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Side=サヤ∥Beginning∥『Reload』
俺とカロは地べたに座りながらある子を見ている。
「なぁ~・・・カロ」
「・・・何ですか?」
俺はその子を見つめながら眉間に皺を寄せる。
「多分お前も俺と同じ事考えてると思うんだけど・・・」
「はい・・・私とサヤの考えている事は多分一緒です」
カロと俺は再度確かめる様にその子を見る。
「まて~」
「クハッハハ!!!それじゃぁ~捕まえられないぜ?」
・・・解るかな?
現在、俺とカロの目の前に居るのはフォーリとリノだ。
はい。ここで問題。
カロがフェニックスからリノを託された時、リノは一体何歳でしたでしょうか!
・・・1歳位の筈なんだよ・・・。
うん。此所まで言って解ると思うけど、現在リノは二足歩行をしています。
ヨチヨチ歩きとかじゃねぇーよ?普通に走っているし。
リノ見た目もう5歳ぐらいなんだけど・・・。
それに喋ったよね?あれ・・・可笑しくね?
「フォーリは気付いてないのか?」
俺はフォーリを見ながらカロに尋ねる。
「戦闘以外は彼、抜けてますから」
カロが苦笑気味に言う。
「悪魔の子って成長早いの?」
「どうでしょうね・・・不可思議な事もあるんですね」
現在目の前で繰り広げられる摩訶不思議に困惑中。
すると、
「かろ~さや~あそばないのぉ~?」
リノが此方を見ながら言う。
「そこの馬鹿と遊びなさ~い」
俺は手を筒にすながら言う。
「はぁ~い」
リノは満面の笑みで手を振りながらフォーリと鬼ごっこ的なモノをしている。
「テメェー!!今馬鹿とか言ったろ!!!」
フォーリが叫びながら此方に来ようとするが、
「つぎはふぉーりがわたしをつかまえるんだよ!!!」
リノがフォーリの袖を引っ張りながら言う。
「お・・・・おう」
流石のフォーリもリノには勝てないらしいな・・・。
「まぁ~成長が早いって事で良いんじゃね?元々フェニックスは不死なんだし、適当に成長して、適当に止まるんじゃ?」
俺は適当に推測しながらカロに尋ねる。
「そうですね。この事は深く考えない方が良いかもしれませんね」
カロも同意。
「・・・俺はてっきりお前の事をパパと言うと思ったが・・・」
「ごほっ!!ごほっ!!!何言って!!ごほっ!!」
カロは珍しく狼狽えている。
「いや、もしリノがお前の事パパなんて言ったら、お前との付き合いを考え直そうかと」
カロを見ながら悪戯に微笑む。
カロは俺を見ながら、大きく溜息を吐き、
「私ももしパパなんて言われたら、必死に訂正させてもらいますよ」
俺はカロから目線を外し、リノを見ながら言う。
「明日には『中立国』に着くか?」
「そうですね。このまま何もなければ」
「・・・そうか」
つかの間の幸せってこう言うのを言うのだろうか?
今から戦争に介入するって言った割には結構余裕だな俺等。
まぁ~、強いしな俺等。
Side=サヤ∥Out
Side=???∥Beginning∥『Reload』
大きなお城。そして、無駄の多いお城。それがこのお城見た時の印象だった。
それは中に入っても変わらず、いや、一層そう思う。
高価な骨董品や家具。
これ一個でどれぐらいの人がご飯を食べられるのでしょうか?
そんな事を考えながら、お城内の廊下に飾られた壺を見つめる。
「おやおや?骨董品に興味が?」
いきなり誰かに声を掛けられ、勢い良くその声のした方を見る。
「そこまで警戒しなくとも大丈夫ですよ?」
声の主は、ニヤニヤと笑いながら私に近づいて来る。
私は一歩後退しながら尋ねる。
「何か御用で?」
明らかに警戒しているのが解ったのか、更に男はニヤニヤとする。
「いやいや、貴女様が此所に居るのが見えましてね、ご挨拶ですよ。友好的な関係を築く為に、ね」
男はそうは言っているが、その表情から伺えるのは何も無い。
全てを隠し、何かを企む者の顔。
「あれ?更に警戒させてしまいましたかな?あぁ~自己紹介がまだでしたね。私はこの国の文官を務めさせてもらっている、ベルワー=ミニッツと申します。以後お見知りおきよ」
頭を下げるベルワー=ミニッツと名乗る男。
行動の全て全てが怪しい。
「おや?どうなさったのですか?そんなに顔を強張らせて?」
そう言いながら私に近づく。
私の体を動かず、じりじりと後ろに下がるだけ。
正体の分からないプレッシャー。
怖い。
「ふふ・・・どうなさって?」
私の顔を見て、男は一層笑みを深くする。
まるで、私が恐怖して喜んでいる様に・・。
「い・・・いや・・・」
声が・・・。
どうして?何故私がこれだけで恐怖している?
