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加藤良介 エッセイ集

なろうで使える宗教を考えてみた

作者: 加藤 良介

 さあ、救済の時間だ。( ̄▽ ̄)//

 こんにちは、加藤良介です。

 突然ですが、皆さんは神様を信じていますか?

 私は信じてます。

 いや、信じているとは少し違いますかね。(´Д`)んー。その存在を感じます。

 感じ取った結果。あいつらはくそ野郎だと言うのが最終的な見解ですね。神様の存在は信じていますが、特に礼拝する気は無いが正確でしょうね。

 ちなみに私は仏教徒ですので、神様に対しての解釈は一捻り入ります。


 さて、なろうに限らずファンタジー小説には、神様が出てくることがあります。

 不運にも死んじゃった主人公を来世に転生させてくれたり、不思議な力を授けてくれたりします。

 作品によっては相棒的立場で、共に生活したりして、活躍の場面も多いでしょう。

 しかしながら、これらの神様はただの設定であることが多く。不思議な力を持っていること以外は人間との差はあまりありません。

 それは何故かと言えば、神様が寄って立つべき宗教的設定がいい加減だからでしょう。

 宗教としての態を成していない神様ほど、薄っぺらい設定もないでしょう。

 裏側が透けて見えるレベルです。

 そこで今回は、なろう的神様の説得力を上げるために、小説家になろうで使えそうな宗教を考えてみました。


 宗教を考えると言っても、小難しい話は止めましょう。

 カトリックとプロテスタントとの違いはなんだとか、大乗仏教と小乗仏教がどうしたとか、原始精霊信仰がなんだとか、ややこしい話はオールカットです。

 これをやり始めると終わりが見えませんし、私自身に宗教の詳しい知識がありませんので、論述にボロが出ます。

 更に大して面白くもない、面倒くさい話がだらだら続くことは目に見えています。ですので、モデルケースになり得る宗教を探してきました。それもラノベから。

 今回はこの宗教をベースにして、なろうで使える宗教を考えていきましょう。



 ・ アクシズ教


 大人気ノベル「この素晴らしい世界に祝福を!」に登場する宗教です。

 ヒロインの一人である水の女神アクアがご神体のこの教えは、異世界である程度の勢力を持っている宗教として描かれています。

 私は当初この設定を相手にしておりませんでしたが、考察していくうちに意外な事実に気が付きました。


 それが、「アクシズ教。意外と宗教としての体裁が整っている」です。 


 これは大変珍しい事です。

 ラノベの宗教は設定だけのことが多く、宗教としての実態が存在しないものばかりなのですが、アクシズ教はちゃんと宗教していたのです。

 

 まず、ご神体としてのアクア

 日本担当の水の女神という意味不明の設定のこの女神、一筋縄ではいかない神様です。

 まず日本人の死者の前に現れて、天国か異世界への転移かを選ばせます。

 若干、閻魔大王と職責が被っていますが、他の転生者を見るに、若くして亡くなった男性限定で担当しているようです。

 異世界と天国の選択を、死者の自由意思に任せていますが、本音としては異世界への転移を望んでいます。

 特典などを使って異世界へと誘導はしますが、強要はしないので神様の割には良心的と言えます。

 大抵の神さまは問答無用な事が多いのですが。

 その後、なんやかんやあって、異世界の地上に顕現します。

 本人は嫌だったようです。

 まぁ、突然の配置転換だったので気持ちは分からなくはない。

 異世界に行ってしまうと日本の担当から外れるので、それが嫌だったのかも。もしかしたら職務に忠実な神様だったのかもしれません。

 見ている限りでは、そうは見えませんが。


 さて、強制的に地上に降臨した訳ですが、本人曰く、力が制限されているらしい。

 元の役割では力を使う必要が無いので、真偽は不明です。

 真偽は不明ながらその力は絶大です。

 死者を簡単に生き返らせることが出来ますし、汚染水を浄化することが出来ます。

 なかなか分かりやすく、神の御業を披露してくれました。

 神様の力としては及第点です。



 次にこのアクアを崇めるアクシズ教ですが、驚くべきことにしっかりとした教団が存在します。

 しかも組織化されているのです。

 指導者がいて、その下にシスターがおり、教会が存在します。

 アクアは水の女神ですので、水に困っている人々や水害に悩んでいる人々から信仰は集まるとは思うのですが、このアクシズ教団、そんなレベルの教団ではありません。

 なんとこの教団、伝道、つまり布教活動を行うのです。

 水の神様には必要のない活動ですが、アクシズ教団は水にまつわるの宗教ではありません。

 ある種のイデオロギーの共同体として活動しています。


 ラノベではちょっと見たことないですね。伝道をする教団は。

 伝道をするという事は、他者に伝えるべき教義が存在することになります。

 これだけでも驚くべき事なのに、なんとアクシズ教団には戒律まで存在します。

 即ち、「教祖」「教義」「戒律」からなる、宗教の三大要素を完備した宗教なのです。

 見た目によらず、アクシズ教団はれっきとした宗教勢力なのです。

 これには参った。\( ̄▽ ̄)/

 

