最終試験会場
ある日、渡の家のポストに、タイタニック号クルーの書類選考に受かったという通知がくる。そこには最終試験会場の日時と場所が書かれていた。
渡に応募した覚えはない。
さっちゃんを問い詰めると、渡のフリをして履歴書を送ったことを白状する。
スペースクルーの選抜試験には本来、一~三次試験まであって、三次試験を合格した者だけが最終試験に臨めるはずだった。
なぜ自分だけいきなり最終試験なのだろうか。
その理由が知りたくて、渡は最終試験を受けることに決める。
試験会場におもむくと、渡は自分以外に選抜試験に残った九人と顔を合わせることになった。
自分も含めたこの一〇人の中から五人が宇宙行きの切符を手にすることになる。
顔を合わせて驚いたのは、この一〇人の中に渡以外に二人の高校生がいたことだった。
一人は謎の転校生、野宮守。
もう一人は、渡、守と同じく高校三年生の氏尾崇女という女子だった。
崇女は今年創立したばかりの国立宇宙大学への入学を目指しているらしい。
たった三人の高校生ということで、なにかと目立つ。
崇女はあいさつ代わりに渡を殴ってきた。
崇女は宇宙に対して真摯な眼差しを向ける宇宙女子だった。
世間の多くの人と同じように、崇女ははやぶさの能力を持て余している渡に苛立ちを覚えていたのだ。
「なぜ貴様のような輩がこの場にいる! とっとと立ち去れ!」
崇女はこの時点では自分の探査機というものをもっていない。
そういう意味で、渡辺渡に対してコンプレックスがある。
やがて渡たちの待機する部屋にJAXA職員がやってきて、最終試験の試験内容が発表される。その内容とは、
「最低でも一機のアンドロイド探査機とチームを組み、オペレーターになること」だった。
渡と守はすでにヒューマノイド探査機のオペレーターになっていたため、自動的に合格者となった。
渡と勝田がはじめて対面する。
勝田がタイタニック号の話を始める。
「タイタニック号は沈没した船の名前だ。縁起の悪い名のついた船に乗ることをお前はどう思う?」
「縁起悪くて結構、って感じです」
「オリンピック号とタイタニック号は、双子の姉妹であると同時に、商業的成功を競うライバルでもある。俺はタイタニック号の船長として、とうぜん自分の船を勝利に導きたい。だが、そのためにはまだなにか欠けているピースがあるのでないかと思っている。俺は今のところ、俺の船に欠けている最後のピースというのは、二人の男子高校生……すなわち渡辺渡と野宮守の存在なのではないかと思ってる。
俺の片腕になってほしい。副船長になれという意味ではないがな。あくまでもスペースクルーとして、スペースクルーの中心的存在になってほしい」
渡が面接室を出る間際、後ろから声をかけられる。
「自分がなぜこれほどの適性値を出せたのか、よく考えた上で、自分のやるべきことを定め、その実現のために残りの二ヶ月、できる限りの準備をしろ」




