新鮮味のない新生活
(入学式前日)
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今、やっとやっとやっと春休みの課題を終えた。と言うより無理矢理終わらせた。なんで学校って生徒に引きこもりさせたがるんだ? この間の説明会では課題の中から(4月)15日の実力テストに出すとか言ってきたし、こっちは受験クリアしたトコだってゆーのに「この3年間が一番勉強する時だ!」ってツバ飛ばしまくってた先生いたし、そんな話がしたいなら都市部の名門S高校に行けばいい。あそここそ毎年東大京大のエリート出してんだから。と、言うかそこの生徒なら言われる前にやってるか。
入学式前日、制服・制カバン・上履きと新しい物は揃ったけど、ちっともワクワクしてこない。ちょっとしたのは定期入れだけ。なぜなら唯一中学の時にはなかったものだから。中身は明日通学証明書もらって買う予定。
入学式は平日にあるので母さんは仕事。式は自分一人で行く。なぜだろう。あの説明会の朝の一つ目の電車でのことを思いだすと変な感じになる。別に嫌だったとかいうわけじゃない。その人は普通に乗車していただけなのだ。そして全くの赤の他人なのだ。思い出したところで何になるんだ?
それより明日だ明日。入学のしおりによるとまず最初にクラス発表があって、講堂で式があって、課題提出して…
クラス発表
どんなメンバーなのか、誰と仲良くなれるかなんて正直期待なんてしてない。その根拠は入学説明会で見た面子を思い出せばわかる。一言で言えば、中学時代の(自分含めた)カースト下位ばっかし。真面目系かと思えば周りはこっそり漫画読んだりケータイ弄ったり(さすがにエロ画像じゃないよね)堂々と寝てたり(自分は話聞いてる風で寝ていた)。どいつもこいつも残念な人達。特に自分の隣は頭ボサボサの色白のメガネ男子でいかにも陰オーラ出しててツイてなかった。それだけならまだしもそいつはずーっと頬杖ついててこっちまでシャカシャカ音が丸聞こえだった。これは自分もやったことがある。長袖の片方にイヤホンのワイヤーを中に通して外から見えないように萌え袖で中指と薬指の間にイヤホンを挟み、それを耳にあてて服のポケットに入れたプレーヤーを操作して音楽を聴くのだ。パッと見頬杖ついてるだけにしか見えないのでヒマでダルい授業の時にはいい時間潰しだ、だが、このメガネ君にはボリュームを考えてもらいたい。
自分がこれから通うことになるこの参竜高校はその名の通り三流で、それほど名の知れた学校ではない。受験シーズンを振り返って「滑り止めに参竜高も出願しとこう」と言う話は聞いたことあっても「本命の参竜高入れるようにがんばる!」なんて言うやつは見たことも聞いたこともない。かと言って入学試験には面接もやったし受験生の中学校から調査書を提出させるので、極端にワルで今まで喧嘩上等で生きてきたような生徒もいない。まぁ最初は皆ネコ被ってるだけなのかもしれないけど。とにかく自分は高校生になるからと言って「高校デビュー」とか言う家のリフォーム番組みたいなことに興味無いし、やる意味もわかんない。
「友達百人できるかな」、「心友」、「仲間最高」バカじゃねーの。心から分かりあえるダチなんて一人もいないのが普通だ。まぁ、稀に一人くらい持ってるのがいるかもしんないけど。人はたいてい一人で生まれて一人で死ぬもんだ。百歩譲って友達が百人できようが千人できようが大人になって就職や結婚でもすればほとんど会う回数がなくなって、フェードアウトすることくらい知ってる。まぁ自分の場合就職はがんばるけど結婚願望はゼロだから最後は孤独死かな。誰が後始末してくれるのかわかんないけど。
たった今、母さんが明日仕事を休んで入学式に一緒に行くとのこと。
説明会に行けなかった罪滅ぼしだそうだ。自分の中で何かが崩れ去った。