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 Side=サヤ∥Beginning∥『Reload』



 ふぅ~・・・一息。目を瞑り、息を吐く。


 長は構えたまま、俺が動くのを待っている。

 優しいねぇ~。


 少し、油断していた。いや、自分の力を過信していた。

 良く、強大な力を手に入れた一般人が、その力に溺れるとかあるけど、まさにそれになりかけていた。


 良かったよ。早くに気付いて。これは長のお陰か?

 さぁ、本気で―――踊ろうか。BGMは鎮魂曲かい?


 俺は踏み出す。そして、飛び上がり回転しながら左脚で踵落としする。

 長はそれを腕で防ぐ。


 地面に手を着き、そのまま右足を撓らせ顔面を狙う。

 それをまた、バックステップで避ける。


 少し距離を取り、長が話しかける。

「中々だな・・・その武術はどこで身に付けたんだい?」


 俺は飛び上がり、脚で着地する。そして、長と向き合い微笑んで答える。

「気付いたら・・・で、良いだろ?」


 そう俺が答えると、長も微笑む。

「それもそうだ・・・これから倒す者の事など・・・どうでも良い!!!!」


 言い切る前に、長は俺に突っ込んで来る。そして、上段蹴りを繰り出す。

 俺はそれを左腕で防ぐ。だが、長の蹴りは止まる事も無く、永遠と上段蹴りを繰り出す。


 チッ!流石にヤバイ。俺は逃げるように後ろに下がる。だが、それを待っていたかの様に、回し蹴りが俺の横っ腹に入る。


「ガハッ!!」


 俺そのまま横に飛ばされる。


 流石だな。だが・・・・。


 俺は立ち上がり、睨む。


 俺に向かって来ようとした長が、動きを止める。


 冷静に狂え―――今の俺なら―――出来る!!!


 俺は動きを早める。


 変則的な動きは要らない。

 正面から、ぶち破る。


 俺は跳びながらミドルキックを繰り出す。

 長がそれを先程と同じようにガードするが、異変に気付く。


「グガッ!!!」

 長の体が少し浮く。


 俺は着地し、そのまま体を回転させ、裏拳を繰り出す。

 態勢を崩した長のこめかみに当たる。


「アガッ・・・・」

 そのまま長はこめかみを押さえて崩れる。


 その様子を見ていた他の龍族に動揺が走る。


 俺はそのまま、トドメを刺さずに、長から距離を取る。


 俺は、このまま行っても互いに消耗するだけで、決着が着かない様な気がした。


「提案だが・・・肉弾戦止めないか?」

 その提案に、長がこめかみを押さえたまま、何を言っているんだ?と言う顔で見てくる。


「肉弾戦だと、致命的な一発を当てるのも一苦労だし、それより長引く。だから・・・致命的な一発で、死に至るモノで戦おうや」


 そう言い、俺は不敵に微笑む。


 俺の考えが解ったのか、長も微笑んだ。


「成る程・・・おい!私の剣を持ってこい!!」


 剣か・・・対等でやるなら銃は駄目だな。


【カーリー、剣を1本貸してくれないか?】

 俺は声に出さず、俺の中に居るカーリーに話しかけた。便利だよね。


 俺の中に居る神々は召喚しなくとも俺と会話出来るからね。

 でも、普段は向こうから話しかけられない様にしているから(クロノスが五月蠅いから)。


【了解。沢山血を吸わせてあげるのよ?】


 ・・・怖いですよ。

 流石の俺もカーリーには勝てそうもないな。


 すると、何も無い空間から1本の剣が現れる。

 名も無い無名の剣。


 業物でも無く、ただ飾りの剣ではない事は確かだ。


「ほう・・・どこから出したか知らないが、良さそうな剣だな」

 長が剣を見て、呟く。


「殺す剣だ」

 俺は剣を握り、2振りぐらいして長を見た。


 すると長の後ろから布にくるまった、長い何かを持って龍族が走って来た。


 あの形・・・まさか。


 長はその布にくるまった長い何かを受け取り、布を取った。


 やはり!あれは・・・刀!!

 そう。長の持つ剣と言うのは、1メートル50センチ位あるだろう太刀。


 鞘には入っていないが、反った刀身。美しい程の刃紋。まさしく刀。


 だが、この世界に刀などは無い。長が刀の事を剣と言ったのが良い証拠だ。

 けれども、その刀が俺の目の前にある。『アース』の人間が持ってきたのか?


 いや、もしそうだとしても人間を下等と言っている龍族が人間が造り出した武器を使うか?


