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Side=カロナス=ナイハ∥Beginning∥『Reload』
黒ローブの男は先程しか左腕しか使わない。
主な攻撃は私の死角に入り、殴るなどの攻撃しかしない。
魔法は使わないのか?
それでも、あの速さは賞賛に値しますね。
私は黒ローブを目で追いながら、素直に感心した。
「クハハ!!!逃ゲルダケカ!?口ホドニモ無イ!!」
黒ローブは叫びながら左腕を振るう。
その瞬間、またも不快音が響く。
ギィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン!!!!!!!
「くっ!!!」
顔を歪め、距離を取るが。
「ガラ空キダ!!」
黒ローブの左腕がお腹に食い込む。
「がはっ!!!」
私はそのまま後ろに吹き飛ばされる。
「マダマダ終ワラナイゾ!!!」
いつの間にか黒ローブは飛ばされる私の上に移動しており、そのまま上から左腕を私のお腹を殴る。
私は地面に叩き付けられる。
「グハッ!!!!!」
口から血が流れ、鉄の味が口中に充満している。
「クハッハハ!!!雑魚ハオ前ダヨ!!クハハハハハ!!!!!」
黒ローブは上を向きながら高笑いをしている。
私は男を倒れながら見つめる。
何故、魔法を使わない?
いや、使っているのか?
もしかして、ただの強化魔法?
それしか使えないのか?
それだとあの不快音の説明が出来ない。
ならば、何の魔法を使っている?
実際の魔法使い同士の戦いならば、こうやって相手の技を探るなどと言った事はしない。
けれども、それは表だった戦いのみだ。
これは裏。
自分の使う技が自分の全て。
自分が使える技が、仕事を集める。
裏で生きている魔法使いは皆、自分の手の内を隠しながら生きている。
自分の技は商売道具であり、生命線。
それを他人に知られると言う事は、自分の手の内を晒す事。
それを避ける為に、「目撃者は殺す」それが鉄則となっている。
けれども、この男・・・そこら辺の事が出来ていない。
暗殺者なのに、「直ぐには殺さない」と言った考えが間違っている。
それならば、この男は?
・・・生粋の暗殺者ではない?
それならば、コイツは何だ?
・・・暗殺者ではない?
ならば・・・護衛か!?
・・・いや、待てよ。この男は結界魔法を張って直ぐに気付いた。
魔法使い以外でも魔法に日頃から触れていれば、感知するのは不可能ではないが、あんなに直ぐに感知出来る訳でもない。
・・・では、一体?
「直グニハ楽ニハシナイゼ?ジックリ苦シメテ殺シテヤルヨ」
男はゆっくり此方に近づく。
あまり考えるのは止した方が良いですね。
戦闘中の思考は、時には動きを鈍らせますし。
手っ取り早く捕まえてしまえばすむ話しですね。
「『砂漠を満たせ―――湖水』」
私は地面に手を置き詠唱する。すると、屋根の上にどこからか水が溢れ出す。
「ハッ!!効カナイナ!コレダケカ?」
男は踝ぐらいまで溢れ出した水を蹴りながら叫ぶ。
私はニヤリと笑い、唱える。
「『境界を越えろ―――波紋』」
すると、私から波紋が広がる。
だが、それは不可思議に、そして不規則に広がる。
男はそれに気付かず私に近づく。
その不用心さが・・・命取りだ。
「無様ナ姿ダナ!!コレナラ自ラ手ヲクダサナクトモ、殺セル」
男はそう言いながら、左腕を翳す。
・・・甘い。
「死ネ―――グハッ!!!!・・・・ゲホッ!ゴホォ!!・・・何故、血ヲ?」
男は口から血を流し、それを見て唖然としている。
私はニヤリと笑う。
「・・・血液の流れを可笑しくしたのですよ?今、貴方の体を巡る血液は、様々な内臓器官に血液を送るのを止めている。いや、流れないのですよ?」