戦場ではこれぐらいのプレッシャーは当たり前・・・・なのに、怖い。
男が、私に手を伸ばす。
「それ以上近づいてみろ?・・・死とランデブーすっか?」
声がした瞬間、男の動きが止まる。
「離れろ。それが今お前に許されている唯一の行動だぜ?」
男はゆっくり私から離れる。
そして、振り返り声の主を見る。
「・・・女性だけで構成される『遊撃部隊ローズ』の副隊長さんではないですか?」
「キャサティア!!」
私は声の主を見て、名前を叫び側に駆け寄る。
「大丈夫かい?キュキュシュ?」
キャサティアが私の肩を掴み、そして後ろに隠し、男に銃を向ける。
「お前・・・何をするつもりだった?」
キャサティアは男を睨みながら尋ねる。
すると、男は首を横に振りながら苦笑いをして答える。
「何をって、ただ交流を、ね。何せ君達はこの間『シューラン王国』から来たばかりだからね」
「見え見えの嘘を吐くなよ?お前が放っていた殺気は、離れた場所に居た私にも解ったぞ?」
キャサティアの握る銃に力が篭もる。
「ふふ・・・それは誤解だけど、此所で何を言っても信じてもらえないでしょうから、今回は退きますよ?ですが・・・気をつけて下さいね?」
「何を?」
男は背を向けながら、首だけ回し此方を見ながら、
「貴女達を快く思っていない連中は・・・山ほど居るって事ですよ?」
そう言い残し、男は去って行った。
私は緊張の糸が切れ、その場に座る。
「・・・・怖かった」
そう私が呟くと、
「何が怖かっただ!!!アンタいい加減に戦場以外で力封印するの止めなさいよ!!」
キャサティアが怒鳴る。
私は耳を塞ぎながら、
「だって、戦場以外で戦わないでしょ?」
「アンタは本当に馬鹿?それとも何?それ狙っているの?天然を狙ってるの?苛々するだけよ!!」
キャサティアは怒鳴る。
「そんなに怒らないでよぉ~」
私は若干涙目になっていた。
「此所は敵地と言っても過言じゃないのよ?あの男が言っていた事は本当。私達を快く思って居ない奴等が何をしてくるか解らないでしょ?アンタを守っている余裕は無いのよ?」
「でも・・・この力は・・・」
私はそこで言葉を濁す。
キャサティアは大きく息を吐いて、
「はぁ~・・・まぁ、良いわ。その変わり私達の誰かと一緒に行動しなさいよ?」
「うん」
私は俯きながら頷く。
キャサティアはまた大きな息を吐き、
「良いから部屋戻るわよ?」
そう言って私に手を差し出すキャサティア。
私はその手を握り、部屋へ向かった。
やはりキャサティアは優しかった。
Side=キュキュシュ∥Out
Side=サヤ∥Beginning∥『Reload』
色々あった。
獣に襲われたり・・・獣に後ろから突進されたり・・・獣に噛みつかれたり・・・。
色々あった。森での生活は長かった。
でも・・・・でも・・・。
「国だァァ!!!!!!!!!!!」
思わず叫ぶ俺。
「何叫んでんだ?」
フォーリが俺の横に立ちながら言う。
「なにさけんでんだぁ?」
フォーリにおんぶしてもらっているリノが笑いながらフォーリの言った事を復唱する。
「森での生活から抜け出せるのが嬉しいんでしょうね」
カロが微笑みながら言う。
「これで・・・冷たい地面で寝るのも、肉ばっかりの食事も、全てから解放される」
俺は思わず一筋の涙を零す。
「かいほうされるぅ~!!」
意味は解ってないだろうが、リノが俺の言った事を復唱する。
すると、カロが爆弾を投下した。
「ですが、お金はどうします?」
「・・・・・は?」
今・・・何を言いました?
