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 Side=???∥Beginning∥『Reload』



 ハァー、ハァー・・・・。


 裏路地を必死に駆ける。

 ちょっと外の空気を吸うだけだったのに、まさか大量の空気を吐くとは思わなかった。


 それもこれも・・・あの男と・・・あの子。


 何故あの子を見てセルナの名前を言ってしまったの!

 いや、話しなどせずに去れば良かったのよ。どうして会話をしてしまった!どうしてあの子の顔を見てセルナと言ってしまった!!


 ミスだ。完全なミス。

 それに、口封じすれば良かったのに、逃げてしまった。


 気が動転している。

 冷静を失っている。


 けれども・・・あの男もセルナの事を知っていた。

 少なくとも関係がある。


 『古の魔女』と言う二つ名は有名だが、本名は知られていない。

 それを、あの男はセルナと聞いただけで『古の魔女』だと解った。


 それに・・・どうしてセルナそっくりの子が!!


 右に曲がる。


「なっ!!」

 袋小路!!!


 しまった!!地形は完璧に把握していた筈なのに!!

 私は後ろを振り返り、追って来てないか確認する。


 どうやら、まいたらしい。


 私は胸を押さえて呼吸を落ち着かせる。

 つなぎのポケットから青い通信用の魔法石を取り出す。


「・・・・私よ。ミスをしたわ」

 私は魔法石を左の耳に当てながら言う。


 魔法石の向こうから驚いた声が聞こえる。

『マサカ・・・作戦失敗カ?』


 機械の様な男が言う。

「いえ、失敗ではないわ。ただ、気付かれた可能性は高い」


 呼吸を落ち着かせようとするが、荒くなる一方だ。


『目撃者ハ始末シタノカ?』


「いいえ、逃げて来たから・・・」


 すると、機械な様な声の男は声を張り上げる。

『何ヲシテイル!!目撃者ハ直グサマ殺セ!!!作戦ヲ水ノ泡ニスルツモリカ!?』


 私も眉を細めながら声を張り上げる。

「解っているわ!!!アンタ何かに言われなくとも・・・解ってるわよ!!」


 いつもなら絶対にしないミス。

 それが私の焦りを強ませる。


「解っているのよ!!!解っているけど・・・」

 駄目だ。あの子の顔が頭から離れない。


 どうして・・・どうして・・・。


『兎ニ角退ケ』


「・・・解ったわ。兎に角退く」

 そう言って私は魔法石の通信を切る。


 魔法石を見つめながら、唇を噛む。

 クソっ!!!


 頭を強く掻く。

 バサバサの髪が更にバサバサになる。


 けれども、今は身だしなみとか気にしている暇は無い。

 兎に角此所から離れなければ。


 私が袋小路から引き返そうとした時、

「おいおい・・・帰るにはまだ陽が高いぜ?」


「なっ!?」

 目の前に、あの男が壁に凭れながら立っている。


「・・・・見逃してくれない?」

 私は笑みを必死に作りながら言う。


 男はそれを鼻で笑う。

「ハッ!!それは無理な相談だ。・・・まさかこんな直ぐに暗殺者さんと会えるとはな。日頃の行いが良いからか?」


 やはり・・・この男は知っている。

 逃げる・・・いや、逃げた所でこの男には面が割れている。


 それならば!!

