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【コミック&書籍発売中!!】奴隷に鍛えられる異世界生活【2800万pv突破!】  作者: 路地裏の茶屋
第三章:交易の町編【料理人と恩師】

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第四十六話:VS女子高生

 尾が長く頭部が犬のように見える奇妙な魔物(馬型なのか犬型なのかわからん)に乗ってきたのは、強気にこっちを真っすぐに睨み付け長い黒髪をまとめてポニーテールにした女子と、眼鏡をかけて忙し気に視線を移すショートボブの女子だった。

 

 服装は、乗馬服と言えばよいのだろうか紺のタイトなジャケットに白いズボンだった。

 そして何よりもポニーテールの女子は腰から刀を下げている。刃を上向きに下げているので打刀か、一応うちの道場でも刀は扱うので最低限の知識はある、というかかっこいいな是非じっくりと見せてもらいたいもんだ。

 口にした内容から、転移者だろうけどクラスが違うので二人の名前はわからない。

 学校でも何度か見かけたことはあるような気はするがはっきりと思い出せないんだよなぁ。だって女子と話すことあんまりなかったし。


「えーと、こんにちは、でいいかな」


 挨拶してみると、二人は魔物から降りて寄ってきた。ファスはフードを深く被り杖を握り、トアも無言で一歩出る。

 フクちゃんは姿を隠し、潜んでいる。

 厄介ごとは嫌だなぁ、さっさと解体作業に移りたいしな。


「こんにちは、悪いけど名前覚えてないの。留美ルミは覚えてる?」

「……ボソボソ……吉井 真也君だよ。千早チハヤちゃん」


 おぉ、僕の名前覚えてくれてたのか。しかしルミと呼ばれた女子のことは覚えていない。

 まぁ大方あの茶髪(闘技場で僕を鑑定した魔術師)が言ったんだろうけど。


「ご主人様、あのルミという女にお気を付けください。何やら魔力を込めた眼でこちらを見ています」


 ファスが寄ってきて耳打ちをする。まぁ目の前にいる転移者二人は僕以上のチートの持ち主であることは間違いないのだから特別なスキルを持っていてもおかしくはない。

 まずは対話だけど、万が一戦闘になった時にファスとトア二人を守り切れないかもしれない。


「トア、悪いけど。先にレッドブルマンの解体を頼む。話が終わったら手伝うよ」

「それがいいでしょう。日が暮れる前に解体を終わらせたいですからね。トア、こちらは任せてください」


 意をくんでファスが話を合わせてくれた。


「……解体はすぐにすむべ、オラのことは心配ないからここにいさせてほしいだ」


 トアは残りたいらしい。心配だが、本人が言うなら僕が守ってやればいい。

 さて話を進めようか。女子高生二人に向き直る。


「そっちが名前を覚えてくれてたのに心苦しいんだけど、二人の名前教えてもらってもいいか?」

小清水こしみず 千早ちはやよ、一応風紀委員だったから顔くらいは見たことあると思うけど、こっちは日野ひの 留美子るみこ

「よ、よろしくお願いします……この子すごいよ千早ちゃん」


 あぁ風紀委員の子か、道理で見たことあると思った。

 納得していると日野さんが小清水さんに耳打ちしていた。その目はファスに向けられている。

 眼を使ったスキルで何を知ったかしらないが厄介なことになりそうだな。

 日野さんの話を聴いて小清水さんが驚いた様子でこっち、というかファスを見つめる。


「吉井だっけ? そちらの方紹介してもらってもいい?」


 僕が何か言うより前にファスが前に出る。


「ヨシイ シンヤ様の一番奴隷を務めさせていただいております。ファスと申します」


 ファスが一礼する。その時の二人が僕を見る眼と言ったら、いわゆる養豚場の豚を見る目ってやつです。


「女性を奴隷にするなんて……最低……信じらんない」

「可哀想、ファスさん。大丈夫? ひどいことされてない?」


 グフッ、まぁ返す言葉もないんだけどさ。僕自身、奴隷市場を見て思うところがあったわけだし、元いた世界の常識に当てはめるなら二人の反応は妥当だと思う。

 

