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Side=第三者∥Beginning∥『Reload』
丘の上。
そこに、1人の男が岩に腰を掛けていた。
男の手には懐中時計が握られている。
「あかんなぁ~。たまに思い出してまうわ」
男は青い髪を靡かせ、懐中時計を見つめる。
「ほんまあかんわ。ガラにも無い」
男は懐中時計を懐にしまう。
男は青で統一された服を着ており、ロングコートを羽織り、下はダボダボのパンツ。
右頬に大きな傷があり、それを隠す様に右だけ髪が長い。
すると、青髪の男の後ろから巨漢が走って来る。
「頭ぁ~」
「ん?おぉ~どないした?そない慌てて」
青髪の男は振り返りながら手を振る。
「何を暢気に黄昏れてるんすかっ!?大変な事があったんすよ?」
巨漢は見た目とは裏腹な口調。
「大変な事?わいが黄昏れている最中・・・そんな事があったんか!?」
態とらしく驚く青髪の男。
「そうなんすよっ!大変な事っす!!」
巨漢は声を荒げて言う。
「で、どないな事があったんや?」
青髪の男は尋ねる。
「これは『中立国』で『ローデン』の軍隊の様子見ていた仲間からの情報なんすが、4万もの軍隊が・・・たった数名で潰されたようなんすよっ!!」
「・・・それはほんまか?」
青髪の男は静かに尋ねる。
「へいっ!確かです!」
「・・・興味深いやないかい。その数名は『中立国』の犬か?」
青髪はニヤリと笑い、尋ねる。
「そこは詳しくは解りやせんが、多分違うと思いますぜ!!」
巨漢は小さい声で言おうとしているのだろうが、最後の方は叫んでしまっている。
「何でそう言い切れるんや?」
「情報では、その数名は『無道』って名乗っていたらしいですわっ!!」
青髪の男は顎を触りながら、悪戯に微笑む。
「そうか・・・『無道』か。また、えらくおもろい連中が現れたもんやなぁ~」
そう言い、青髪の男は歩き出す。
「頭ぁ!次は何処へ向かうんで!?」
巨漢は青髪の男の背を見ながら叫ぶ。
青髪の男は立ち止まり、半身だけ振り返り微笑んだ表情のまま答える。
「決まっとるやろ?その『無道』ちゅう奴等に挨拶や!!」
「じゃぁ!『蒼』の次の目的地は?」
巨漢はニヤリと笑って尋ねる。
「暴れられるかもしれへんで!!!」
「へいっ!!!!」
青髪の男と巨漢は意気揚々と消えて行く。
Scene→Change
森の中、1人の男が何かに逃げていた。
男の格好は傭兵の様なボディースーツを着ており、だが、武器は一切持っていない。
「ハァー・・ハァー・・・」
男は身を潜め、息を整える。
「此所まで来れば」
そう言って安堵の色を見せる。
だが、
「クールにサーチしてんべぇ~俺っちわよぉ~」
「!?」
森の中に響いた声に、傭兵の様な男は震える。
「どっこっにぃ~居るのぉ~♪隠れてぇ~ねぇ~でぇ~でってっおっいでぇ~♪」
茂みが蹴られ、ガサガサと音が響く。
「あんれぇ~?此所じゃねぇーんかぁ~?マジ俺っちハズレっぽいなぁ~」
響く声は少しずつ遠ざかる。
男は口を両手で塞ぎ、必死に息を吞む。
そして、暫くして声も気配も消えた。
だが、傭兵の様な男は直ぐには動かず、暫く身を潜める。
そして、10分程して傭兵の様な男は大きく息を吐く。
「はぁ~・・・消えてくれたようだ・・・危なかったぜ」
そう言い、先程表した様に安堵の色を示す。
だが、
「あんれぇ~?そこに居たんだぁ~。マジ、俺っち騙される所だったわぁ~」
「!?」
傭兵の様な男はブリキ人形の様に後ろを振り返る。
後ろには、先程去った筈の声の主。
「鬼ごっこは終わりぃ~?じゃぁ~さっさと俺っちの餌食なってきれよぉ~」
声の主は青年。笑みを浮かべていて普通の子供とは全然見分けがつかない。
だが、絶対的に違うのは、瞳の宿すモノ。
青年の瞳は濁り濁って、何を捉えているのか解らない。
「な・・・・・なっ・・・」
傭兵の様な男は声が出ない程に恐怖し、後ずさる。
「今回は特別大サービスしちゃうぜぇ~。何時もは聞かないんだけどぉ~、今回はどうやって死にたいか聞いてやんよぉ~」
青年は笑みを浮かべたまま言う。
「か・・・な・・・・はっ・・・」
だが、傭兵は恐怖のせいで声が出せない。
「あんれぇ~?希望は無いのかいぃ~?ん~それじゃぁ~俺っちが決めちゃうぜぇ~?」
そう言って考え出す青年。
「やっぱり大サービスでぇ~惨殺フルコースで行こうかぁ~」
青年は満面の笑みで言う。
傭兵の様な男は必死に首を横に振る。
「あんれぇ~?ご不満?それは困るなぁ~。だってぇ~・・・もう始まってるぜぇ~?」
ブシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!!!
