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Side=サヤ∥Beginning∥『Reload』
アイツは何をした?
アイツは何を殺した?
アイツはどうして笑っている?
アイツハナニヲシタ?
アイツハ―――
「テメェーは何してんだ糞野郎がァァァァァ!!!!!!!!!!!!!」
叫ぶ。
「答えろォ!!!!述べろォ!!!説明しろォ!!!!テメェーは何をしたァァァァァァァァァァ!!!!!!!!」
叫ぶ。叫ぶ。叫ぶ。
血液が頭に昇って行く。
脳がフルスピードで回転する。
拳を作り、振る。
戦略?冷静?ナンダソレ?
殴る。殴る。殴る。殴る。
この世界に来て初めて沸いた感情。
―――怒り。
純粋な、ただの怒り。
血液が沸騰していくように、沸々と沸き上がる。
殴る。殴る。殴る。殴る。
アイツハナニヲシタ?
「テメェーは何をやったんだって・・・・聞いてんだよォ!!!!!!!!!!」
叫び、殴る。
すると、怒りの対象がケラケラと笑い出す。
「クハッハハ!!・・・・キャハハ!!!・・・・面白い事を尋ねるな?なぁ~に・・・簡単で明解な事だろ?殺したのさ。それ以上でも以下でも無い。キャハハハッハハ!!!」
顔面から血を流しながら、ソイツは笑う。
嘲笑う様に。あたかもそれが当たり前の様に。
ソイツは続ける。笑いながら。
「滅茶苦茶な事は言ってないだろ?キャハッハハハ!!!殺した当事者と・・・そこら辺に転がる殺された被害者。それを見れば一目瞭然。これはただの虐殺さ!!!!キャハッハハハッハハハハ!!!!!」
何を言っている?
虐殺?
何を言っている?
「・・・・テメェーは何を言ってるんだぁ?ごらぁ?んぁ?」
拳を強く握り過ぎて、血が流れる。
だが、痛みなど感じない。
それ以上のモノが目の前に存在している。
痛みすら、消してしまう。
一種の麻薬と同じ―――怒り。殺意。敵意。
それが俺の脳・身体全てを支配する。
全ての矛先は目の前で大きな口を開け、笑う男。
「もう一度尋ねる・・・テメェーは何をした?」
「何度も何度も・・・先程から言ってるだろ!?殺したのさ!!!!悲鳴も何も叫ばさないで、簡単に殺したのさ!!!!!!!」
ブチッ―――あぁ~・・・糞野郎が・・・・。
「テメェーは此所で・・・殺してやるよ」
ゆらりゆらりと歩く。
「キャハッハハ!!!殺す?お前が?私を?不可能だ!!!お前には私は殺せない!!!不可能に挑むのが人間と言う雑種だが、その不可能を超えられないのも人間と言う雑種なんだよ!!!!!」
「黙れ・・・・黙れ・・・黙れ・・・・」
喋るな。口を閉じろ。眼を開くな。音を聞くな。
そして―――
「生きてんじゃねぇーよ、糞野郎がァァァァァァァァァァ!!!!!!!」
駆ける。
テメェーだけは、俺がコロスッ!!!!!!!!!!!
Side=サヤ∥Out
Side=フェニックス∥Beginning∥『Reload』
突然現れた青年が、マルコシアスに向かって叫んでいる。
そして、何度も何度も拳を振るっていた。
彼は、どうしてあんなに怒っている?
何をどうして彼はあそこまで怒鳴っている?
どうして・・・・
「あの子は・・・優しい・・の・・ね」
セルナが青年を見ながら呟く。
「優し・・・い?」
セルナの言った優しいとは何だろうか?
あの青年は何故?
