探娘辞典 木星探査機ガリレオ
一人称は「ワシ」
語尾は「じゃ」
ほぼ毎日髪形が変わる。ありえないレベルのクセ毛によるものだ。何度梳かしても言うことをきかない自分の髪質に、本気で殺意を覚えている。起きているときはほぼずっと櫛で髪を梳かしている。このクセ毛は、木星探査機ガリレオの、言うことを聞かない頭(開閉式だった高利得パラボラ・アンテナが開ききらない謎の現象)に由来するものだ。
外部太陽系の惑星である木星に探査機を送り込むことは技術的に困難を極める。そのため、木星軌道周回機というものは宇宙探査機の歴史全体を通しても2機しか存在しない。
その二機のうち、史上初の木星軌道周回機という栄誉を持っているのが探査機ガリレオである。
木星探査には先を競うライバルがいなかったため、ガリレオはそこまで強い競争心はもっていない。
競争者というよりは、天文学者の気質が強い。
名前の由来となった天文学者ガリレオ・ガリレイからも、エッセンスを受け継いでいる。
探査機ガリレオは、史上初めて小惑星のフライバイ探査を行った。火星と木星の小惑星帯を抜ける過程で、小惑星イダと小惑星ガスプラを撮影したのである。
日本人にとっては、小惑星探査機=はやぶさだが、小惑星探査の時代の幕を切って落としたのは、木星探査機ガリレオなのだ。
はやぶさやさっちゃんは小惑星専門の探査機であったため、ガリレオの何倍、いや何十倍も詳細に小惑星を調査した。タッチダウンも行った。しかし、探査機はやぶさが内部太陽系という小さな籠の中で一個の小惑星しか探査しなかったのに対し、ガリレオは小惑星帯というより遠い場所で、二つの小惑星を探査している。
(はやぶさ2が最終的に何個の小惑星を探査するかは現時点ではまだわからないが、地球近傍小惑星・彗星探査機の歴史を見れば、2つか多くて3つが限度になるということは予想できる)
はやぶさやさっちゃんにとってガリレオは、小惑星探査の偉大な先輩である。
はやぶさやさっちゃんの期待に応えるかのように、ガリレオは木星だけではなく小惑星も研究対象としている。天文学者ガリレオ・ガリレイが、天体衝突の産物である月のクレーターを研究していた歴史に倣ってのことだ。
ガリレオが探査した外部太陽系は、八機の宇宙探査機しか到達したことがない、孤独な世界だ。その1機であるガリレオは、「深宇宙の孤独」というものを知っている。そういう背景もあって、ガリレオは同型機である妹、土星探査機カッシーニのことを、心の底から愛おしんでいる。
二○○機蘇った探査機ちゃんの中で、カッシーニだけが行方知れずとなっている。
ガリレオには、カッシーニが姿を現さない理由の見当がついていた。
土星探査機カッシーニは、木星探査機ガリレオのあとに打ち上げられた同型機(妹)であるが、はやぶさに対するさっちゃんのような、姉のバージョンアップ版というわけではない。搭載したシステムや観測機器はむしろ、姉のガリレオより劣るものだった。そういう姉妹関係を持つからこそガリレオは、はやぶさとさっちゃんの良好な姉妹関係をうらやましく思っている。
「自分はオペレーターに迷惑ばかりかける駄目な探査機なのぶさ……」といつまでもうじうじと悩むはやぶさの目を、ガリレオは覚まさせることができる。
「宇宙探査機は、問題を起こさなければ立派というものではない。
「ワシは前世で、オペレーターの指示によく従い、たいていのことはうまくやってのけたつもりじゃ。じゃが、そのことは結局、妹の改良には繋がらなかった。
おぬしはたしかに、宇宙探査機としては山あり谷ありの生を歩んだ……しかし、だからこそ、おぬしは多くの人間から共感を得る探査機になれたのではないか。そしてその、人間から共感を得る力こそが、あの立派な妹の誕生に繋がったのではないのか」