「そのか・・・剣は?」

 俺は尋ねた。


 すると、長は素直に答えてくれた。

「この剣は我々龍族の牙を加工し、特殊な魔法で造り上げたモノだ。形は切れ味を試行錯誤した結果こうなった」


 偶然生まれた産物。いや、不思議ではないか。世界なんて偶然で出来ているんだしな。


「綺麗な・・・剣だな」

 素直に褒めた。


 それが意外だったのか、長が少し驚いた顔をしたが直ぐに表情を戻し、刀を構える。


 それに合わせ、俺も構える。

「そうだ。1つ聞きたい」


 構えながら尋ねる。


「何だ?」


「何故ラテスを殺す?」


 この状況で、意外な質問だった。

 今から殺し合おうしている最中、関係の無い無関係な人間の事を尋ねる。


 だが、俺はこれを尋ねないと動けない。そこに正当な理由があるのなら、これはただの俺の殺戮に変わる。


 だが、俺が動くに正当な理由であれば、少なくとも俺にとってこの殺し合いは正当化される。


 まぁ、もっと早く尋ねるべきだったんだけどね。


 長は少し言うかどうか悩み、そして答える。

「あの子は・・・同族殺しの娘だ」


 同族殺し?

 だが、それだけだとラテスを殺す理由にならない。


「それで?」

 俺は長に続きを言えと言う。


「そして、あの子は掟を破った」


「掟?」

 掟。種族などに多い、縛り。


「そうだ。あの子の姿を見ただろ?中途半端な擬態。アレは魔法薬・・・いや、我々の肉を喰らった発生した副作用」


 肉を・・・喰らった?

 なんだそれは?どう経緯で肉を喰らう?


「彼女が自ら?」


 長は首を横に振る。

「解らない。だが、他の者達が尋ねた所、あの子は逃げ出した。それだけで理由は十分だ」


 ・・・気に食わないな。

「彼女が喰った龍族とは?」


 長は喋るのを渋ったが、答えた。

「自分の父と母の屍肉だ」


 !?屍肉?つまりは自分の両親を食ったのか?

 ラテスが・・・・・いや、早合点するのは駄目だ。コレは本人に尋ねて確かめるか。それに、そっちの方はカロが上手く何とかするだろう。


「もう質問は良いか?」

 長が尋ねる。


「あぁ。すまないね、変な事尋ねて」

 俺は構えなおす。


 長も一度目を瞑り、開き名乗る。

「龍族長。ブロウガ―――参る!!!」


 ・・・

「俺は名乗らないぜ?気に食わないからな」


「名乗ったのは気分だ。別に強制はせん」


 静寂。


 俺は笑みを消す。必要は無い。そして―――


「では―――」


「「勝負!!」」


 剣と刀が、重なった――――。



 Side=サヤ∥Out




























 Side=カロナス=ナイハ∥Beginning∥『Reload』



 騒がしくなっている。どうやらサヤが暴れているのでしょうかね。


 と、言う事は私の仕事は彼女の事ですかね。


 チラッとラテスちゃんを見る。先程から俯いている。

 何があるのか。尋ねては駄目な様な気はしますが、ここまで来たら、尋ねずに引き下がる事は出来ませんかね。


「何故、擬態が巧く出来ないのですか?」

 直球で尋ねる。


 だが、反応は無い。


 反応を期待するよりも、此方が一方的に喋った方が良いですかね。

「いや、巧くは出来るのでしょうね。きっと理由がある。しかも、それは魔力とか関係無く。例えば・・・何かの副作用。病気。それか・・・生まれ付きとかですかね」


 反応は無い。心を閉ざしている様ですね。

 ・・・卑怯な手で使いたくなかったんですが、あの情報で揺さぶりますか。


「私はサヤと出会う前は、研究者としても活動していましてね、その時にある文献を見つけたのですよ。その文献の内容は―――『龍族の屍肉に宿る未知なる力』です」


 そのワードを言った瞬間、彼女が顔を上げた。

 その表情は、絶望・後悔・恐怖。不の全てが見えるような、そんな表情。


 私はそのまま続ける。

「その文献の内容は簡単でした。龍族の屍肉にはなにやら特別な力があり、それを食した場合、全てを超える力が手に入ると・・・そして、こうも書かれていた・・・副作用の事ですよ」


 ビクッ!とラテスちゃんの体が震える。

 どうやら、正しい様ですね。


「副作用とは、軽い症状で魔法が上手く使えなくなる。そして、まるで龍族の龍の様な皮膚になる。重い症状では、幻覚・幻聴などが見え、聴こえ、錯乱状態になり死に至る。と、書いていました。まぁ、どうやって調べたかは知りませんがね」


 この文献を書いた研究者は人体実験をしていましたから、きっとその時に得たモノでしょう。ホント、胸くそ悪い。


 ラテスちゃんはただ、此方を見ている。

「・・・自ら進んで食べたのですか?」


 ラテスちゃんはまた俯いた。

 言えない理由があるのか?