「そうよ・・・だって・・・この村の・・人達の・・・為に怒っ・・・てる・・のだもの」
そう言って、私の手を握るセルナ。
「セルナ・・・・」
私もその手を握りながら、セルナを見る。
そして、話す。自分の事を。
「セルナ・・・私は・・・・悪魔なんだ・・・」
傷のせいか、途切れ途切れに話す。
だが、きっと傷が有っても無くとも途切れ途切れになっていただろう。
すると、セルナから予想外の言葉が返ってきた。
「知ってた・・・・」
「なっ!?」
私が驚く顔をすると、セルナが痛みに歪んだ顔で無理矢理笑みを作り言う。
「貴方・・・・自分の・・・妻・・・の・・事も・・知らない・・の?」
「何を・・だ?」
そう尋ねると、セルナは目を瞑り答える。
「私は・・・元『ローデン王国』の・・・『古の魔女』と・・・呼ばれて・・いたの・・よ?」
『古の魔女』?・・・・!?
そのワードを頭の中で何度も復唱し、思い出す。
私がまだ、ソロモン72柱の悪魔として殺しを行っていた時の、リスト。
『古の魔女』と呼ばれる、失われた古代魔法を使う女性。
「まさか・・・・君が・・?」
「フフ・・・今更・・ね」
そう言って笑うセルナ。
確かに今更だが、
「あの時・・・君は『シャクリード王国』にいた・・・んじゃ」
そう。セルナと出会ったのは世界派の『ローデン王国』ではなく、人間派の『シャクリード王国』にいた。
そして、そこで私と出会ったのだ。
「あの・・・時は・・・逃亡・・・中・・だったの」
さらりと答えるセルナ。
「逃亡・・・?」
「私は・・・戦いから・・・逃げたの・・・それだけ」
無理に笑みを作りながら答えるセルナ。
そして、続ける。
「これは・・・私の・・罪なの・・かもしれない。だって・・・・・親友も・・・祖国も・・・全て・・・捨てて・・・逃げたのだから」
その表情はもう笑みと言えるモノではなかった。
「君が・・・そんな事を言っては・・・駄目だ。思い出して・・・みろ?・・君に・・・プロポーズをしたのは・・・私だぞ?」
苦笑しながら私はセルナの頭を撫でる。
「フフ・・・確かに・・少し強引だっ・・・たわね・・・でも・・それが嬉し・・・かった・・戦い以外で・・・必要と・・・される事が・・・嬉しかった・・・」
そう言いながら、涙を流すセレナ。
「・・・君の・・素性などは・・・全然知らなかった・・けどな」
皮肉混じりに言う。
セルナは笑って返す。
「それは・・・・『古の魔女』として・・・じゃなくて・・・一人の『セルナ=クローデン』として・・見てくれたって・・・・事でしょ?・・それが・・・・・嬉しかったの・・・」
そう言いながら・・・涙を流し・・・微笑みながら、彼女は伝える。
すると、セルナは魔力を流し込み始める。
「なっ!?何を」
私は驚き、止めようとした。
瀕死の状況で、命と同等の魔力を消費すると言う事は、死に直結する。
「・・・この子・・・リノも・・今危ない・・・だから・・・私の魔力で・・・生命力を上げ・・る」
そう言いながら、残り少ない魔力をリノに流し込むセルナ。
「止めろ!!・・・死ぬ・・ぞ!!」
私は必死に止める。だが、セルナの決意は固かった。
「この子が・・・死ぬくらい・・・なら・・・私が死ぬ・・わ」
そう言いながら、彼女は私を見て言う。
「貴方・・・私ね・・・貪欲なの・・・」
「何を?」
「私は・・・貴方を・・離すつもりは・・・無い。だから・・私は貴方に・・・生きてとは・・・言わない・・・だから・・・この子だけには・・・生きて欲しい・・の」
静かに、冷酷な事を述べるセルナ。
「これは・・・私の・・・我が儘。この・・・先・・・この子は・・困難に遭遇・・・するかも・・しれないし・・・私達を・・・恨むかもしれない・・・それでも・・生きて・・・・生きて・・・・生きて欲しいの」
たが、それは一人の母親の言葉。
