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Side=サヤ∥Beginning∥『Reload』
落ちてきた人はカロナス=ナイハと名乗った。
この男は俺と似ていた。
思考とかがね。
それが凄く嬉しかった。
あの服を見たが、きっとこの男は人を数え切れない程殺しただろう。
他の人が見れば、この男は悪人になる。けれども、俺はそうは思わなかった。
きっと、この男も悩んだのだろう。そして、苦渋の決断をした。
それが戦争に参加する事だ。
それは決して良い事とは言えない。
愚王の為に己の手を汚す。それは立派なのではなく、愚かなのだ。
王が全て悪い訳ではない。けれども、この戦争を始めた王はきっと馬鹿で阿呆なのだろう。
けれども、俺はこの男に同情はしない。
それは俺と似ているからだ。
俺も、同情なんかされたくない。
だからきっと、この男も同情されたくないだろう。この男が選んだ道をとやかく言うつもりもない。
この男も何かを貫こうとしたのだろう。
それだけで、十分に俺はこの男を気に入った。
それに、俺の話をしても真っ向から嘘だと言わなかった。
それがもの凄く嬉しかった。
「この世界に来たのはいつ頃ですか?」
カロナスが尋ねる。
「ん~確か2ヶ月前かな」
確かね。詳しくは覚えてない。不老だし時間無限だし。
「この世界の事を神様はどれ程教えてくれたのですか?」
確認の様に尋ねる。
「天秤にかけている事は知っている。他は、悪魔とかかな。基本的な勢力図とかは解らない」
あの神様の説明難しくて良く解らなかったんだよね。
「では、人間派世界派の勢力図を説明します」
そう言って、カロナスは説明し始めた。
「まず、世界派の主な国は『ローデン王国』『ガヌティン王国』そして私が所属していた『アスリトン王国』です。けれども、この3国が協力しあっている訳ではありません。互いに牽制しあいながら、隙あらば攻め込もうとしています。その為、各国の軍を使う事は殆どありません」
「じゃーどうやって戦争してる?」
「それは無限傭兵を使っているのです」
「無限傭兵?何だそれ?」
「無限傭兵とは小国の事を言っています。つまりは、自分の軍の代わりに小国から兵を出そうと言う事です。小国も強大な力の前には言いなりなるしかありませんし、それに、自国が出した兵が戦果を挙げれば、その小国に褒美が貰えると言うシステムです」
胸くそ悪いな・・・。
「そこまでして何がしたいんだ」
そう俺が呟くと、カロナスも頷きながら言う。
「はい。この国々は目先の何かに囚われ、もう破滅しかないと思います」
その通りだな。神様はこんな世界を救えと俺に言ったのか?
「それで、後は人間派の主な国々ですが、『グラパス帝国』『シャクリード王国』ですかね」
「2つだけか?」
「えぇ。ですけど、この2つの国は世界派と違い協力関係にあります。それに無眼傭兵がありません。兵力では劣るかもしれませんが、組織としては世界派より上です」
成る程。こう聞くと世界派が駄目の様に聞こえるが、きっと人間派にも何かしらあるだろうな。
まぁ、どっちにも付く気はないが。
「カロナスはどうして破滅魔法なんて食らったんだ?」
俺は先程聞きそびれた質問を再度尋ねる。
「それは・・・友に嵌められたんです」
暗い顔で言うカロナス。
「友に?それってさっき言った、世界派に付く原因の?」
原因と言う言い方は相応しくないが、原因なのは間違えないだろう。
「はい。さっき言いましたよね?私は所属していたと」
確かに。
「あぁ」
ん?それだと。
「無限傭兵のシステムはどうした?」
自軍は出さないのに、何故カロナスは戦場に出た?
「それが嵌められたのです。私はその友に小国の兵士の統率を任されました。つまりは後方から指示を出してくれと。ですが、私が戦場に赴いた時、此方の兵力はたったの1000でした。因みに向こうは2万。勝てる訳はなかった。本当なら此方も2万程の兵力が居た筈。けれども居なかった。戦場に居た兵士に尋ねたら、その友の命で撤退したと、そして戦場に残った兵士達には殿的な事を任せたそうです。その時私は嵌められたと知りました」
「何故戦場に行くまで気付かなかった?」
「上手くその友に隠蔽された様です。多分ですが友の独断だったのでしょう」
そう言って、カロナスは先程よりも暗い顔をする。
本当に胸くそ悪い。仲間内でもそんな事が起きているなんて、一層悪魔にやられれば良いのでは?
