あの悪魔はどうなった?俺は勝ったのか?それとも負けたのか?


『貴殿は勝った―――だが―――あれを貴殿が勝ちと認めるかは―――解らない』


 何だよそれ・・・どう言う意味だ!?それと、此所は何処だ!?


『貴殿はもの凄いスピードで成長している―――それが諸刃の剣となるか―――それは貴殿次第―――けれども―――貴殿の世界は星が輝いている』


 なっ!星!?


 その瞬間、暗闇に点々と光が現れる。


「此所は・・・俺の精神世界・・・」

 星空を見上げ呟く。


『貴殿の星達は―――今も煌々としている―――願おう―――消えぬ事を』


 俺は星空を見上げながら、思い出す。

「・・・俺はお前の真の名を呼んだ。けれども、今は覚え出せない。これはどう言う事だ?」


『それは―――貴殿がまだ理解していないからだ―――刃の意味と―――牙の本能を』


 意味・・・本能。

「それは殺す覚悟って事か?」


『その考えの内は―――まだ貴殿は真には辿り着けぬ』


 嫌な言い方だ。

「お前は、俺に思い出して欲しいか?」


『―――我は―――』


 初めて、『仙牙龍刀』が言葉を選ぶ。


 それが少し可笑しく、何となく嬉しかった。

「思い出すまで、俺の刃であり牙であってくれるか?」


『―――我の刃折れるまで―――我の牙が折れるまで―――貴殿の下に』



 Side=サヤ∥Out













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