オークに敗北した転生女剣士が連れて行かれた先は
本作は『オークに捕まった転生女剣士の末路…』と『オークに敗北した転生女剣士の日常』の間に位置する時系列のお話です。
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女剣士アスカは転生者である。
交通事故であっさり死んで異世界に転生した彼女はオークの集落を襲撃し、あっさり敗北した。
捕らえられた彼女に大勢の若いオークが群がって行き、一人のオークが彼女を手に入れた。
彼女を手に入れた若きオーク、『レヒ』は彼女を抱え、ある場所へと連れて行かれた。
何処へ行くかと尋ねても返答はない。
やがて連れて行かれた一軒の家。
地面に座らされた彼女はここで待つように言われ、レヒは何かを叫びながらその場を後にした。
不安が彼女を襲う。
これから何が起きるのか?
もしやここで自分を嬲るつもりなのでは、と考えると体が震えだす。
すると……
「ぶふふふふ……!ほう、この子が息子が連れて来た子かぁ」
でっぷりと太ったオークが荒い息を吐きながらアスカの居る空間へと入って来た。
「ひっ!」
「ぐへへ、気が強そうでいてそれで賢そうな子だなぁ。これは楽しみだわい」
汗臭さが充満する。
楽しみ?何が楽しみだというのか?
そこでアスカははたと気づく。
この異世界はややヨーロッパ『風』な人達が暮らし文化もそれに似た様なものがある。
となると考えられるのは……
(ま、まさか息子より前に父親が味見をする文化があるというの!?)
権力を持つものが夫より先に新婦と交わるという風習が元居た世界でもかつて存在したらしい。
それの変形バージョンがオークの世界にあったとしても何ら不思議ではない。
なるほど、レヒが自分を置いてどこかに行ったのはそういう事だったのか。
やはりオークは野蛮なけだものじみた種族だ。
アスカは怯えを隠すような気丈さで踏み入ってきた男を睨む
「ぶははは、面白い目をする。ならばたっぷりと教えてやらんとなぁ!!」
そして……
□
「…………というわけで、オークの英雄ローサインは時の王ミガルト3世と協力して侵略民族シャバラを撃退したわけだ。そしてローサインはミガルト3世の妹ターニヤと結ばれてノイエアームストロングソニックジェノサイドアームストロング……」
レヒの父親はアスカの飛躍した想像とは違い、彼女にオークの歴史を熱く語っていた。
「ああっ、オヤジ!見当たらないと思ってたらこんな所に!せっかく驚かせようと思ったのに」
「ぶははは、お前が嫁さんを貰った事などあっという間に知れ渡ったわい。しかしお前の連れてきた嫁さんだが中々見込みがあるな。ワシの話を真剣に聞いておるぞ!!」
実は真剣に聞いているわけでは無い。
汗を拭き、シャツとネクタイを締め、メガネをかけた上で香水を振りかけ知的イケオジに変身したオーク。
そんな彼のギャップに脳の処理が追いついておらず放心していただけだった。
「ワシは普段、近くの街で教師をしていてな。しかし、地面に座らせてしまっているのは本当に申し訳ない。いやはや、母さんも息子が人間の女性を射止めたと聞いて舞い上がってしまってな。丁度、家の中のものを外へ放り出して大掃除をしていた所だったのだよ」
唖然と口を開けているアスカ。
「おや、何だか呆然としている様な……ハッ!しまった、お茶を出していなかったではないか。もしやこの症状は脱水かもしれん!或いは空腹!?これは失礼をした!ワシとしたことが実に申し訳ない事を!!いかんいかん、母さんにぶっ飛ばされる所だった!!おいレヒ、お前は彼女をもてなす食べ物を用意するのだ。ワシは水を汲んでくる!!」
「ア、アスカさんちょっと待っててくれ!!」
慌ただしく出て行くオーク二人。
取り残されたアスカは叫んだ。
「いや、ノイエアームストロングソニックジェノサイドアームストロングって何よ!?無茶苦茶気になるじゃない!!!」
女剣士アスカは転生者である。
交通事故であっさり死んで異世界に転生した彼女はオークの集落を襲撃し、あっさり敗北した。
そして若きオーク達からの熱烈な婚活アピールを受け最終的にレヒというオークを選んだのである。
シャイで奥手なレヒと割と肉食系ながら恥ずかしがり屋でもあるアスカ。
二人の愛の物語は今後も語られていく……かもしれない。