「私達無一文ですよ?サヤはお金など持ってないでしょ?」
「えっ?」
俺はカロを見ながら目をパチパチさせる。
「私は転送魔法を受ける前は戦場に居ましたから、お金など当然持っていませんが?」
カロがフォーリを見る。
「俺は基本金なんて持ってねぇーぞ?元々旅をしてたんだ。国々で通貨が違うのに、持っている訳ねぇだろ?それに、大概どっかのゴロツキぶっ飛ばして奪ってたしな」
「うばってた!うばってた!!!」
リノが笑いながら叫ぶ。
「・・・・宿は?」
「無理ですね」
カロがニコニコしながら答える。
「・・・・食事は?」
「まぁ~無理だろうな」
フォーリが答える。
「・・・・・えっ?」
「むりだな!むりだな!!!」
リノが笑いながら叫ぶ。
俺はその場に崩れ落ちた。
「嘘だ・・・嘘だと言ってくれ・・・」
「兎に角少し歩きますか?」
カロが言う。
「そうだな」
「そうだなぁ!!」
フォーリとリノが先に行く。
「・・・俺は・・・一体・・・」
俺はまだ崩れ落ちていた。
「ほら、行きますよ?」
カロが俺の腕を引っ張りながら歩く。
「くそ・・・こんな貧乏嫌だ・・・」
俺は手で顔を覆いながら愚痴る。
「これからどうしましょうかね」
カロが言う。結構危機的状況なのに、声は生き生きしている。
「そうだなぁ~どっかのゴロツキから奪うか?」
フォーリが言う。
「それだと、色々面倒ですよ?」
「そうかぁ?これが一番簡単なんだ・・・が?」
フォーリが止まる。
「ん?どうした?」
俺はフォーリを見る。
フォーリは壁に貼ってある紙を見ている。
俺とカロもその壁に貼ってある紙を見る。
「手配書ですね」
カロがそれを見て言う。
「手配書?・・・・けどさ、これ・・・絵下手すぎるだろ」
俺は思わず言ってしまう。
いや、この手配書さ、一応その人相を書いているのだけど誰が書いたか解らないけどさ、凄く下手なんだよね。何て言うか・・・うん。下手。
「これでは誰だか解りませんね」
カロがそう言いながら、絵の下に書かれている詳しい人物の特徴を読み上げる。
「黒髪に・・・黒い瞳。10代前半の少年。ですか・・・・中々に難しいですが、黒髪に黒い瞳は珍しいですね」
黒髪?黒い瞳?
「この国には結構いるのか?」
俺はカロに尋ねる。
「いえ、もの凄く珍しいですよ」
と、言う事は・・・もしかしたらだな。
すると、
「おい、コイツ捕まえたらガデラン銀貨5枚だぞ?宿に泊まれる」
その一言で、俺は目的を変更。
「捕まえましょう。宿の為に」
そう言って手配書に書かれた責任者の所を読む。
「えぇ~と、『武器屋マクッド』か。どこら辺?」
「私も『中立国』は初めてなので解りませんね。フォーリは通貨の事も知ってましたので来た事あるのですか?」
カロがフォーリを見ながら尋ねる。
「いや、俺も初めてなんだが旅してた時に『中立国』出身の旅人と仲良くなってな。その時に教えてもらったんだよ!!」
なるへそだね。
「んじゃ~兎に角この武器屋に向かうか?」
「「・・・・・・」」
カロとフォーリからの返事が無い。
「どうした?」
俺が二人を見ると、二人は裏路地の方を見ていた。俺もその方を見ると、
「ん?」
黒髪の少年が歩いている。
俺は手配書と少年を交互に見る。
「まさか・・・」
思わず呟く。
「まさかですよね」
流石のカロも呟く。
「人生こんな簡単じゃねぇーだろ?」
フォーリすらも呟く。
けれども、
「「「・・・・・・」」」
そして、
「みつけたぁ~」
リノのその一言を合図に、俺とカロとフォーリは今までに無い位の速さで、走り出す。
「ん?」
少年は俺等に気付き、顔を引き攣らせながら、
「な、なんだお前等!!!!!!!!」
逃げた。
「逃がすな!!!!!俺等の宿代&飯代!!!!!」
俺は腰から『デザートイーグル.50AE』を抜く。
