第四十八話:転移者達のあれこれ
後ろでトアが小清水達が乗ってきた犬頭の馬みたいな従魔に、餌を上げているのを横目にみながら先を促す。
小清水は目線を下げ焚火に当たりながら話を続けた。
「結果から話すと、白星教会って所に貴族から保護してもらいながら、ダンジョンを攻略することになったの」
白星教会? 確か桜木さんがいるところだっけ。
「ファス、白星教会ってどんなところ?」
「あまり詳しくはないのでざっくりとした説明しかできませんが……『白星教会』つまり『白星教』はこの世界で最も普及している宗教で、主に人間族が信仰しています。ちなみにエルフやドワーフは『精霊信仰』を持っていて、獣人は信仰を持つ人は少ないようです『白星教』の特徴は――」
あまり知らないと言いつつスラスラと説明するファスの話をまとめると。
・世界を作ったとされている女神を信仰している。
・救貧的な行いを多く行っており市民の評価は高い。
・魔物を女神の敵としており、積極的に討伐を行うこともあるとか。
と言ったような感じだった。要は一神教であり、特徴として魔物に対して敵対意識が強いってことか。
ちなみに、割と緩い教義らしく。教会で働く司祭や神父やシスター(みたいな人達)は魔物を食べず従魔も持たないが、普通の市民は食べても問題ないし従魔に対しても一定の理解があるという。
……お坊さんが肉を食べないようなものだろうか?
おっと、小清水達がこっちを見ているので、話を戻そうか。
「話の腰を折って悪い、それでどうして教会に?」
「桜木さんに口ききしてもらったの、教会はかなり強い権力を持っているから、貴族も簡単に手出しできないみたいだし。魔物が湧くダンジョンの攻略にも積極的だから丁度いいと思って。あの変態貴族、私達が出ていくってなったら泡食ってたわ」
ここらへんで日野さんがうつらうつら眠そうにしていた。僕も眠いし要点だけ聞こうか。
「ブルマンの角と皮が必要な理由は?」
「一つは腕試しね。近々魔物が大量発生する予兆があったらしくって、そこでパワーレベリングしてもらうのだけど、最低限自衛できる腕前は必要でしょ? だからしつこい護衛を置いて私達だけできたの。他の女の子達も守らなければならないしね。二つ目にこれからしばらく教会の息がかかった貴族のところに私達お世話になるんだけど、その貴族の町では革製品が有名らしいの。角も楽器の部品になるとかで手土産にすればいいかなと思って」
「レベル上げもしてないのにか?」
実際僕はかなり怖かったけどな。小清水は目線を横にそらしやや頬を赤らめて答えた。
「だって、試したかったんだもん。スキルとかかっこいいし……」
「すごいわかる」
「……ご主人様」
ノータイムで同意した。ファスがジト目で見てくるが仕方ない。だってスキルってカッコいいし。
使ってみたくなる気持ちはよくわかる。特にあの炎がでる斬撃は絶対使いたいよな。僕もでないかな炎。
「随分話したな、今日はこの辺にして寝るか……トア、片付け手伝うよ」
「もうほとんど終わったべ」
(ケイカイノ、イトハッタ)
二人はとうにすることを終わらせていたらしい。悪いことしたな、次はちゃんと手伝おう。
小清水達は貴族から支給されたアイテムボックスから色々取り出して眠った。
僕も転がって眠りに就いた。
「最っ低えええええええええええええええええええ!!」
「おわぁああああ」
とんでもない大声で飛び起きる。上半身を起こすと小清水がこっちを指さしてワナワナと震えていた。
えぇ……何?
