編集中
Side=第三者∥Beginning∥『Reload』
森の闇の中、差ほど大きくも無い魔方陣が光り輝いている。その魔方陣からは光が空に向かって放たれている。
放たれている光は上に行くたびに太くなっていて、そして細くなっていく。
現在第一段階。
魔方陣の周りには数名の白い槍を携えた者が居る。
1人の男が言う。
「現在23名との通信が途絶えました」
「そうか・・・」
それを聞いたがっしりとした体型の男が呟く。
「どうしますか?隊長」
丸坊主の男が尋ねる。
がっしりとした体型の隊長と呼ばれた男は目を瞑る。
「『黒い討伐隊』以外にも何者か居ますし、この作戦は無理がありますよ?」
丸坊主の男が言う。
その言葉に、長い髪を三つ編みにしている女性が声を張り上げる。
「教祖様の命よ?それを失敗で終わらせる気!?」
「いや、そう言う訳ではないけどよ・・・」
丸坊主は肩をすぼませる。
すると、先程まで黙っていた隊長と呼ばれるがっしりとした体型の男が口を開く。
「・・・作戦は続行。『黒い討伐隊』以外の戦力に対しては警戒しながら態様。そして、私も出る」
そう言い、地面に突き刺していた白い槍を抜き、隊長と呼ばれる男が歩き出す。
「魔方陣の守りは?」
丸坊主が尋ねる。
隊長と呼ばれる男は振り返らずに言う。
「私が此所に近づけさせない。それで十分だろ」
そう言い残し、隊長と呼ばれる男は森の中に消える。
現在、『要塞崩し』は第一段階。第二段階まで約3分。
完全発動まで―――20分。
Side=第三者∥Out
Side=カロナス=ナイハ∥Beginning∥『Reload』
爆風。
『足止めランス』と呼ばれるレイミー=クルティアンが持つ槍で発生する爆発。それにより発生する爆風。
これが足止めですか。
確かに、フォーリが言った意味が解りますよ。
殺し合いだけなのなら、此方に分がある。けれども、足止めと言うだけなのなら、兎に角時間を稼げば良いだけ。
この技はそれにもってこいと言う事ですね。
「私の技を見せてあげたのだから、見物料を払って下さい」
レイミー=クルティアンは爆風の中で言う。
「金はねぇーって言ってるだろうが!!!!!!!!」
フォーリが白い槍を投擲する。
「無駄です。私に無駄な行動をさせたから、無駄な事した料を払って下さい」
そう言いながら、レイミー=クルティアンは自身での槍でフォーリが投げた槍を木っ端に粉砕する。
「『道塞がる者を―――その強靭な矛先で貫け―――『剛力地槍』』」
フォーリが詠唱したら、右手に先端が三つに分かれた槍が現れる。
「これでも喰えやァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!」
叫び、フォーリが槍を突く。
ブォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!!ドゴオォォォォォォォォォォォッ!!!!!!!
衝撃波が起こり、そして爆発。木々が飛び散り地面が抉れる。
だが、
「凄まじい威力ですね・・・ですが、これだけでは通れませんよ?」
土煙の中に、無傷のレイミー=クルティアンが立っている。
「クハッ!!!面白いな!!女!!!!!!!!!」
フォーリは当初の目的を忘れている。いや、彼の当初の目的は戦う事でしたね。
「フォーリ!!!私達は『要塞崩し』を止めないといけないのですよ!?」
一応叫ぶが、
「クハッハハハ!!!!面白ぇー!!!『足止めランス』!!」
聞こえてないですね。
どうしましょうか。これはフォーリを囮に使って私だけ通りましょうかね?
私が二人を横目に通ろうとした時、
ドゴォォォォォォォォォォォォォォン!!!!!!!!!!