「私は、ご主人様の奴隷で幸せです。あなた達の物差しに当てはめないでください。それで私達になんの御用でしょうか? 見ての通り作業があるのですが?」


 声のトーンでわかるが、これはファスが一番切れているときの声だ。胃が痛くなってきたぞ。


「この四頭、貴方たちが全部倒したの? 【宴会芸人】にそんなことできるとは思えないけど……なるほどファスさんがやったのね。この卑怯者!!」

「千早ちゃん、吉井君のクラスは【宴会芸人】じゃなくて【拳士】と【愚道者】だから」

「どっちにしろ、まったく使えないクラスだって聞いたわ、実際に宙野に何もできず負けていたし」

「……ご主人様があの戦いの後どんな気持ちでいたか……」

(ユルサナイ)


 怒りのせいか震える声でファスが呟き、フクちゃんから念話が飛んでくる。

 まぁ確かに、思い返すと。あの戦い防戦一方でこっちから攻撃できてないんだよなぁ。一応茶髪魔術師の妨害とかあったんだけど、言い訳するのもかっこ悪い。 

 そして今は何よりもファスとフクちゃんが怖い。

 フクちゃんがゴーサインを催促しているしファスは怒りで【恐怖】がジワジワと漏れている。だめだ、戦闘になったら二人が(もちろん小清水さんと日野さんの方)死んでしまう。


「わかったわかった。なんでもいいから用事があるなら言ってくれ。何もないなら僕らは作業に入るから」

「あるわ! ブルマンを一頭渡してほしいの。角と皮が必要だから、それと――」

「わかった。あの三頭の内から好きなのを持っていってくれ、じゃあ僕らは作業があるから」


 四頭も解体するのは大変だと思っていたし、一刻も早く離れないとファスとフクちゃんの怒りがいつ爆発するかわからん。


「待ちなさい! ファスさんをこちらに引き渡してもらうわ! さっきの獣人の女性もこっちで引き受ける!」

「【重力域】【魔水喚】」

(コロス)

「ちょ、ダメだ!!」


 必死で二人を制止する。が時すでに遅し。


「きゃあ!」

「うぅ」


 ファスの【重力域】で重力を強め、機動力を奪った後にフクちゃんの糸が二人に巻き付く。

 何もできず倒れた小清水と日野さんの周りに、弾丸の形をした水球が浮かんでいる。

 糸は深く体に組み込み二人が暴れるようなら容赦なく服ごと体を切り裂くだろう。


「くっ、吉井、卑怯者。ファスさんを解放しなさい。大丈夫よファスさん。私達にはあなたの奴隷契約を無効にすることができる手段があるわ、怖がらなくていいの」

「これは糸? こんなスキルなんて持っている人いなかったのに、いったいどこから!?」

「ご主人様止めないでください」

(コロス)

「落ち着くんだ。小清水さんも火に油を注がないで」

『いい加減にするべ!!』


 それは冷や水を浴びせるような、鋭い叱責だった。実際その声で水球が落ちて水が跳ねる。

 声の主は下がらせていたトアだった。


「一回落ち着いたほうがいいだ、旦那様が困っているでねぇか、そんでそこの二人、まずオラ達の話を聴くだ。さっきから聞く耳持たねぇで、それじゃあ攻撃されても仕方ねぇべ」

「……すみません。少しカッとなってしまったようです」

(ムー、シカタナイ)

「あの、すみません。私達奴隷にされそうになっていたので、それで千早ちゃんは――」

「留美! 余計なこと言わないで」


 スキルが解かれ、小清水さんと日野さんが解放される。

 助かった。それにしても一切無駄のない連携だったな。転移者二人を完封するとは。

 ファスとフクちゃん……恐ろしい子。とりあえず解放され自由に動けるようになった二人に話しかける。


「大丈夫か?」

「……納得できないわ。吉井、奴隷を使わず、私と一騎打ちをしなさい!」


 ダメだ!! まだ話を聞いてくれない!! というかもしかしてこれ、薬のせいか?


