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【コミック&書籍発売中!!】奴隷に鍛えられる異世界生活【2800万pv突破!】  作者: 路地裏の茶屋
第十三章:海と船乗りと転移者編

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第四百八十二話:広まる称号

 プカプカと水で形作られたクラゲが浮いている。その中には先程僕とフクちゃんが捕まえた魚が泳いでいる。ファスの魔術を使った生け簀というわけだ。揺蕩うクラゲに日差しが入りその体内が虹色に煌めている。今は町を目指して河から離れて移動している最中だ。


「ご主人様は水中での移動に無駄がありすぎますね。体力の消費を最小限にする為に水の抵抗を受けない水中での移動方法を模索するべきです」


 先程の水中での鍛錬を見通したファス先生による指摘がとんできた。うん、指摘はまっとうだし検討したいんだけど……。


「あの、ファス。何かあったのか?」


 ファスはフードを脱いでさらに杖を持たない方の腕をこちらの腕に絡ませている。

 距離が近いのは別に歓迎するんだけど、なんかドキドキするんですけど。


「何もありません。ただ、せっかくの旅なのですからこうしてご主人様に身を寄せたいと思ったのです」


 そう言って上目遣いでこちらを見つめてくる。え? 可愛すぎるんだが? というか前衛がどうとかはどうなった?


「ファスさん。順番だからね」


「わかっています。それよりもご主人様、水中の移動についてです」


「もはや泳ぎ方ですらないんだね。流石真也君」


「体が重くて浮かないから【ふんばり】と【掴む】で水中を移動しているんだ。一応、さっきの移動中にヒントは掴んだから。後で練習したいな」


 古流の流れを強く残す合気道の基本である同手同足の体捌き、実はこの体の動かし方を取り入れた泳ぎ方があるのだ。のし泳ぎという古式泳法なのだが、これを使って水中での移動をできないか今は工夫をしているところだ。

 

「……というか旦那様。河の水は海水なのに、あんなに長い間水の中にいて目は沁みねぇのけ?」


「それなんだけど。全然沁みないし、なんなら水中なのにほとんど地上とおんなじ風にはっきり見えるな」


(マスター、特別な体なノー、ボクと同ジー)


「やっぱそうか……【竜人化】の影響がかなり出てきてるのかな」

 

 自分の手を見つめる。結晶竜の戦い……砦で瀕死の重傷を負った後から自分の体の変化が徐々に大きくなっているような気がする。強くなっているのはいいことだけど、しっかりと心も鍛えたいもんだ。


「え? それって【竜の眷属】である私達も影響あるんじゃない? ファスさんクラゲちゃんをこっちに寄せてみて」


 叶さんが水でできたクラゲに顔を突っ込んで目を見開いてすぐに顔を離す。


「はっきり見える! すごーい! え? 全然気づかなかった。いつからだろ?」


「叶さんもそうなのか。ファスは前から水中でも見えるもんな」


「はい、水中であろうとこの眼ははっきりと見えます」


 なんならファスは自身を水で囲って防御するみたいなこともできるしな。

 自慢げに胸を張りながら少しだけ腕を引き寄せるファスさんです。


「はえー、便利だなー……」


 一歩離れてトアがこちらを見ている。なんか遠いな。


「トアも確かめればよいのでは?」


「オラは遠慮しとくだ」


「……トア、まさか……泳げないのですか?」


「そ、そんなことねぇだよ。ちーっと苦手なだけだべ……オラの耳の形は水が入りにくいし、犬族の方でも泳げる方の獣人だけんど。戦闘奴隷としての訓練でちょっとだけ泳いだくらいで顔にケガしてからは泳ぎなんてしてこなかったから、抵抗があるんだよなぁ。ファスが水を使うから模擬戦とかで多少は改善されたけど、泳ぐとなると中々慣れねぇだ」