私が微笑みながら説明しているのを、男はただただ見ている。
私は立ち上がり、男を見据える。
「私は水系の魔法が得意な魔法使いですよ?水・・・つまりは液体です。血も・・液体です。操れない訳はないので。ですが、直接流れる血液に触れなければいけないのですが、貴方は今回私が生み出したこの水に何の警戒もしなかった。それが敗因です」
私は踝まで溜まっている水を蹴りながら、悪戯に微笑む。
「これは普通に水の無い所に水を生み出す魔法です。まぁ、それだけ何ですけどね。問題はその次に唱えた魔法ですよ。あれはですね、対象の波紋に反応して、水を仲介してリンクする魔法なんですよ。つまりは、私の波紋を貴方の波紋が合わさり、リンクされた」
ここで、男がやっと声を出す。
「ソンナ・・・馬鹿・・ナ」
「私はですね、手足同然に水を操れるのですよ?波紋でリンクしていている貴方の体内の血液に干渉する位簡単ですよ。まぁ、これはこの右手のお陰って所もあるのですけどね」
私は右腕を押さえながら言う。
実際の私はこんな芸当は無理だろう。
だが、悪魔の魔力のお陰で、不可能が可能になっている。
その為、相手に触れずとも体内の血液を操ると言った芸当が出来る。
まぁ、男が溢れ出す水に警戒していたなら、意味は無かったのですけどね。
「あぁ、貴方が死ぬ前に・・・・貴方を操る方にご忠告です」
私は、男を見ながらも他の者を見るように言う。
「ナニヲ・・・言ッテ・・・」
「今更誤魔化す必要は無いですよ?だって、貴方自分で言ったではないですか。「自ら手をくださなくとも、殺せる」と。言葉には気をつけた方が良いですよ?油断と傲りが全てを台無しにしますから。・・・それと・・・」
私は一旦そこで切る。
「ソレト・・・何ダ?」
私はニコリと笑い、
「自分で人も殺せない三流以下が、暗殺者名乗るなよ・・・・」
私は右足を思いっきり地面に叩き付ける。
右足から波紋が広がる。
そして、
「グガッ!!!グガアァァァァァァァァァァァァァァ――――――」
男は首を押さえながら、そのまま白目を剥き仰向けに倒れる。
血液を完全にストップした。苦しかったみたいですね。
私は男に近づき、黒ローブを脱がす。
男は正真正銘の人間。
だが、左腕と両足が機械仕立てになっていますね。
戦闘中の違和感はこれですか。
つまりは、この男は操られていたって事ですね。
体中に魔方陣が刻まれていますし、どうやら遠隔型魔方陣の応用でしょうが、人を操るのにえらく手間がかかっていますね。
一流の魔法使いなら、一々魔方陣を刻まなくとも操れるのに。
本当に三流以下でしたか。
・・・この男を操っていた人間が居る筈ですけど・・・まぁ、多分姿を見せる事を無いでしょうね。
自分で手をくだせない臆病者ですから。
この男は差ほど危険ではないでしょうけど・・・一応は。
私は男の体に刻まれている魔方陣に手を当てた。
Side=カロナス=ナイハ∥Out
Side=???∥Beginning∥『Reload』
クソっ!クソっ!!!
俺の自信作を・・・壊しやがって!!!
あの男のせいで作戦失敗したじゃないか!!!
人形のストックも無いし!!
クソクソクソクソッ!!!!!!!!!!
・・・そうだ、あの女を人形にしてしまえば良いんだ!!!
あの女小汚いけど、綺麗にすれば良いだけだ!!
あの女胸も有ったし、それに結構美人だからな。
ククック・・・・俺の人形にして可愛がってやろうじゃないか・・・。
ククク・・・・。
『ゲスな思考ですね』
!?
な、何だ?あ、頭の中に声が響いている・・・。
この声は・・・一体誰だ!?
『あれ?もう忘れてしまったのですか?悲しいですね。先程貴方の言う人形を壊した人間ですよ』
!?