 ・・・脅されている?強制され、食べたのか?


「同族に脅されて・・・ですか?」


 すると、ラテスちゃんは小さく頷く。

 ・・・成る程。コレが最強種と呼ばれる種族ですか。


 いや、龍族の全てが悪い訳では無いですね。ごく一部の者の仕業。


「詳しく話してくれませんか?」

 これは、私でも頭にきますね。


 ラテスちゃんは、小さく頷いた。



 Side=カロナス=ナイハ∥Out


















 Side=サヤ∥Beginning∥『Reload』



 脇腹を狙い、剣を横に振る。

 それを長は紙一重で躱す。


 長は刀の長さを生かし、俺の攻撃範囲外から仕掛けてくる。


「くっ!」

 俺も紙一重で躱す。


 まだ、両人は無傷。

 此方の方が長くなりそうだな。


 だが、俺ももうそろ本気で行こうか。


 自分に張り合える者が居て、少し調子に乗っていた。

 殺さないように、気付かない内に力を押さえていた。


 だが、極限の命のやり取りで気付いた。


 俺は、まだ限界ではない。と。


 動きを少しずつ速くしていく。


「なっ!?」

 俺の速さが変わり、長は驚く。


 俺は直ぐさま長の後ろに回り込む。


 そして剣を突き刺す。


 長は咄嗟に体を捻り致命傷は避けたが、筋肉質の体から血が流れ出る。


 俺は動きを止めない。

 直ぐさま下から上へ振り上げる。


 それを紙一重で躱そうとするが、先程の攻撃で横っ腹から血を流し動きが鈍くなり顎を掠る。


「クソっ!!」

 長も直ぐに刀で俺の目を狙い突くが、遅い。


 俺はそれを紙一重で躱し、俺の攻撃範囲内長が入る。

 俺は剣を振り上げる。


ブシュュュュュュュュュッ!!!!!!!


 長の体に斜めに傷が入り、血が噴き出す。


「クッ・・・ガハッ!!!・・・・」

 長は口から血を吐き出し、そのまま仰向けに倒れる。


「なっ!?長が!!!!」

「貴様!!」

「殺せ!!!!!」


 周りが喧しくなる。


「黙れ!!!!!!!」

 俺は周りの龍族共に怒鳴る。


 怒鳴り声と共に、結構本気の殺気を放ち周りの龍族共が動けなくなる。


 俺は倒れる長の喉元に剣を突きつける。


「・・・君の・・・勝ちだ・・・」

 口から血を流しながら、長は俺を見て言う。だが、長は俺を見ていない様な気がした。


「・・・まだ尋ねてない事がある」

 俺は剣を突き付けたまま言う。


 長は笑みを浮かべながら言う。

「フ・・・フッ・・・私は・・もう死ぬのだよ?・・・何を・・・聞きたい・・と?」


「いや、アンタはまだ死なせない」

 そう言って、俺は剣を下げて詠唱を始める。


「『答えよ―――主の声に―――姿と癒しの愛を見せよ!!!』」


 魔方陣からエルが現れる。


「・・・御用は?」


 俺は何も言わず、長を見る。


「ヒュー、ヒュー、ヒュー」

 呼吸が可笑しくなっている。ほっとけば死ぬ。


「・・・治せば?」

 エルも長を見て、尋ねる。


「あぁ。だが、完治はさせなくても言い、喋れるぐらいには治してくれ」


「・・・解った」


 そしてエルは『聖域治療』を長に行った。


「ガハッ!・・・・私は、生きているのか?」

 長が俺を見ながら尋ねた。


 俺はその質問に直ぐに答えず、先にエルに話しかける。

「ありがとな。また頼むわ」


「・・・また」

 そう言い残して、エルは光に包まれる。


 エルが完全に帰ったのを確認し、長を見る。


「聞かせてもらうぞ。っと、その前に仲間を返せよ」


 そう俺が言うと、長は笑って了承した。


 ・・・さぁ、ぶち壊そうか。掟ってヤツを。


 俺は不敵に微笑んだ。



 Side=サヤ∥Out












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