傭兵の様な男の足から血が噴き出す。まるで内から破裂したかの様に。
「ぎゃああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」
いきなり襲う激痛に叫ぶ。
「おぉ~う!マジ最高だよねぇ~。つっぎっはぁ~」
そう言いながら青年は自分の右腕を触る。
その瞬間、
バギッ!!!!!!!!!
傭兵の様な男の右腕が曲がる筈の無い方向に曲がる。
「ぐああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」
傭兵の様な男は曲がった右腕を押さえながら転がる。
「マジ最高だぜぇ~。でもぉ~まだまだフィナーレには程遠いぜぇ~?次は此所だぁ~」
青年はそう言いながら、自分のお腹を触る。
ブシュゥゥゥゥゥゥウウウウゥゥゥウウウウウウ!!!!!!!!!!
傭兵の様な男のお腹が、ボディーアーマーを突き破り破裂する。
「ぐあああああああああああああああああああああ―――――」
傭兵の様な男は叫んでいる途中で、息絶える。
「あんれぇ~?もう終わりぃ~?残念無念だぜぇ~」
青年は態とらしく額を押さえながら首を振る。
「お前の殺し方が惨いからだろ?糞野郎」
すると、森の奥から女性が歩いて来る。
「あんれぇ~?此所まではるばるどうしたぁ~?」
青年は女性を見ながら尋ねる。
「仕事の事をお前に伝えに来たのだ。有り難く思え。馬鹿野郎」
女性は無表情のまま、死体を見る。
「どうするぅ~?血ぃ~飲んどくぅ~?」
青年は死体から流れる血に触れながら尋ねる。
「そんな血は要らない。蛆虫野郎」
女性はそのまま背を向け歩き出す。
「次のターゲット誰ぇ~?早めに知りたいんだけどぉ~」
青年は立ち上がり、女性の後を追いながら尋ねる。
「マルコシアスの阿呆野郎を殺した奴を殺しに行くのさ。愚図野郎」
女性は相変わらず無表情で罵倒する。
「へぇ~その阿呆野郎を殺したぁ~奴の名前なんて言うんだけぇ~?」
青年は頭の後ろで腕を組みながら尋ねる。
「サヤだった筈だ。滓野郎」
「へぇ~男ぉ~?女ぁ~?」
「関係あるのかそれ?雑魚野郎」
「無いねぇ~結局は肉塊になるだけぇ~みたいなぁ~」
青年は気分が良さそうに笑う。
「さっさと行くぞ。下種野郎」
「解ってるよぉ~相変わらず人使い荒いなぁ~俺っち悲しいぃ~」
青年と女性は、森の闇に消える。
無残な死体を残し――――。
Scene→Change
円状のテーブル。
8メートル程の大きなテーブル。
そのテーブルに、4人の人間が座っている。
「作戦失敗でご帰還かい?ガスロー」
机に脚を投げ出しながら、淡い桃色の髪をした男が尋ねる。
「先程言った通りだ。弁解するつもりも無い。処罰したければ良いだろ?」
黒い鎧を着たガスローが眉を細めながら言う。
「その潔さは嫌いじゃないよ?ガスロー。でもね、仕留め損ねたのは痛手だよ?」
褐色肌に右目を眼帯で隠す女が言う。
「処罰は受ける」
ガスローは腕を組みながら言う。
「ハハッ♪そこまで潔いとさぁ~苛々しちまうよ」
淡い桃色の髪の男がガスローを見据える。
「苛々するならば勝手にしていれば良いだろう。暗殺者と名乗るお前が、そんな辛抱が無いと今後が心配だな」
ガスローは笑みを浮かべながら挑発する。
「んぁ?ふざけた事抜かすなよ?何が死の象徴だ。討伐目標を仕留め損ねたお前に何が言える?それとも、騎士様は皆自分の失敗を悔いないのかい?それは随分な騎士道だな?」
桃色の髪の男は片笑み、挑発する。
「デルティもガスローも喧嘩は止めな。今はそんな問題を話し合う場じゃないよ?」
褐色肌の眼帯をする女が溜息を吐きながら言う。
「こんな集会をするのも、コイツがミスをしたからだ!そうだろ?クナーツ!!」
デルティは叫ぶ。
「そうだね。でも、今の問題はガスローのミスではなく、『始星団』と謎の乱入者の話しだよ?履き違えちゃ駄目だ」
クナーツは冷静に言う。
「だがっ――――」
「静まれ」
デルティの声を遮り、今まで黙っていた老人が口を開く。
「クナーツの言う通り。討伐失敗は痛手だ。けれども、それよりも由々しき問題だ。『始星団』との接触。そして・・・問題はイレギュラーの存在だ」
老人は片目を開きながら言う。
クナーツは老人から視線を変え、ガスローを見て尋ねる。
「その乱入者は一体?」
「俺は戦っていない。だが、半数がそのイレギュラーとの戦闘で負傷、又は死亡した。戦闘を行って生きていた者に話しを聞いた所、有名な奴が居たらしい」
