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Side=サヤ∥Beginning∥『Reload』
夜。街も静まり、聞こえるのは獣の遠吠えだけ。
「んで、今日来るのか?」
俺は切り株に腰を掛けながらカロに尋ねる。
「それは解りませんよ?ですが、先程から獣の遠吠えが響き渡っています。警戒は必要では?」
微笑みながら言うカロ。
「それでもよぉ~、来る悪魔って奴は強いのか?俺等が居れば大概は勝つだろう?」
そう言いながら、どこから持ってきたのかパンを齧るフォーリ。
「捨て駒のあの悪魔よりは強い悪魔が来ると思いますよ?もしかしたらソロモン72柱の悪魔がぞろぞろ来るかもしれませんしね」
微笑みながら言っているが、もしぞろぞろ来られたら、村の人間を守れる保証は無くなる。
村の人々は騒ぎには気付かない。
例え悪魔が来ようと、森が焼けようと家が焼けようと、人が死のうとも。
そう言う結界が張ってあるのだ。
これは、混乱させない為と悪魔が来た事を知らせない為の結界。
つまりは悪魔を村の中に絶対に入れないと言う自身の現れ。逆に言ってしまえば、入られたら終わりだ。
「結構面倒な事に首突っ込んじゃったかな~」
俺は愚痴混じりに溜息を吐く。
「そうかもしれませんね」
カロは微笑みながら答える。
「俺は強い奴と戦えれば問題ねぇー」
戦闘狂は何か言ってる。
「面倒だなぁ~」
あの悪魔との一戦以来、何故か戦う事に興が削がれている。
『龍族の谷』に居た頃の俺なら、このシチュエーションに喜んだだろう。
けれども、何故か今は喜びよりも先に面倒って感情が湧き出る。
これは、戦いに興味が無くなったのか?
いや、それは違うだろう。
実際戦いたいと言う気持ちは少なからず有る。
今まではその気持ちで動き、更にそこから堕ちた。
多分、フォーリと同じ心理状態だと思う。
フォーリは自分で自分の事を戦闘狂だと言った。
だが、フォーリは自分の力に溺れたり私利私欲で殺しはしない。
自分の敵は容赦無く殺し、戦いたい相手とは殺さない程度の戦いをする。
まぁ~それでも、戦っている最中に変なスイッチ入ったら暴れ出しそうだが、それでもフォーリは無意味な事はしないだろう。
今の俺はこの戦いが楽しいとは思えない。
当然と言ったら当然だが、今回は守る者がある。
それだけで自分を冷静にさせる。
俺も多分戦闘狂のカテゴリに入る人間だろう。
それでも、不十分過ぎる気持ちでは高ぶらない。
これが戦争か?
思わず思ってしまう。
本格敵に介入を始めている自分に少し嫌気が差す。
いや、介入するならもっと大きく目立つ事をした方が良いのだろうか?
まぁ、こんな事を考える程に今は静かだ。
横を見ると、フォーリが欠伸をしている。
カロは、ニコニコ微笑みながら何故か俺を見ている。
・・・・頭の中読まれている?
「はい」
・・・・え?今彼俺の頭の中の声に応えた?あれ?口に出てた?あれ?
「顔に出ていますよ?」
カロが微笑みながら言う。
もう嫌だ。プライベートもプライバシーも無い。
俺のオアシスは何処?
すると―――
「あぁ?・・・・来たか?」
フォーリが森の方を見ながら呟く。
「その様ですね」
カロも少し笑みを消しながら言う。
「そんじゃ!行きますか?」
俺は立ち上がりながら、『仙牙龍刀』を取り出す。
面倒だけど、ね。
Side=サヤ∥Out
Side=フェニックス∥Beginning∥『Reload』
何かが来ているのか?
気配を消しているのだろうけども、微かに感じる。
舐められているのか?
いや、おびき出そうとしているのか?
戸が閉まった寝室を見る。
私はゆっくり立ち上がる。
例え罠だとしても、見逃すつもりは無い。
気付かれているのなら、私も気遣って力を押さえる事はしない。
それに、今から向かえば戦闘は多分森の中でだ。
それなら、村の人や妻、子を気にする事もない。
存分に戦ってやろう。
私は、家を出た。
Side=フェニックス∥Out
Side=セルナ∥Beginning∥『Reload』
ガラ―――・・・。
ゆっくり寝室の戸を開ける。
彼は居ない。
私は、静かに歩きながら窓の側まで行く。
暗い暗い空。
星も見えず、今にも雨が降りそうな嫌な空模様。
胸が張り裂けそうな程に苦しい。
何かがあるのか?この胸の苦しさは・・・。
左手薬指に嵌められた指輪を見る。
銀色の指輪は、綺麗に輝いている。
胸騒ぎと言うのだろうか?