目の前の地面が破裂する。
「くっ!!!!!!」
「言った筈。通るなら通行料を払って下さい」
レイミー=クルティアンが私を見ながら言う。
「これは・・・ヤバいですね」
額から汗が流れる。
思った以上に強敵。倒さずに突破は不可能に近い。
彼女がどんな力を使っているのかは解りませんが、この状況は彼女に有利な状況なんでしょうね。
仕方がありませんか・・・。
「フォーリ!!!本気で倒して下さい!!!!」
そう私が叫ぶと、
「ククックク・・・久しぶりに滾るぜぇ~・・・」
・・・戦闘狂万歳ですね。
私も参戦します―――・・・・。
「貴方達までも来ますか?」
私は横目で見ながら言う。
そこには、黒い鎧を身に纏う『黒い討伐隊』の3人が居る。
「面倒ですね・・・私達は『要塞崩し』を破壊したいのですよ?利害は一致していると思うのですが?」
そう私が言うが、黒い鎧は剣・槍を構える。
私は溜息を吐き、腕の封印を解く。
「実は詠唱しなくても解けるのですよ?まぁ~貴方達に言っても・・無駄でしょうけどね!!!!!」
Side=カロナス=ナイハ∥Out
Side=サヤ∥Beginning∥『Reload』
この森ってどれだけデカイの!?
走っても走っても全然見つからねぇー!!!
目印的なのは無いのか?
・・・待てよ、あの魔方陣確か『要塞崩し』って言われているんだよな?
そんな強大で強力な魔方陣をこんな簡単に発動出来る?
それなら今頃『要塞崩し』のオンパレードだろ?
・・・・違うのか?
いや待て。早合点し過ぎだ。
考えろ変えろ。『要塞崩し』ではあるが、何かが違うのか?
それに、あんな巨大な光が上がっているのに、それに近づけない。
何故?
だが、確かにあの好青年はあの光は『要塞崩し』だと言った。
この際何故発動させたとかはどうでも良い。
問題は何故あれ程の魔方陣をこんな簡単に発動出来る?
・・・フェイク?
まさかアレは・・・『要塞崩し』を発動している様に見せかけたフェイク。
と、言う事は他の何かが動いているのか?
『要塞崩し』程の魔方陣だ。大量の魔力だって必要になる。それを此所で発動させるメリットが無さ過ぎる。
ならば、これはフェイク。
それなら何を隠している?
・・・いや、違う。隠しているのではない。見えないだけだ。
「まさか・・・」
「中々に頭が回るらしいな・・・」
!?
暗闇の中から、白い槍を肩に担ぐ男が現れる。
「・・・誰だ?・・・いや、『始星団』とか言う奴か」
「その問いは正解だ。なら、次はこっちが問う。貴様は何者だ?」
男が俺に尋ねる。
がっちりとした体型の男が纏う雰囲気と言うのは今までの奴とは違う。
隙が無いな・・・動けば直ぐさま殺すと言った感じか?
「只の餓鬼だぜ?」
「嘘を吐くな。ただの餓鬼が・・・『要塞崩し』のフェイクに気付く訳がない」
「おいおい。もし俺がそれに気付いてなかったら、アンタ自分で作戦内容バラしてる事になるぜ?」
「そう言った時点で貴様は気付いているだろ?」
「なんだそりゃ・・・まぁ、良いや。どうせ知られたならって感じだろ?」
俺はそう言いながら、『仙牙龍刀』を取り出す。
そして、
「構えろよ・・・テメェーに殺れる程・・・俺は優しくもねぇーんだわ」
殺気を放つ。
「・・・凄まじいな。やはりただ者では無い。もう一度問う。貴様は何者だ?」
男が白い槍を構えながら問う。
「言ったろ?只の・・・・餓鬼、だ!!!!!!」
俺は踏み込む。
「そうか・・・なら、聞き出すまでだ!!!!!!!!」
俺が踏み込むのと同時に、男も踏み込む。
そして、男の持つ槍の矛先と『仙牙龍刀』がぶつかる。
『仙牙龍刀』を男の喉元を狙い突く。
男はそれを体を捻り躱す。
左足で男の顔面めがけて繰り出す。
男はそれを槍で防ぐ。
俺は『仙牙龍刀』を振り上げる。
男はそれを後退して躱す。
後退した男は直ぐさま槍を体勢を整えていない俺の胸めがけて突く。
それを俺はギリギリで躱す。
「まさか今のを躱すとは・・・中々だな」
男は感心しながらも、槍を高速で突く。
それを『仙牙龍刀』で捌きながら言う。
「アンタも中々だよ。誇れよ。俺が褒めたんだ」
男は鼻で笑い。
「それは、それは!!」
高速で槍を突き続ける男。
本当に強い。フォーリの槍捌きも中々凄まじかったが、この男はそれと同等・・・いや、それ以上か?