 

 元来、水の神様には教義は必要ありません。お祭りをすればいいだけです。

 しかしながらアクシズ教には、れっきとした教義が存在いたします。

 それが「ぐうたら楽して暮らしたい」と言うものです。

 内容には大いなる問題がありますが、ある種の普遍性を備えているので、教義足り得るでしょう。

 いい加減でも教義を持っているラノベ宗教は珍しいでしょう。

 びっくりだよ。Σ(・ω・ノ)ノ!


 更に驚くべきは、御神体たるアクアの口から、アクシズ教徒の心得が飛び出した事です。

 これは正に戒律です。

 内容はこれまた碌でもないものでしたが、神様が「こうしなさい」と明言したので、これ以上に無いぐらいに戒律なのです。

 凄いでしょう。アクシズ教団。

 神様が登場する作品は履いて捨てるほどに存在いたしますが、アクアとアクシズ教団はそれらと同列には語れません。

 教祖たる存在がいて、それを信じる信者がいて、信者を纏める教団があって、広めるべき教義があって、守るべき戒律があるんですよ。其の完成度たるや脱帽ものです。


 教義と戒律は無茶苦茶と言いましたが、アクシズ教団の実態を観察すると、別の見方もできます。

 まず、アクシズ教徒はとても信心深い信者が多いようです。

 彼らは布教の努力を惜しみません。信者数の増加にも熱心です。

 即ち彼らは信心深く努力家という事です。

 ぐうたら、楽して暮らしたいという欲求に対して、大いに努力いたします。

 私は昨今の日本でこれによく似た考え方を知っています。


 皆さんはファイヤー「FIRE(Financial Independence, Retire Early)」と呼ばれる考え方をご存じてしょうか。

 「人生の早い段階で経済的な自立を実現させて、仕事を早期に退職する生活スタイル」の事を指します。

 要するに若いうちに大金を稼いで、後の人生は趣味などをしながら悠々自適に暮らすというライフスタイルの事です。

 昨今憧れのライフスタイルだそうです。

 何とかして大金を稼いで後は楽に暮らすという意味では、アクシズ教の教義と大した差は無いように思えます。

 アクシズ教徒が目指している生き方は、正にファイヤーと言えるでしょう。


 アクシズ教団では、お金を稼ぐ方法は問われません。

 一攫千金を目指してもいいですし、すでにお金を持っている人に擦り寄っても構いません。

 コツコツと努力すること以外なら、手段は問わないようです。

 また、明確な犯罪には手を出さないようで、一定の良識を保持しています。

 これは作者の方が意図したのか、ただの偶然かは分かりませんが、現代社会にも通用する考え方と言えます。

 恐るべしアクシズ教団。Σ(・ω・ノ)ノ!

