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サンプルコンテナ

 はやぶさにお茶を運んでもらうようになった渡。


 はやぶさのワンピースの、胸の露出部分が気になりはじめる。


 はやぶさのワンピースは、鎖骨の下に丸く切り抜かれた部分がある。直径10センチくらいの丸だ。その作りによって、着用者の胸の谷間の上あたりが露出するようになっている。谷間がどかっと見えるほどの露出ではないが、男の目から見てエロく感じる服であることに変わりはない。純真無垢なはやぶさがどうしてこんな服を着ているのか、渡は不思議でならなくなった。


「それさ」


「はい? 何ぶさか?」


「それだよ、その丸いの」


「これぶさか?」


「そう、それ。気になって仕方ないんだけど、どうにかならないのか?」


「これは、探査機はやぶさの前面についていたサンプルコンテナの痕跡ぶさ」


 恥じらうどころか、はやぶさは笑顔で語りはじめた。


「丸く大きいサンプルコンテナは、探査機はやぶさのボディ前面におけるいちばん目立つものだったぶさ。シンボルといってもいいかもしれないぶさ。シンボルのようなものだったので、いまの自分の服のデザインに取り入れられたんだと思うぶさ」


 普通に納得できてしまう由来だった。


「いや、でも気になるもんは気になるんだけど」


「うれしいぶさ! どんどん気にして欲しいぶさ!」


「ハァァ!?」


 驚愕しすぎて顎が外れそうになる。


「それ隠してほしいんだけど……てか、隠せ」


「それって、コマンドじゃないんでぶさか?」


「そうだよ、コマンドだよ」


「でもいま自分は、この方をオペレーターとしてるぶさ……」


 そういって、はやぶさは膝の上のハスキーをなでる。ハスキーは眠っているようだ。


「なので、この方以外の方からコマンドを受けるわけには……」


「じゃあ俺がオペレーターになるわ」


「……はい? いまなんて……?」


「いまから俺がはやぶさのオペレーターになる」


「えっ……え!? 本当ぶさか!?」


「ああ」


「渡さんが、自分のオペレーターに?」


「うん」


「うれしいぶさ!!」


 はやぶさが笑顔をはじけさせる。夏のヒマワリのような、まぶしさを覚えさせる笑顔だ。その笑顔が、急にしぼむ。


「あ……でも……」


 はやぶさは寝ているハスキーに申し訳なさそうな眼差しを送った。


「ハスキーとはもう話つけてあるから」


「そ、そうなのでぶさか!?」


「ああ。昨日、急に決まったんだよ」


「昨日……」


「うん。だから早くコマンドを受けてくれ」


「わ、わかったぶさ!」


「それとさっちゃんのもな」


「は、はい!」


 その日の夜、どういうわけかさっちゃんがケーキを焼いた。


 胸の丸を隠す飾りも、器用すぎる妹がその日のうちに作ってくれた。



「サンプルコンテナがデザインとしてあしらわれたってことはさ」


 サンプルコンテナを模してつくられた胸の飾りをみながら、渡ははやぶさに言った。


「いまのヒューマノイド探査機はやぶさはどうやって岩石のサンプルを収納するんだ?」


「サンプラーホーンの内部に、サンプル収納スペースが作られたぶさ」


「サンプラーホーンって、あの巨大ロボットの脚みたいな、極端に太いブーツのことか」


「そうぶさ」


「そういえばはやぶさって、あれ以外に履くものもってなかったんだっけ?」


「もちろんぶさ!」


 元気かつ屈託のない返事が返ってきた。想像の埒外すぎる反応だったため、渡はつい苦笑してしまう。


「もちろんなのか。でも、あんなのしか履くものがないってのもな……」


 このとき渡は、はやぶさとさっちゃんを今日にでも靴屋に連れていこうと決心した。

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