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20.ラージル商会

「オッさん!」


 ハツカが飛び込んできたものを勢いのまま受け止める。


 それは、昨日チンピラに絡まれていた小さなオッさんだった。


 オッさんは嬉しそうに、ハツカの腕の中でキャッキャとはしゃいでいる。


 相変わらず可愛いオッさんだ。


「えー……っと、お知り合い、ですか?」


 妙に親しげなハツカとオッさんに店員が少し戸惑っていた。




------------------




「昨日この子を助けてくれたのは、あなた達だったんですか!」


 昨日、ビラ配りをしているオッさんを助けた際に、この店を勧められた話をすると、店員はお礼がしたいからとハツカとメデュラをレンタルオッさん店舗の応接室に通してくれた。


 派手な店員さんとハツカとメデュラがテーブルにつく。


 オッさんはテーブルの横で何やら楽しそうに一人遊びをしている。


 そこで詳しい話をすると、派手な髪の店員は、ハツカ達に勢いよく頭を下げた。


「この度は、当商会の従業員を助けて頂きありがとうございました。店長としてお礼申し上げます」


「え、君が店長なの!?」


 見た感じ二十前後で若いので、ただの派手な店員だと思っていたハツカが驚く。


「はい。私こういう者でして」


 そう言って派手な店長は、四角形の小さな紙をハツカとメデュラに手渡してきた。


 後で聞いたところによると、それは「名刺」という商人特有の自己紹介カードのような物だった。


 商人は冒険者のようにランクが記載された冒険者カードを持たないので、こういった物で自分を認知してもらうらしい。


 その名刺には、こう書かれていた。


 ラージル商会 副商会長

 レンタルオッさんリールカーム店 店長

 レイン・ラージル


「ええ!? ラージル商会!? しかも副商会長って!」


「む、主殿、知っておるのか?」


「知ってるも何も、国一番の商会だよ。武器や食料品、その他何でも扱うから、このリールカームの商品流通の大半も、ラージル商会が取り仕切ってるはずだよ」


 ハツカがギルドに納めている薬草も、その後の流通はラージル商会が行なっている。


 国内にある中規模以上の街でラージル商会の店が無い街など、おそらく存在しないだろう。


 その流通網と資金力で、ラージル商会は並の貴族以上に王家や諸外国に影響力を持っているという噂もある。


「ふむ、その若さで大組織の幹部とは、大したものじゃ」


 メデュラもハツカの説明を聞いて、目の前の人物がなかなか凄い人物だということを理解したらしい。


「いやはや、お恥ずかしい。父の子供は皆、副商会長の名前を貰って一つの街を任されるだけなので、私自身はそんな大層なものでは無いんですよー」


 どうやら、彼女の父があのラージル商会の商会長らしい。


(大商人の娘って、それもう半分貴族みたいなものじゃないか!)


 ハツカは当然ただの平民である。


 自分と店員との思わぬ身分差に、ガチガチに固まってきたハツカに、レインが笑いかける。


「そんなに畏まらないで下さい。少なくともここではあなたはお客様かつ、お店の恩人……えーと、失礼。まだお名前をお聞きしていませんでしたね」


「す、すいません! ハツカと言います!」


「妾はメデュラじゃ」


 ハツカが名乗った瞬間、レインの目が一瞬細まった気がした。


「ハツカさんとメデュラさんですね。間違っていたら、申し訳ないんですが、もしかして薬草採取をしてらっしゃるハツカさんですか?」


「はい、毎日薬草集めて……ってなんでそのことを!?」


 ラージル商会の副商会長が自分の事を認知しているという事に、ハツカは驚き目を丸くする。


「ハハハ、当然ですよー。この街で流通する薬草の多くを集めているのが、ハツカさんなのですから。その薬草を使って商売をしている身としては、ハツカさんの話は冒険者ギルドからよく伺ってます」


「え、ええー……」


「それにしても、ハツカさんは隣の森で魔物に襲われて行方不明だと聞いていたんですが、間違った情報でしたかねー」


「そんなことまで知ってるんですか!?」


「商売人にとって情報は命です。ハツカさんがいなくなった後の薬草の手配に頭を痛めていたところだったので、ご健在が分かり何よりですー」


「い、いやぁ、本当ですよね、あはは」


 どうしてご健在なのかを説明するわけにはいかないので、追求されないようハツカは苦笑いする。


「ということは、今日は薬草集めの人手が欲しくてご来店頂いたってことでしょうか。それならどうぞどうぞ! 幸いこの子もハツカさんに懐いているようですし、是非連れて行ってあげて下さい」


 そう言ってレインは、横ででんぐり返しをして遊んでいたオッさんを抱き上げて、ハツカに手渡してくる。


「あ、もちろん今日のレンタル代は結構ですので! それとこの子を助けて頂いたお礼がまだでしたね。……おーい! 誰かー!」


 レインは店のスタッフを呼び付けると、オッさんをレンタルする手続きをパパっと済ませ、お礼だと言って商会で取り扱う防具一式をハツカに用意してくれた。


 それは革製の鎧だったが、かなり上等な物であることは一目で分かった。


「これ、アーマージロの革鎧じゃないですか! そんな高価な物受け取れませんよ!」


「いえいえ。ほんの気持ちですし、今後ともハツカさんに薬草を集めて頂ければ、当商会も助かりますので」


 断ろうとしたが、商売人に口で勝てるはずもなく、ハツカはそのまま鎧を受け取り、メデュラとオッさんと共に店を後にした。




◯◆◯◆◯◆◯◆◯◆◯◆◯◆◯◆◯◆




 ハツカ達が去った後のレンタルオッさんリールカーム店の応接室。


 店長であるレインは、さっきの出来事に笑みを隠せずにいた。


「商売人にとって情報は命。その中でもラージル家が集める情報を違えるなど有り得ません。ということは、彼はFランクの冒険者でありながら、何らかの方法でグールの群れから生きて帰ってきた」


 彼女は、高ぶる感情を抑えきれないように髪をぐしゃぐしゃにかき上げる。


「実際あの森にナニがいるのか、だいたい見当はついてますが、通常であれば不可能なことを彼はやってのけた。おそらく一緒にいたあのメデュラという女の子。彼女が肝、でしょうか」


 応接室の窓越しに、店から出ていく三人が見える。


「こんな田舎の中規模街に飛ばされて腐ってましたが、これは私にもツキが回ってきましたかね」

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