「でも・・ね?・・・私は・・・貴方を離したく・・・ない・・・これは傲慢・・・・それでも・・・私は・・・貴方と離れたくない・・・・」
涙を流しながら、セルナは言う。
私は、静かにセルナの涙を拭い、答える。
「大丈夫だ・・・・私も・・・共に行く・・・・共に・・」
そう伝えると、セルナは笑みを浮かべて、言う。
「ありが・・・・と―――――」
セルナの魔力が切れ、それと同時に命の灯火が消えた。
私は、涙を堪えセルナが抱えるリノの額に手を当てる。
そして、魔力を流し込む。
自滅。それを重々承知で・・・命を削る。燃える―――命を。
Side=フェニックス∥Out
Side=カロナス=ナイハ∥Beginning∥『Reload』
「これは・・・」
傷付いた体引き摺りながら、村まで着いた。
だが、
「やはり・・・あの火柱は」
私は、空に上がった巨大な火柱を思い出す。
まさか、これ程大掛かりな仕掛けを・・・。
すると、
「糞野郎がァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
視界に入ったのは、拳を振るい、悪魔と戦うサヤだった。
だが、驚いているのはそれじゃない。
すると、横にいたカーリーさんが声を出す。
「怒ってる・・・・」
そう。純粋にサヤは怒っていた。
今まで、サヤが本気で激怒していた所など見た事がなかった。
だが、村一つ消え、サヤは激怒した。
悪人だと言っていたサヤが、人の死で激怒した。
命を奪う者だからこそ、この無差別に激怒した。
狂気や堕ちるなどではない。
今のサヤには、人間が持つ感情の一つ怒りだった。
人の死で怒れる、人間。
無関心でいたサヤは、無関係な人間の死で激怒している。
その姿を見て、どれ程私が救われたか。
彼と共に居て、改めて確信した。
彼は、誰よりも悪人で誰よりも善人だと。
彼は欠けていたのでは無い。彼は人の死で怒れる人間なのだ。
今のサヤの力は化け物並で・・・そして、人間らしい理由で怒っている。
ふと、目線を変えるとある人物が映る。
「あれは・・・」
赤髪ロングヘアの悪魔、不死鳥フェニックス。
彼は、魔力を放ち何かをしている。
「あれは・・・何を?」
私は体を引き摺りながら近づく。
そして、数メートルの距離になって気付く。
彼の下に、誰かが居る事。そして、彼が魔力を放っているのではなく、流し込んでいると。
「何をしているのですか?」
私は尋ねる。
すると、不死鳥が口から血を流しながら答える。
「・・・この子に・・・・魔力を流して・・・いる」
その言葉も信じられなかったが、それ以上に彼の姿が信じられなかった。
「何故・・・血を流しているのですか?」
不死である彼が死ぬ訳がない。
それなのに、彼は血を流して死にかけている。
すると、彼は笑みを浮かべ答える。
「不死・・・殺しの石を埋め・・込まれた・・・・私は・・・もう不死じゃ・・・・ない」
「不死殺し!?」
そんな物は空想上の産物。それが存在している訳・・・いや、彼の姿を見れば一目瞭然か。現に、彼は血を流し死にかけているのだから。
「それで・・・何故魔力を流し込んでいるのですか?」
もう一つの疑問を尋ねる。
只でさえ、死にかけていると言うのに更に寿命を縮める行為を行っている。
「約束を・・守る・・・為さ」
そう言う不死鳥。
そこで気付く。彼の下に居る人物の姿を。
「奥さんですか。ですが・・・」
そこで言葉を切った。言わなくとも、彼は知っているのだから。
「彼女が・・・この子が生きる・・・事を・・望んだ・・・・それを・・叶える」
血反吐を吐きながら言う不死鳥。
だが、
「それだと、その子独りになりますよ?父親母親を同時に無くす子供の苦しみを解っているのですか?」
そう。彼は我が子独り、残して死のうとしてるのだ。
それはもう罪以外に何と言えば良い?