「びっくりしました」
「ムニャ……眠いだ……ワフー」
(オハヨー)
僕の両隣にいる二人とお腹に乗っていたフクちゃんも目を覚ます。ファスは珍しくフードを脱ぎ顔を出していた。トアはやけに薄手のシャツとズボンで寝ており背伸びをすると暴力的な胸部装甲が元気に跳ねている。
そして二人とも、僕に密着して寝ていた。なるほど、それを見て激昂していたのか。
「あんた、やっぱり奴隷にそういうことさせてんじゃない。やっぱり女の敵ね!!」
「ち、千早ちゃん落ち着いて、どう見ても強制しているように見えないから」
「わかんないわよ! あらかじめ奴隷紋を使って、い、如何わしいことを強要するようにしていたのかも」
いいから落ち着け。なんとか二人を宥めて(主にファスとトアが)、朝食 (パンとスープ)をとりながら一日の予定を確認する。
「さてどうするかな、そういやポキポキ草をまだ取れてないから探さないとな」
「それなら解体はオラがするだ。皆はポキポキ草を探してくるだよ。昼の飯も作っておくだ」
「頼む、一応フクちゃんを置いておくよ。フクちゃんよろしくな」
(リョウカイ)
この世界では基本的に朝と夜しかご飯を食べなかったので久しぶりの昼飯だな、楽しみだ。
「私達は一旦帰るわ、護衛に黙って来たから騒ぎになってそうだしね。残してきた子たちも気になるし」
「そうか、ブルマンの角と皮はどうするんだ?」
「流石に貰うのは悪いわよ。……昨日のことは一応謝っておくわ。でもファスさんやトアさんに酷いことしたら許さないから」
「あの、私もごめんなさい。昨日私手裏剣を投げちゃって、一対一の勝負だったのに……」
「ファスが止めたから問題ないよ。革と角は持っていけばいい。トア、先にフクちゃんが倒した方のブルマンの解体できるか?」
「内臓はもう抜いているし、問題ないべ」
普通あんだけでかい生き物の解体はかなり大変なはずなんだけど、昨日の手際をみると本当に問題なさそうだから困る。というかこの女子高生二人はどうやってブルマンの解体をするつもりだったのだろうか?
「わ、悪いですトアさん。手伝わせてください、こう見えても猪の解体を手伝ったことあるんです」
「留美の家は親戚が猟師をやっているの」
「わかっただ、じゃあお願いするだ」
どうやら日野さんにはリアル解体スキルがあるらしい、薄々わかっていたけど日野さんはかなり高スペックのようだな。
というわけで別行動になって僕とファスはポキポキ草の探索を開始した。
ちなみに探索の方はというと。
「ありました。この辺はまだブルマンに食べられていないようです」
「全然わからないんだけど、どこにあるの?」
「あっちです。大体300mほど向こうに」
……見晴らしの良い場所では鷹のごとく獲物を見逃さないファスさんの一方的な活躍により無事ポキポキ草を10束ほど回収できた。フクちゃんにしてもファスにしても僕よりチートなんじゃないかと思う。
土だらけの手をファスが出した魔術の水で洗い、トアの場所へ戻るとおいしそうな香りが鼻を通り過ぎ胃袋へとどく。見れば解体で疲れたのかぐったりとした二人をしり目にテキパキと昼ご飯の準備をするトアの姿があった。
「おっ旦那様。ちょうどよかったべ。今から肉を焼くところだ。連続して肉ばっかで悪いけどな」
「望むところだ。トアは味を変えてくれてるしな飽きることはないよ」
「楽しみです。お湯を用意しますね」
(ゲップ、タベスギタ)
フクちゃんはついに、余った死体を完璧に食べきったらしい。心なしか体が膨らんでいる気がする。
いったい何百キロ食べたんだろう? トンいくんじゃないか?