「・・・それなら、消すしかないわね」


 私はつなぎの胸ポケットから小瓶を取り出す。掌に収まる程度の小さな小瓶。

 その小瓶の中には赤い液体が入っており、コルクで栓をしている。


「クハッハハ!!話が早くて助かるぜぇ?」

 男はそう言いながら右手に槍を造る。


 どうやら創造魔法の使い手らしい。

 私は男を見ながら尋ねる。

「・・・あの子はどうしたの?」


 男の周りにはあの子が居ない。


 男は槍を構えながら答える。

「知り合いに預けて来たんだよ。そのせいで遅くなっちまったんだ」


「・・・そう」

 良かった。もし、あの子が・・・セルナに似たあの子がこの場に居たら、攻撃などは出来なかった。


「本当に・・・良かった」

 私はコルクの栓を口で外す。

 そして、


「これで・・・心置きなくアンタを殺せる!!!」

 叫び、赤い液体が入った小瓶を男に向かって投げる。


「ハッ!!目くらましか!?きかねぇーな!!!」

 男は小瓶を槍で叩き落とそうとする。


「安易な行動は控えた方が良いわよ?」

 私は小さく呟き、

「『赤い液体は血か?それとも絶望か?それを拭う為力を誇示しろ!!『紅蓮の業火』!!』」


 槍が小瓶を叩き落とす瞬間、小瓶が破裂して炎が吹き出す。


ゴウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!!!!!!!!!!!!


「なっ―――」

 男は防ぐ間も無く炎に飲まれる。


 私は腕で顔を隠しながら、左のポケットに手を入れ、今度は黒い液体が入った小瓶を取り出す。


 生きているかは解らないけども、油断は駄目。

 私はコルクを口で外しながら、炎を見つめる。


 すると、

「『創造―――水纏し槍』」


 炎の中から男の声がハッキリと聞こえた。

 その瞬間、


ブォンッ!!!!!


 男が何かを振った瞬間に炎が消える。


「なっ!!」

 見ると、男が先程造り出した槍とはまた違う槍を持っている。


「火には水って昔から決まってるだろ?」

 そう言って、槍の矛先を私に向ける。


「水を・・纏う槍って・・・創造魔法は元素を創造出来ない筈よ!!!何で・・・それを!!」

 私は男に向かって叫ぶ。


 男はニヤリと笑いながら答える。

「それは仲間にも散々言われたんだ。まぁ~特別って事で良いだろ?」


 男はいい加減に答える。

「・・・規格外の男ね・・・」


 これ程の使い手・・・創造魔法で槍・・・?

「まさか・・・『創造の槍使い』かしら?」


「俺も中々に有名になってきたな!!」

 男は嬉しそうに叫ぶ。


 まさかこんな所で大物に出会うとは・・・益々分が悪い。


 万全の準備をしていたなら、誰だって相手していたが、今の私の立場は暗殺者。

 目立つ行動も出来ない。それに、本当に外の空気を吸いに散歩していただけ。戦闘の準備などしていない。


 完全に油断していた。

 私は焦る気持ちを抑えながら、余裕の笑みを作る。

「アナタ・・・確か『グラパス』の人間だったでしょ?どうして『中立国』に居るのかしら?」


「あぁ?『グラパス』ならとっくに離反してるぜ?今はちっぽけな組織の一人だ」


 離反?・・・確かにこの男の噂には縛られない自由人だとか聞いた事があったわね。

 それにしても、組織?

「ちっぽけな組織?アナタみたいな有名人がそんな組織に?」


 そう私が言うと、男はニヤリと笑う。

「いや・・・実に俺に合った組織だぜ?何せ・・・・」


 そこで男は一旦話を切る。

「何せ?」


「・・・世界に喧嘩売る様な奴がリーダーだからな」


 世界に喧嘩を売る?