 異世界のファイヤー教団と言っても差し支えないでしょう。

 なんという普遍性。


 そして、アクシズ教団が宗教として合格点に達していると言えるのが、この教えによって救われる人が存在するという事です。

 宗教の役割は一言で言いますと「魂の救済」です。

 平たく言えば、気持ちを楽にしてくれることです。現実社会の問題解決は、あくまでも副次的なものです。

 作中では、アクアの言葉で救われる信者の姿が描かれています。

 アクシズ教は、ファイヤーを説くことによって人々に救済を与えているのです。

 設定だけの宗教ではここまで描くことは不可能です。

 ラノベの宗教だというのに、ここまでの完成度。

 恐るべしアクシズ教。


 なろうで宗教を作る場合は、アクシズ教団を参考にすれば作りやすいと思います。

 ただ、この教団にも一つだけ問題点があります。

 アクアという人格を持ったご神体が出てくるので、神秘性はゼロです。神秘性を高めたい場合は、神様ご本人は登場しない方が良いでしょう。



 ・ 作成


 ここからは実際に、なろうで使える宗教を制作していきましょう。

 まず、要素を羅列します。


 ①全知全能の神が存在しない

 全知全能の神様は存在が圧倒的過ぎるので、ファンタジー作品には出しにくいでしょう。


 ②人格を保持している神が複数存在する

 人格神の存在は、これがやりたいから神様を出す作者がいるので、要素というよりも要望でしょう。


 ③人類に明確に認識できる存在である

 人格神は人類に明確に認識できないと、信仰の対象にならないでしょう。ただし神秘性が喪失いたします。神秘性の喪失は宗教にとって大きな痛手です。


 ④神に対抗する勢力がある

 神様だけ出すと、強すぎでお話になりません。邪神、悪魔、悪霊、なんでもいいので対抗勢力を作らなければなりません。


 ⑤信者が存在する。もしくはかつて存在した

 信者は大事です。必ず設定しましょう。誰からも拝まれなければ、神としての存在意義がありません。人のみが神を持つとは至言です。


 ⑥宗教儀礼をおこなう構造物、祭器がある

 原始的な精霊信仰でもない限り、宗教施設や祭器というものは必ず存在します。


 ⑦それらを運営する組織がある

 宗教組織は、高度に組織化されているカトリック教会を参考にして作ると楽でしょう。情報も沢山出回っていますし、千年以上存続している組織です。最上級の完成度でしょう。


 ⑧他者に説明できる教義が存在する

 教義から難易度が上がりますね。まぁ、アクシズ教のような適当なもので構わないと思います。


 ⑨実生活で実践すべき戒律がある

 戒律は教義の設定が完了すれば簡単に制定できます。教義に則って作りましょう。


 ⑩これらによって魂が救われる信者が存在する

 魂の救済は最優先事項です。①~⑨まで、すっ飛ばしてでも救われる信者を設定しましょう。これこそが、神と宗教の存在意義です。不思議な力を持ってるだけでは神とは呼べません。ただの不思議ちゃんです。


 これの要素を当てはめていけば、比較的楽に宗教を作成出るでしょう。

 試しに作ってみましょう。


 異世界を統括する天界があります。

 その天界に猫の神様がいます。

 もちろん猫耳。語尾はニャ。長い尻尾も付けましょう。当然、二足歩行の美少女でお願いします。

 名前は・・・猫とバステトをくっつけて、ネコバス・テトにしましょう。非常にジブリ感あふれる、愛らしいネーミングです。

 さて、何を司る神様にしましょうか。

 古代エジプトのバステト神は、病気や悪霊を祓ってくれるらしいです。また、多産、豊穣を司り、音楽、踊りが好きらしいですね。(wik参照)



 バトル作品なら悪霊退散の能力がいいでしょう。

 モチーフアイテムは弓がいいかな。

 悪霊退散は、そのままで教義になり得ますから楽でいいですよね。

 悪霊を祓うために様々な儀式を考えたら、戒律、禁忌も自然と思いつくでしょう。

 組織も陰陽師的なもので、悪霊を祓えばいいと思います。

 悪霊を退散させるわけですから、信者の獲得にも困らず、ネコバス・テトは主人公の頼もしいパートナーにもなってくれるでしょう。 

 


 少し捻るのであれば、音楽と踊りの神様にしましょう。

 作品の舞台を劇場や音楽学校とかにすれば面白いかも。

 モチーフアイテムは楽器。

 持ち運びの出来る、手で奏でる楽器がいいでしょう。ギターとかマンドリンとかハープとか。笛とかピアノは止めた方がいいんじゃないかな。

 笛は歌えないし、ピアノは踊れない。

 教義は自由とか解放とかアート系のものでいいんじゃないかな。戒律は毎日稽古。

 音楽学校がそのまま組織に転用できます。

 信者にも、音楽によって救われる人にも困らないでしょう。

 こちらの設定の場合は、主人公にしか見えないという展開もありです。

 「ヒカルの碁」の佐為と同じ役どころですね。

 


 いかがでしょうか。

 ①~⑩の初期設定をしっかり組めば、比較的簡単に神様と宗教の運用が可能でしょう。

 真面目で精緻な宗教を考える場合は、実際する宗教と神様の学習と研究が必要かと思います。

 


 ナーロッパの歴史がまた一ページだニャー。ฅ^•ω•^ฅ

        

 

                おしまい

 最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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[良い点] なるほど~。 なろう系の宗教がなんか薄っぺらいなぁと思っていたのだけど、やっと腑に落ちました。 なるほどねぇ。
[良い点]  少し前のエッセイに失礼いたします。  宗教というとTRPGが浮かびますが、結構真面目なので、なろうファンタジーには確かに合わないかもですね。ブルーフォレストとかそこらへん亜神が歩いてる…
[一言] 汝、欲することを為せ ラノベで宗教語るなら 旧ソードワールドやロードスを含めたフォーセリア世界は外せないかな? クリスタニアは神獣が特異例過ぎるので除外 あとルナルサーガなどですかね 基…
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