「何でその友はお前を嵌めた?」
「多分ですが、私が彼の不正に気付いたからでしょう」
「不正?」
「彼は、横領していたのですよ」
これはまた。王道ですな。
それに、バレたから始末する。ホント、悪党だよ。
「バラすつもりだったのか?」
「いえ、国の事なんてどうでも良いので誰かに言うつもりはありませんでした。けれども、彼は私が誰かに言うと思ったのでしょうね。だから私を嵌めた」
最悪だな。そいつは自分の友を信用出来なかったのだ。最悪な事。
しかも、その友を切り捨てた。自分の為に。1000と言う数の兵士と共に。
これが今のこの世界なのだろうか?
ますます救う気がなくなった。
「で、破滅魔法を食らったと」
「はい」
ん~嵌められた、までは良いが、何故に落ちてきた?どうしてだ?
「クー爺。何か解る?」
俺はカロナスの隣に座るクー爺に尋ねる。
「魔法使いは一人ではなかったのだろぅ?」
クー爺がカロナスに尋ねる。
カロナスは頷く。
「それなら、ただのミスだろう」
「「へっ?」」
今、この爺なんて言った?
「クー爺・・・ミスって?」
俺は尋ねた。
「破滅魔法とは結構高度な魔法じゃ。その魔法使いの誰かがミスで転送魔法でも使ったのではないのか?それに、破滅魔法はまだ全てが解明されている訳でもないしのう」
成る程・・・いやいや、無理あるでしょ!
「と、言っていますがどう思う?カロナス」
俺はカロナスに委ねる事に。
「・・・どっちにしろ、生きていたんですから良いんじゃないですか?」
ポジティブだなぁ~思わず感心。
「それより、サヤ」
カロナスが俺の名を呼ぶ。
「ん?何だ?」
「貴方はこれから何をするのですか?先程の話を聞けば、世界を救う的な感じになるのですが?」
そうだなぁ~神様のお願いは世界を救う事だったが。
俺自身世界全体を救える自信はない。
「旅しながら考えるよ」
俺も結構ポジティブかもしれない。
「そうですか・・・」
考える様にカロナスは黙る。
「・・・・カロナス」
「はい?」
「俺の仲間にならないか?」
結構唐突に尋ねた。
暫くカロナスは停止する。
「私を・・・仲間にですか?」
「そうだ。俺の予想だとお前結構強いだろ?それに旅をするのも、俺この世界初心者だし。心強いから」
ちゃんとした理由はありますよ?勿論。
でも、直ぐには答えは返ってこないだろうな。
いつまでも返事は待っているぐらい言おうかな。
「此方こそお願いします」
「ん。了解」
・・・・あれぇ~?
「・・・そんなに簡単に返事して良いの?」
思わず誘った俺が尋ねてしまった。
すると、カロナスは笑顔で答える。
「ええ。貴方と居れば私はきっと何かを見つけられると思うのですよ。それに、これも何かの縁ですしね」
・・・えぇー男だ。思わず泣きそうになった。
「クー爺も良いだろ?」
俺は一応クー爺にも尋ねる。
「この若いのは良い男だからのう。じゃから儂からは何も言うまい。それに、お主が決めた事じゃ。儂等は何も言わん」
そうか。ホント、俺には良い奴等が沢山いるわ。
俺は立ち上がり、カロナスに手を差し出す。
「これからよろしく!カロ」
「カロですか?・・・ふふ、えぇー此方こそよろしくお願いしますね」
そう言って、カロは俺の手を握った。
その後、カロが俺の召喚する神々を見たいと言ったので、あの悪神以外は全て召喚した。その後、カーリーがどこから出したのか、大量の酒で飲み明かした。
その宴会の中で、俺の能力とか詳しく説明した。
その度に、「貴方は本当に人じゃないんですね」と楽しそうに言っていた。
結構傷ついた。
Side=サヤ∥Out
Side=第三者or???∥Beginning∥『Reload』
静寂に包まれた森の中、少女は逃げていた。
人間と異なる姿の少女は息を切らし、逃げていた。
その少女の頭には、角が生えており一見すれば牛などと思うが、違う。
