「自分」のこと
(以下、当人の手記を基にしたもの)
20XX年 3月
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月・火・水・木・金・土そしてありがたみの感じない日曜日。はっきり言ってもううんざりだ。学校生活も、自分自身にも。
なぜかって?
やりたくもない受験勉強を否応なしにやらされて、なんとかパスしたものの、自分の進学先は電車で1時間かかる滑り止めの高校しかなかった。家から近い高校もあるにはあったけど、自分にとっちゃどれも酸っぱ過ぎるブドウ。最初から見向きもされないって言うかこっちだってしなかった。理由はカンタンだ。ちゃんと勉強してこなかったから。でも念のため言っておくけど、勉強の成績を抜きにすれば自分の頭はそれほど悪くない(はずだ)。決して素行不良なわけではないし、出席日数だって申し分ない。中学入学して少しまでは将来の希望もちょっとは持っていた。
でも、この中学3年間を過ごしてはっきりわかったよ。自分の、恐らく一生変わる事のない立ち位置を。
皆が、そしてたぶんだけど先生や親も1番好む人物像っていわゆる陽キャ、つまり「明るくてハキハキしていて、運動神経が良くて誰に対しても愛嬌はあるけど最低限のマナーがあるイケメン(あるいは美人)」だってこと。もちろんコレに「成績優秀」を付け足せば最強なんだけど、さすがに完璧過ぎるだろうから後者だけの人間より前者の条件満たした様なヤツが大人になっても人生うまくやっていけるんだ。自分はそんなのとは全く真逆。人前で話すなんて大嫌いだし、ましてや誰に対しても笑顔を振りまくなんて考えただけでもメマイがする。外見だって全然イケてない。どんなに性格がネクラでも写真映りがモデルなみに良ければ学校生活でもプラスになったかもしれない。しかし実際には自主規制モノだ。お世辞にもイケてるとは言えない。
昨日、久しぶりに学校へ顔を出した。案の定、スクールカーストトップの連中はほとんどが都市部の名門高校に決まったみたいだ。そこの高校は制服が無ければ校則も2、3個しかないようで、進学予定であろう女子達はこっそり持って来たティーン雑誌をめくりながら、どのモデルがかわいいだの今度の春休みに◯◯(JK御用達のブランド名らしい)へ服を買いに行くだの騒いでいた。
キーンコーンカーン…
始業ベルが鳴った。自分の前に嫌いな背中がそこにはいた。