「ふふ・・それは何処の大馬鹿野郎なのかしらね」


「そうだな・・・大馬鹿野郎だよ。けれどな・・・ソイツ俺より強いぞ?」

 そう男が言った瞬間、男から殺気が放たれる。


「さぁ!!!無駄話は止めて、さっさと始めようぜ!!!!」

 そう言って、男は水を纏う槍を振り回す。


「クッ!!戦闘狂が!!!!」

 私は栓の開いた小瓶を投げる。


「ハッ!!割らなければ良いだろ!!」

 男は小瓶を避ける様に躱すが、

「それは割らなければ駄目よ?」


 私はニヤリと笑う。

「『見えぬ闇に集うのは誰か?翳すなら光を。戦うのならば闇を!!『常闇の爆轟』!!』」


 詠唱をした瞬間、小瓶の中の黒い液体が膨張し、破裂する。

 そして、凄まじい早さで黒い闇が覆い尽くす。


「クソがっ!!!」

 男が必死に逃げるが、

「無駄よ」


 私はそれを見ながら呟く。

「知っているかしら?爆発の際に、火炎が音速を超える速さで伝播していく現象を爆轟って言うのよ?それを造り出す・・・それが黒い液体の力よ?」


 黒い炎とも言える闇が、男の立っていた所を完全に覆い尽くす。

「まぁ、燃えるって現象ではないのよ。その闇を炎に見立てただけ。燃える事は無いわ。けれども・・・闇に捕まれば・・・五体満足はあり得ないわよ?」


 今度こそ仕留めた。男は防御も何もしていない。

 そんな状況で音の速さを超える速さに対応出来る筈が無い!!


 私が本当の意味の余裕の笑みを浮かべる。

 すると、


「『巻き起これ―――全てを巻き込む竜巻よ―――『暴風疾槍』』」


 先程と同じ様に、闇の中で男の声がハッキリと聞こえる。

 私は汗を流す。


「巻き起これぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!」

 風が・・・竜巻が発生する。


 覆い被さっていた闇が竜巻に飲み込まれ消える。

 竜巻の中心には、男が立っている。


「な・・闇を・・・」

 私は目の前の光景が信じられず、唖然とする。


 すると、男の声が響く。

「テメェーが自分で言ったろ?これは炎を闇に見立てたって。て、事はこの闇は物質って事になるだろう?それなら、竜巻に飲まれない筈が無いないだろ?」


 くっ!!只の戦闘狂じゃないって訳ね・・・。

 厄介だわ。


 すると、男は槍の矛先を再度向ける。

「手持ちが尽きたか?まだまだクライマックスには早いぜ?」


「あら、まだまだ私の武器は尽きて無いわよ?終わりにはまだまだ早いわ」

 そうは言うが、私が今持っている小瓶は後二つ。


 倒せるか?いや、あの黒い液体を防いだあの男に残りの二つで倒せる訳が無い。

 ならば、逃げられるか?小瓶の一つは逃走用の液体が入っている。


 けれども、この男から逃げ切れるのか?

 駄目よ・・・悪い方に考えては・・・信じろ!!私は・・・『最後の魔女』よ?


 これぐらいの状況・・・打破出来ない訳が無い!!!!


『マド・・・戦いばっかりでは疲れない?』


 クソ・・・何でこんな時に・・・セルナの言葉を思い出すのよ・・・。


『私は・・・少し疲れたかも。だって、何も残らないじゃない』


 思い出すな!!!

 判断を鈍らせる・・。


『いつか・・・私達をこんな所から救い出してくれる人が現れるのかな?』


 頼むセルナ!!!それ以上言うな!!私は・・・私は!!!!


『・・・ねぇ、マド?もし・・・そんな人が現れたら、今以上に―――』


 ・・・・・・。


『―――幸せかな?』


「ああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」

 私は叫び、ポケットから小瓶を取り出し地面に叩き付ける。


「『消える夢には何がある?全てを有耶無耶にして包みこめ!!『煙霧の幻影』!!』」


 割れた小瓶から白い霧状の煙が私を包み込む。


「なっ!!!!」

 男は槍を構えるが、何故か攻撃してこない。


 好都合。

 私はそのまま霧状の煙に包まれ、その場から消えた。


『ねぇ、マド!アナタはどんな幸せが良い?』


 頭の中に、あの日の光景が浮かぶ。


 ・・・そうね、私は・・・守って欲しい・・・この、私を・・・・。



 Side=???∥Out















 Side=バティフォーリ=ケスティマ∥Beginning∥『Reload』



「ゴホッ!ゴホッ!!」

 クソが!逃走用の魔法か!?