「お、お前!!!まさかあの水を使う!?」
『ご名答です。ご褒美は何が欲しいですか?』
頭の中に響くあの男の声は軽やかに笑っている。
俺は汗をダラダラ流す。
「ど、どうやって俺に干渉している!?」
『簡単ですよ?何せ、貴方の刻んだ魔方陣を体に刻む者がこっちには居ますから』
「なっ!?お、お前まさかあの人形の魔方陣から俺に干渉してるのか!?」
不可能だ。絶対に。それに、出来たとしても俺は完全にあの人形とリンクは消している。それなのに、何故!?
『甘いですね。こう言った魔法を使うのならば、ちゃんと勉強した方が良いですよ?』
「なっ!?」
『魔方陣のリンクを消すには、魔方陣を完全に壊さなければいけない。魔力の供給をストップしても、リンクし続けるのですよ?この男を爆破する位の証拠隠滅をしなければ、魔方陣と貴方はリンクしたままです』
なっ・・・そんな事あるわ―――
『あるんですよ?』
なっ!?頭の中をよ、読まれた!?
『簡単な事ですよ。魔方陣を通じて貴方の頭に干渉しているのですから、簡単な思考は読めます。それにしても、本当に三流以下ですね』
馬鹿にされているのに、叫ぶことも・・・いや、声を出す事すら出来ない。
『普通は魔方陣にオリジナルのプロテクトを付けたり、トラップを仕掛けたりするものなのですが、貴方は普通に教科書通りの魔方陣をそのまま捻りも無く刻んでいるだけ。それでは簡単に逆探知出来てしまう』
男が淡々と駄目だしする。
けれども、何も言えない。
恐怖。心臓を掴まれている様な、そんな感覚。
『その感覚は間違えではありませんよ?』
!?ま、また読まれた。
『三流以下の貴方でも知ってはいるでしょ?他人の魔力は自分の魔力とは違い毒です。医療魔法を使える人間以外が、他人に自分の魔力を流すと拒絶反応を示す。さて、私が言っている事・・・理解出来ますか?』
「ま・・・まさか?」
すると、頭の中に響く声が一気に低いトーンになる。
『・・・さようならですよ。臆病者の三流以下さん』
男がそう言い終わると、男の声が聞こえなくなる。
すると、
「・・・・ガハッ!!!ゴホッ!ゴホッ!!!!う・・・うああああああああああ」
口から血を流し、目から、耳から、鼻から・・・。
「死にたくない!死にたくない!死にたくないぃぃぃぃ・・・いぃ―――――」
Side=???∥Out
Side=バティフォーリ=ケスティマ∥Beginning∥『Reload』
あぁ~クソっ!!!もうあの女捜す気が削がれた。
カロには悪いが、カロに全て押しつけるか。
俺は裏路地を歩きながら、頭を掻く。
暗殺者って言うから、血も涙も無い外道かと思ったが・・・あの涙はそんな人間に流せる涙じゃねぇー。
何があるってんだ。やりづらいったらありゃしねぇー。
・・・あんま考えない方が良いな。
向こうがまだ暗殺を止めようと思ってないのなら、必ずまたぶつかる。
その時に何とかすれば良いしな。
俺は一度立ち止まり、辺りを見渡す。
「確か・・・この辺で・・・」
すると、
「おぉ~い!ふぉーりぃ~」
裏路地にひっそりと佇む酒場の前のベンチでリノが手を振りながらジュースを飲んでいる。
「おぉ!!そこに居たか!!」
俺はリノの側に行きながら、手を振る。
「いたかじゃねぇーよ!!ふぉーりがここにおいていったんだぞ!!」
リノが頬を膨らませながら怒る。
すると、
「ヒック!そうだぜ兄ちゃん?こんな所に子供を、こんな酔っぱらいに預けて行くもんじゃねぇーよ!」
リノの隣に、酒瓶をラッパ飲みする男が座っている。
髭面の汚らしい男だ。髪は茶髪に金のメッシュが入っている。
「いや、悪いな!」
俺はそう言いながら頭を掻く。
