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 Side=ラテス∥Beginning∥『Reload』



 男は言った。自分は化け物と。


 自分で自分の事を化け物と言う人間は少ない。

 私は最初、何を言っているのだと思った。


 だが、この男の殺気を感じた時その異常性に気付いた。


 人間が放てる殺気ではない。

 心臓を抉るような、生きた心地のしない殺気。


 それでも、老龍の方がこの男より上だと思った。


 けれども、それも間違いだった。


 この男は今まで隠していた魔力を放出し、先程私に向けた以上の殺気を放った。


 凍る。心が。思考が追いつかない。感じるモノは1つ―――恐怖。


 生ぬるいモノではない。圧倒的な恐怖。


 コイツは人ではないと思った。

 この男が自分で言った通り、化け物だと。


 けれども、その男の瞳は完全な悪ではなかった。


 悲しみも辛さも知っている。誰よりも人間らしい瞳だった―――。



 Side=ラテス∥Out













 Side=サヤ∥Beginning∥『Reload』



 只今、『龍族の谷』に向かっています。


 もちろん徒歩で。


 この状況でも空を飛ぶのは駄目らしいです。

 ここで、俺は1つ推測しました。カロは、俺を虐めて楽しんでいるのでは?と。


 きっとそうなんだろうな。だってカロの瞳は輝いているんだもん。

 俺を虐めてどうしようと?


 地味にくる攻撃だ。一番質が悪い。


「『龍族の谷』って後どれぐらいで着く?」

 俺から一歩後ろを歩くラテスに尋ねる。


「・・・・・・」

 無視?


「そんなに帰りたくないのか?」

 俺は後ろを振り返りながら尋ねる。


 だが、ラテスは答えない。

 警戒し過ぎじゃね?まぁ、そう仕向けたの俺だけどさ。少し傷付く。

 俺ガラスのハートなんだよね。まぁ、防弾ガラスだけど。


「なぁ~カロ」

 俺はテラスが答えてくれないので、カロに尋ねる。


「何処かは解りませんが・・・多分向こうから接触してくるのでは?」

 カロは笑顔で答える。何故に笑顔?


「まぁ~接触と言うなの攻撃だろ?」

 俺は頭の後ろで手を組みながら言う。


 すると、


「早いな」

 俺は思わず舌で唇を舐める。

 だが、攻撃の態勢は取らない。まずは龍族の力と言うのを見てみたからだ。


 俺の考えを理解したのか、カロも迎え撃つ態勢を取らない。

 コイツも頭の中読めるのかと思うよ。ホント。


 一度、木々の揺れが収まる。


 静寂。何も起こらず、ただ・・・静かな時が流れる。けれど、時間にすればほんの数秒。


 ―――そして!!!


「グアァアアアアアアアアァァアアアアアァァアアアアァァァァァァア!!!!!!!」

 咆哮。


 木々も待っていたかの様に揺れ出す。

 葉と葉が擦れ、森に音が戻る。


サァァァァァァァァァァ―――。


 すると、俺の上に黒い何かが現れる。

 俺は上を見上げる。


 黒い翼、尻尾、鱗―――そして、ラテス同様の角。


 あれが。


 思わず感動してしまった。

 ファンタジーの中の生き物。空想の生き物。それが、俺の上を飛んでいる。


「ハッハハ・・・」

 笑みが零れる。


 そして―――。


「グゥゥゥゥ―――グハッ!!!!!!!!」

 ドラゴンは口から火球を吐き出す。


 それは、俺等を目がけ発射される。

 あまりのも大きい火球。


 流石のカロも魔法で防御しようとしたが、俺が止める。


 そして、俺は拳を構えた。


 突きの構え。


 火球は凄まじい速さで俺等に迫る。


 俺は深く息を吸う。そして目を瞑る。


 集中・集中・集中―――。

 周りの音が途絶える。何も俺の耳には届かない。


 目をゆっくり開き火球を見つめる。


 そして、俺は拳を繰り出した。


 音もなく繰り出す拳。拳は火球と衝突し、


バァアアァァァァアアアアァァアアアアアアン!!!!!