「小清水さん。聞いてくれ。そりゃあ奴隷ってのは間違った形かもしれないが、僕等は――」

「男のクセにっ私をバカにしてっ」

「千早ちゃん!?」


 腰を切りながらの流れるような抜刀、起坐からの抜刀とか明らかに素人じゃないな。 

 元々剣道か剣術をしていたのだろう。退いて回避する。


「ご主人様!!」

(マスター)

「手を出すな、結局僕がやらなけきゃダメみたいだ」

「千早ちゃん。落ち着いて!」


 日野さんの言葉にも耳を貸さず、小清水 (さんづけはやめるか)はそのまま刀を上に立てて右手に寄せ、左足を前に出して構える。

 八相の構えだっけか、剣道ではあまり使わない(と思う)構えなのでやはり剣術だろう。


「【空斬】」


 小清水は八相の構えから飛ぶ斬撃を放ってきた。それはこれまでみた飛ぶ斬撃の中で最も細く鋭いものだ。体を開いて躱すと。後ろのブルマンがスパッと切れた。なるほど切れ味重視なのね。

 ……それにしても今切れたのはファスが【息吹】で爆散させた奴だからいいけど、フクちゃんと僕が仕留めたやつに斬撃が行くとせっかくあまり傷つけず仕留めたのが無駄になる。気を付けよう。


「【空斬】! 【飛燕】!」


 ブルマンに斬撃が行かないように横にずれるとすぐに二連の追撃が来た。刀のスキルの特徴なのかどっちも細く鋭い、受け止めても弾き飛ばされていたギースさんや勇者の【空刃】とは性質が違うようだ。


 最初の【空斬】を躱し【飛燕】を躱そうとするが縦の斬撃が回転し横の斬撃になりながら追尾してくる。

 魔力を読む訓練をしてなかったら、直撃したであろうけど、そう何度も何度も飛ぶ斬撃にやられるか。

 横向きになった斬撃を上から殴りつけ砕く。


「そんな……留美! コイツ【先読み】のスキルがあるの?」


 小清水が叫ぶ。いや、違うけど。そんなスキルあるのか、便利そうだな。


「な、ないよ。宙野君との戦いの時もだけど、どうして見えない斬撃を止められるの……」


 律儀に日野さんが答える。日野さんが鑑定ができるクラスなのはもう間違いないだろうけど、どの程度わかるんだろうな。

 それから小清水は数回スキルで攻撃してきたが、鋭さはあっても軽いその斬撃をひたすら側面から殴りつけ砕く。これならもう何百発来ても問題ないな。

 余裕ができてきたので話しかけてみる。


「小清水、この勝負僕が勝ったら。ファス達のことは諦めてもらうぞ」

「いいわ! あんたが使えないクラスなのはもう知ってんのよ! 【烈火飛燕】」


 文字通り【飛燕】が炎を纏って放たれた。速度もあり、鳥のように弧を描いて飛んでくる。 

 ただ脅威には感じない。なんというか魔力の練りが脆いような気がする。

 刃には触れないようにその斬撃を【掴む】。


「流石ですご主人様」

「す、すごいだ。でもこれってオラが解放させたからこんなことに……ごめんなさいだ」

(イヤ、トア、トメテクレテ、ヨカッタ)

「そうですね、冷静ではなかったので。助かりました。それにあの女にご主人様の凄さをわからせる良い機会になりました」

「ファス、殺気を抑えてほしいだよ……」


 なんか横の方でファス達の会話が聞こえるが、こっちは片手で燃える斬撃を止めることに集中しよう。ファスならともかく魔力を読めない人がみたら指先で掴んでいるように見えるのだろうか。 

 そのまま【掴む】を強めて斬撃を握るとガラス細工のように砕ける。

 うーん。パワーレベリングしているはずの転移者のスキルがこんなに脆いものだろうか? 