「いつまで躱すだけだ?お前を誇れる程の力を私に見せてみろ!!!」
男は叫びながらも、手を緩めない。
手を抜かず、本気で殺しに来ている。
傲らない男。敵ながらスゲェーよ。
「『仙牙五刀―――撃龍』」
『仙牙龍刀』から凄まじい斬撃が男めがけて放たれる。
「ふんっ!!!!!!!」
男は斬撃めがけて槍を突く。
ドゴォォォォォオオオオオオォォォォオオオオオンッ!!!!!!!!!!!!
爆発。
「チッ!相殺されたか」
土煙で良くは見えないが、あれ位で死にはしないだろ。
「中々だな・・・」
やはり。
土煙を槍で払いながら男が現れる。
「強いなアンタ・・・」
素直に言う。
「貴様も強いぞ?だが・・・まだ貴様を誇れる程ではない」
そう言って、槍を構える男。
「そうか・・・ならこれはどうだ?『仙牙七刀―――閃光』」
『仙牙龍刀』の刀身が伸び、男の胸を狙う。
「なっ!?」
流石の男も驚き、槍で防ごうとするが、
「それだけじゃ防げないぜ?『仙牙七刀――真―――閃光千爆』」
瞬間、伸びた刀身が破裂する。そして、無数の刃が男めがけて飛ぶ。
「くっ!!!!」
男は防ごうとするが、
「千を越える刃を・・・それだけで防げるのか?」
俺は不敵に微笑みながら言う。
ブシュゥゥッゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!!!
男の至る所から血が噴き出す。
だが、男は立っている。
「・・・凄まじいな。急所めがけて飛んで来る刃は防いだか」
「・・・くっ!」
男はその場に片膝を付き、槍を地面に刺す。
無傷だったらどうしようって内心ドキドキだったけど・・・良かった。
俺は内心安心していた。
すると、
『見つけたぜ?』
頭の中にモートの声が響く。
『周りに誰か居るか?』
『あぁ、複数居る。どうする?殺すか?』
『あぁ、邪魔だから消してくれ』
『了解。だが、魔方陣はどうする?俺には魔方陣の知識は無いぞ?』
『いや、魔方陣から放たれる光めがけて攻撃してくれれば良い』
『あぁ?どう言う意味だ?』
『それは『要塞崩し』じゃない。魔方陣に似せて作られた攻撃魔法だ』
『どう言う意味だ?』
『それは後で説明する。兎に角ヤバイのは確かだ。光めがけて攻撃を放てば良い。多分だが、あの光は力を凝縮しているだけだ。外から加えられる力には脆い筈だ!!』
『解ったぜ!!兎に角やるぜ』
そこでモートの会話が終わった。
俺は男を見ながら言う。
「んじゃ、説明でも貰いましょうか」
「説明?」
「解っているだろ?どうして『要塞崩し』に似せてまであんな攻撃魔法を?」
そう俺が尋ねると、男は鼻で笑い答える。
「何故我々が此所にいるか解るか?」
「いや、全然」
「我々は協定を結ぶ『ローデン王国』の要請により『古の魔女』の殺害を行う為に此所まで来たのだ」
『古の魔女』・・・・てか、コイツ等『ローデン王国』の人間じゃないのか?