 確かに、ずっと宿屋で働いていたならば泳ぐ機会はないだろう。トアの身の上を考えれば自然なことだ。ファスは微笑んでトアの元に駆け寄って肩に手を置く。


「なぜ言ってくれなかったのです。大丈夫ですトア、私がついています。私達は奴隷仲間ではありませんか。心配することは何もありません」


「ファス……」


 うん、いい光景だ。そうしてファスはそのままトアの方をガシっと握りしめた。


「旅の合間に泳ぐ特訓です。大丈夫、私がいくらでも水流を作り出して特訓に付き合います!」


「だから言いたくなかったんだべぇえええええ! 旦那様助けてけろ!」


 トアが涙目でこちらを見るが、残念ながらこうなったファスは止まらない。


「頑張れトア。大丈夫だ、ファスはギリギリを見極めることにかけてはプロだから」


 本当にもう死ぬギリギリまで見極めてくれるぞ。


「ご主人様も水中での移動について一緒に鍛錬です」


「……まぁ、覚悟はしてた」


「やっぱり水着がいるよね! 任せて、フクちゃんに可愛いの作ってもらうよ」


(マカセロー)


 そんな話をしているうちに、草地から道へ出る。一度休憩してクラゲの中に捕えていた川魚をトアに塩焼きにしてもらう。食べながら現在地をチェック。かなり町に近づいているようだ。


「ようやく道にですね。ここは周囲の河からも距離がある安全な道のようです。もう少しで町ですよ」


「もう着くのか。折角だし河で魔物相手にもう少し修行しても良かったけどな」


(お魚、まだタベタイ)


 頭の上でフクちゃんが想いを馳せている。確かに久しぶりの海の幸はマジで絶品だった。この塩焼きも絶品だし、機会があればまた河へ寄ってもいいかもしれない。


「水場が近くの方が泳ぎの特訓もしやすいですからね」


「……ここまで来たらオラも腹をくくるだよ。煮くなり焼くなりどんとこいだべ。ほれ、追加の塩焼きだべ」


「ハムハム、んーイワクラの塩が美味しい。まずは町へ行ってからだよね。当分は海に近い場所にいるし、河も多いから泳ぐ練習場所にはことかかないよ」


「しばらく先に関所のようなものが見えます」


 ファスが道の先を指さすと確かに微かに何かが見える。まだ大分先だな。


「全然人とすれ違わなかったけど、やっと建物があるのか日が高いうちに進もう」


「ですね」


「ファス、そろそろ交代だべ」


(ツギ、ボク)


「むっ、まだ早い気がしますが。しょうがないですね」


 少女の姿になったフクちゃんが手を握って元気にブンブンと振って来る。

 うん、このまま先まで向かおうか。緩い傾斜を登るように進んでいくと、左右に河が流れる場所に辿り着いた溝が掘られていて、道は僕らが歩いている者しかない。粗野な木材の掘っ建て小屋が通せんぼするようにそこに立ち数台の馬車も見える。何やらもめているようだ。


「人がいるな」


「口論をしているようです」


 フクちゃんは人見知りを発動して子蜘蛛姿に戻るとファスのローブへ入ってしまった。ファスもフードを被り直す。近づくと小屋の前で男性の声が響いている。


「通行料なんて聞いてないぞ! それに高すぎる!」


「領主様のお達しだ。通行証がない者は金貨二枚。それがいやなら魔物まみれの河を渡るんだな」


 口論をしているようだ近づくとちょっと驚く光景だった。


「おぉ、ヒレ耳だ」


「なるほど、彼等がナルミが言っていた魚人族マーマンのようですね」


 近づくと彼等の特徴に目を惹かれる。耳は魚類の鰭が広がったようなヒレ耳で、ウェーブのかかった髪をしており肌の色は通せんぼをしている男性たちは青味がかっていて、手前の男性は浅黒い。マーマンの男がこちらを見て低い声で喋る。手に二股の槍を持っているが、隙だらけだな。

 