「そうだ!そうだ!さらわれたら、わたしやばんなろりこんおとこのおもちゃになるとこだったぞ!!」
「お前そんな言葉どこで覚える!?」
リノが言った単語の一つ一つに恐怖しながら叫ぶ。
「えぇ~と・・・さやとかかろとかふぉーり?」
首を傾げながら言う。
「俺等がそんな言葉お前の前で使う訳ねぇーだろ!!・・・・まさか、お前あの酒場にあった本読んだのか!?」
そう俺が言うと、リノのビクッ!と震える。
「えぇ~・・・よんでないよぉ~」
あからさまに口笛を吹きながら言うリノ。てか、吹けてねぇーし。フゥー、フゥー言ってるだけだ。
「・・・あれは別に覚えなくとも良い本だぞ?直ぐ忘れろ」
俺は眉間に皺を寄せながら言う。
「んぁ?お嬢ちゃんどんな本読んだんだ?」
男がリノを見ながら尋ねる。
「ん?えぇ~とねぇ~・・・たしか『すべてのしゅみしゅこうにあわせたしこうのいっさつ!すべてのせいへきはこれいっさつでおっけいぃ~』って本!!」
あの酒場に置いてあった、『全ての趣味趣向に合わせた至高の1冊!全ての性癖はコレ1冊でオッケイぃ~』と言う変態共御用達の未成年が読んではいけない本だ。
俺は大きく息を吐く。
「おいおい兄ちゃん・・・流石にその本は駄目だろ?」
男がリノを見ながら俺に言う。
「・・・確かにな」
絶対あのオカマ達が読ませたな・・・。
後で処刑だ。
だが、読んだ本人は意味が解らないのか、首を傾げているだけだ。
「まぁ~良いか!!んで、兄ちゃん。用事は終わったのか?」
男が俺を見ながら尋ねる。
「あぁ。解決とまでは言えねぇーが。一応は終わったぜ」
「そうか!そうか!!それは良かったのか良くなかったのか解らないが、兎に角良かったな!!」
男は笑いながら酒をイッキ飲みする。
「悪いな。ジュースまで。すまねぇーが今礼を渡せる程持ち合わせがねぇーんだ」
「んぁ?そんなの要らねぇーぞ!!俺はそれ程心が狭い人間じゃねぇーんだ!!まぁ、今度会ったら酒でも奢ってくれればそれで良いぞ!!グハッハハハ!!!」
男が豪快に笑う。
「すまねぇーな。ほれ、行くぞリノ!」
「わかった!!つぎはどこにいく?」
リノが俺の背中によじ登りながら尋ねる。
「一旦戻るぞ」
リノが登ったのを確認し、立ち上がる。
「そうだ兄ちゃん!!預かっておいてなんだが、こんな汚い酔っぱらいのオヤジにそんな小さい子預けたら駄目だぜ?誘拐するかもしれねぇーだろ?」
男が言う。
「あぁ?それは心配ねぇーだろ」
俺は男を見ながら言う。
すると、男は不思議そうな顔をして尋ねる。
「それはどう言う意味だぁ?」
俺はニヤリと笑って答える。
「アンタ・・・全然酔ってねぇーだろ?それに、アンタからはクソみたいな感じはしなかったしな。理由はそれだけだ」
そう言い残し、俺は立ち去る。
「おいふぉーりぃ~。さやとかろはいまなにしてる?」
「あぁ?カロは多分どっかで戦ってるだろ。サヤは・・・何してるんだろうな。今頃暴れてるんじゃねぇーか?」
俺が笑いながら言うと、
「・・・・けがとかしてないかな?」
・・・・・。
「大丈夫だ。アイツ等も俺も強いからな」
「ふぉーりの心配はしてない!!」
「んぁ?お前それはどう言う意味だ!?」
「そのまんまのいみだ!!!」
「下ろすぞ!?」
「それはいやだ!!」
はぁ~。少し真面目な事を言えばと思えば。
・・・・まぁ、心配すんなよ。カロもサヤも強い。
「ふぉーりなにかんがえてる?」
「あぁ?・・・何でもねぇーよ」
「きになるぞ!!すごくきになる!!」
「関係ねぇーよ!!それと、暴れるな!!本当に落とすぞ!?」
ホント・・・餓鬼は成長が早くて困る。
Side=バティフォーリ=ケスティマ∥Out