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 Side=カロナス=ナイハ∥Beginning∥『Reload』



 サヤ・・・・。

 悪魔の力を侮っていました。


 唇を噛む。鉄の味など、先程から口の中を充満していて、今更解りませんね。

 悪魔を侮っていたのではなく、能力を侮っていました。


 魔法とは別の力。

 これ程までに力の差が出るとは。


 あのナイフだけなら勝てた。

 動きが取れないだけなら勝てた。


 この悪魔が現れなければ勝てた。

 あの天パの悪魔が現れなければ勝てた。


 ・・・不毛な考えですね。

 今更遅い。


 サヤなら、死なないでしょう。

 ・・・信じましょう。彼は私達を守る為に此所を離れました。


「チッ・・・抹殺目標が逃げやがった。臆病野郎」

 顔に刺青を入れた悪魔が吐き捨てる。


 ・・・悪魔は2人。

 この女性の方の悪魔は確か、サヤの言っていたマルコシアスの能力を使っていた。

 『勝利を確信すればする程言った事が現実になる能力』。


 サヤは大量の魔力を放出して相手に勝てないと思わせて、能力を無効にした。


 今の私ではそれ程魔力は残っていませんし、フォーリも危険な状況。

 戦えない者が2人。


 あの仮面は狼狽えていますね。

 気をつけるのはこの悪魔。


 何故、他の悪魔の力が使える?


「まぁ~良いか。ボディスの癖毛野郎が終わらせる。私はこっちで残飯処理でもしようか。塵屑野郎」

 悪魔と目が合う。


 ・・・嫌な女性だ。


 あのオリアスがまだ可愛く思えますね。

 あの能力をどう対処する?


 今あの悪魔は確実に勝利を確信している。

 現に、私達は戦えない状況。


 ・・・・魔力は?・・・大丈夫ですね。

 さて、今回は逃げさせてもらいますか。


 フラフラと立ち上がり、口の中に溜まった血を吐き出す。

「残飯処理ですか・・・それは勘弁して欲しいですね」

 苦笑いし、静かに右腕に魔力を集中させる。


「んぁ?残飯だろ?野良犬も食わない残飯だ。糞野郎」


「もっとお淑やかにした方が良いですよ?」

 もう少し・・・もう少し。


「んぁ?ぺこぺこ頭下げて腰でも振れば満足か?変態野郎」


 ・・・・それはあんまりですね。

「残念ですが、私は貴女の様なのは好みじゃないんですよ」


「お前・・・ウザいな。死ねよ。木っ端に消え去れ。蛆虫野郎」

 そう言って何かを言おうとする悪魔。


 ・・・・!!!

「ハァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!」

 右腕に集中させた魔力を真下に放つ。


「なっ!?」


ドゴォォォォオオォォォォォォオオオオオオオオオオオォォォォン!!!!!!!!!!


 地面が抉れ、岩が飛び、砂塵が舞う。


 フォーリの側に駆け、背負う。

 すると、

「お・・・お前・・・結構大胆だな・・・てか、俺もあの女は・・・・無理」

 フォーリが笑いながら茶化す。と、言うか聞いてたんですか?凄まじいですね。


 だが、声に生気が無い。

 危ない状況ですね。


 少し残しておいた魔力を使い、飛行魔法を使う。

「おっと・・・」


 フラフラ蛇行しながら宙に浮く。

 流石にキツイですかね。


 ですが、今は兎に角此所からの脱出が最優先。


「クソガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!」


 砂塵の中から叫び声が響き、砂塵が揺れる。

 まるで声によって砂塵を吹き飛ばしている様な、そんな感じに見えますね。


「見つかったら即殺しに来ますね。さっさと逃げましょうか」

 フラフラと蛇行しながらこの場を後にする。


 ・・・・サヤ。

 生きていて下さいね。『無道』はまだ、道を歩んですらいませんよ?



 Side=カロナス=ナイハ∥Out


























 Side=オロバス∥Beginning∥『Reload』



 糞がッ!!まさかこんな小汚い手を使う何て・・・。

 辺りを見渡し、あの吹き飛ばすしか能のない糞野郎の力を使う。


 衝撃波が起こり、砂塵を吹き飛ばす。


 ・・・矢張り逃げたか。滓野郎が。


 ふと、目に仮面が映る。

「ビフロンス・・・」


 その仮面の名を呼ぶ。


「ヴィネ・・・・ヴィネ・・・」


 チッ!コイツも終わりか。アイツの能力は魂を弱くしているのか?

 いや、元々臆病だから仮面なんかに魂移したいとかほざくんだ。


 使えない悪魔め。

 血は・・・仮面に血など通っている訳ではないか。本当に使えない木偶野郎だ。


「ビフロンス!!」


「な、・・・何だ?」


 何が「何だ?」だ。


 ゆっくり近づきながら尋ねる。


「どうして目標がお前に背を向けていたのにお前は攻撃しなかった?塵野郎」


「えっ・・・あっ・・・」


 チッ!!