「なによそれ。無茶苦茶じゃない……」

「千早ちゃん!! 気を抜かないで!!」


 一瞬放心した小清水の懐へと踏み込む。距離を詰め狙うのは振り下ろされた柄の手の間、そこを掴んで刃を縦に回せば刀を奪うことができる。

 殴った方が早いけど、さすがに元居た世界の女子は殴ることには抵抗がある。


「させない!」


 柄を掴んだが(洒落ではない)、小清水は空中ででんぐり返りするように、周り、刃を僕の手首に当てる。咄嗟に離して回避。今手首切り落とそうとしたな。


「怖っ、危ないな」

「チッ、取り技か、柔術ね」

「まあね」


 正しくは合気の方だけど、倒れた小清水は足払いを仕掛けてくる、飛びのいて躱し。お互い構えなおす。しかし今の攻防を考えると刀を奪うのは難しいな、どうしよう。

 とりあえず踏み込もうと踵に体重をかけるとネチャと足元に泥が絡む。それでピンときた。武器を持った相手への対処法として古来より伝わる手段があるじゃないか。


 地面に手をついて範囲を広めて【掴む】を発動。力づくで引っこ抜くと5キロほどの土くれを掴むことができた。

 【全武器装備不可】があるのだがギースさんとの特訓で、いまからすることが可能なのは実験済みだ。

 というわけで、持ち上げた土くれを小清水に投げつける。


「ワプッ、何を」


 刀で直撃は防がれたが、それでも全て防ぐことはできていない。

 よしこれで方針は決まったな。というわけで、両手をついて先ほどと同じように土を掴み、小清水の顔面にひたすらに連投。全力で投げると怪我させてしまうかもしれないのであくまでそれなりの速度になるよう手加減をしながらだが。


「ちょ、止め、【空斬】」


 苦し紛れにスキルを打ってくるが、そもそも素早さが僕の方が圧倒的に速いわけで、さっさと躱して振り下ろしの隙に土くれを叩きこむ。直撃すれば目にも土が入り、視界もふさがれるだろう。

 この方法なら殴ることに比べて怪我を負わせずに済む。


「グッ、止め、この【飛燕】」


 せっかくの追尾スキルも最初からあさっての方向へ撃っちゃ躱すまでもない。回り込み横から土を投げつける。


「耳にっ、もう、この、止めなさい! オエッ」


 叫んだ口に放り込む、咳き込む間にも容赦なく土を投げ続ける。

 この戦法はギースさんにも試したけど、さっさと距離を詰められたり、突進のスキルで無理やり突破されたりと、まったく通用しませんでした。


 しばらくは、数回土を投げる間に一回の割合でスキルを返してきたが、徐々にその頻度は少なくなり。

 目に土が入り完全に視界が塞がれたところで、反撃もなくなり小清水はただ体を丸め耐えるだけになる。

 

 それでも僕は! 投げるのを! 止めない! 降参があるまで油断はできない。


「千早ちゃん!! このっ【隠剣】」


 日野さんが僕に手裏剣のようなものを投げつけるが、投げた瞬間に地面に落とされる。 


「【重力域】大人しくしなさい」

「あうっ」


 ファスがすぐに日野さんの動きを封じる。

 日野さんの叫びを聞いて小清水が顔を上げた。繰り返すが小清水は眼に土が入り視界は塞がれている。


「留美! 大丈夫!?」


 誤解しないでほしい。狙ったわけじゃないんだ。ただ、たまたま顔を上げた時に正面から投げつけちゃったわけで、叫んだ小清水の顔面に土くれがクリーンヒットをして、しかも大部分が口の中に入っちゃったわけで。


「ウグゥ!? オエェ、オロロロロロ」 


 多量の土を飲んでしまったせいでついに吐いてしまった。

 流石に投げるのを止めて様子を見ていると。


「うぇええええええええん、うわあああああああああああん。もうやめてよおおおおおおおお」


 泣きだされてしまった。ど、どうしよう。

 結局その後、泣き叫び僕に対して過剰な恐怖反応を示す小清水をトアが介抱し、ファスにより気絶させられた日野さんと一緒に落ち着くまで、ブルマンの解体作業をするという何とも言えない幕切れとなった。

ファスとフクちゃんのブレーキとしてトアさんには頑張ってもらいたいです。

主人公? 止めれるとでも?

次回予告:トアさんが料理します。


ブックマーク&評価ありがとうございます。励みになります。

感想&ご指定も嬉しいです。ありがとうございます!!

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気持ちのいい分からせを期待します( ` -´ )bイイネッ
いや、こんな中世みたいな世界で言いがかり付けて襲ってきてんだから 殺されても文句言えんわ 少なくても掛けた奴隷と同等の金と迷惑料は必要 それと悪者認定して敵意剥き出しな奴を命の軽い世界で生かしておくほ…
[一言] 主人公の器の大きさや人間性を強調すればする程、女二人の器の小ささと腐った人間性が強調されてる 別にヒロインじゃないただの使い捨てのモブなら気にならないんだど、こんな何の魅力もないキャラがヒロ…
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