何故なら、背中に翼が生えており尻尾もあるからだ。
そう、言うならば―――ドラゴン。
「はぁー、はぁー、はぁー」
少女は大きな木に背もたれながら吐息を漏らす。
少女の体には至る所に傷があり、ボロボロの服を着ている。
「何で・・何で・・・」
少女は何かに問いかける様に呟く。
けれども、その問いに無情な叫び声が返ってくる。
「グアァアアアァァァァァァアアアアアァァァァアアアア」
咆哮。悪魔と間違えるかもしれないが、それ以上に気高く誇り高い咆哮。
「!?」
少女は重い足を叩き起こし、走り出す。
何故追われているか、少女には解らなかった。
少女は、自分の腕を見る。
中途半端に人間の肌と鱗が混ざり合っている。
これが原因なのか?けれども、少女に思考が許される程の余裕はない。
木々が揺れ出す。
少女は、必死に逃げていた・・・・。
静寂を壊すかの様な・・・咆哮の主から。
Side=第三者or???∥Out
Side=第三者or???∥Beginning∥『Reload』
苦しい程の殺気が充満している空間はそうはないだろう。
けれど、この空間はまさにその殺気に満ちていた。
その空間には、4体の異形が居た。
「ベリアル・・・フェニックスの裏切りは真実か?」
坊主頭の異形の1体が尋ねる。
その問いに、深紅の髪を一纏めにしているベリアルが答える。
「間違えはないと思うが?」
「アンタが言うなら真実だろうさ」
黒髪で片目を髪で隠す女の異形の1体が言う。
「信じてもらえて嬉しい限りだな、オリアス」
ベリアルが片目を隠す女に対して言う。
すると、もうオールバックの異形が言う。
「バアル・・・どうするのだ?」
坊主頭の異形を見ながら尋ねる。
バアルはベリアルを見ながら尋ねる。
「マルコシアスとハルファスにはもう動いているのだろ?」
その問いにベリアルは頷く。
「なら・・・問題はあるまい。例えフェニックスだろうと、勝事は出来ん。それに、逃げる事も・・・」
すると、オールバックが思い出した様に言う。
「2ヶ月程前・・・我の軍団の1体が何者かにやられたのだが」
その事に対して、オリアスが笑いながら答える。
「ハハッ!人間の仕業だろ?気にしてどうする」
だが、オールバックはどこか腑に落ちない顔をしている。
その様子に気付いたのか、バアルが尋ねる。
「どうした?マルバス」
マルバスと呼ばれた男は、自分の考え、いや、引っかかる点を話す。
「殺され方が可笑しいのだ」
「可笑しい?」
ベリアルが尋ねる。
「あぁ、他のモノに回収をさせたのだが・・・」
「勿体ぶらないで言いなよ!!」
オリアスは怒鳴る。
「・・・後頭部を何かで打ち抜かれていた。しかも一発で」
その瞬間、異様な空気が流れる。
「たった一発で悪魔を殺したと言うのかい!?」
オリアスが更に怒鳴る。
だが、ベリアル・バアル・マルバスも同様に思っていた。
悪魔が死ぬ事は珍しくない。
凄腕の人間が集めれば、悪魔を殺す事など簡単な事だ。
だが、今回死んだ悪魔は一発後頭部に何かを打ち込まれ死んだ。
きっと、殺ったのは一人。
けれども、今までそんな事が出来る人間はいなかった。いや、いたかもしれないが、確認していない。では、一体誰が?
この異様な空気の中、バアルが口を開く。
「もし、そんな奴がいるのなら、直ぐさま始末しなければ。私達の脅威になるかもしれん」
バアルの考えは、他のモノ達も同様に考えていた。
危険。あまりにも露骨に。
「ベリアル」
マルバスがベリアルの名を呼ぶ。
「何だ?」
「他のモノ達に伝えてくれるか?」
「了解した」
闇夜は包む。この場で、始めてサヤは悪魔達に脅威とされた。
それは遅すぎるのか?早すぎるのか?
この時から、悪魔との戦いは避けられなくなっていた―――。
Side=第三者or???∥Out