 火球は破裂し、火の粉が舞う。


 俺は、その火の粉の中、もう一度深呼吸し脚に力を入れ、跳び上がる。


 俺は凄まじい速さでドラゴンの側まで行く。


 ドラゴンから地上までの高さは50メートル。それを一瞬の内に側で行った。

 ドラゴンは俺が側に居るのに気付かない。


 俺はドラゴンの腹に蹴りを入れる。


「グギャァアアアァァァアアアア!!!!!!」

 ドラゴンは口から血を吐き出しながら苦しむ。


 直ぐさまドラゴンは俺から距離を取ろうとするが、させない。


 落下する前にもう一発拳を腹に食らわせようとした時、


ボオォォォォォォォォォォォォウ!!!!!!!!!!


 真横から炎が俺を襲う。

「なっ!?」


 予想外の攻撃に俺はそれを避けられず、食らう。

 俺はそのまま、重力によって地上に落ちる。


「チッ!予想外だった」

 俺は落ちながら俺に炎を吐いたドラゴンを見る。


 俺が蹴ったドラゴン同様に黒で統一されたドラゴン。

 そのドラゴンが炎を吐くモーションを取る。


「容赦ねぇーな!!!」

 俺はその場で召喚をする。


「『答えよ―――主の声に―――姿と誇る速さを見せよ!!!』」


 空に魔方陣が浮かび上がる。


バリィイィィィィィィィィィィィィンッ!!!!!


 魔方陣を突き破り、バイクが現れる。


「ヨーロ!!!」

 俺はそのバイクの名を呼ぶ。


 ヨーロは空中を滑走し、俺の真下に来る。

 態勢を整え、俺はバイクに跨る。


 エンジンを吹かし、ヨーロは今まさに炎を吐いたドラゴンの元に走る。


ブオッン!ブォッン!ブォォォォン――――!!!!!!


 滑走しながら『デザートイーグル.50AE』をドラゴンに向け、構える。


 因みにハンドルは持っていない。

 勝手に動くから。


 ヨーロは炎を態と紙一重で躱しながら、ドラゴンに200キロは出ているのではないかと言う程のスピードで走る。


 少し吐きそう・・・。


 俺は狙いを定め、連射する。


バババババババババババババババババババッッッッ――――!!!!!!


 俺はこの連射を無限連射と呼ぼう。

 そのまんまのネーミング。どうやら俺にはセンスが欠けているらしい。


 ドラゴンが魔法弾丸に撃たれ、苦しむ。


 だが、容赦はしない。


 ヨーロがドラゴンとすれ違う瞬間。思いっきりドラゴンの顔面に蹴りを入れる。

 俺の蹴り+走るスピードで威力は倍だ。


「グゥギャァアアァァァァァアアアアアアァァァァァァアアア!!!!」

 ドラゴンはそのまま落下する。


キィィィィィィィィィィン。


 ドリフトしながら空中でヨーロが止まる。

 ホント、どう言う原理で?と疑問が浮かぶが、神様が創った物だから何でもアリじゃね?と勝手に納得。


「キャアアアアアアアアアアア!!!!!!」


「ん!?」

 女の子の叫び声。この声―――やられた!!!!


 どうやら俺の相手をしていたドラゴンはデコイ!!やられた!!!

 俺は急いでラテス・カロの場所に向かう。


 すると、森から3頭のドラゴンが飛び立つ。

 その内1頭のドラゴンは、ラテスとカロを掴んでいる。


「テメェー等ァァアアァァアァァァァァアアアアア!!!!!!」

 俺は叫びながら無限連射する。


 1頭のドラゴンは落としたが、ラテスとカロを連れて行くドラゴンは俺の射程内距離を出た。


「クソが!!!!ヨーロ!追いつけるか!?」


ブオォォォンッ!!!