でも、要請やら協定やら言っているから世界派の人間か・・・。
男は続ける。
「我々は素直にその要請を飲んだが、それには裏がある」
「裏?」
男は微笑みながら言う。
「我々の目的は『中立国』周辺に存在している『ローデン王国』の兵隊の駆除だ」
「何で『中立国』周辺に兵が?」
「簡単な事だ。ただただ邪魔なだけなのだよ」
そう言って、男は笑みを消し、忌々しそうな表情を露わにする。
「それじゃ~お前等はそれを止める為に?」
「あぁ。そうだ」
「ん~じゃぁ~、何でお前等は『中立国』に対してそこまで?」
「これも簡単な事、『中立国』に恩を売るためだ」
何か色々錯綜してるなぁ~。
それにしても、『ローデン王国』はデカく出たな。『中立国』攻撃したら確実にデカい戦争になるだろうに。・・・いや、もしかしてそれが目的か?
解らないな。
「まぁ~どうでも良いか」
俺は『仙牙龍刀』をしまう。
「トドメを刺さないのか?」
男は俺に尋ねる。
「刺さないよ。だって・・・俺の目的は果たされたから」
そう俺が言った瞬間、空に上がっていた光が徐々に小さくなっていく。
それを見た男は目を丸くして言う。
「まだ早すぎる!!まさか・・・」
俺を見る男。
俺はニヤリと笑い。
「俺の仲間がやったんだよ」
「なっ!?あの女は何を!?」
女?良くは解らないけど、まぁ良いか。
「これでアンタ等の作戦は失敗だ」
「貴様!!我々は『中立国』を『ローデン王国』から守る為に―――」
言い切る前に俺が最大の殺気を放つ。
男は殺気に押され、黙る。
俺は一歩一歩男に近づきながら言う。
「お前さっき言っただろ?「恩を売る為だ」とか。それって結局は『中立』を掲げるあの国を戦場にするつもりなんだろ?それは守るって言わねぇーんだわ。アンタ等はただただ戦力が欲しいだけだろ?それなのに守るだとかぬかすなよ。三流の台詞過ぎて笑えねぇーんだわ。それに気に食わない。それが一番の理由だ」
俺は男の目の前に立ち、見下ろす。
「アンタ等のやっている事を完全否定するつもりもないし、俺がやっている事を正当化するつもりもねぇ。ただただ・・・気に食わない。それだけで俺はアンタの・・・アンタの国の作戦を潰した。恨むなら恨めば?最初からそんな事は重々承知の上での行動だ」
すると、男は傷口を押さえながら俺に尋ねる。
「何故・・・私を生かす?」
「それって「殺せ」と言っているみたいなもんだぞ?まぁ~良いけどさ。・・・理由は簡単。言ったろ?俺と戦えた事を誇れって。死なれたら困るんだわ。アンタは生き証人だ。存分に自分の国で俺の事を言いふらせ。アンタはそれだけの為に生かされる。あぁ、再度挑んで来るのも良いぜ?それはそれで面白い」
男は驚いた様な表情をした後、直ぐさま笑みを表に出す。
「・・・貴様の名は?」
殺気を消し、笑みを表しながら答える。
「サヤ。最強を自負する化け物だ」
「サヤ・・か」
男は小さく呟いた。
俺はそこで思い出した様に男に言う。
「あぁ!早めに『始星団』の皆様に撤退を知らせた方が良いぞ?俺の仲間に「白い槍を携えた者は問答無用で殺せ」って言っているから」
俺がニコニコと微笑みながら言うと、男は慌てて部隊に連絡する。
「全隊員に知らせる。作戦は失敗。速やかに戦線を離脱。最優先は自分の命だ。直ぐさま行動に移れ!!」
どうやら通信魔法的な何かだろう。青い石を通じて話している様だ。便利なモンだ。俺等もあれ持ってたら便利じゃね?
