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気がついたら関ヶ原


 「殿!殿!いかがなさった!」

野太い声が聞こえてくる…目を開けると時代劇の陣幕の内側のようなところで

筋骨隆々とした鎧武者に覗き込まれている。

そうだ、雷に直撃されて…時代劇の撮影チームに心配されて

担ぎ込まれたのか?それにしてもカメラもスタッフの姿も見えない。

 「殿!またボーッとされて。行軍の疲れが出られたのか?

シャキっとなされ!」

また武者が声をかけてくる。篝火の焚かれた向こうでは忙しくたくさんの侍が

動き回っているのがわかる。


 すごいな。

今どき大河ドラマでもこんなに多くのエキストラは使えないだろう。

場所が場所だけに関が原が舞台の映画でも撮っているのか?


 「助けていただきありがとうございます。

これはなんの映画の撮影ですか?」

 「映画とは?またなんのことをいっているかわからんが面妖な事を。

しっかりなされよ。石田隊、関ケ原への布陣が完了いたしました。

ご下知を。」

 石田隊?関が原?

ふと自分の体を見ると自分も鎧兜を身に着けているではないか。

周囲には「大一大万大吉」の旗印が翻ってさえいる。

怪我して連れてきた人間をいきなり石田三成役に抜擢するのも変な話だし

…これは夢か?とりあえず目の前の武者が偉い人のようなので

聞いてみることにした。

「うむ。失礼した。行軍の疲れが出たようだ。

念の為聞きたいのだが、私が石田三成で貴殿が島左近、であっているかな?」

武者はガハハ、と豪快に笑い出すと答えた。

「殿、なにを冗談を。殿が石田三成で某は島左近に決まっておろう。

疲れを癒やすために場を和ませようとしたのか?」

「もしかして今は慶長五年9月14日であっている?」

「なにを当然のことをおっしゃっているのか。」

…どうやら本当にここは関ヶ原で、今俺は石田三成になっているらしい。


 これは今流行りの転生というやつなのか?それなら途中で女神にあって

チートスキルとやらをもらっておけばよかったのが悔やまれる。

でもそういう初期設定がなくても色々無双できる歴史改変スキルを持っている

かもしれないではないか。俺は夢にしろ、そうでないにしろちょっと状況を

楽しみつつ試してみることにした。


「ステータスウインドウオープン!!!」


俺は腕を前に突き出して叫んでみた…が、何も出なかった。


「殿、何をしているのです?」

左近が不審な目でこちらを見ている。

「状態魔法!素早さのステータスを3倍アップ!周囲に対する威厳を

5倍アップ!」

…なにも起きなかった。

「無詠唱で究極魔法ファイアーストーム!」

「さっきから殿は何をしているのでござる。」

左近がいよいよ呆れた顔をしている。

「いや、佐和山を出たときに読んでいた南蛮の書の英雄の真似をして

気力を出そうとして…」

俺はもじもじしながら話した。気を取り直して気分を変えるのに

ちょっと鍛錬をする、と言って刀を振ってみた。

 すごい。

スポーツは得意ではなかったのだがすごい勢いで刀がビュンビュン振れる。

これは実は身体能力が超強化されていて呂布みたいに無双できるんでない?

 「左近、ちょっと付き合ってくれ。」

 木刀に持ち替えて左近と対峙した。

ふふふ。文官一辺倒と言われた治部とは思うなよ。

俺はこの力で天下を…。


 ……あっという間にズタボロになった俺がいた。

 「殿は相変わらずですな。そういうときのためにこの左近がいるのですから

無理なさらぬよう。」

 …え…弱いのか。てか石田三成って槍働きは賤ヶ岳ぐらいしか

知られてないけど、現代人の自分から見たらそれでもすごい身体能力だった

のね…でもこの戦国(安土桃山だけど)の世では通用しないレベルなのね…

 じゃあもしかしてなんも能力無しで転生してしまったのか?やばい。

どうしろっていうんだ?


 焦りながらもちょっと落ち着いて考えてみたら、とりあえず左近たちとは

普通に言葉が通じている事に気づいた。

脳内では普通に現代語で話しているつもりでも相手にはその時代の言葉に

聞こえているらしい。また相手が普通に話していてもこちらには現代語に

聞こえる。

これは助かる。話もできなければ詰むところだった。

 「よしっ!」

 とか気合い入れていると使者が来た。

 「島津義弘様がいらしたようです。」


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― 新着の感想 ―
[一言] お初です。 「横柄な態度を周囲から嫌われて関ヶ原に勝利出来なかった」と歴史小説に書かれる三成をどのように動かされるか楽しみです。
[一言] 篝火の炊かれた 篝火が焚かれた 炊かれたはご飯を炊くに使われる漢字
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