何かを失いそうで、怖い。
それが何なのかすらも、解ってしまっている私はどうなのだろうか?
私はゆっくり二階に行く。
階段を上り、自分の部屋に入る。
そして、黒いケースを手に取る。
もう使う事も、このケースから出す事もないと思っていたのに・・・。
不意に、声を思い出す。
親友だった、彼女の最後に私に言った言葉。
『アンタは私と同じ!!歪む感情は戦場でしか癒せない!!!アンタはそれを捨てるのか!?』
あの時は話している場所が場所だったせいか、凄くジメジメしていた。
あの場所でなければ、私は彼女に殺されていたかもしれない。
『最後の魔女』と呼ばれる彼女に。
それでも、私はあの人との幸せを求め、あの人を私の癒しとした。
戦場から逃げたと言われれば、そうなのだろう。
けれども、もう一度これを手に取っている。
それも運命と諦めた方が良いのかしら?
私は静かに笑う。
黒いケースを開けると、中には銀色の杖が一本と銀色の短剣が一本。
私は、何かを決心した。
Side=セルナ∥Out
Side=サヤ∥Beginning∥『Reload』
森の中を、気配を消しながら駆ける。
念話的なあれで話す。
『どこら辺?いきなり気配消えたけど?』
俺が尋ねる。
『そうですね。消したと言う事は、もしかしたらこれは罠だったかもしれませんね』
カロが答える。
『ハッ!罠か。面白いじゃねーかよ!!』
フォーリが笑う。
『面倒だな。こっちが状況的に不利だ』
俺は舌打ちをしながら言う。
『不利なのは最初からですよ。守る者が居るのと居ないとでは攻撃の幅が変わりますしね』
カロが言う。
『敵さんは多分関係無しに攻撃してくるぜ?』
フォーリが言う。
『そうだな・・・まぁ、あの火達磨男も動くだろうし、戦力的には申し分ないだろ?』
俺が尋ねる。
『そうですね。火力では間違いなく此方が上だと思いますが・・・・』
カロがそこで言葉を切る。
『思いますが?』
フォーリが尋ねる。
『少し、嫌な予感がします』
真剣な表情で言うカロ。
コイツが真剣な表情の時は危険だろう。
まさか負ける事はないだろうが、どうだろうか?油断しない事に越した事はないか。
すると―――!!!!!
『ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!』
複数の悪魔が奇声を発しながら突っ込んで来る。
「いきなりだな馬鹿野郎!!!」
『仙牙龍刀』を縦に振るい、悪魔を両断する。
「『五本の指から発せよ―――『水弾』』」
カロの右手五本指から水の弾を悪魔に放つ。
「『創造―――雷纏し槍』
フォーリが雷を帯びた槍で悪魔を貫く。
だが、まだまだ悪魔達は突っ込んで来る。
「どんだけ居るのよ!!!」
俺は叫びながらも悪魔を斬る。
「私達の魔力切れを狙っているのでしょうか?」
カロも悪魔を撃ち抜きながら答える。
「面倒だな・・・・サヤ!カロ!俺が一気に片付ける!!!!」
フォーリが叫ぶ。
それと同時に、俺とカロは左右に跳ぶ。
「『稲妻の如き―――轟き貫け―――『雷神雷槍』』」
フォーリが持っていた雷を帯びた槍が、雷そのものになる。
不規則に動きながら、辛うじて槍を形成している雷。
そして、目の前の悪魔達に向かって投擲する。
ドゴォォォォォォォォォォォォォォン!!!!!!!!!!
