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【コミック&書籍発売中!!】奴隷に鍛えられる異世界生活【2800万pv突破!】  作者: 路地裏の茶屋
第四章:異世界温泉編【首無し騎士と聖女の想い】

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第五十七話:温泉に行きます。

 威圧も習得し、ついでに森での採取等もかなりできたので一旦町へ帰ることに、といっても、森のかなり奥までいたので帰りに二日ほどかかってしまった。


 ギルドへ帰り、まずは受付で報告を行う。アマウさんが台に乗って対応してくれた。


「おかえりなさーい。アレ? 人形が取れてます。つまんないですねー、外し方を見つけられましたか~」

「え? 外し方? 人形って【威圧】を習得すれば取れるんじゃないんですか?」


 そう聞いたからあれだけ必死になっていたんだが、とりあえず人形を鞄から取り出し渡す。


「……本当に習得したのですか? え、えと、この人形はですね~頭を掴んで回すと……」


 一回自分の頭に人形を設置したアマウさんは、人形をくっつけすぐに外して見せた。

 ……どういうことだ? アマウさんはドン引きした顔で説明を続ける。


「そもそも、【威圧】を習得するまで取れないんだったら、習得できない人は死ぬまで取れなくなるじゃないですか~この人形は【威圧】を習得する前に魔物に集中攻撃を受けても大丈夫なように訓練するのが目的なんです。それを悪ふざけで【威圧】を習得するまで取れないとかいうのをライノスさんとギースさんが……あ、あの~ヨシイさん?」

「ご、ご主人様、落ち着いてください」

「ここで暴れるのは不味いだ」

(ドウドウ、マスター)


 徐々に笑みが深くなる僕に周囲からフォローがくる。何言ってんだ皆、僕は冷静そのものだぞ。

 そうか、森までの道程で笑われたのも、何なら森で出会った冒険者達が笑いをこらえていたのも、悪ふざけか、まぁ結果的に習得できたし問題ないな、それどころかお礼をしなきゃいけないよな。

 あっそうだ、全然関係ないけど手甲締めなおさなきゃな。

 ギチギチと手甲を締めなおしながらアマウさんに質問する。


「今、ライノスさんとギースさんはどこに?」

「今ですか? スタンピードに備えた会議が終わって、食堂か掲示板の辺りだと思いますが……」


 なるほど、そこか。


「ファス達は悪いけど、ゴブリンの討伐と採取したもので、ギルドの評価が得られるものがあるか報告を頼む。僕はちょっと、ホラ、挨拶してくるから」

「習得したばかりの【威圧】振りまいて何言っているんですか!?」

「フクちゃん、旦那様を止めるべ!!」

(アイアイサー)


 フクちゃんの糸が身体に巻き付く、クソっ、こっちが動く前につかまってしまった。


「おいおい、何事だ」


 僕等の騒ぎを聞きつけたのかライノスさんがやってきた。いつもの恰好ではなく、ブーツに燕尾服を簡素にしたような上着と、かなりちゃんとした格好だった。


「おう、坊主か、なんで芋虫みたいに転がってんだ」

「それが~、ライノスさんとギースさんの悪戯がバレたみたいですねー、というかヨシイさん【威圧】を習得しちゃいましたよ~」

「習得しただと!! 確かに【威圧】してんな。……お前本当にあの猿で習得したのか、普通外せることに気づくだろっ、ハハハハハハ、いや本当にお前天才だぞ、本来一カ月丸々かけて習得させるための第一段階で習得しちまうとはな、しかし猿で習得、ガハハハハ」


 ……その後ツボに入ったライノスさんの笑いに誘われ、やってきたギースさんにも笑われてしまった。

 くそぅ覚えてろよ……。


 フクちゃんの糸をほどき、ゴブリンの討伐証明と森で取った各種薬草(必要分はトアがちゃんと保管してます)の報告が終わり、査定が行われる間、これからのことをギースさんと話すことにした。

 ちなみにファス達はナノウさんに呼ばれて奥で何か話しているようだ。ライノスさんは話し合いがあるとかで、二階の会議室へまた向かった。

 なのでこの場はギースさんと僕だけだ。


「それでギースさん【威圧】を習得したのですけど、これからどうすればいいですか?」


 ジト目でギースさんを睨み付けながら質問するが当の本人は悪びれもせず話を続ける。


「そう、怒るなよ。適当な所で使いを出すか、直接行って本当のことを言うつもりだったんだ。あの人形は疑似的な【威圧】の状態を再現することで、魔物に集中攻撃される状況を経験させるためのものだったんだが、それで習得するとはな、ヨシイ、お前は多分元々【威圧】を習得できるギリギリのところまで経験値が溜まってたんだろうな。それがあの人形で開花したと、ゴブリンの巣も潰したみたいじゃねぇか大したもんだ」

「本来はどうやって習得させる予定だったんですか?」

「次は人形なしで注意を引く立ち回りをするように指示するつもりだった。さっきは笑ったが、俺はもちろんライノスの兄貴だって習得に一カ月以上はかかったんだぞ、転移者ってのはつくづくとんでもないな」


 ハァ、そう言われると怒りづらいな。それで次はどうすればいいんだろう?


「それで次はどうすればいいですか?」

「それなんだがなぁ、本来なら俺が面倒みるつもりだったんだが、ちょっと面倒なことになってな」


 禿頭をつるりと撫でながら、珍しくギースさんが言い淀む。


「ギー坊は前半のスタンピード討伐隊のリーダーをやってもらおうと思ってね」

「戻りましたご主人様」

「ただいまだべ、旦那様」

(マスター!)