 ヨーロのスピードが可笑しい程速くなる。


「なっ!!ガハッ!!!!」

 必死にしがみつく。チラッとメーターを見た。350キロだった。俺死にそう。


 ドラゴンを追う空飛ぶバイク。絵になりそうでならない構図。

 俺は吐き気を我慢するので精一杯だった。



 Side=サヤ∥Out





















 Side=カロナス=ナイハ∥Beginning∥『Reload』



 サヤが突きで龍族の火球を消し飛ばした。

 まさかコレ程とは。


 やはり一度見てみないと解らないものですね。

 隣のラテスちゃんも唖然としている。


 すると、今度は空高く跳び上がった。


 ここから龍族まで50メートルはあると思うんですが、凄いですね。

「やはり化け物でしたか」


 私は微笑みながら呟く。

 これ程一緒に居て退屈しない友は彼一人でしょうね。


「アイツは・・・本当に人間か?」


 唖然とした表情のままラテスちゃんが尋ねる。

「えぇ。私は彼と出会って日は浅いですが・・・この世界で一番の彼の理解者だと思っています。ですから・・・彼は化け物です」


 笑顔で答える。その答えにもラテスちゃんは唖然とする。


「な、仲間の事を化け物と言って良いのか!?」


 ん~どうでしょうね。多分サヤが聞いていたら怒るでしょうが、

「彼自身言っていたじゃないですか」


「そ、そうだな・・・」

 納得してくれた様です。まぁ、脅しの為に言ったのでしょうが気にしない事にしましょう。


 私とラテスちゃんは上を見上げる。


 すると、サヤに炎が直撃する。


「なっ!?」

 ラテスちゃん驚きの声を上げ、目を隠す。


 ・・・油断したんでしょうね。

 友がやられたと言うのに、結構私は冷静だ。

 まぁ、彼があんな攻撃で殺れるとは思いませんし。


 すると、空中に魔方陣が現れ、それを突き破って二輪の乗り物が現れる。


「なっ!何だアレは!?」

 ラテスちゃんは二輪の乗り物を指さしながら私に尋ねる。


 アレがバイクと言う物ですか・・・。一応話には聞きましたけど、結構格好良いフォルムですね。


 サヤは落ちながらバイクに跨り、炎を吐いた龍族に向かって走り出す。


 銃で撃っていますね。あの銃も見た事が無かったのですが、どうやら『アース』に行けば有るそうですが、今の段階で行く気もありませんし、行く手段も無いですしね。


「おい!カロ!!アレは何だ!?」

 いつの間にか私の隣に居たラテスが、袖を引っ張りながら尋ねる。


「バイクと言う乗り物らしいですよ」

 すると、ラテスはこの状況を忘れ、目を輝かしている。


 子供ですね~。


 それよりも、気になる。

 先程のサヤの魔力と殺気を感じ取った筈なのに、サヤ相手にたった龍族の龍が2頭。

 あまりにも無謀。あれ程のを感じながら、この様な対処・・・。


 まさか―――!!!!


「フゥンッ!!!」

 森の茂みから、民族衣装の様な物を纏った男が剣で攻撃してくる。


「クッ!!」

「キャッ!!!」


 私の後ろにラテスを引っ張り、魔法を使う。

「『動きを止めろ―――水縛』」


 唱えた瞬間、私を襲った男の周りに水の紐が現れ、男に絡みつく。


「なっ!?」

 男は必死に逃げようとするが、遅い。


 水の紐に絡みつかれ、男は態勢を崩し、倒れる。


 私は一息吐いた。

「ふぅー・・・やはりサヤの相手は囮でしたか」


 私が空を見上げ、サヤを見ようとした瞬間―――、

「安心には早いぞ?」


 !!!???


