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Side=第三者∥Beginning∥『Reload』
対峙―――。
現れた男は、ゆっくりサヤと『仙牙龍刀』に近づく。
その表情は喜びを表しており、恐怖すらも与える。
「テメェ・・・・誰だ?」
サヤは消えかける声で、男に尋ねる。
男は立ち止まり、その問いに答える。
「俺の名はぁ、バティフォーリ=ケスティマ。只の槍使いさ」
バティフォーリ=ケスティマが自分の名を言った瞬間、殺気が漏れ出す。
満身創痍のサヤには、その殺気を耐えられる程の精神力は無い。
「ぐっ・・・」
痛みで歪んでいた表情が、更に歪む。
その様子を見て、バティフォーリ=ケスティマが喜びの表情から無表情に変わる。
「あぁ?何だお前・・・?」
その言葉の真意を、サヤには理解出来ない。
「何言ってんだ?テメェ・・・?」
サヤも出せる限りの殺気を放つ。
だが、そんなモノはいつものサヤと似て似つかぬ殺気。
満身創痍の餓鬼が出せる殺気など、たかが知れている。
その殺気を、バティフォーリ=ケスティマは笑う。
「カハッ!期待はずれも良いなこらぁ!!!先程の殺気はどうした!?先程の狂気はどうした!?」
挑発。だが、その挑発にキレる事が出来ないサヤ。その自分の姿に苦渋の表情を浮かべる。
その姿を見て、バティフォーリ=ケスティマは視線を変える。その変えた視線の先には・・・
「アンタは何だ?剣だけが浮いているが、透明人間かぁ?」
バティフォーリ=ケスティマは『仙牙龍刀』に尋ねる。
『汝には―――早急に立ち去ってもらいたい』
声が響く。
バティフォーリ=ケスティマはその願いに対して行動せず、新たな質問をする。
「コイツを痛めつけたのはお前かぁ?」
その問いに、『仙牙龍刀』は答えない。
すると―――バティフォーリ=ケスティマは動き出す。
「それで良いぜ!あぁ、それで良い!!語り合おうぜ!!血の臭いの中でよぉ!!!!」
そう言って、持っていた黒い槍を『仙牙龍刀』を振るう。
『汝も―――修羅道を行く者か』
そう言い、槍を『仙牙龍刀』で捌く。
「あぁ?修羅?知らねぇーな!!!俺は俺だ!俺が誰でも通れる道を通る訳ねぇーだろうがぁ!!!!!」
槍を高速で突きながら叫ぶ。
それすらも紙一重で捌く。
「カハッ!!面白い面白い面白い面白い面白い面白い!!!!!!!!!!」
歓喜しながら槍を突き続けるバティフォーリ=ケスティマ。
「―――おい」
森の中に、冷めた声が響く。
その声で、バティフォーリ=ケスティマと『仙牙龍刀』が動きを止め、その声の主を見る。
「あぁ?死に損ないがなんだ?」
あからさまに苛ついた表情で尋ねるバティフォーリ=ケスティマ。
サヤは、ゆっくりとフラつきながら立ち上がる。
「俺抜きで・・・何楽しんでる?」
その眼には揺らぐモノは、絶望でも歓喜でもない。
ただの―――狂気!!
その眼を見た瞬間、バティフォーリ=ケスティマの表情が変わる。
「あぁ?・・・そんな面白い目が出来るのかぁ?」
サヤは、体を揺らしながら笑う。
「ハハハッ!!クハッハハハ!!面白いか・・・あぁ、面白いだろ!?だから・・・お前も俺を楽しませろよ!!俺に限界を見させてくれよ!!!!!!」
そう言って、サヤは動き出す。
大量の血を流した事により、サヤの体は限界のピークを超えている。
けれども、サヤの表情には喜びが表れていた。
「ハッハハハハハッ!!!!!!」
サヤは叫びながらバティフォーリ=ケスティマに蹴りを食らわせる。
全ては顔面めがけて蹴り出させる。
バティフォーリ=ケスティマはそれを槍で防ぐ。
「クハッハハハハハハハハッハ!!!!!!!!!」
サヤは笑い叫びながら攻撃を繰り出す。
腕を振り、拳を突き、跳び上がり、蹴りを振り下ろし、そして―――笑う。
「クハッハハハハハハハハッハ!!!!!さぁ!殺りあおう!潰し合おう!!」
連撃。サヤが繰り出す拳・蹴りは人の域を超えていた。
全ての攻撃が急所めがけて繰り出され、当たれば即死は無いが一瞬で気を失う。
そして、狂気の笑みを浮かべる。
その表情を見て、防ぐだけのバティフォーリ=ケスティマの表情から笑みが消える。
「あぁ?何だその笑みは?あぁ?何だその叫びは?」
一度サヤから距離を取るバティフォーリ=ケスティマ。
サヤは、腕をぶらんと垂らし、そして肩を震わせて笑う。
「クックク・・・カハッハハハハハ!!!それがどうした?お前は殺し合いを求めてたんだろ?今はそれに相応しいシチュエーションだろ?」
バティフォーリ=ケスティマは眉間に皺を寄せながら言う。
「・・・違ぇー・・・まったく違ぇー・・・俺が求める殺し合いは人格崩壊した奴とじゃねぇー。そんな奴と戦って何が面白い?」
サヤは既に、道を踏み外していた。
バティフォーリ=ケスティマはその事に気に食わなかった。
先程バティフォーリ=ケスティマが聞いた声は、ここまで堕ちていなかった。