「ヴィネの滓野郎が居ねぇーと何も出来ないのか?んぁ?塵屑野郎が!!」


「な!お、お前!!!」


 仮面如きに何を言っても無駄か。

 所詮は・・・・、

「粉々に砕け散れ、無能野郎。何故なら、私が勝者だからだ」


「なっ!止めて!!止めて!!止めてェェェェェェェェェェェェェェ!!!!!!!」


ビキッ!――ビキビキッ!!パリィィィィィィィィィン!!!!!!!!!!


 仮面は木っ端に砕け散った。

 所詮は物。


 暫く砕け散った破片を見つめながら、後ろを振り返る。

 ヴィネの死体。


 血だけでも貰うとするか。

 使える能力だが、コイツ自体に戦闘能力が無い。

 コイツも仮面に依存しないと生きて行けない滓野郎だっただけか。


 無能な糞野郎は何処にでも居るもんだな。


 死体の前でしゃがみ、人差し指を死体から流れ出る血に付け、指に付いた血を舐める。


 ・・・不味いな。相変わらず不味い。

 そこで、ふと視線を変える。


 そこには、地面にべったりと付いた血。

 あの死にかけていた下種野郎の血か。


 ・・・コイツは使えるか?

 確か・・・槍だったか?


 面白い力だ。

 滓野郎の悪魔よりよっぽど使える。


 他のは・・・チッ!他のは色々な血と混ざりやがってどれがどれだか解らねぇーな。

 まぁ、この男の血だけでも十分か。


 さて、目標を追うか?いや、ボディスが行っているし、目標はボディスの能力で視界が閉ざされている。

 勝てない訳がない。


 ならば、逃げた2人を追うか?

 それも一興・・・か。



 Side=オロバス∥Out


















 Side=第三者∥Beginning∥『Reload』



 森の中。


 木が薙ぎ倒され、地面が抉れている。


 その中、2人は対峙していた。


 一方は銃を手に持ち、一方は手に血を付着させている。


 互いに腹から血を流し、肩で息をしている。


「やってくれたな・・・人間風情が」

 血が付いた手を振り、ボディスが睨む。


「ホント、残念だよ。今のお前の傑作顔が見えないなんてな」

 ニヤリと笑うが、目は死んでいた。


 サヤは首を回して骨を鳴らす。


「戦う気か?お前に勝てる見込みは無いぞ?」

 ボディスが睨んだまま、尋ねる。


 だが、サヤには声しか届かない。

 睨んでいるから畏縮する何て事は無い。


「んぁ?あんま舐めるな。悪魔風情が。視界ゼロ。十分なハンデだろ?」

 サヤはこの状況でも相手を挑発する。


 出血量。それはもう何時倒れても可笑しくない量だ。

 今、こうして立っているのもやっとの筈。


 けれども、余裕の笑みを浮かべて銃口を向けている。


 だが、ボディスには哀れにしか見えなかった。

「どれ程にお前が足掻こうが、死は目前だ。引き返すのは不可能。死への道のりは片道だけ。帰りは血の海で道が消える。それとも、お前は血の海を泳げる程の度胸があるのか?」


「血の海?丁度良いだろ。今血を大量に垂れ流しにしている所だ。補給には十分過ぎる」


「減らず口が・・・・願おう。地獄でお前が生き地獄を味わう事を」

 ボティスは静かに構える。


「地獄ねぇ~・・・んじゃぁ~悪魔のお前は何処に逝く訳?救われるとか言うなよ?宗教関係は苦手なんだ」


「黙れッ!!!!!!!!!!!!」

 ボティスが駆ける。


「チッ!!」

 舌打ちをして、『デザートイーグル.50AE』を抜き、乱射する。


ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッッッッッッッッッッ!!!!!!!


 森の中に弾幕が広がる。


「乱射すれば当たると思ったのか?とんだ雑魚だな!!!人間ッッ!!!!!」

 ボティスはサヤの懐に入り、傷口に思いっきり拳を入れる。


「ぐがアッッッッ!!!!!!!!!!!!」

 蹌踉けながらも、サヤは撃ち続ける。


「効かないと言っているだろッッ!!!!!!!」

 紙一重で全て躱し、サヤを殴り続ける。


「くそ・・・ガァァァァァァァァァッッッッ!!!!!!!!」

 サヤは傷口に入った拳を掴み、上段蹴りを繰り出す。


 だが、それは左腕でガードされてそのまま右の拳が傷口にのめり込む。


「ぐがァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!」

 激痛に叫び、顔が歪む。


 ボディスの左肘がサヤの顎に入る。


「げほッッ!!!!!!!!!!」

 サヤは蹌踉け、そのまま膝を付く。


 その姿を見下しながら、ボディスは吐き捨てる。

「それがお前の限界だよ。人間。所詮人間は人間の枠を越える事は出来ない。お前が幾ら凄まじい魔力を持っていようとも、所詮は人間。お前の刃は俺には届かない。お前の牙では俺等の首を噛み切れない。自身の脆さに気付いたか?」


 サヤは朦朧とした意識の中、ボディスの言葉を聴いていた。


 だが、その声は鮮明に頭に響く。


 ・・・人間を越えれば良いのか?