 その声の主の方を見る、だが―――

 その声の主は私の後ろに瞬時に回り込む。


 そして、首に重い一撃を食らう。

「グハッ――――」

 そのまま、私は倒れた。



 Side=カロナス=ナイハ∥Out













 Side=第三者∥Beginning∥『Reload』



 ラテスの前で、カロナスが倒れる。

「キャアアアアアアアアアアア!!!!!!」


 ラテスは思わず叫ぶ。カロナスを倒した者の事は知っている。

 けれども、それでもカロナスの安否を心配し、叫ぶ。


 その瞬間―――

「カハッ!!――――」


 腹に拳がのめり込む。

 そのままラテスは倒れるモーションを取る。だが、地面に倒れ込む寸前に、ラテスに拳を入れた男が支える。


 ラテスを気絶させたその男は直ぐさま本来の姿に戻る。

 そして、ラテスとカロナスを掴み、飛び上がる。


 先程カロナスの魔法の水の紐で身動きが取れなかった者も、カロナスが気絶した事により、魔法が解けて自由になった。


 カロナスを気絶させた奴と、水で身動きが取れなかった者が擬態を解き飛び出す。


「テメェー等ァァアアァァアァァァァァアアアアア!!!!!!」


 500メートル以上の距離があるのに、バイクで龍族に向かうサヤの声が近くに居る様に聴こえる。


 すると、サヤの持つ拳銃から魔法弾が止まる事なく放たれる。


「グガァアアァァァァァァアアアアァァァァァァア!!!!」

 その魔法弾に当たった龍族が落ちる。


 だが、他の2頭は助ける事もせずに飛び続ける。


 すると、バイクのエンジン音が響く。

 その瞬間―――バイクの速度が一気に上がる。


 龍族もそれなりの速さだが、そのバイクは龍族のそれの比では無かった。


 追いつかれると思ったのか、1頭がUターンしてサヤに向かう。


 サヤは容赦なく撃ち続ける。

「テメラァアァァァァアアアアアアァァァァァァァアアアアアア!!!!!!」


 サヤの形相はまさに鬼。

 龍族はその殺気に一瞬気圧されたが、それを吹き飛ばす様に自らの翼で風を作り、サヤに向かって放つ。


 鎌鼬。それがもっともこの風に合っているだろう。

 千を超える風の刃。


 だが、それすらも紙一重でバイクは避ける。


 そして、また一層スピードを上げる。


 すると―――・・・。

「言うなら風龍か?」


 いつの間にかサヤは頭を下に、バイクが上になった態勢で龍族の上を走っている。


 そして、サヤの放つ魔法弾が龍族の背中に風穴を開ける如く当たる。


「ギガァアアァァァァァアアアアァアァァァァァァァアアアアア!!!!!!!」

 呻き、そのまま落ちる。


 サヤは龍族が落ちるのを確認し、一度バイクを止める。

 もう、ラテスとカロナスを連れた龍族の姿が見えないからだ。


「・・・・クソッ!!!!」

 吐き出す様に悔しがる。



 Side=第三者∥Out




























 Side=サヤ∥Beginning∥『Reload』



 姿を見失った。


 クソッ!!!悔しさと怒りが全てを支配する。

 油断した。少しの間、戦いと言うのか遠ざかっただけで、これか・・・。


 無様だ。余りにも・・・無様。


 悔しさのあまり唇を噛み、血を流す。


ブォォォォォォォォォン――――。


 ヨーロがエンジンを吹かす。

 それはまるで「いつでも行ける」と俺に言っている様に聞こえる。


 ・・・そうだ。切り替えろ。落ち着け。

 その場で殺さないと言う事は、向こうに連れて行っても直ぐには殺さない筈だ。

 猶予は無いが、俺に不可能は無い。


 怒りを静めるのではなく、蓄えろ。この怒りと言う名の感情を無駄にするな。


 怒りは人を惑わせる。だが、時としていつも以上の力を与えてくれる。

 だから―――蓄えろ。


 今、作っている握り拳は殴るまで取っておけ。

 大丈夫だ。きっと二人は無事だ。


 落ち着け・・・俺。


 俺自身に言い聞かせる。

 俺は一度目を瞑り、深く息を吸い、吐く。


 そして、前を見る。


「龍族が魔力を所持していて良かったよ・・・これなら後を追える」

 俺は銃をしまい。ヨーロのハンドルを握る。


 ノーヘル・無免だが、そこら辺は何とかなるだろ?

 その前に空を滑走するバイクはバイクとは言わない。


 俺はエンジンを吹かす。

ブォォォォォン!!!ブォォォォォォン!!!


「待ってろや・・・」


 ヨーロは凄まじい速さで、龍族の後を追った。


 つまりは、『龍族の谷』に―――向かった。


 まぁ、何とかなるでしょ?



 Side=サヤ∥Out









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