「んじゃ、俺も仲間を捜さないといけないから、消えるぞ?」
俺は男から離れながら言う。
「待て」
男が俺を呼び止める。
「ん?何?」
「貴様は何が目的だ?それ程の力で何を目指す?覇道か?」
男は真剣な目で俺に問う。
今まで考えた事がなかったな。
兎に角自分のやりたいようにやろうとは考えていたが、具体的に何がしたいとかは全然定まっていない。
「ん~・・・決まった事をしたいとか、大層な目的はねぇーけど。覇道なんて大層なモンを進むつもりもねぇーよ。敢えて言うなら無だ。俺の道には決められたルートはねぇーよ。それは俺が決めるもんで、言葉で何て表せるか」
そう俺は言い残し、駆け出す。
少し格好付け過ぎたか?この世界に来てから少し調子に乗ってるかもなぁ~。
『ケルヌ・モート・カーリー。作戦は変更。『始星団』の殲滅はもう良い。そんな事よりカロとフォーリの捜索を頼む』
『楽しんでたのによぉ~』
モートががっかりした様な声で言う。
『我慢してくれよ』
俺は苦笑しながら言う。
『カロとフォーリともう合流済みよ?』
『うむ。それに相手も退散した様だ』
カーリー・ケルヌが言う。どうやら二人一緒に居る様だ。それにカロとフォーリも一緒に。
『なら、合流する』
俺はそれだけ言って会話を止める。
面倒な回り道をしちまったな・・・。
溜息を吐きながら、森の中を駆ける。
Side=サヤ∥Out
Side=カロナス=ナイハ∥Beginning∥『Reload』
右腕に纏った水で、黒い鎧を薙ぎ倒す。
鎧を纏っているせいで全然解りませんが、効いているでしょうね。
元々あの黒い鎧は象徴。その為、それ程防御力が高い鎧ではない。
此方はそれ程問題はありませんが・・・問題はフォーリの方ですかね。
チラッと、フォーリの方を見る。
槍対槍。凄まじいですね。ですが、五分五分。
守る側と言っても良いレイミー=クルティアンがあのフォーリと互角。
いや、守ると言った所で力を発揮出来るのが彼女と言った所でしょうか。
いや、攻める側でフォーリに互角の戦いが出来る時点で彼女は強いのでしょうね。
けれども、此所で足止めを食って居る時間は限りなく無いのですが・・・。
「ぐああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」
黒い鎧が剣を振り下げる。
ヤバイ!!
少し意識を離し過ぎました。躱せない!!!!!
すると、
「おやおや?油断大敵って言葉を知らないのかしら?」
目の前に、ドレッドヘアで褐色肌の女性が私めがけて振り下ろされた剣を剣で止めている。
「カーリーさん!?何故・・・いや、サヤが召喚したんですね」
一瞬疑問に思ったが、サヤが我々を捜す為に召喚したのだと気付く。
「本当は遊びたいけど・・・一瞬で終わらしてあげるわ」
そう言い、カーリーさんは剣を振るう。
その瞬間、爆風が黒い鎧を吹き飛ばす。
叫ぶ時間さえ与えずに、簡単に黒い鎧を吹き飛ばした。
「血が見えないのが残念」
本当に残念そうに剣を鞘に収めるカーリーさん。
「助かりました。少し油断しました・・・あっ!フォーリの方は!?」
私が慌てて振り返ったら、
「きゃあああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」
レイミー=クルティアンが後方に吹き飛ぶ。
そこには、フォーリの他にもう一人の神が立っていた。
「小娘。まだまだ鍛錬が必要だぞ?」
そう言って、弓を構えるケルヌンノスさん。
「んぁ?サヤの召喚する神か?」
フォーリが尋ねる。
「そうだ。槍を使う男よ。王の命により捜していた」
目線はレイミー=クルティアンに向けたまま答える。
「そうか・・・『要塞崩し』は!?」
フォーリは思い出した様に答える。
すると、カーリーさんがどこから出したのか、酒瓶をイッキ飲みしながら言う。
「アンタ達、空を見なさいよ」
そう言われ、私・フォーリ・レイミー=クルティアンは空を見上げる。
「「「なっ!?」」」
空に上がった光は、徐々に消えて行っている。第二段階ではない。本当に消えている。
けれども、誰が?
