プロローグ
俺の好きな食べ物は納豆だ。誰がなんと言えとも。たとえ、納豆禁止条例が出ても、たとえ、中世ヨーロッパの時代に転生したとしても、俺の好きな食べ物は納豆だ。
納豆の何が好きだって? 一番にあのすごく絶妙なネバネバ感だ! さらに、納豆は腸内環境にも良くて、おまけに免疫力もアップする。納豆最強説的な理論が出てもおかしくない、ていうぐらいすごい食べ物なのだ。
そんな俺の名は石谷紀伊。29歳、独身、アパート暮らし、普通のサラリーマンだ。
俺は今日は今日とで納豆を食べる。朝食はお気に入りの「おかも納豆」。
ぱかっ
あれ、これはなんだ? 納豆の上に入っているタレがいつもと違うぞ。ああ、これはあれか、よくある「味変してさらに美味しくしました」って言うやつか。
俺は納豆にタレと辛子をかけて、いつものMy箸で右に1000回、左に1000回混ぜる。これは、完全自己流の納豆の食べ方で、ネバネバ感が好きな俺にはたまらないのだ。
ネバっ
ネバっ
ネバっ
「いただきます」
ずるるるるるるるるる
あああああああ
この瞬間、俺の体が凍るように冷たくなった。と同時に、全身が固まり、体はまだしも心臓まで動かなくなったのだ。これは、もう、死ぬな。最期の晩餐が大大大好きな納豆で、良かった。まあ、一人なのは少し寂しかったけど。まあ、これで終わりだ。これにて、俺の人生の幕が閉じたのである。
そして目が覚めた。なんだ、今のは夢だったんだ。そう思ったのは一瞬だった。
なんだここは… 下には黄金のように輝くとにかく大きな筒みたいなものがある。筒と言ってもとにかく草の匂いがする。こうしてみると、俺は藁の上に乗っているみたいだ。あれ、おかしいな。さっきまで普通にアパートにいた気がするんだが。
ん? 前に行こうとしたら、ちゃんと行けるぞ。俺は動物だ。確かに生きている。つまり、俺はまだ死んでいないんだ!
それにしても、なんかすごく小さくないか? 俺、今藁の上に乗ってるって、これは最低でも人間のできることではないな。ということは、俺は人ではない! それどころか、猫とか犬とかいうレベルではないな。蟻? 蟻とかいう昆虫に転生したのか? それにしても何か大きい気がする。てことは、
菌?
まさかな! まさかそんなのに転生するようなマニアックな人では無かったもんな。何か思い当たる節は…
あ、納豆食べた。そしたら死んだ 。
なっとぉぉきん?
・・・・・
って言うかなんでだよ。なんで納豆菌になるんだよ。確かに納豆は好きだ。どこの時代に転生したとしても納豆は好きだ! でも、なんで自分自身がなるんだよ。
自分に疑問をぶつけながら5時間(体内時計)が経つ。
まあ、こう言っていても仕方がない。まだ好物になれただけでも運が良かったとしよう。
俺は俺の疑心に納得させた。
こうして、俺の奇妙なストーリーが始まってゆく。
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