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【コミック&書籍発売中!!】奴隷に鍛えられる異世界生活【2800万pv突破!】  作者: 路地裏の茶屋
第四章:異世界温泉編【首無し騎士と聖女の想い】

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第六十三話:聖騎士

 フクちゃんの毒牙にかかってしまった騎士団の人の名前はルイスというらしい、外国人風の顔なので何歳かわかりずらいが多分僕等と同じくらいではないだろうか?


「つい賛成しちゃったけど、私一応聖女だったこと忘れてたよ、大丈夫かな?」

「忘れてた、じゃないよ。僕は止めたからね」


 フクちゃんの毒で眠らせたルイス君を廃村で、比較的綺麗な家に運び込んだところで叶さんが我に返ったらしい。


「そのことなら心配ありませんよカナエ。こんなこともあろうかとフクちゃんと話し合っていましたから」 

(マカセテー)


 ……ファスさんは一体何を想定していらっしゃるんですかね? 僕の知らない所で物騒な相談がされているようだ。気になるけど、深く突っ込むのが怖いのでスルーしとこう。

 心の中で僕が決心している間にファス達はどんどん準備を整えていく、ルイス君はフクちゃんによりがんじがらめに縛られ、目隠しをされていた。


「昨日から気になってたんだけど、真也君あの子って……」

「ん? フクちゃんのこと?」


 ルイス君を縛るためにファスのローブから出てきた。フクちゃんを見て叶さんが興奮している。

 あぁそういやこの人……。


「すっっっごい可愛いよね!! さ、触ってもいい? ハンドリングOK?」

「……相変わらずだね叶さん、後でフクちゃんに聞いてみれば?」


 そう、桜木 叶という子は重度のオカルトオタク(主に都市伝説やUMA)であり、さらには蜘蛛やムカデ、ヘビというような一般の女子なら嫌悪感を抱くであろうものが大好きなのだ。

 流石に学校では自重(特に他の女子の前では)していたが、デフォルメされた虫のキーホルダーとかをよく付けていたし、話すようになってからは、スマフォでお気に入りのタランチュラ動画を無理やり見せられたりもした。


「フクちゃんって言うんだ。真也君の従魔なの?」

「うん、頼りになる仲間だよ。何度も危ない所を助けてもらったんだ」

「いいなー、教会は従魔とかもダメなんだよね。私もこんな子連れたいよー」

(……マスター、コノヒト、コワイ)


 熱烈な視線に恐怖を感じたのかこっそりと念話が飛んでくる。フクちゃんよ、これでもこの子、学校ではマドンナ的存在だったんだぜ。


「こんなところでしょうか。フクちゃん、例の毒をお願いします」

(リョウカイ)


 ファスの指示でカプリとフクちゃんが毒を入れていく、多分転移者に盛られていた毒と同じものかな?


「次は、ご主人様。【呪拳】をお願いします」

「えっ? もうこの人動けないと思うけど」


 フクちゃんの毒と糸で十分だと思う。


「ご主人様との稽古で感じたのですが【呪拳】の鈍麻の効果は、身体だけでなく思考にも及びます。より尋問をスムーズにできると思います」

「そうだったのか、自分じゃ気づかなかったよ」


 てっきり、身体の自由を奪うスキルだと思っていたけど効果の範囲はもっと広いようだ。昨日ゴーストに効いたのもそういった理由からだろうか。

 なにはともあれ、ルイス君の頭に手を当てて【呪拳:鈍麻】を発動する。一応精神に効くように念じたけど効果があるかはわからん。


「こんなもんかな?」

「十分でしょう。さぁ始めますか、一応周囲に人はいないようですが。トア、警戒をお願いしますね」

「任せるだ」

(イトモ、ハッテル)


 僕等のパーティはファスの【精霊眼】、トアは嗅覚で、フクちゃんは糸による触感で索敵できるので不意打ちには強い。僕は何もできないけどね!


「フクちゃん、合図をするので起こしてください。すみませんがご主人様とカナエは見ていてください」

「わかった。任せる」

「了解だよ、ファスちゃん」


 ファスが手で合図を送り、フクちゃんがまたカプリとルイス君に噛みつきすぐに離れる。


「ん゛、こ、ここは? う、動けないぞ」


 スゥとファスが息を吸う。次の瞬間空気が肌に刺さるかのようなプレッシャーが部屋を満たす、ファスの【恐怖】だ。慣れていない叶さんが声を漏らしそうになって、自分で口を押えていた。


「うわあああああああああああ」


 拘束され、さらにフクちゃんの毒と僕の呪拳により正常な思考を奪われているルイス君の混乱はさらに酷い、完全に恐慌状態に陥ってしまっていた。


「黙れ゛」


 ファスが呪いが解けてない頃のようなしゃがれた声で静かに声を発した。

 まるでその声自体が力を持っているかのような迫力にルイスはピタリと口をつぐむ。


「なぜ私達を襲った? 許さない゛」

「襲った? お前、わ、ワイトか、そんな、これは夢だ!!」


 再び「夢だ、夢だ」と騒ぎ始めるルイス君の首にファスがスタッフを当てる。冷やかな金属製の石突を剣と勘違いしたのかルイスは動きを止め、ただ微かに震え始めた。


「…………」


 ファスは喋らない。ただ無言で【恐怖】を強めていく、ちなみに僕の膝はさっきから震えっぱなしだ。

 ルイス君は目隠しされているがある意味幸せかもしれない。フードを脱ぎ、まるで虫でも見るようにルイス君を見下すファスはその人形の様な現実離れした美貌ゆえに人とは思えぬ迫力があった。