 ピョンとフクちゃんが頭に乗ってくる。よしよし可愛いな。フクちゃんはすぐに服に潜って体を隠す。やはり人がいる場所では姿を隠したいようだ。

 話が終わったのかナノウさんとファス達が戻って来たらしい。


「この前の模擬戦でギー坊の実力も示せたし、もともと貴族お抱えの騎士団の団長だ。現場指揮にはこれほどの適任はいないさね」

「俺はここには久しぶりにきているし、まだCランクだぞ。B以上じゃねぇと周りはついてこないって言ってんだがな」

「冒険者続けていたらもうBランクだろう、仕方ないじゃないか、やっかいな魔物が出てきているんだから、人員を割けないんだよ。シン坊も威圧を習得したようだしそろそろ働きな」

「やっかいな魔物?」


 興味あるな。どんな魔物なんだろう?


「ワイトだよ、人の形を保った死霊だね。そこそこ強く、やっかいなことに呪いをバラまくから【聖騎士】か【僧侶】等の聖職のクラスでないと対応するのが面倒なんだよ、それが下級霊を従えて複数体も出たってんだから、どうなってんだろうねぇ。白星教会から何人か聖職者を応援に頼んだんだけど、あそこは金にがめつくてねぇ、どこかに呪いの耐性を持った子はいないかねぇ」


 ちらりとこっちを見てくる。そりゃあまぁ、耐性あるけど、スタンピードの為の修行もしたいのだが。主に【威圧】の鍛錬とか。


「つまり僕らに行って欲しいってことですか?」

「カースモンキー、それもダンジョンマスターを正面から倒すほどの耐性の持ち主は貴重だからね。もちろんただとは言わないよ。通常の報酬に加えて、D級への昇格とスタンピードの参加への試験免除もつけようじゃないか」


 ほぅ、それはかなりいんじゃないか? ワイトがどれほど危険かによるけど。


「本来なら聖騎士のクラスを持っているライ坊に任せるんだが、あの子はスタンピードの準備で忙しくってねぇ他のアンデッドに相性の良いクラスがいるパーティを使っても、ちょうどあと一つの場所の依頼が受けられなかったんだよ」


 うーん、どうしよう。こういう時は皆に聞いてみるか。


「ファス、どう思う?」

「ワイト……物理攻撃が効きづらい強敵と聞いたことがあります。高レベルのモンスターならよい鍛錬になるかと」


 ファスは乗り気か、となると問題は。


「オラのことなら心配ねぇべ。このカースモンキーの防具なら多少の呪いは防げるし、挑戦したいべ」

(レッツトライ)


 残りの二人もやる気か、それなら問題ないか。というかトアもフクちゃんも、ちょっと過剰にやる気みたいだ。ナノウさんもうんうんと頷いているし。というかファスも二つ返事で乗ったな。


「……そういやナノウさんと何話したんだ?」

「そ、それは、ほら、あれだべ、料理! 料理について聴いてたんだべ」

(オンセン、ダイサクセン)

「わぁあああ! ダメだべ、フクちゃんそれは秘密だべ」

「そ、そうですよ、念話であれほど言っちゃだめだと言ったじゃあありませんか」

(ゴメンナサイ)


 すでに、僕のパーティーメンバーは丸め込まれているっぽいな。

 流石ギルマス外堀を埋めるのは巧いようだ。というか温泉と言う単語は日本人として聞き逃せんぞ。


「大作戦は置いといて、温泉ってのはどういうことですか?」

「フフフ、やっぱりそこに食いつくんだねぇ。転移者ってのは風呂に目がないからね。ずばり、あんたに行ってもらいたい場所は湯治で有名な山間の温泉宿でね、ここから馬で二日ほどの場所だもんで、このギルドでも重宝してたんだけど、近くにワイトが出たという依頼があってね。もしこの依頼を受けるなら宿代はまけてくれるようだよ」

「行きましょう」


 この世界に来てから温泉はもちろん風呂すらまともに入ってないのだ。布で体拭いたり、水浴びが精々だったからなぁ。

 日本人として温泉に入らないという選択肢があるだろうか? いや、ない! あるわけがない!


「流石師匠、転移者のツボがわかってます」

「参考になるべ」

(ニンジャ、ゲイシャ、サムライ)


 なんか僕のパーティがどんどん毒されているような気がするけど、大丈夫だろうか。


「話はついたな、つーわけで、修業は一旦終わりだ。俺はめんどくさいがスタンピードの先発隊を率いる。お前はワイトを倒すってわけだ」


 ギースさんがまとめる。まぁ僕等だけでも鍛錬はできるし、仕方ないか。


「おい、ヨシイ」

「はい?」


 気の抜けた返事をした瞬間突き刺さる殺気、僕の威圧が鈍器だとしたらギースさんの威圧は槍のように鋭い。思わず【拳骨】を発動させ拳を握っていた。


「次会うまでに、これくらいはできるようにしとけ」


 そう言ってギースさんは飯代を机に置いて、食堂を出ていく。

 

「はい、ありがとうございます」


 手本を見せてもらえたということだけでも十分だ。これ以上は甘えすぎだろう。

 ギースさんは振り返らずそのままヒラヒラと手を振った。

 

 というわけで、その日はゴブリン討伐の報酬を貰い(金貨一枚と銅貨が数枚だった。ゴブリンよりもトアの採取した薬草の方が高く売れた)、教会でアンデッドに効くという聖水入りの瓶を何本か買って宿で眠りについた。

 

温泉に行ってないやん!!

次回は、次回はちゃんと行きます。


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