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結局関ヶ原は普通に始まってしまった

夜戦も身を賭しての小早川秀秋の説得も失敗しました。

でもあれだけ熱く語り合ったから小早川さん考え直して古狸に突撃してくれないかなぁ。

とかボヤッと考えていたら

「島左近様!乱戦に巻き込まれて行方不明です!」

あ。左近に突出するなと話すの忘れてた。黒田長政って猪武者で先頭に立って突っ込んでくるから先頭が最精鋭なんだよね。


ああ。


なんとか逃げ延びて影武者徳川家康に仕えて良い世の中を作ってくだされ。

ってその前に家康暗殺の忍びちゃんと出したか左近に聞くの忘れたわ。


なんとか石田隊は踏みとどまっているけど夜戦に人を割いた分戦力が少なくて

黒田に結構押し込まれてい る。こんなことなら塹壕とか整備しておくんだったな。


周りの状況を確認すると島津隊はすごい勢いで突出していた。

本当に死力を尽くして戦ってくれているみたい。でも数が少ないから結局膠着状態に。


つくづく近くにいるのにろくに働かない小西行長が恨めしい。

今の所他の流れは史実通りで宇喜多秀家が突出して福島正則と松平忠吉を後退させている。

あれはやはり明石全登と本多政重の技量だろうなぁ。南宮山の毛利一族はやっぱり動きそうもない。

空弁当はうまいか?

毛利が動かない時点で戦略的にはもう手打ちの方向がついてきているってことよね。

これ仮に関ケ原でぼちぼち西軍が勝ててもその後ってどうするつもりだったんだろう。


 宇喜多隊が突出して徳川家康の本体が見えてきた頃、小早川秀秋が西軍に突入した。

史実だと大谷吉継がよく防いで小早川隊が後退した、とあるはずなんだけど

なんか様子が違う。

 ものすごく小早川隊が怒り狂っていてものすごいスピードで突撃してきたので大谷さんが

防ぐ間すらなく何もほとんど素通りになり、そのまま宇喜多隊に突入した。

 あまりの速さにこちらはもう口があんぐりしてきた。脇坂は史実通り裏切ったけど

小早川が風のように目の前を過ぎ去ってしまったために取り残された大谷隊と正面で戦うことになり、

乱戦で脱出を断念した大谷吉継は自害することになったが脇坂隊も被害甚大だった。

さらに朽木や赤座は裏切ったとは言ってもろくに動くことすらできずに形だけ銃撃する有様だった。


 小早川秀秋の猛攻を受けた宇喜多秀家隊はあっという間に瓦解し、明石や本多は脱出、

秀家本人は鎧を脱ぎ捨てて川を泳いで逃げたそうだ。

そしてそのまま西軍主力を蹴散らした小早川秀秋の部隊はなぜかこちらに向かって

直線でまっすぐ登ってくる!!