 それが強さなのか?


 だが、俺は誓った。堕ちないと。狂気に吞まれ狂気に溺れないと。


 でも、今の俺でコイツに勝てるのか?

 それとも逃げるか?ハハッ・・・笑えない冗談だ。クオリティー落ちたもんだ。


 ・・・なら、どうする?

 足掻くか?這いつくばるか?喚くか?


 どれも良い考えじゃねぇーな。


 言ってやれよ。俺。


 何で勝つって言わねぇーんだってな。


 負け?ハッ!そんもんとっくに忘れたよ。

 死ぬ?クハハッ!!まだ冥土の土産が決まってねぇーんだよね。閻魔さんにどやされるよ。


 んじゃ、まだ死ねないな。


 狂気?なにそれ。


 そんなもん。この世に充満してんじゃねぇーか。

 だから堕ちても良いかって?それは違う。


 呑み込め。吞まれるな。呑み込め!!!!


 這い上がれ。堕ちるな。這い上がれ!!!!


 泳ぎ切れ。溺れるな。泳ぎ切れ!!!!


 まだ、俺は自信の力を十二分に使えてねぇー。

 なら、どうする?


 簡単じゃねぇーか。


 誓え。

 ・・・死なないと。


 誓え。

 ・・・生き残ると。


 誓え。

 ・・・負けないと。


 誓え。


 俺は俺で在ると。俺は―――守ると!!!!


「グアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!」


 咆哮。それがまさしく合っている。


 サヤは足に力を入れ、立ち上がる。


 ふらつき、血を吐き出し。

 それでも拳を作り、歯を食い縛る。


「悪魔風情が舐めんなって言ってんだろうがァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!」

 叫び、何かを向ける。


 だが、サヤは何も持っていない。

 けれども、空気が揺れる。


「・・・何の真似だ?狂ってしまったか?」

 ボディスは冷めた目で尋ねる。


「見えないのか?今、俺の刃はお前の喉元に突き付けられてんだよ。俺の牙がお前の首筋に添えられているんだよ。見えないか?なら、お前はそこで行き止まりだ。片道切符。使うの早過ぎたかもな?」


 サヤはニヤリと笑う。


 ボディスは奥歯を噛み、叫ぶ。

「ふざけるな!!!何を世迷い言を!!!お前は死しかないんだ!!!お前は死ぬんだよ!!!何を言っている!?刃?牙?そんなもんは何処にある!?あるのならやってみろ!!俺の喉元を貫いてみろ!!俺の首を噛み千切ってみろ!!!出来るものならな!!!!」


 すると、サヤの表情から笑みが消え、目を瞑る。

「龍は顔を上げ、空を見上げる。広がる空に美しさを。流れる雲に自由を。天に羽ばたく翼は風を巻き起こす。己の自由に咆哮を。他の希望に祝福を。何時しか他は己の名を忘れる。我は空の下で待ち続ける――――」


 目をゆっくりと開き、ボディスを見据える。

「我は『仙牙』己は『龍牙』。真の名を刻め――――『天郷龍神』」


 その瞬間、何も握られてなかったサヤの左手に、刀が現れる。

 ゆっくりと、静かに姿を現す。


 『仙牙龍刀』そう言ってしまうには余りにも程遠く。違うと言ってしまえばそうでなくなる。


「『天郷龍神』。俺の狂気は・・・お前を喰うぞ?」

 銀色の刃が、静かに揺れた。


 その瞬間、


ブシュゥゥゥゥゥウウウウウウゥゥウウウウウウウゥゥゥゥゥ!!!!!!!!!


 ボディスの両腕が後ろに吹き飛ぶ。


「なっ――――」

 ボディスは唖然とサヤを見つめる。


 そしてまた、静かに牙が揺らめく。


ブシュゥゥウウウウウウゥゥゥゥゥウウウウウゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!!!


 ボディスの両足が後ろに吹き飛ぶ。


 そして、足を無くした胴体はそのまま地面に落ちる。


「―――――――――――――――」


 だが既に、ボディスは死んでいた。

 唖然とした表情のまま。


 サヤは静かにその死体を見つめる。

「・・・お前は人間を舐めすぎた。だが、安心しろ。俺も悪魔を舐めていた。これでお相子だろ?」


 その瞬間、


ブシュゥゥゥゥウウウウウウウウウゥゥゥゥウウウウウウ!!!!!!!!!!!


 サヤの体中から血が噴き出す。

 そして、いつの間にか刀は消えておりサヤは目を瞑り後ろに倒れた。


 血の海。その中で静かに、沈んで行く様に。


 だが、光が溢れて静かにサヤを包む。

 そして眩い光。


 光が止んだ時には、血の海にサヤの姿は無かった―――。



 Side=第三者∥Out











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