「マイマスターが真相に気付いて壊した様よ?」
「真相?」
「私も知らないから、後でマイマスターにでも聞いて」
そう言い、地面に座って一人で酒盛りをするカーリーさん。
私は少し情報に混乱しながらも、レイミー=クルティアンに近づいて尋ねる。
「貴女の役割は「足止め」その「足止め」をする対象が無くなった以上、もう退いては?」
すると、レイミー=クルティアンはそれに答えずに青い石を耳に当てている。
そして、大きな溜息を吐いた。
「はぁ~・・・作戦失敗の様ですね。労働料が欲しいですよ。そうですね。アナタの言う通り退きます。お金も大事ですが命も大事ですし・・・最後に尋ねて良いですか?」
「何をですか?」
レイミー=クルティアンは立ち上がりながら私とフォーリに尋ねる。
先程までレイミー=クルティアンに弓を向けていたケルヌンノスさんはカーリーさんと酒盛りをしている。
「アナタ達の名前は?」
尋ねるか迷ったが、
「俺の名前はバティフォーリ=ケスティマ!!『創造の槍使い』だ」
何を思ってか、満面の笑みで自己紹介するフォーリ。
私は大きな溜息を吐きながら、
「カロナス=ナイハです」
「何だ?二つ名は言わないのか?」
フォーリが尋ねる。
私が言う前に、レイミー=クルティアンが言う。
「その必要は無いわ。二人とも有名人ですから、名前だけで十分解ります」
そう言い残し、レイミー=クルティアンは森の闇の中に消えた。
「・・・はぁ~」
そこで私はもう一度大きな溜息を吐いた。
Side=カロナス=ナイハ∥Out
Side=???∥Beginning∥『Reload』
「隊長!!」
俺は隊長の側に駆けながら叫ぶ。
隊長はクレイモアを肩に担ぎながら、此方を見る。
「生きてたか・・・いや、死ぬ訳ないかお前が」
「そんな風に言わないで下さいよ・・・それより、『要塞崩し』は止まった様ですね」
俺はそう言いながら、空を見上げる。先程まで巨大な光が上がっていた空は平穏そのものだった。
「誰かは知らないが、止めたらしいな。もしくは『始星団』中で何かがあったかだ」
隊長はそう言いながら、通信様の魔法石で誰かと話している。
俺は、そこで彼を思い出す。
きっと、彼なのだろうと。この状況を打破したのはきっと彼だ。
それ以外に居るとは思えない。
彼は気付かない内に、私に警戒を篭めた殺気を放っていた。
自分でも気付かずにあれ程の殺気を放つ人間を、俺は見た事が無い。
自分以上・・・いや、隊長以上かもしれない。
けれども、脅威には感じなかった。
それは向こうに敵意が無かったせいなのかもしれないが、多分それだけでは無い。
純粋に、彼が敵には思えなかった。
すると、先程まで通信していた隊長が面倒臭そうに言う。
「駄目だ。殆どの奴が負傷又は死亡だ。生き残ったのは俺とお前を入れて7人だ」
少し驚いた。まさかそこまで減っているとは・・・。
俺の心の中を察したかの様に、隊長は言う。
「『始星団』だけの力ではないな。第三者が乱入していたと考えた方が良い」
第三者・・・きっと彼の仲間とかだろう。
確信は無いが自信はあった。
「お前・・・今喜んでないか?」
兜で顔を隠している筈なのに、隊長がそんな事を尋ねる。
「い、いえ!!!そんな事は!!!!」
俺は必死に手を振り、否定する。
「・・・まぁ良い。何かあったのなら、後で報告してもらう。まぁ~お前へのお仕置きは別としてな」
兜で顔は見えないが、きっと隊長は恐ろしい程の笑みを浮かべていただろう。
「なっ!何故ですか!?」
俺は叫びながら尋ねる。
「お前、本気出してなかったろ?」
そう隊長に言われ、ドキッとする。
「図星だな?『暗闇の馬』と剣名をそのまま二つ名で呼ばれるお前が本気を出せばすんなり終わっただろうよ?」
そこで、俺は一つ否定する。
「それは違いますよ・・・隊長」
「あぁ?」
その言葉の意味が解らず、隊長は聞き返す。
俺は空を見上げながら、
「俺は今日初めて、自分では勝てない相手に会いました」
自分を化け物と言った・・・・あの彼に。
Side=???∥Out