木々は根こそぎ吹っ飛び、地面も抉れ、一本の道が出来た。
悪魔達は一瞬で消し飛んだ。
俺とカロはフォーリの側に行き、尋ねる。
「今の何だ?確か雷とかそんなのは創造出来ないんだろ?」
「あぁ?あれは雷に似せて模造品みたいなもんだ。まぁ、限りなく雷に近いがな」
そう言って、笑うフォーリ。
「化け物がいっぱいですね♪」
何故か微笑むカロ。
「兎に角向かうか?」
引き攣った表情で尋ねる。
「そうですね」
カロも同意。
「早く行こうぜ!!」
戦闘狂も同意。
俺達はフォーリが作った一本の道を駆ける。
すると、
「怖い、怖い武器。恐ろしい、恐ろしい武器」
フォーリが作った道の真ん中に、一人の餓鬼が立っている。
すると、その餓鬼が突然笑い出す。
「キャハッハハ!それでも、大丈夫、大丈夫。だって・・・その怖い恐ろしい武器も・・・・此所にあるからね!!」
突然、餓鬼の右手に先程フォーリが作り出した雷に限りなく似せた槍が現れる。
「「「なっ!?」」」
すると、フォーリが突っ込む。
「それは俺のだ糞餓鬼がぁ!!!!!!!!」
黒い槍で突く。
餓鬼はそれを雷の槍で受け止める。
俺とカロはそれを見ながら話す。
「アレは俺等も参戦した方が良いか?」
「そうですね。少し危険な感じがします」
カロがそう言って、フォーリの所に行こうとした瞬間、
「お前と踊るのは私だよぉ!!!!!!!!」
カロの脇腹を、突然現れた女が蹴る。
「グハッ!!!!」
カロはそのまま森の中に突っ込む。
「カロ!!」
俺はカロの所に駆けようとするが、
「貴様・・・相手・・・我」
目の前に全身黒の男が現れる。
「なっ!!!」
俺が驚いている瞬間に、全身黒男は持っていた剣を振るう。
衝撃波が生まれ、俺をカロが突っ込んだ森の反対側に吹き飛ばす。
「んなっ!!!!!」
俺はそのまま森の中にダイブする。
ドゴォォォォン!!!!!!!
俺は大きな大木に背中を打ち付ける。
「クハッ!!・・・・クソが・・・」
俺は目の前を見ると、全身黒がゆらり、ゆらりと俺に近づく。
「テメェ・・・ソロモン72柱の悪魔か?」
俺が尋ねると、全身黒が俺に刃先を向けながら言う。
「我・・・序列四拾壱番・・・・フォカロル」
「41番・・・お前はあの馬鹿な悪魔と違って強いよな?」
俺が尋ねる。
すると、悪魔はニヤリと微笑み答える。
「当然・・・」
Side=サヤ∥Out
Side=バティフォーリ=ケスティマ∥Beginning∥『Reload』
餓鬼にめがけて黒槍を何度も突き出す。だが、全て雷神雷槍に防がれる。
「それは俺のだ、言ってるだろ!!!糞餓鬼!!」
すると、餓鬼は笑いながら答える。
「キャハハッハハハ!!!!そんなの知らない、知らないよ。今は僕の手にあるのだから!!」
そう言って、雷神雷槍を俺に向かって突き出す。
「クソが!!!!」
俺はそれをギリギリで躱す。
「キャハハッハ!!躱す、躱す。凄い、凄いね」
そう言って、喜ぶ餓鬼。
頬から血が流れる。
「テメェー・・・名乗れや」
「キャハハッハ!!!僕は、僕は序列42番ウェパルって言うんだ!!!」
俺は笑いながら言う。
「そうか・・・・成る程・・・」
俺が笑っているのが不思議なのか、餓鬼が尋ねる。
「何を笑ってるの?可笑しい、可笑しいの?」
「あぁ、可笑しいね。まさか・・・こんなに早くに殺るとは思ってなかったんでな!!!!!」
俺は叫び、槍を餓鬼めがけて投擲した。
Side=バティフォーリ=ケスティマ∥Out
Side=カロナス=ナイハ∥Beginning∥『Reload』
くっ・・・いきなり蹴り飛ばされた。
あれは確か・・・。
「元気にしていたかい?カロナス=ナイハ!!!!」
闇の中から、現れる。
「貴様は・・・」
私はその女を睨む。
「久しぶりとでも言う?私の・・・私の腕は元気にしているか?」
そう言って、叫ぶ女。
「貴様程の悪魔が・・・何故此所に?まさか私を追ってなどと可愛い事は言うなよ?」
睨みながら尋ねる。
「ハハッ!!その通りだよ優男・・・アンタの顔が見たくて見たくてね!!!!!」
そう言って、叫ぶ女。
「・・・相変わらずのしつこさだ・・・・嫌われるぞ?」
私は立ち上がりながら言う。
「求められてるんだ!!!素直に喜びな!!!」
「貴様みたいな女に求められても、答えれる自信は無いね」
そう言いながら、私は右腕の袖を捲る。
「ベッドの上も良いかもしれないけど・・・私は今此所でアンタと血に塗れた踊りを踊りたいよ!!!!」
「下品な事は言わない方が良いぞ?自分で自分の格を下げる」
「その生意気な口・・・・私の口で塞いでやるよ!!!!」
「・・・・名乗るかい?」
私は尋ねる。右手を向けながら。
「そうだな。なら、改めて名乗らせてもらう・・・・序列59番・・・オリアス。アンタの愛しい愛しい女だよ!!!!」
Side=カロナス=ナイハ∥Out