「『動きを止めろ―――水縛』」
カロが唱えると、逃げる宿代&飯代の周りに水で出来た紐が現れる。
「うぉ!!何だこれ!!」
少年はそれをギリギリで回避しながら逃走を続ける。
「クハッハハハ!!!!!!」
フォーリが槍を創造し、もの凄い速さで少年を追い越し、前に立つ。
「なっ!?」
驚く少年が後ろに逃げようとするが、勿論俺とカロが居る。
「なっ!何だよ!!!!!!何だよお前等!!!」
少年は慌てている。
「・・・簡単な事だよ?少年」
俺はそう言いながら、『デザートイーグル.50AE』の銃口を少年の眉間に向ける。
「俺等の宿&食事の為に・・・捕まれ♪」
俺は今満面の笑みだろう。
「へっ?」
少年は涙目で、首を傾げた。
Side=サヤ∥Out
Side=第三者∥Beginning∥『Reload』
『中立国』の城の中は慌ただしかった。
その理由は至極簡単。『ローデン王国』が国境付近に兵を進めているからだ。
今までに無い大胆な暴挙。
だからこそ、城の中は慌ただしい。
慎重を捨てた集団は、何をしでかすか解らない。
話し合い片付くとも思えない。
いきなりの兵の進行。
『中立国』を攻撃すると言う事は、戦争が方向性を変えてしまう。
人間派世界派などの括りだけではない。全てを巻き込んだ戦争が起ころうとしている。
「クリード国王!!!『ローデン』の兵隊が国境付近まで近づいてまいります!!」
騎士が叫ぶ。
「どうなさいますか?」
白髪の老人が落ち着いた、けれども内心焦っている声で尋ねる。
クリード国王は黙って、考えている。
けれども、この沈黙が騎士を慌てさせる。
「国王!!!!」
騎士は叫ぶ。
すると、
「静まりなさい。国王直属騎士団騎士長である貴方が取り乱してどうしますか?」
騎士は後ろを振り向く。
「クリマーラ王妃!!」
クリマーラ王妃は静かに歩きながら、
「ノーアン公爵。『ローデン』の兵は今どの辺りですか?」
そう言われ、白髪の老人が手に持つ紙を読み上げる。
「現在『ローデン王国』の兵隊は南方の『ガデラン大橋』を通過いたしました」
「兵の数は?」
「推定4万です」
「4万ですか・・・・それ程多くはありませんね。ですが、私達が攻撃をしてしまえば、『中立』を捨てる事になります」
王妃の言葉に、騎士長が声を張り上げる。
「ですが!このままでは侵攻許してしまいますよ!!此所は迎え撃つべ―――」
「黙りなさい」
王妃の一言で、騎士長は黙る。
その様子を見ながら王妃は言う。
「お決めになるのは国王です。我々はそれに従うだけですよ」
「・・・申し訳ありません」
騎士長は頭を下げる。
「ですが、騎士長の言った事も一理あります。このまま行けば、5日以内に我が国に『ローデン』の兵隊が到着します」
ノーアン公爵は言う。
「それでも、お決めになるのは国王です」
そう言って、国王を見る王妃。
国王は黙り、目を瞑っている。
そして、
「我々は『中立』。我々は下手に攻撃出来ない」
その一言で、騎士長とノーアン公爵は右手を胸に当て、頭を下げ行動する。
「『中立』と言うのは人間派世界派の戦争に対してのですよ?」
王妃が国王の側に行きながら尋ねる。
「それでも、だ。我々の国には多くの罪無き者達が居る。その者達を戦争に巻き込める訳がなかろう」
そう言って、目を瞑る国王。
顔色は悪く、今にも倒れそうな程の危うさ。
国王の言葉を聞いて、王妃は少し表情を和らげる。
決して正しい判断ではないのかもしれない。
けれども、それが国王の意志。
だからこそ、騎士長もノーワン公爵も従った。
王妃は国王の肩に手を置いて、言う。
「今は体を休めて下さい・・・貴方」
その言葉は、今までの王妃としての言葉ではなく。
クリードの妻としての言葉。
王は、静かに頷いた。
Side=第三者∥Out