 叶さんは口を押えてへたり込んでいる。


「ゆ、許してくれ、魔物からあんたらを見捨てたのは俺じゃない! 教会のジジイどもがやったことだろ! 優秀な騎士を抱え込みたいってのはわかるだろ? なっ?」


 魔物? 女将の話では村は病気によって廃村になったはずだが……地下墓地の破損した死体に今の台詞、教会がらみでなにかあったのは間違いなさそうだ。

 ファスがこっちを見て、どうするか聞いてきたのでそのまま続けるように促す。


「話せ、全てを゛」

「わかった、わかったから、命だけは……」


 ファスは首筋からスタッフを離す、それで安心したのかルイス君はタガが外れたかのように話し始めた。

 錯乱しているため、内容は支離滅裂だったが繋ぎ合わせ整理すると


・村が潰れた本当の原因は魔物の群れに襲われたため

・教会はそのことを隠蔽し、ラッチモには伝染病のせいと伝えていた

・村は魔物の群れに対して、教会に助けを求めていたが教会は見捨てた

・教会の幹部たちが当時優秀な騎士であったラッチモが村へ戻るのを止めさせるためになんらかの工作をした

・ラッチモは何かに気付き、自らの身を呪いデュラハンとなった。教会はそのことを隠蔽したい

・各地で発生しているアンデッドの案件と今回の事件は関係しており、冒険者ギルドよりも早く事件を片付けたいと教会は思っている


 こんな所だろうか? しかし疑問は残る。教会がダメなら冒険者ギルドや他の方法で助かることは可能だったのではないだろうか、教会が行ったという工作の内容も気になる。


 フクちゃんの念話を使ってそのあたりのことをファスに聞いてもらうよう頼んだが、どうやらルイス君はこれ以上のことを知らないようだ。話すことがなくなったため延々と命乞いをしている。

 フクちゃんがもう一度ルイス君を眠らせ、尋問は終了した。彼は後で宿屋へ運ぼう、道に倒れていたところを叶さんが発見したとか適当なこと言って誤魔化す予定だ。


「う~ん。教会って結構ブラックっていうか、嫌な感じだね。ラッチモさんに何があったんだろ?」

「ろくなことじゃなさそうだな」

「私としては、時期が気になります。ワイトが発生した原因をギルドでは地脈の暴走による魔物の活性と考えていました。その考えが正しければそれがラッチモのこととどのように関係しているのでしょう?」

「オラ、難しいことはわかんねぇけど。一つ気になることがあるんだよなぁ」


 尋問の結果を皆で話していると、トアが何か言いたそうに口をモゴモゴさせていた。


「なんですかトア?」

「いや、話の筋から離れるかもしんねぇけど、あの地下墓地にあった言葉が小骨が刺さったみてぇに気になってるだ」


 地下墓地? そういや入り口になんか書いてあったっけ。確か……


「『彼らの苦しみに終わりが訪れ、彼らが救われることを願う』ですね。それがどうしましたか?」


 ファスがさらさらと暗唱する。よく覚えてるな、うん? まてよ。


「そもそも苦しみってなんだろうな? 病気なら話は分かるけど魔物に襲われたんなら長い期間苦しんでいたってわけじゃないよな、負けてしまえばその場で魔物に殺されるだろうし」

「この世界の一般的な祈りとか?」

「いえ、白星教会の一般的な祈りは全て女神が文言に入りますから、この祈りとは別です」


 確かに言われてみれば気になるな。あの言葉にどんな意味があるのだろうか?


「オラはその言葉聞いた時、死んでいるはずなのにまだずっと苦しみ続けているって意味かなぁって思っただ。それってあの死体達がワイトになったり魂がゴーストになってさまよい続けることを知っているみたいでねぇか」

「「「あっ」」」

「な、なんだべ皆して」


 飛躍している考えかもしれないが、トアの考えが正しかったとしたら……。


「あの文章を書いた人間は、死体がいつかアンデッド化することを知っていたってことか」

「村が滅びた理由を隠蔽したのは教会です。だとすればあの文章を書いたのは教会の人間の可能性が高いです」

「つまり、アンデッド化の原因も教会が関わっているってことだよね。というかアンデッドを作るために村を滅ぼしたとか」

「そんなことして、教会にどんなメリットがあるのかわからないな」


 小さな村を潰してアンデッドを作っていったい何になるってんだ。


「……ご主人様、ラッチモは聖騎士でした。聖騎士というクラスは大変に強力ですし、宗教的な意味も大きいのです。つまり聖騎士の数こそがそのまま教会の威信になるといっても過言ではありません」

「そうだね、教会で聖騎士の人を何人か見たけど、皆尊敬されていたし、町へ出るとちょっとした芸能人みたいな扱いだったよ」

「その聖騎士へとなる方法を知っていますか?」


 宿屋で女将はラッチモは『教会の仕事に没頭して』聖騎士のクラスを手に入れたと言っていた。

 宗教集団にいる騎士が行う『仕事』とくれば大体想像はつく。そして今回叶さんとこの村を訪れた騎士達は()()()()()()()()


「……アンデッドを殺すことか」


 僕の答えにファスは無言で頷いた。

桜木さんは学校ではかなり猫を被っていたようです。更新が遅れ気味ですみません。

次回予告:ラッチモの真実


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― 新着の感想 ―
教会が貴族並みにアレだと召喚者さんらも安全じゃなくね?
[一言] マッチポンプかー。
[一言] 桜木さんは猫を被っていたと言うより計算にしか思えないね。
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