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メルスハイム王国兵団入隊編

Fastperson・shooter (ファーストパーソン・シューティング)、通称FPSと呼ばれるゲームは、プレイヤーが一人称視点でキャラクターを操作し、限られたフィールド内で素手、もしくは武器を用いて敵を倒していくゲームだ。


FPSとはゲームのカテゴリーであり、このカテゴリーのゲームが今全世界で大流行し、今では国内をはじめ世界各国で大会、イベントが開催されるなどとても人気の高いゲームだ。


かくゆう俺もこのFPSというジャンルのゲームにドはまりしている訳で、学生時代から現在(33歳無職)に至るまで20年近い年月をこのFPSをやり続けている。


正直ろくでもない奴だと自分でも分かっている。


いい歳こいたおっさんが働きもせず、こうしてゲームに夢中になっているなんてはっきり言ってクソだ。


家族、親戚たちから「働け!」、「ゲームばっかやるな!」、「少しは社会人らしくしたらどうなんだ」など耳に胼胝ができるほど聞かされてきた。


しょうがないじゃないか。FPSというゲームにはまり過ぎたが故に、学生時代は基本的に放課後はすぐさま家に帰り、朝方前までプレイしているから授業のほとんどは寝ていた。その為テストでは全教科赤点常習犯、交流を持っている友人もなく、その結果コミュニケーション障害、通称コミュ障になった俺は、同性、異性問わず喋るときにまともに目の合わせられなくなり、喋りかけようとしてもごもってまともに喋れない。


極めつけは同じクラスメイトの男子生徒に面白半分に作られた嘘のラブレターで呼び出され、笑い者にされ、クラス内で根も葉もない噂を流され、それが学校中に広まるなどしてクラスだけでなく、学校中の生徒からも避けられる存在になった俺は人間不信になり、いつしか学校にも行かなくなる。


幸い当時の担任だった先生はこんな俺を気にかけてくれて授業の単位をプリントで補うことにしてもらい、どうにか学校を卒業する事が出来た。


卒業後、何とか会社に就職する事が出来たが、学生時代に発症していたコミュ障、人間不信が治っているはずがなく、社会人になってからもそれらを発症し続け、会社内でも孤立していた俺は半年でその会社を退社する事になった。


以来、転職する事も、バイトする事もなくこうして俺は社会不適合者となり現在までゲーム三昧の生活をしている。



「・・・よしまた俺が1位だ!」


              

今俺がはまっているゲームは『Creation of Destruction(クリエーション オブ デストラクション)』通称CODと呼ばれるこのゲームはシリーズがいくつも存在する戦争系のFPSゲームだ。

まず自分好みのキャラクターを作成していくつも存在するアビリティから好きなのを二つまで選択する。


例えば、足音が一切しない『足音消音』、より多くダッシュする事が出来る『スタミナ増量』、一時的に壁が透けて敵のいる位置が分かる『透視』などこの他にも戦場で活躍するためのアビリティがいくつも存在する。


こうして作成したキャラどうしでオンラインで10対10に分かれ、制限時間内でより多くのkill《キル》数を稼いだチームの勝利となる。



「まったく、どいつもこいつも行動パターンが単純すぎて話にならないな。」



このCODシリーズゲームを極めた今世界ランキングでは常に1位をキープしている俺はオンラインでマッチングした場合必ずチームは勝利し、キル数もチームで必ず1位を獲得するようになった。



「次のマッチに勝ったら1,000連勝か・・・このゲームで伝説残して次にやるゲームでも探すかな。」



余裕の笑みを浮かべながらキーボードとマウスに手をかけ次のマッチングを待つ。



「おっ!記念すべき1,000連勝目の試合が決まったぞ!」



誰も成し遂げた事のない記録に挑戦しようとしているのだから正直緊張している。

だけどこのゲームに勝利すれば全世界のこのゲームをやっている人たちに自分という存在が居ることが証明する事が出来る。

学生時代バカにしていた奴らにも、社会人やっていた時に見向きもしなかった奴らにも、俺がどんなに凄いやつなのか知ってもらえる。



(この記録を手土産にプロチームに入って、口うるさかった親も黙らせてやる)



今まで以上に強い意気込み胸にいざ運命を決める一戦へ・・・



「・・・クソ!いつもどうりやってるはずなのにエイムが合わない!



何年振りかに襲い掛かっている緊張のせいかいつもはやらない凡ミスが目立つ。

だが、まだゲームは始まったばかり!諦めたらそこで試合終了だ!



「よしっ!調子を取り戻したぞ!こっから大差付けてやる!」



序盤の凡ミスは消え去り、いつも通りの華麗な立ち回りを取り戻した。

スコアも徐々に差が付いていき、一桁から二桁差まで差を広げる。



「いける!いけるぞ!もう少しで1,000連勝だ!!」



制限時間も残り数分となり、一気にモチベーションが上がる。

その時、部屋のドアが開き画面の光しかなかった部屋に廊下の明かりが差し込む。

ちっらとドアの方に視線を移すとそこには影になって顔は見えないが長身の男の姿がそこにはあった。

父だ。普段家の居間にいて俺の部屋まで上がってくることのない父の姿がそこにはあった。


俺は画面の方に目線を戻したり、一瞬父の方に目をやったりしながら父の顔を見ていた。

廊下の明かりに目が慣れ始め、薄っすらと父の顔が見えてきた。

口元が動いているのは分かるがあいにくこっちはヘッドセットを耳にい当てているのとそもそも話を聞くつも無いし、今誰かと話している暇はない。今の俺には父の話なんかよりもこのゲームの方が大事だ。

このゲームの結果次第で今後の俺の人生が決まると言っても過言じゃないからだ。



「今大事な試合やってるところなんだから話があるなら後にしてくれよ!!」



画面に目を向けながら父に向けて言葉を吐いた。

一瞬父に気を取られたのもあり、二桁あったスコアの差が二桁に迫り、そこに味方のミスが重なり2,3キル差まで攻めよられている。

自分の人生がかかった試合だけにプレッシャーも凄まじい。

スコアが拮抗してき、残り時間も迫ってきた。このままなら勝てる。



(あと少し!このゲームに勝って俺の人生再スタートだ!)