 目の前に煙が充満して、前が見えねぇー。


 俺は『暴風疾槍』を振るう。

 風が巻き起こり、煙を消し飛ばす。


 だが、袋小路にはあの女の姿はもうなかった。


 俺は手に持つ槍を見つめる。

 攻撃出来た筈だ。


 けれども、出来なかった。


 あの女・・・泣いてやがった。


 何かを我慢する様に、何かに逃げる様な涙。

 捨ててしまった何かに後悔する様な・・・助けを呼ぶ様な・・・そんな涙。


「クソが・・・」

 最悪だ。


 本当に最悪なもん見ちまった・・・。

 これじゃぁ・・・あの女を攻撃出来ないじゃねぇーか。


 ホント・・・最悪だ。



 Side=バティフォーリ=ケスティマ∥Out





















 Side=カロナス=ナイハ∥Beginning∥『Reload』



 さて、捜すと言っても『中立国』は広いですからねぇ~。

 どうしましょうか。


 私は立ち止まり、考える。

 虱潰しに捜すのも手間がかかりすぎる。


 ・・・炙り出す事にしますか。

 此方からの捜索は困難。


 ならば、向こうから動いてもらいましょう。

 きっと神経尖らせて生活しているでしょうしね。


 私は目を瞑る。

 そして、


 私を中心にして、円状結界が張られる。

 広範囲方結界。主に捜索などに使われる魔法だ。


 結界内の動く人間を感知出来る。

 それならば、この結界に勘づき、直ぐさま動く人間が暗殺者と言う可能性が高い。


 ・・・・・・・!!

 ビンゴですね。


 かなりの速さで動いていますね。

 阿呆なんでしょうか?


 罠とも知らずに行動とは、まさか此方を誘っている罠と言う事じゃないでしょうね?

 ・・・大丈夫ですね。


 結構必死に逃げてますし。

 それでは、此方も動きますか。


 私は結界を張ったまま動き出す。

 距離は・・・200メートル位ですね。それ程距離は無いですし、直ぐに追いつきそうですね。


 おっと、発見しました。

 私は屋根の上で立ち止まる。


 目の前に、黒いローブを着た人が走っている。

 見るからに怪しいですね。


 それでは、

 黒ローブに右手を向ける。

「『射貫け―――水砲』!!!!」


 水の塊が黒ローブめがけて飛ぶ。


 すると、黒ローブが此方を振り返り、腕を振った瞬間に水の塊が消される。

 ・・・雑魚ではないみたいですね。


 私は右手を向けたまま、黒ローブを見る。


 黒ローブは此方を見た瞬間!!!


「なっ!?」

 目の前に居た黒ローブの姿が一瞬で消える。


「コッチダ」

 機械の様な男の声が後ろで聞こえる。


 私はゆっくり振り返る。

 私の後ろには、先程目の前に居た黒ローブが立っている。


「・・・何故攻撃しなかったのですか?」

 私は結界を解きながら尋ねる。


「フフ・・・私ガモシ敵ニ見ツカッタラ、ソイツヲ苦シメテ殺スト決メテイルノダヨ」

 機械な様な声で、不愉快な事を言う男。


「・・・それは、暗殺者としては無能では?」

 私が微笑みながら言う。


「幾ラデモ言エ!!!!」

 男は左腕を振り上げる。


ギィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン!!!!!!!


 金属を擦り付けた様な不快音が響く。


「くっ!!」

 至近距離でこれは・・・私が後ろに下がろうとした瞬間、


「ゴハッ!!!!」

 黒ローブの左手が私の横っ腹に食い込む。


 私はそのまま飛ばされる。


「クック・・・直グニハ殺サナイ」


 私は屋根に倒れながら、口から血を吐き出す。

 少し、見くびっていた様ですね。


 動が速い。


 私はゆっくり立ち上がる。


「ジックリ料理シテヤル」

 黒ローブの男が言う。


 私はニヤリと笑う。

「・・・料理ですか?残念ですね。私は高級品ですよ?貴方みたいな三下シェフに・・・扱えませんよ」


「黙レ!!」


 挑発に乗るとは・・・単純な男です。


「では、私が貴方を料理しますよ。大丈夫ですよ?私は貴方の様な最低な食材でも、美味しく作れますから」


「死ネェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!!!!!!!!!!」

 男が叫びながら突っ込んで来る。


「・・・見た目よりも味ですから」

 私は微笑み、右腕の封印を解く。



 Side=カロナス=ナイハ∥Out












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