「なんだぁ。丸耳……人族に犬か。通行証がなければ通れんぞ」


 当然そんなもの持っているわけがない。金を出さないといけないのかな。

 と思っていると、トアが寄って来た。


「旦那様。アナスタシア王女の直属の証を出して欲しいだ」


「あぁ、あれか。久しぶりに取り出すな……ええと、あった」


 砂漠でアナさんから預かったメダルのような証だ。絶対に壊すなとか言われてたっけ。

 大事な物なのでアイテムボックスに入れてある。トアに手渡すとそのままマーマンに示した。


「ここはまだラポーネ国なはずだべ。このアナスタシア王女の直属の証が通行証になるだよ」


「そうだったのか……」


 知らんかった。ファスに呆れられた目で見られているような気がするぜ。

 するとマーマン達はしばらくポカーンとした後に、噴き出して馬鹿笑いを始めた。


「「ぎゃははははっは」」


「お前。王女の直属とか正気かよ。王族の権威を騙ると死罪だぞ、俺達でもそんな馬鹿な真似しねぇよ。上玉に見えるのは外見だけで中身は犬の中でもいっとう馬鹿だなっ!」


 む、僕のことはどういわれても気にしないが、トアのことを悪く言われるのは許せない。

 ファスもフクちゃんもすでに臨戦態勢だがトアがハンドサインで僕等を止めている。しょうがないので僕が説得を続けよう。


「仲間を悪く言うのは止めてくれ。僕は間違いなく、アナスタシア王女からこの証を譲ってもらった。なんなら冒険者証もある」


 金色の冒険者証を出すと、いよいよ、マーマン達の笑いが激しくなった。


「ギャハハハ、金色っ! A級冒険者とでも言うのかよ。王女の直属でA級冒険者なんぞ、聞いたこともねぇ。俺達を笑い殺す気か」


「大方、逆巻き河(ミゾ・リベロ)の魔物達から逃げて来たんだろ。冒険者崩れの田舎もんに違いねぇ」


「いや待てよ。王女の直属でA級冒険者とくれば吟遊詩人が酒場で歌ったやつあるだろ。ツルハシで城を落とした【死線の英雄】だっけか? あの与太話に乗っかってんじゃねぇのか?」


「それなら後ろのフード被ってるのは伝説の【翠眼】様だってのかよ。そんなわけねぇだろ」

 

 なんで大山脈の向こう側でミナ姫が作った歌がなんでここまで広まってんだ?

 え? 詩の内容によっては僕ってここでも姫にメイド服着せている扱いなの? 怖くて確認できないんだけど。

 

「無礼者……控えなさいっ!」


 嫌な想像に冷や汗が止まらない僕を置いて業を煮やしたファスがフードを脱いで笹耳が露出する。その眼でマーマン達を見据えて杖を向けた。


「女の分際で……エルフ!?」「「「翠眼っ!?」」」


 なんなら馬車を牽いていたマーマンも口をあんぐりと開けてこっちを見ている。え? 何?


「この方は間違いなく、大森林の英雄にしてA級冒険者。シンヤ ヨシイ様であらせられますっ!」


「最初から証明しているだ」


「ひかえおーろー。だね、あんまりあの番組ちゃんと見たことないけど」


 悪乗りする叶さんだったが、マーマン達はそれどころではないようで青っぽい皮膚をさらに青くして地面にひれ伏した。ファスが得意げに胸を張る。


「……とりあえず顔を上げてください。後、酒場で聞いた歌について教えてください」


 これが、この旅に置ける魚人族とのファースト・コンタクトになるのだった。

次回、やっと港町に入ります。


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なんだか吟遊詩人の正体って、ねぇ?多分きっとあの王女絶対関わり有るよね(笑)。4人のハーレム死守計画もしっかり発動しているようでシンヤ爆発しろ!と久しぶり思いました。
噂の伝達たいえば吟遊詩人。良い仕事してますなぁ
ギルドではなく門前でテンプレか、、、面白くなってきたー!
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