けれども、今対峙しているサヤ思考を捨て、溺れている。
それが気に食わなかった。
バティフォーリ=ケスティマは戦闘狂ではあるが、思考を捨てた殺戮者ではない。
挑んでくる者や、邪魔する者は容赦無く殺すが、自我はある。
だが、サヤはその自我・思考を放棄した。
それはただの殺戮人形。
「お前が楽しむ楽しまない知れねぇー・・・俺は俺が楽しめ、俺が俺の為に楽しめれば良いんだよ!!!武器を構えろ!!殺気を放て!!そして、俺の限界を見せてみろよぉ!!!!!!!!!!」
跳び上がり、蹴る。
バティフォーリ=ケスティマは槍でそれを防ぐだけ。
その事に、サヤは怒りを表す。
「何だそらぁ!?防ぐ?防ぐだけ?防ぐ行為だけ?それで俺が満足すると思うのかあぁ???」
その言葉に、バティフォーリ=ケスティマは動く。
「黙れやクソがあああああああああああ!!!!!!!!」
槍を振り上げる。
サヤはそれを体を捻りながら躱す。そして、笑う。
「それだ!!それだ!!!それなんだよ!!!!俺が求めるものは!!!!!!!」
叫び、喜び、サヤはバティフォーリ=ケスティマに突っ込む。
バティフォーリ=ケスティマは動かず、代わりに口を動かす。
「『五体刺殺―――天罰の槍』」
その瞬間―――
―――サヤの体に槍が突き刺さった
Side=第三者∥Out
Side=カロナス=ナイハ∥Beginning∥『Reload』
彼が、炎を消し私と向き合う。
最初彼を見た時はどこかの魔法使いだと思った。
けれども、彼から感じるのは魔力ではなく、異の力。
そこで、思い出す。
ソロモン72柱の情報リストを。
その情報の中にあった、炎を使う悪魔・・・フェニックスと言う名の情報。
そこで、確かめる為に知った風にカマを掛けた。
「どうやら合っていた様ですね」
私は微笑みながら呟く。
彼から殺気などは感じられないが、警戒はしている様だ。
「・・・君は私の事をどこまで知っている?」
「知っているかと言われましても、炎を使うソロモン72柱の悪魔、フェニックスとしか知りませんよ?」
「・・・そうか」
彼は、そう呟き黙る。
訳ありと言うのは察していましたが、やはり何かがあるのでしょうかね。
何でサヤと一緒に居ると、こうも訳ありの人と出会うのでしょうかね。
「私は・・・裏切ったのだ」
彼は呟く。
「裏切った?」
「あぁ。私はソロモン72柱の輪から外れたのだよ」
そう言って、私を見る。
裏切った?なら、全てが合致する。
何故、此所に悪魔が着たのか?何故、この村に結界を張っているのか?
全ては悪魔の攻撃・侵入を防ぐ為。
「あの家には・・・誰が?」
「・・・家族だ」
家族?
「それは悪魔ですか?」
彼は私の問いに首を横に振る。
「いや、彼女は人間だ」
「!?では、子供は?」
彼は俯く。それは、認めたも同然。
「悪魔と人間のハーフ・・・」
「あぁ・・・」
彼は俯いたままである。
「貴方が悪魔である事を貴方の奥さんは?」
聞いてはならない事かもしれないが、尋ねてみる。
「知らない」
彼は悲しい顔で答える。
それは・・・
「奥さんにとって裏切りなのでは?」
その言葉を、彼は歯を食いしばる。
その表情だけで理解出来る。
彼は奥さんへの裏切りに苦しんでいる。
それが意図している裏切りでは無いのが更に彼を苦しめる。
話すタイミングを失った。きっとそれだけなのだろう。
けれども、今言ってしまうとこの関係を崩してしまう。
今の彼はそれが恐ろしく怖いのだ。
「貴方は―――」
「あぁ?テメェ等はこの餓鬼の仲間か?」
!?
私と彼はその声のした方を見る。そこには、金髪短髪の男が何かを肩に乗せて歩いて来る姿。
この餓鬼?まさか―――!!!!
「サヤ・・・」
そう。金髪短髪の肩に乗っていたのは・・・この世の最強とも言えるサヤだった。
Side=カロナス=ナイハ∥Out
Side=第三者∥Beginning∥『Reload』
空に浮いた状態で、黒いローブを着た男は見ていた。
黒いローブを着た男は黒い靄の様なモノを纏っており、それが更に異質さを醸し出す。
「ククク・・・堕ちたが、まだまだだな」
男は下を見ながら呟く。
男は掌に黒い球体を造り出す。
「こちらヘル・・・対象はまだ白・・・いや、灰」
黒いローブを着た男は黒い球体に向かって話す。
『ザァ―――ザァ―――此方ジョーカー―――此方の動きも無し』
「そうか・・・なら、監視続行。もし、其方に動きが合った場合、無条件で殺せ」
『了解―――ウルフはどうしますか?』
「それもお前に任せる」
『それは『リロード』と『アース』を―――行き来しろと?』
「それぐらい出来るだろ?」
『―――了解』
パリィンッ!!!!!
黒い球体が割れる。
黒いローブを着た男はその球体を握り潰す。
「やはり・・・少しズレてきたな。だが、それこそだ」
そう言い残して、黒いローブを着た男は姿を消した。
謎だけを残して―――。
Side=第三者∥Out