「……もう無理、疲れた」
「トアさんすごすぎです、どうしてあんなに早く作業を進めれるんでしょう」
寝そべっている女子高生二人を適当に労い。タレが異様に旨い(昨日の煮込みの汁を使っていると見た)ステーキを食べ終わると、小清水と日野さんは犬頭の馬に荷物を積み始めた。解体された革はすでにアイテムボックスに入れたようだ。
「じゃあ、世話になったわね吉井。次は負けないわ」
「お世話になりました。薬もありがとうございます」
フクちゃんに頼んで、貴族の薬を抜くための解毒剤を作りそれを渡したのだ。
聞けば小清水のところにいる女子達は11人とのこと、残りのほとんどは貴族の元にいるらしい。
中には僕のように行方不明になっているものもいるようだが。
「手合わせはいつでも受けるよ。次やるときはもっと強くなっているからな」
「ご主人様なら当然です」
「ほれ、弁当も持っていくだ。実は夜中に燻製を作っただよ」
トアが朝起きられなかったのは夜更かしをしていたせいらしい。……多分普通に朝が弱いってのもあるだろうけどな。
二人を見送って片づけをすませ予定を話す。
「さて、僕等はどうするかな?」
「ポキポキ草はまだありそうなので、もう少し探してから帰ればよいのではないかと思います。食料はいくらでもありますしね」
「賛成だべ、この辺の食べられる野草ももうちょい取っておきたいだ」
(ウーン、オナカイッパイ、クルシイ)
フクちゃんはまだ動けないようだ。食べすぎだ。
結局その後、ファスの視力とトアの嗅覚により、何束か草を回収し、さらに一日かけて町へ戻った。
――――おまけ――――
町へ帰る途中の夜。
吉井が眠りについた後、焚火の周りに影が三つ照らされた。
「私は四匹見つけました」
「オラは三匹だべ」
(ゴヒキ)
各々が鞄(フクちゃんは糸で捕まえていたもの)から取り出したのは丸々太ったラクトワームだった。
「確か、乾燥させて砕けば精力剤になるのですよね?」
「そう言っていたけんども、ちゃんとした作り方を知らねぇべ」
(ボク……マダ……)
楽しそうに話をするファスとトアの横でシュンと項垂れているのはフクちゃんだった。
「大丈夫ですよフクちゃん。ブルマンを食べて大分進化へ近づいたのですよね」
「抜け駆けはしねぇから安心するべ。旦那様の夜伽をするときは一緒にするべな」
「それまでは、私が相手を務めるので安心してください」
「よく言うべ、体力ないからすぐへばる癖に」
「な、何をいうんですか。最近はちゃんと鍛えてますから大丈夫です。ご主人様を満足させられます!」
顔を真っ赤にさせてファスが叫ぶ、声に反応して吉井が寝がえりをした。
その様子を緊張しながら観察する三人だったが起きる様子はなさそうだ。
声を潜めて話をつづける。
「……とりあえず、ワームはオラが預かって町でちゃんと薬の作りかたを調べておくべ」
「ご主人様は毒に対する耐性が非常に高いのであくまで薬効という形にしたほうが良いと思います」
(ムー、モット、トクベツナ、マモノ、タベタイ)
ピョンピョン跳ねながらだだっ子のようにするフクちゃんをみてファスは考え込む。
「ある程度、人に近いとなると、ヴァンパイアとかデーモンとかでしょうか? どれも強い魔物で今の私達では不安です。なにか丁度良い魔物がいればよいのですが」
「というか、蜘蛛で人型の魔物がいるでねぇか」
「アラクネですね。確かにそうでした」
(タベタイ!!)
「しかし、アラクネは非常に珍しい魔物だと聞きます」
「帰ったらギルドでそれとなく調べればいいだ。討伐依頼は受けられなくても倒しちゃいけないことはねぇべ」
「そうしましょう。私達三人でご主人様の寵愛を受けて、ご主人様が万が一にでも元の世界へ戻ると思わないようにしましょう。それでもご主人様が元の世界へ戻るのならば私は絶対について行きますが。こっちの世界へ残ってもらえるならばそのほうがよいですからね」
「オラ達で旦那様を篭絡させるってわけだな」
(エイエイオー)
こうして、奴隷たちの夜は更けていき、吉井の知らない間に包囲網は築かれつつあるのだった。
遅れてすみません。
吉井君は愛されてますね。
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