ギリギリの攻防を繰り広げながら残り時間が10秒を切った。


次の瞬間、画面が真っ暗になった。



「・・・・・・は?」



状況が呑み込めなっかた。残り数秒という時間を残し、スコア差も1点差まで競り合っていた所で画面が真っ暗になるなんて想像だにしなかった事が今目の前で起きた。




ふと我に返り、ちちの方に顔を向けた。そこにはパソコンのケーブルを握っている父の姿がそこに合った。

父の顔と引き抜かれたパソコンのケーブルを何度も目線が往復する。数回往復したのちようやく思考が回復し、俺は父に激怒した。



「お前!!何て事してくれてんだ!!!もう少しで勝つ事が出来たのに!!!お前のせいで俺の¥#%&*¥$!!!!!!」



あまりの出来事に舌が回らず最後の方は自分でもなんて言ったのか分からない。

そのくらい気が動転しいる。この試合に勝ちさえすれば今のこんな生活から解放されて明るいスポットライトのあたる下で活躍出来たはずなのに、父の行った行動のせいで全てが水の泡と化したからだ。


今までに感じたことない怒りに感情が定まらない。

すると、父がおもむろに口を開いた、



「ようやく私と面と向かって話す事が出来たな秀則(ひでのり)。」



「っっっっう!」



数年ぶりに父に名前を呼ばれたとたん苦虫を嚙んだかのような顔を浮かべる。

父はとても威厳のある人だ。俺がこの生活になってからも唯一父だけは俺の在り方を否定しなかった。

母や兄弟、親戚中から忌み嫌われる存在の俺を父は見放さなかった。



「お前がそんな状態になったのも父である私にも責任がある。」



父は淡々と続ける。

けどそんなことは今の俺にはどうでもいい!俺は父の手にあるケーブルを奪い、コンセントに差し直し再びパソコンの電源を付ける。



(すぐに再起動してゲームに戻れば・・・リザルト画面に間に合いさえすれば)



わずかな希望を抱きながらすぐさまホーム画面からゲームのアイコンをクリックしゲームを起動させた。

しかし、結果は悲惨なものだった。

ゲームを起動させホームからオンラインマッチの部屋に飛んでも表示されるのはルームを作る、ルームを探す、ルームIDを入力するの画面が表示されただけだ。

自分のプロフィール画面に飛ぶと右上に表示されていた999連勝の文字が消えていた。



「・・・・・・あ・・・・・・・ああぁぁぁ」



突きつけられた現実に言葉が出ない。

自分の中で何かが崩れ行く音が聞こえた気がした。

絶望の果てに両手は脱力し、ぶら下がり顔は(うつむ)き目の焦点は合っていない。


そんな俺を眺めながら父はこう告げた、



「私の友人が会社を経営していてな、お前の話をしたら是非面接だけでもと言ってくれたんだ。その会社に関する資料を貰ってきたからもし興味があるのならこの名刺に記載されている電話番号に電話するといい。話はそれだけだ邪魔をして悪かったな。」



そう言って父は資料と名刺一枚を俺の机に置き去って行った。

その資料に目を移すそこには誰もが聞いた事のある製品メーカーの名前が書いてあった

一般的に考えたらこの企業に勤められるのはとてもいい事なのだろう。

だが、そんな事は俺にはどうでもいい!俺は俺の人生設計を今しがためちゃくちゃにしていった父に心の底から憎悪に満ちていた。

勝手に部屋に入ってきたと思えば自分の言いたいことだけ言って去って行って、それを伝える為だけで俺の伝説的な記録を台無しにした父に憎悪で頭がいっぱいになっていた。



「・・・あいつが邪魔さえしなければ・・・あいつさえ来なければ。」



そして憎悪に満ちた思考は最終的にこの答えを出す





「全部あいつが悪い・・・あいつが居なければ・・・・・・あいつが死ねば・・・もう邪魔する奴はいない。」






引き出しからカッターナイフを取り出し、勢いよく部屋を飛び出し、カッターの刃を限界までだし父

めがけて走る



「うわああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」



怒り声に出し父に襲い掛かる。

父は振り返り驚愕の表情を浮かべる目の前にはカッターナイフを持って襲い掛かってくる息子、父のすぐ後ろには1階に続く階段、もはや父に逃げ場はない。

おれは怒りを、憎悪を乗せたカッターを父に突き刺そうとした瞬間、

久しぶり走ったせいか自分の足を思いっきり絡ませ、勢い余ってそのまま自分が階段から落ちる羽目になった。


ドガン!!、ガタン!!と大きな音を立てて落ちた俺は打ち所が悪かったのか首が90度曲がって体が動かなくなっていた。

この時悟った、



(あぁ俺はこのまま死んじまうのか・・・父親を殺そうとした報いがこれか・・・)



だんだん意識が薄れていく中で俺の名前を呼ぶ父の声と慌てて駆け出してきた母と弟の声がどんどん小さくなって行きやがて俺の意識は闇の中に消えていった。



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