ガスローは目を瞑りながら話す。
「有名?『古の魔女』?『瞬殺の魔法使い』?それとも『獅子』かい?」
デルティは思いついた異名を適当に並べて言う。
ガスローは首を横に振り、答える。
「『創造の槍使い』だ」
「『創造の槍使い』は『グラパス』の、雇われ傭兵に成り下がったと風の噂で聞いたけど?あそこには『グラパス』の人間が居たの?」
クナーツは尋ねる。
「いや、それは無い。他の傭兵の姿も無かったし、それに報告では乱入者は3人だ」
ガスローは答える。
「3人?たったそれだけか?」
デルティは少し驚いた様に尋ねる。
「あぁ。他の2人は、水系の魔法を使う男と場違いな服装をした男らしい」
ガスローは思い出す様に言う。
「水系の魔法・・・私が知っている有名な水系魔法の使い手は『ローデン』の『二首の狼』の『蒼い傷』と・・・『謎喰い』の『探求する殺戮者』ぐらいだけど?」
クナーツは頬杖をつきながら言う。
「『蒼い傷』ではない。多分だが、後者だろう」
ガスローは少し険しい顔をして言う。
「『創造の槍使い』に『探求する殺戮者』・・・・随分なメンツだな。それで、後1人は?」
デルティはガスローを指さしながら尋ねる。
「もう1人の男の事は解らない」
「じゃぁ~雑魚かい?」
デルティがそう言うと、
「だが」
ガスローがそれを否定するかの様に声を出す。
「だが?」
クナーツが尋ねる。
「オルトの報告だと、その者は召喚魔法で人を召喚し尚かつ・・・勝てない相手を見つけたと言っていた。これは・・・ただの雑魚と片付けるには過ぎた情報だろ?」
ガスローは眉間に皺を寄せる。
この場に居る者はこの言葉の意味を理解した。
そして、どれ程の重大な事かも。
「・・・それは確かなんだろ?」
クナーツが尋ねる。
「あぁ。オルトが嘘を言うとは思えない。多分だが、その者が『要塞崩し』を破壊したのだろう」
「十分警戒するに値する、か」
デルティは先程までの笑みを消して呟く。
「事は急を要する」
老人が3人を見ながら言う。
「『黒い討伐隊』は一時『最後の魔女』の捜索を中断し、乱入者の捜索に当たるのだ。『白い空撃隊』は発見の報告があるまで待機。『灰の暗殺隊』も『黒い討伐隊』と同じく捜索に当たれ。たった3人で『黒い討伐隊』を崩壊まで追い込んだ者達だ。心して当たれ」
「「「ハッ!」」」
3人はそのまま立ち上がり、部屋を後にする。
Scene→Change
暗い部屋。そこで、蝋燭の光に揺られながら、1人の男が何かを読んでいた。
「・・・失敗か」
男は小さく呟く。
紙に書かれた内容は、
『―――『中立国』への軍侵攻は失敗。4万もの兵は三桁まで減り、国王暗殺も失敗に終わり、『郭公』も死んだと思われる。どちらも『無道』と名乗る者達による妨害によって。尚、『最後の魔女』との通信は途絶えたまま―――』
男は静かにその紙を、蝋燭に灯る火の上へ。
パチパチッ―――
紙は静かに燃えていく。
男はそれを眺めながら、笑みを浮かべる。
「『無道』・・・我の行く手を阻む者か?だが、それだから面白いと言えよう。決まったシナリオを行く程に、退屈な事は無い。精々・・・我を楽しませろ」
男は燃える紙から手を離す。
紙はぼとり、と落ち、そのまま燃え続ける。
男は拳を振り落とし、燃える紙を潰す。
Scene→Change
少し高い建物の上。
その上から、女は街を見つめていた。
女は薄い茶髪。つなぎの様な服。美しい女性なのだが、顔についたペンキか絵の具の汚れ、ボサボサの髪でそれを台無しにしていた。
「ラララ~ララ~ラララ~♪」
女は決して上手いとは言えない歌を口ずさむ。
女の口ずさむ歌は曲の割には虚しさを醸し出していた。
街の明かりは疎らで、それが一層虚無感を大きくする。
女は溜息を吐く。
「何か、『ローデン』の言う通りにするのも疲れたなぁ。それに、どうせ戻っても直ぐに牢に入れられるし。どうしようかな・・・」
女は静かに街の光を見つめる。
「・・・あの子」
思い出す。
自身がセルナと言ったあの子を。
「・・・確かめる必要がある」
女は誰かに言っているかの様に呟く。
ゆっくり立ち上がり、腰に手を当てて仰け反り背筋を伸ばす。
「アンタ達が邪魔したんだから、しょうがないって事にしてね」
女は微笑み、言う。
そして、涼しげな風が吹く。
女の髪はバサバサと靡く。
だが、気にせず微笑む。
静かに、静かに何かが動き出す―――。
「ララ~ララララ~ララ~ラララ~♪」
Side=第三者∥Out




