何気に毒舌
初対面にもかかわらず、リアとハルの会話は弾んだ。街で流行っているもの、お茶の好み。「さかさまりんご」を初めて食べたハルが絶賛し、そこからどの種類のりんごでこのお菓子を作るのが一番美味しいのか、議論になった。そしてもちろんクマタンの話。
ハルは本当にたまたまクマタンの店に立ち寄ったそうで、リアの蒐集熱を聞いて納得したように笑った。
「それならやっぱりあのクマタンはリアのところに行って正解だね。私じゃあ、宝の持ち腐れだ」
「あーもうホントに嬉しかった。今年分の幸運、全部使っちゃったかも」
「リアは本当に大げさだよ」
笑い合ったところで、店の奥から甲高い笑い声が聞こえてきて、二人は同時にそちらに
顔を向けた。
「まああ、なんてお美しいのでしょう!ラヴィニア様ったら月の女神のようですわ!」
「秋の大夜会で王子様のお心を射止められることは間違いありませんわ!」
「ほほほ、皆さまったら褒め過ぎですわ」
どうやら貴族の令嬢たちがお茶をしているようで、ありがちな褒めあいになっているようだ。
おほほ、うふふ、と交わされる笑い声に思わず半目になったリアはうっかり
「うーわ、お花畑…」とつぶやいてしまい
「――リアってけっこう、辛辣だねぇ」とハルに返されて我に返った。
「あ、ごめんなさい…」
「いや、謝るようなことじゃないけど。あのくらいの女の子ってそういうものでしょ……というか、リアも同じくらいの年齢だと思うけど?」
「うーん、なんていうか。綺麗なだけでいいのかなー、とか思っちゃって」
うん?というように首をかしげたハルに、リアが言葉を重ねる。
「大人の仕事って大変だと思うの、どんなのでも。で、王族って国相手に仕事してる人たちだから、その中でもたぶん一番大変で。そんな人のところに嫁ぐんなら、もうちょっと支えるとかそういう方向が大事なんじゃないのかなって」
ハルがわずかに目を見張った。
「なんか大事にされたいと思うばっかりで、相手を大事にする気持ちが欠けてる気がするんだよね、ああいう人たちって」
「ああ、そうかもね・・・」なぜかしみじみと相槌を打つハル。
「それに、王族なんていくら見た目が良くても、きっと相当腹黒いから。あんなに夢は見られないなぁ」
「………。う、ん、まあ、ねぇ」
「え。あ、そうかハルは王宮勤めだっけ。王族の方を見かけたりするの?」
「いや、見習いだからね。王族の皆さんはお忙しいし」
「そりゃそうだね。ま、それだけ大変だから、偉い人って年をとるとハゲ散らかしちゃうんだろうけど」
突然ハルがずっこけて、リアは驚いた。
「え、え、どしたのハル!」
「――いや、何でもないよ」
ちょっと涙目っぽいハルを見て、(もしかしたらそういう家系?深く突っ込むのやめよ…)と思ったリアだった。
「あ、そろそろ行かないと」
それからしばらくして、ハルがそう言い出したのは少し日が傾きかけた時刻。
「ごめんね、忙しいのに引き止めちゃった」
「そんなことないよ。むしろまだ話し足りない感じ」
ちなみにお茶代はハルが払った。(「働いてる男に恥かかせないでよ」とまで言われてはリアも我を通せなかった)
店を出て、リアは家まで送るというハルの申し出を笑顔で辞退した。
「すぐそこだから大丈夫!このへんのお店も、みんな顔見知りだし」
「そう?ほんとに?…なら、いいんだけど。気を付けてね」
(いやむしろ家来られたら困るから!)
リアの心の声が聞こえたはずはないが、ハルは渋々ながらも引き下がってくれた。
「今日は本当に楽しかったよ。次はいつ来られるかわからないけど、また会えたらお茶しようね、リア」
「こちらこそ、すごく楽しかった。クマタン譲ってくれて嬉しかった。ありがとう、ハル」
そして二人は店の前で手を振って別れた。
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