 いや、もう、なんていうか戦場は決着ついているよね?なにこの勢い。

俺は石田隊全軍に撤退というか逃亡を命令して命からがら逃げ出した。

2日ぐらい飲まず食わずで走り続けてどうにか一息つくことができたのだった。


 その後はなんとか逃げようとしたけどやっぱり史実通り田中吉政の兵に捕まってしまった。

やっぱり水には気をつければよかった。こりゃ詰んでしまったなぁ、と思いつつ

家康の待つ城に連行された俺なのであった。


 捕らえられた後も扱いは悪くなかったし、話も色々聞けた。


 結局関が原で戦闘をしていた西軍の大部分を小早川秀秋一人で撃破してしまったそうだ。

 島津は小早川隊と徳川家の部隊に挟まれていわゆる島津の退き口を行い、

島津義弘がなんとか脱出成功したという。


 井伊直政も史実通り追撃で怪我をした。

本戦で松平忠吉共々宇喜多秀家に押されるばかりであまり見せ場が無かったので、

せめて大将首を、と島津隊を執拗に攻撃したためらしい。


 そして俺は徳川家康に面談することになり、引き出された。


徳川家康は堂々たる偉丈夫で、少し太めだが鍛え抜かれた体は服の上からでもわかる。

顔も一見柔和そうに見えながらものすごい迫力だ。会っただけで格の違いに圧倒される。

「さて石田殿、戦いは世の常なれど楽にされよ。此度の戦いはいかがであった?」

 俺は震え上がりながら答える。

「大権現様にあられましては卑小なる小生如くでは相手になどなりません。

神君の勝利は必定だったかと。」

「大権現様?神君?異なことを。ここに来て阿るか?」

家康の目つきが鋭くなる。

「これは失礼しました。内府様のあまりの威厳に混乱して夢を見てしまったようです。」

「よいではないですか。父上。」

と隣りにいた青年が声をかける。こちらも堂々たる体格だが、家康と比べても更に知性的に思われる

広い額と鋭い目つきをしていた。


「秀忠。神に祭り上げられて思い上がるなどいかんわ。人は常に腰を低くしてだな。」


あれが徳川秀忠か。松平忠吉は関ケ原で負傷して臥せているらしい。

緊張しながらも幸いその場で手討ちにはされずに牢に戻された。


 結局の所俺は史実通りに六条河原で処刑されることになった。

史実だと斬首だったはずなのだが、なんか牢にいる間にもいろいろな人と話をしていたせいか、

助命嘆願まであって切腹になったらしい。家康公を神と口走ったのが効いたわけではないと思う。

 いや切腹って斬首よりは名誉かもしれないが、俺、それキツイわ。

「斬首でもいいですよ。」

と役人に言ってみたのだが、

「いやいや石田様、そこまで自分を下げなくても大丈夫ですよ。」

と期待していない方向に同情された。


 六条河原に引き出される時に柿が出された。ああ、柿のエピソード来ちゃったのかよ、

もう助からないなぁ、と思ったが、せめて歴史に傷跡のこしてやれ、と思って、

史実だと大志を抱くものはいつでも体調を気遣うものだ、とか言って柿を断ったのだが、

「あ、柿頂戴。しっかり食べてこれからに備えなきゃ。」

とか言ってみた。


 刑場では「ズバッと切れたほうが格式が高いけど、自信がなければ刃が当たったら首を落とすから。」

と親切?に指導されたでちょっと安心して

「筑摩江や 芦間に灯す かがり火と ともに消えゆく 我が身なりけり」と辞世を詠んだ。

 歴史改変失敗しちゃったからここはオリジナルの石田三成に敬意を払わなきゃね。

さてしかたないけど、終わりか、と思って刃を当てたら首を切られた、と思ったら首切り役人が

ヘタで何度も斬られる羽目になった。

 痛い!痛すぎる。

 次って無いと思うけど、万が一あったらせめて名手に頼もう…と思いつつ意識が途切れた。


こうして俺の石田三成転生は失敗したのだった。




-完―




 と思ったらなんか意識が途切れない。

なにか世の中の出来事がニュースか年表のように流れてくる。

いや、どうせこういう転生っぽいことあるなら始まる前にやってくれよ、と思いつつ見た。

 関ヶ原の戦いはほぼ小早川秀秋一人の活躍で東軍の勝利に終わった。

秀秋は事前に徳川家康に味方の約定を結んでおり、前日には

「徳川家康公のために奸臣石田三成たちを討つ!」と檄文まで各地に送り、

当日も巨大な「東」「内府万歳」「佞臣石田」の旗指し物を掲げて突入したため

本戦の際に裏切ったのではなく、松尾山城に入場した時点で東軍になった、と評価された。


徳川家康は戦後感激して近寄ってきた黒田長政ではなく小早川秀秋の両手を握って感謝したという。

宇喜多隊に一方的にやられていいところのなかった福島正則はあまり評価されなかった。

吉川広家の毛利家存続の不調に終わり、小早川秀秋は備前、備後、安芸の三カ国を与えられ、

100万石を超える太守となったのだった。

福島は周防を与えられ、毛利には長門しか残らなかった。

しかし小早川秀秋は朝鮮の役で得ていた疫病のため史実通りに早死してしまい、

遺領は結局史実通りに毛利が長門周防、福島に安芸、池田に備後と分けられたのであった。


 石田三成は関ヶ原の本戦でなりふり構わず策を弄したとされ、小人が無駄に動き回っただけ、と評された。しかし処刑される寸前に柿を食したときに「これからのために」と話したことが

処刑される寸前でも逆襲のチャンスを逃さず虎視眈々と時を狙う心構えとされ、

一部の人からは評価されることもあった。

徳川幕府は史実通り260年余りの時を過ごして明治維新を迎えることになったのであった。


・・・なんだよこれ。これで「完」?スタッフロールサービスみたいなもの?

まあいいや、俺は疲れた・・・と意識が薄れていッタ…

今度こそ目が覚めるか死ぬだろう、と思っていたのたのだが。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんか目が覚めた。

やはり夢だったのか?それにしても微妙な夢だった。

普通転生とかしたらチートハーレムとかできるだろ。

「チートハーレムとはなんですか?」

目の前に左近がいる。なんでだ!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 読み始めですが続きが非常に気になるいい作品です!!ときどき影武者家康や島左近の話が出てくる時などいろんなネタが出てきてニッコリします( ^ω^ )
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