「・・・これは・・・傲慢・・・さ・・・・私と彼女は・・・それでもこの子に・・生きて・・・・・欲しいのだ・・・」
「本当に傲慢ですね。それで、生き残ったその子はどうするのですか?」
「・・・・・君に・・・託しても良いか?」
いきなり言い出す不死鳥。
「私に?」
出会って、話しも碌にしていない私に?
「正気ですか?」
「あぁ・・・・今・・この場で・・・信用出来る・・・人間は・・・・君達・・・ぐらいだ・・だから・・・託す」
無責任だ。何が託す、だ。
「それが、親の言う台詞ですか?託す?何様のつもりだ。貴方は神にでもなったつもりですか?残念ながら、私はそれ程に慈悲深く無い。貴方が死ぬ気なら、その子と一緒に死になさい。それが、その子の幸せに繋がるかもしれない」
冷酷な言葉を吐き捨てる。だが、間違っているとは思っていない。
「・・・私は・・・セルナと・・・妻と約束・・したのだ・・・この子を・・・リノに生きて・・欲しい・・のだ」
「私はそんな約束は知りません。なので、無責任に託すのはどうかと思いますよ。それ程に貴方は無責任で、命を弄んでいるのですよ」
「それでも!!!!!それでも・・・これが親の・・・傲慢だよ・・・」
そう言って、微笑む不死鳥。
親の傲慢。
「・・・では、私とも約束して下さい」
私はしゃがみながら言う。
「何を・・・だ?」
「私は天国や地獄などは信じていません。ですが、もしそんな所があるのなら・・・向こうで奥さんと共に生きて下さい。そして、一生悔やんで下さい。苦しんで下さい。それこそが・・・無責任に死んで行く者の罪です。死んで終わりなど、都合が良すぎる。死んでも尚、苦しんで下さい」
冷酷。冷酷に言う。
すると、不死鳥は微笑み答える。
「あぁ・・・その約束・・・永遠に守ろう・・・・だから・・・娘を・・・頼む」
「えぇ。貴方と奥さんの子供は私達が育てます。貴方達と・・・同じ過ちを犯さない様に」
そう言いながら、私は子供を抱きかかえる。
すると、不死鳥は安心した様に、目を瞑り―――死んだ。
私の腕の中で、子供は気持ちよさそうに眠っている。
すると、後ろの方から声がした。
「ホント・・・人間は勝手よね」
後ろを振り返ると、カーリーさんが酒瓶をラッパ飲みしながら歩いて来る。
「アンタの言葉は正しいわよ。100人中99人が冷酷と言おうと、正しい。それは認めるわ」
「私は、正しさなどは求めていませんよ。ただ、自分の気持ちを言っただけです」
抱きかかえた子供の頭をゆっくりと撫でる。
「一緒に生きろと言わないのが感動したわ」
「冷酷ですけどね。ですがどちらにしろ、彼は子供を残して死ぬ気でしたけどね」
そう。彼は結局私が何を言おうが魔力を流し込む事を止めはしなかった。
例え、私が首を横に振ろうと彼は子供を残して死ぬ気だった。
「本当に・・・最低な親ですよ・・・」
そう呟きながら、子供の頭を撫でる。
「けれども・・・最高の親とも言えるかもしれませんね」
どっちが最高で最低かなど、判断出来る訳がない。
自分を犠牲にしてでも、独り子供を生かす親。
勝手に決め、子供と共に死を選ぶ親。
どちらが正しく、どちらが間違っているかなど解る訳がない。
けれども・・・・
「今、貴方達の子供は生きていますよ・・・・」
呟く様に・・・知らせる様に・・・だが、言葉はその二人に届く事なく消える。
けれども、二人の亡骸は・・・幸せそうに笑みを浮かべて―――。
Side=カロナス=ナイハ∥Out